ここはバゼットの部屋。そこにはパソコンに何やら入力しているバゼットがいる。カタカタと文字を打つ音が聞こえてくる。ついでにバゼットのお腹の音も。
「(小腹が空きましたね。時間は午後一時。お昼もまだでしたね)真琴君は何か食べたのかしら」
部屋を出てリビングを目指す。だいたいいつも皆ここにいる。
「あれ、バゼットさん仕事終わったの?」
「ええ。少し落ち着きました。なのでお昼を頂こうと」
「ああ、そういえば食べてなかったな。今から作るにも時間かかるし。どっか食べに行きます?」
「外食・・・・牛丼ですか」
「あのさ、外食イコール牛丼はやめようか?たまにはオシャレなお店とか」
「むう、いいじゃないですか牛丼」
「ダメです。もう飽きました。そうだな・・・・あ、ランサーとアーチャーのバイト先は?」
ランサーとアーチャーはバイトをしていた。ランサーは召喚された次の日にはいくつかのバイトに入っていたらしい。アーチャーは昨日の帰り道にスカウトされたらしい。
「確かアーネンエルベと言いましたね。いいでしょうたまには」
というわけで、
◇
「来てみたわけだが」
「思った以上に喫茶店ですね」
喫茶店などほぼ経験がない二人。どこか別の国に放り投げられた犬レベルだ。とりあえず店員に誘導される。しかしその店員は、
「ご注文が決まりましたらお知らせくださいニャ」
(猫だ)
(猫だ)
猫だった。しかし何故かこれが『当たり前』と頭が認識してしまい、次第に気にならなかった。
「なんでしょう・・・・お茶なのは分かるのですが」
「あーーここまで来てカレーは食いたくないし」
「だったらオススメ紹介しようかマスター?」
真琴は「?誰だ」と顔をメニューから離す。そこにはメイド服姿のアーチャーが立っていた。
「・・・・なんか新鮮味がない」
「マスターが設定したんじゃない」
「いやそうだけど・・・・あ、オススメって?」
「オススメはね、この『アーネンエルベ特製 ネコネコハンバーグ』よ。あとこれドリンクバーのチケット」
「んじゃそれで。あとドリンクバー二つ」
「かしこまりました~~どうぞアーネンエルベ特製ネコネコハンバーグです!」
「「はやっ!!」」
どう考えても作りおきがあるんじゃないかと疑問を浮かべる二人に、満面の笑みで『それ以上は詮索するな』と言いたげなアーチャー。仕方なくそれを食べる二人であった。
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私の名はセイバーである。真名はまだ言えない。私は訳あって今ここアーネンエルベにてバイトをしている。何故このようになったのか。それは昨日の帰り道まで遡る。
◇
「是非!是非うちで働いてくださいニャ!!」
「働けと言われましても。私にはシロウを守るという義務が」
「いいじゃないかセイバー。働いてみたら?」
「な、シロウ!それでは貴方を守ることができない!」
「大丈夫だよセイバー。家には遠坂もアーチャーもいるんだから」
「し、しかし!」
「あーそれなら、そこのボーイも一緒に働くってのはどうっすか?」
「え、俺?」
「それがいい!賃金を稼げると同時にシロウを護衛できる!そうしましょうシロウ。いえそうするべきです!」
◇
回想終わり。しかしシロウは別のバイトが入っておりこちらにはこれないという。これではなんのために働いているというのだ!
