Fate/Arie night   作:無限の槍製

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エピローグ

 

聖杯戦争から5年の月日が流れた。

 

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「姉さん!コッチですよ!」

 

空港にてイギリスから一時帰国した凛を待っていたのは妹の桜だった。最終決戦の際にバッサリ切った髪の毛も元の長さまで戻っていた。それに対し凛はバッサリと髪の毛を切っており、まるであの時とは逆になっていた。

 

「悪いわね桜。わざわざ空港まで迎えに来てもらって」

 

「いいんですよ姉さん。私も姉さんに会いたかったですし」

 

桜の運転で冬木市へと車を走らせる。冬木市には空港が無いため桜は隣町まで車を走らせていたのだ。往復3時間。およそ4ヶ月前に免許を取得した桜とってそれは決して楽なものではなかった。

それでも久しぶりに会う姉の顔を一足早く見るために片道1時間半の山道を走って来たのだ。

 

「そういえば兄さん、最近離婚したんですよ」

 

「はあ!?これで2回目じゃないの!?」

 

「なんでも今回は向こうが離婚してくれって頼んできたらしいです。兄さんは離婚したくないって言ったんですけど、結局離婚しちゃいましたね」

 

「これからあと何回離婚するのかしらね、あいつは」

 

「そういう姉さんは結婚とかしないんですか?」

 

「その言葉、そっくりそのまま返すわ桜」

 

そう言われアハハと笑いながら目をそらす桜。凛も桜も好きな人が遠くに行っているために好きだという気持ちを伝えるに伝えられなかった。

 

「いつ帰ってくるんですかね、先輩は」

 

「時計塔で一緒にいた時は予定は未定って言ってたわね。狩野君とかなら知ってるんじゃないかしら?」

 

「狩野先輩もバゼットさんと結婚してからいきなり単身赴任ですもんね。もうお子さんもいらっしゃるのに」

 

「女の子だったわね。確か名前が」

 

「木綿季ちゃんでしたね。写真を見せてもらったんですけど、丁度狩野先輩とバゼットさんの特徴を少しずつ持ってましたよ」

 

「っと、狩野君のそんな話してたら見えてきたわね」

 

空港からかれこれ1時間と少し。見えてきたのは田舎っぽい風景とは不釣り合いなクレーター。大きくはないが小さくもない。

このクレーターの正体。それは聖杯戦争終盤に大聖杯が爆発したことによって出来たもの。

 

「ほんと、よくこれだけの規模で収まったわね」

 

本来なら冬木市が丸々吹き飛んでもおかしくない程の爆発力を持つはずだが、どういうわけだか被害は少なめで終わっている。寺は巻き込まれたが。

 

どうしてこれだけの規模で収まったのか。それを知るものは今の冬木にはいない。この冬木から遠く離れた場所にいる。

 

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「ああ、明日にはコッチを旅立てるよ」

 

『あまり無理はしないでくださいよ。木綿季だっているんですから』

 

「分かってるよ。それより心配なのはパパの顔を覚えてるかどうかなんだけど」

 

『それなら心配ないんじゃないですか?木綿季は記憶力もいいですから』

 

「そうか、それなら安心だな。っとお客さんだ。悪いけどまた後でな」

 

『気をつけてくださいね、執行者さん』

 

電話を切ると同時に相手を数える。多分15人。5年前ならなんとかなったかもしれないな。今の俺には少しきつい数だ。

 

「仕方ないよな。これも仕事だ」

 

嫌になるがこれも仕事だ。どういうわけか俺の家系が魔法に近い魔術を扱えることを協会の人間が嗅ぎつけ、封印指定ギリギリラインで踏みとどませる代わりに封印指定執行者という、それはそれはブラックな仕事にお仕事をする羽目になった。

 

チクった奴になんとなく心当たりがある。最終決戦以降全く姿を現していない金ピカと神父。ギルガメッシュの方は何やら青の魔法使いにリベンジする為に色々と渡り歩いているとか。慢心を捨てたのもその為と言っていたが本当だろうか?

