おつかい。それは頼まれたものを買ってくる。実に簡単な作業だ。しかし現実にはそれが出来ないものがいる。
そう、俺の前に正座しているバゼットさんとか
「・・・・・・・あのさぁ」
「・・・・はい」
「いやお金出すのはそっちだし、むしろこっちは泊めてもらってる立場だからあまり言いたくないんだけどさ」
「・・・・はい」
「なんで余計なもの買ってくるの?」
バゼットさんの家?に泊めてもらってる立場なので、俺はせめてもの恩返しとして料理を少し振る舞っていた。その生活も早二日。今日も晩ごはんを作るためにバゼットさんにおつかいに行ってもらっていた。
しかしだ、
「何これ?」
「トイレットペーパーですが・・・・」
「明日が特売日なんでしょ?てかバゼットさんがチラシに赤丸してたよね!?」
「そうなんですよ。思い出したのが買ったあとで」
「あとこれ、何これ?」
「えっと・・・・めんつゆですね」
「なんでめんつゆ?俺が頼んだのドレッシングだよ?」
「安かったので!」
「だからって頼まれたもの買ってこないのはちょっと・・・・」
バゼットさんはダメットさんでした。いや薄々気づいてたけど。よくランサーはついていけるな・・・・
「ま、まあ明日はうどんで」
「うん、うどんないけどね」
「また買ってきますよ。それでは今日もお願いしますね」
逃げるように部屋を出ていくバゼットさん。いやもう文句は言わない。次はちゃんとするだろ。
「さて・・・・作るか」
《はい冷蔵庫まで縮地!》
「ハッ!!イデェ!!」
《顔面強打!?大丈夫ですか?》
《ほっときなさい。頭は頑丈なのよ?》
(心配する気なしかよ)
時おり沖田さんが『はい縮地!』とか無茶なオーダーを叩きつけてくる。ぶっちゃけ冷蔵庫まで縮地とか無理すぎる。大体あれは『かなり』距離が離れているのを一気に縮めるための奥義だ。なのにすぐ近くの冷蔵庫にはちょっと・・・・
(ぶっちゃけ冷蔵庫すぐそこだから縮地の意味ないよね?)
《何を言ってるんですか!こういう積み重ねが大事なんですよ?はい縮地!!》
(はい無茶ぶり!てか何処に縮地すんの!?)
《はあ、あんたこんなのも出来ないの?私なら出来るわよ?ねえディルムッド?》
《え?いや俺が見たのは・・・・いや言うまい》
《顔面強打して号泣してたなあんた》
《な!?金時・・・・ぶっ殺す!》
《また始まった・・・・とにかく積み重ねですよ真琴君》
積み重ねか・・・・取り合えずカレーとサラダを作るのに縮地は必要ないな。
◇
「今日のお詫びと言ってはなんですが、明日真琴君の特訓に付き合いますよ」
「え、それはありがたいんですけど。仕事の方は?」
「それは一段落しましたから。実践形式で特訓しましょう」
(そんなことになったら死んでしまう!!)
《いいじゃない。一度死んでみたら?》
(なんてブラックなこと言うんだジャンヌ!)
《まあ冗談抜きにしても、実践形式の特訓は大事よ。相手が木ばかりの訳じゃないんだし》
(確かにそうだけどさ)
確かにジャンヌの言うことは正しい。しかしバゼットさんとの実践形式の特訓?いやいや手加減絶対しないじゃないですかヤダー。
「わかりました。明日はよろしくお願いします」
と何だかんだでお願いする俺であった。
◇
「準備はいいですか真琴君」
「ええ、いつでもどうぞ」
俺は刀を構える。それは沖田総司の愛用の刀。その銘は『菊一文字則宗』。最近いつもこれを使って特訓をしている。内容は簡単なものだが。
「それでは、こちらも本気で行きましょう」
バゼットさんは自身の周りに一つの球体を浮かびあげる。それは彼女のまわりをグルグル浮遊している。上着も脱いでシャツの姿になるあたり、
(やっぱり本気だな)
《沖田さんがみっちり教えたんです。大丈夫ですよ》
《それが一番不安なのよ。それに浮いてるアレ。アレには気をつけなさい》
ジャンヌが珍しく真面目に忠告してくる。そんなにヤバイのかアレ?ただの鉄球に見えるけど・・・・
「それでは・・・・仕留める」
「はやッ!」
一瞬の間に懐への侵入を許してしまう。おいおい早すぎるだろ!