「すいませーん」
「あ、はい!ただいま!」
しかし私は働く身。お客様は神様とテレビで見ました。ならば私は神様のために働くとしよう。私は神より位が低いのだから。いや聖槍を持ち続けたら・・・
「おや、リンではないですか」
「あらセイバー。働けって衛宮君に言われた?」
「いえ、ここの店主に働いてほしいと」
「成る程ね。確かにセイバーの容姿なら欲しいわね」
どういう意味だろうか。
「ご注文は」
「とりあえずコーヒー」
「お食事は?」
「ご飯食べてきたし」
「それではいざというときに動けませんよ!!」
「はあ!?じゃあプリン」
「それだけで足りるのですか!!」
「ああもう!!じゃあホットケーキ!!」
「シロップはかけますか?」
「・・・・・・・・」
しかし私は思う。ここの人間は何をしに来ているのか。サラリーマンはずっと喋り通し、チャラチャラした学生はマナーが悪い。アヴェンジャーは途中でジュースを噴き出すし、ライダーにいたっては全然食事を頼まない。私の生きた時代なら大量のマシュポテトを文句言わずに食べたというのに。むしろ喜んで食べていた。特に湖の騎士が。泣きながら。
「あ、いらっしゃいま「フフフフハハハハハハハ!!!来てやったぞセイバー!まさかここでバイトをしているとはな!!」お帰りください」
「セイバーさん、セイバーさん!お客さんだから」
ここではっと我にかえる。そうだ、例えクソみたいな黄金の王が来店しても接客をしなくてはいけない。
「ご注文だ。下らん酒をだそうものなら店ごと吹き飛ばすぞ」
「ここは喫茶店です」
「知っておる。わざといったのだ、笑うがいいハハハハハハハ」
「ん?なんだ金ピカがいるじゃねえか」
おおランサー!この時ばかりは貴方が救世主に見えます!
「はっ、狗はお呼びでないわ。さっさと日替わりランチを持ってこんか!」
「あーはいはい。ただいまお持ちしますよー」
「あとセイバー、スマイル。ニッ」
これほどにまでぎこちないスマイルで返したのは初めてでした。
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「セイバーも大変なんだな」
「しかしあの英雄王とセイバー。何やら知り合いみたいですが」
「みたいじゃねえ。ありゃ知り合いだ」
ランサーがおかわりのコーヒーを淹れながら答える。
「ちょっと暇だからお前のパソコン使って調べてみたが、第四次聖杯戦争で英雄王はアーチャーとして参戦してたみたいだな。マスターは遠坂の嬢ちゃんの親父。セイバーの方はアインツベルンの人間らしいが」
「同じサーヴァントが連続で聖杯戦争に現れるのですか?」
「あり得なくはない。サーヴァントだって聖杯が欲しいからな。死ぬほど欲しいならそれこそ連続で来るかもな」
しかしそれだとあのアーチャーは何者なのか。これは連続で聖杯戦争に参加しているレベルじゃない。もうすでに人数オーバーなのに。
「おっとセイバーが暴れそうだな。おいアーチャー。止めにいくぞ」
英雄王の席をみると不可視の剣を持ったであろうセイバーが英雄王を殺しにかかっている。それをアーチャーとランサーが必死にとめ、英雄王が高笑いするというなんともカオスな空間へと変貌していた。
夜に聞いた話だと英雄王はセイバーに『テイクアウトはお前だ!!』と言ったらしい。結局テイクアウトはアーネンエルベ特製ケーキにしたらしいが。
「さて、そろそろ失礼しますか」
「そうだな。また来るよアーチャー」
「出来ればこれを止めてから帰ってほしいな」
「じゃ」
「この人でなし!!」
お会計を済ませ店を出る。その瞬間にすれ違う二人の女性。一人は金髪で赤い瞳の女性。もう一人は着物に赤い革ジャンを身にまとった女性。どちらも間違いなく美人だ。そして何か恐いものを感じる。
「どうかしましたか真琴君」
「・・・・・・・・いいや。あの二人がマスターじゃなくて良かったなって」
「??」
分かるのは俺だけでいい。あの二人とはきっと二度と会うことはないのだろうから。
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「いやー助かったニャ。いきなりバイトが二人も休んで大変だったニャ」
「いいのよ。出来ればもっとやりたかったわ」
「はい。英雄王さえ来なければ楽しい一日になったのですが」
「ハハッ。いやそれにしても・・・・お前ら二人、どっか似てるんだよな」
「私たちが?」
「あ、メイド服が似合うとか?」
「それもあるが・・・・もっとこう、なんていうかな」
「おお、もしかして。ゴニョゴニョゴニョ」
「ああそれだそれ!お前ら二人共胸が」
その日から暫くアーネンエルベにランサーの姿はなかった。
貧乳に貧乳って言ったら・・・・おや?誰か来たみたいだ。
《『次回はなんと最初の脱落者が!』と書かれた紙》