 

問題は神父だ。本当にどこ行きやがったんだ?

 

「まあ考える暇はないか」

 

よく見れば代行者まで混ざってる。これはこれは面倒な。

 

「ったく…これならまだ聖杯戦争中の方が楽しかったぜ」

 

思い出すのはあの爆発の後。2人の女性に告白された後だ。

 

 

5年前。あの爆発で俺、アーチャー、バゼットさん、衛宮は死を覚悟した。しかし俺たちはあの爆発の中生きていたのだ。その原因はなんとなく、いや『あーコイツなら納得』と思わざるを得なかった。

 

「よくぞ生き残った。さあ願いを言え!どんな願いも叶えてやろう」

 

「「「「………」」」」

 

目の前に立つ白い服の男。『世界』を名乗るこの男ならあの爆発をこの規模で抑えることができるだろう。

 

「あれ?どうした?ギャルのパンティおくれー!って言わないの?」

 

「言わねえよ。だいたいなんで今頃出てくる」

 

「いやー。直接介入は基本許されてなくてね。ああやって君の夢に出てくるぐらいしか方法がなかった。でもそれでよかったね。後味の悪い結果を回避できたからね」

 

「なんなんだ後味の悪い結果って?」

 

「このユステーツィアとの戦いは絶対に勝利する。それは決められた運命と言ってもいい。ただその結果にたどり着くまでの過程が違ったんだ。本来ならユステーツィアは聖杯の穴に引き込まれるんだけど、その時に狩野真琴君がダメ押しにユステーツィアの顔面に蹴りを叩き込むんだ。その時に彼も聖杯の穴に引き込まれて終わり。これが本来の結末だ」

 

つまり俺が死んで終わってたのか。それがまあ随分と過程を捻じ曲げたもんだ。

 

「つまり君達は運命に勝ったんだよ!そんなありえないことを成し遂げたのはこの歴史上で恐らく15人目だ」

 

「1人目ではないのですね…」

 

「そんな君達に敬意を評して、君たち4人にどんな願いも叶えられるチャンスを与えようと思う。さあどんな願いでもいいよ!だいたい叶えられるからね!」

 

俺たち4人は顔を見合わせてお互いに頷きあう。どうやら願いはだいたい決まってるみたいだな。

 

「じゃあ俺から。俺の願いはイリヤを普通の人間として生きられるようにしてくれ」

 

「衛宮士郎君、君は他人のためにこのチャンスを使うのか?」

 

「イリヤはホムンクルスで聖杯の器だってアサシンが言ってたんだ。だからこそ短命なんだって。それは嫌なんだ。もっとイリヤと、みんなと笑って過ごしたいから、俺はこのチャンスを使う」

 

「なるほど、確かにそれは君の欲望の願いだ。よし分かった。んじゃ次!」

 

次にバゼットさんが前に出た。

 

「では次は私が。私の願いは、もう一度ランサーに会うチャンスをください」

 

「確かに、大聖杯が爆発した今、ここにいるアーチャーと俺が呼び出したアヴェンジャー、元から受肉しているギルガメッシュ以外は消滅している。そこで君はランサーをもう一度使役するのではなく、出会う機会が欲しいと?」

 

「彼はきっとこの世界には来ないでしょう。それこそまた別の地の聖杯戦争で強者を求めて戦いに赴くはずです。そんな彼に一言言っておきたくて」

 

「なるほど、中々面白い。よし分かった。それじゃあ次!」

 

「先にいいかしら真琴」

 

アーチャーが俺に声をかけてきた。別に順番なんてどうでもいい。願いが確実に叶うならな。了承の意味を込めて首を振る。

 

「ありがと。私の願いは……この聖杯戦争の記憶を、ずっと残しておきたい。ありすのことを覚えていたからって、次に召喚された時に真琴のこと覚えているかどうか分からないから」

 

「確かに、システム的には覚えているか怪しいところだが……しかし驚いた。君のことだから受肉を願うと思ったのだが」

 