「くっ!」
菊一文字で凪ぎ払うが素人の俺では隙しか生まない。隙だらけの俺に容赦なく拳が叩き込まれる。
「おや?私が手加減するとでも?」
「しないだろうな・・・・」
「今は同盟関係であっても、同盟が無くなれば敵同士です。余計な情があるなら今ここで捨てなさい」
「そんなの、ねぇよ!!」
沖田さんが教えてくれたのは縮地だけじゃない。キチンとした攻撃方法も教わってる。
「はあっ!!」
「!!(確実に頸動脈を狙っている。成る程、真琴君も本気になりましたか・・・・殴りがいがある)」
「おうりゃ!!」
「甘い!」
バゼットさんはルーンで手足を硬化させ菊一文字の突きを弾いていく。(沖田さんからしてみれば)隙の少ない攻撃だが俺ではやはり難しい。
《(何か不味いわね)とにかく気をつけなさい。特に切り札は》
「こうなりゃ一気に決めてやる!」
菊一文字にフランの電撃をまとわせる。そして腰をおとし刀をバゼットさんに向ける。呼吸を落ち着かせて・・・・
「一歩音越え、二歩無間」
沖田さんみたいには出来ない。それでも真に迫ることはなんとかできる。
「三歩絶刀!剣狂・三段突き!!」
「・・・・それを、待ってました。」
この時に気づいておけばよかった。バゼットさんの鉄球が電撃を纏って背後に浮遊していることに。
「
《不味い!今すぐ止めなさい!死ぬわよ真琴!》
「
「なっ!!」《くそっ!!》
バゼットさんの鉄球からビームが出た。しかしそれは突然地面から吹き出した炎でかき消された。てか今の炎ってまさか、
「戦神の剣を、かき消した!?」
(今の炎ってジャンヌか?)
《まあね。あの宝具は所謂『切り札に反応する切り札返し』ってとこね。私が炎で消さなかったら心臓を貫かれてたわよあんた》
(そうか。そいつはありがとなジャンヌ)
《別に。あんたが死んだら私たちも消えるでしょ。だからよ》
「しっかしやるなぁ小僧!」
「確かに。こんなことは初めてです。成る程、発動後ならこういう対処も出来るでしょうね。改善が必要か・・・・」
「まあ大体そいつは『一対一』が前提だからな。しかもバゼットは五つの力のうち二つしか引き出せてねぇ。そこもラッキーだったな」
「俺がやったんじゃないんだけどな」
「でも凄いわマスター。もう半分ぐらい縮地が出来てるじゃない」
「そうか?あんまり分かんなかった」
《そうですね。私も土方さんに言われるまであまり実感ありませんでしたし》
まあ取り合えず命の危機は過ぎた。いや本気じゃんバゼットさん。本気で殺しにかかってくるとは。これが聖杯戦争か。サーヴァントだけじゃない、マスターもしっかりしてないと勝ち残れない。
まあこんなふざけた儀式、俺が止めてやるんだけどな。
「今回はここまでにしましょう。真琴君の課題も見つかりましたし。さあラーメンでも食べましょうか!」
「・・・・昨日うどんって言ったのだーれ?」
「うどん買ってきます!!」
まあここぐらいは勝たせてもらわないと。
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「いやしっかし、本気でバゼットがアレを使うとはな!」
「ほんとよ。もしマスターを殺したら、私がバゼットを殺してたとこよ」
「ふうん。確かにアーチャーだから『単独行動』のスキルで殺れるが・・・・殺らすと思うか?」
「でしょうね。まあそれはそうとして。ねえ気にならない?マスターの武器について」
「小僧の武器?あの日本刀か?あれ自体は普通の日本刀だろ?何の魔力も感じなかったぜ」
「それじゃあ、刀に纏わせた雷とか、
「アレはテメェがやったんじゃねえのかよ?」
「そう思ったでしょうね。でも今回私は手を出してない」
「はあ?でもアレは確かに」
「そう。確かにアレは『宝具』だった。マスターにそんなことが出来るとは思えないんだけど」
「・・・・まさか、小僧に手を貸している第三者でもいるってのか?」
「そこはなんとも言えないわね。いるかもしれないし、いないかもしれない。第一私もマスターのことはあまり知らないし」
「なんで知らねぇんだよ」
「だって、喋る機会ないし」
「いっつも喋ってんじゃねえか」
「それは普通の談笑よ。私がいってるのはお互いのことよ」
「ふうん・・・・まあ俺は興味ねぇし。そこんとこはテメェでなんとかしな」
「・・・・・・・・分かってるわよ」
フラガラックってこんな方法で防げそうじゃない?え?防げない?まあそこは『この世界限定のフラガラックの対処法』ってことで。
次回は一大決戦!全サーヴァント集結!