「それも考えたけど……私はナーサリー・ライム。人から人へ歌い継がれる存在。1つのとこに長居するのは良くないと思うの。でも記憶ぐらいならいいよね?」

 

「……それが君の願いなら叶えよう。次」

 

最後は俺か。まあ俺の願いも今決まったとこだ。

 

「俺の願いは……」

 

 

現在

 

吹き荒れる砂埃を抜けて町にたどり着く。この地域には珍しくキチンと整理された町だ。因みに現在の寝床もここだ。

町に入った瞬間、ボロボロの新聞が足に張り付く。とって読んでみると、こことはまた別の地域で英雄が現れたと書かれている。

 

「正義の味方、ねえ……」

 

ベンチに座る。隣にはフードを被った男が座っている。髪は白く、肌は浅黒い。まるでどこぞの贋作使いだが……

 

「随分とデカデカと取り上げられてるな」

 

「でも救えなかった方が多いんだ。これじゃあまだまだ」

 

「相変わらず理想が高いなお前は」

 

「それ、イリヤにも言われた」

 

「そういや、イリヤは今頃中学か?」

 

「だった筈だ。最近も城跡で話してるらしいぞ」

 

「それ本当なのか?本当だったら」

 

「イリヤが言ってるんだ。本当だよ。まだアサシン、いや衛宮切綱はいるんだよ。大事な娘と過ごすために」

 

「これも、ムーンセルの副作用か?」

 

「そればっかりは分からないさ」

 

男は立ち上がり笑いながら話す。

 

「願いを叶えるとか言いながら、結局ムーンセル頼りだもんな」

 

「正直呆れたけどな」

 

2人して笑い合う。通行人が何人か見ているが気にしてはいけない。

 

「それじゃあ俺は行くよ。まだ助けを必要としてる人がたくさんいるからな」

 

「そうか。んじゃまあ俺も行きますか……また冬木で会おう、士郎」

 

「ああ、またな真琴」

 

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再び真琴の前に立ちふさがる敵。今度は数を増やして……恐らくは百以上ね。

 

「……こればっかりは」

 

《ハイハイ!沖田さんの出番ですよね分かります!》

 

《いやいや、ここはこのディルムッドが》

 

《何言ってんだ!俺っちとゴールデン号で充分だぜ》

 

《超マハトマ人になるには私の力が必要不可欠なのよ?分かってる?》

 

《真琴、お腹痛いの?お腹押さえてるけど……解体する?》

 

《ウゥ………》

 

「ストレスでお腹痛い。漏れそう。マジでヤバイ」

 

《シャキッとしなさいよみっともない。そんなんで戦えるの?》

 

「大丈夫だ、問題なあああああ………っと危なかった」

 

危うく漏らしかけたマスターに声をかける。

 

《大丈夫?真琴の武勇伝がまた刻まれるわよ?》

 

「そんな不名誉な武勇伝はいらない」

 

一歩踏み出す真琴。お腹を押さえてるけどその表情はどこか嬉しそうだ。それは決して漏らしそうだから諦めて嬉しそうにしているのではない。きっとみんなと笑いあえて嬉しいのだ。

 

「まあ、今回も全部のせで。全員でぶつかるぞ!」

 

《それがマスターらしいわね。どこまでも一緒よ真琴!》

 

「頼むぞアーチャー!みんな!」

 

あの時真琴はこう願った。『アーチャーを俺の中の空いたアーチャー枠に入れてくれ』と。そのおかげで私は『ナーサリー・ライム』と『真琴のアーチャー』と2つの存在に別れた。

つまり『英霊としてのナーサリー・ライム』と『真琴個人の専属サーヴァント』とこの時点で別々の存在と別れてしまったのだ。そして今、真琴のアーチャーとして私は彼の中にいる。

 

まったく、これこそありえない。

でもそんなありえないことを成し遂げるのがこのマスターだ。

そのおかげで私は今ここにいる。

 

ほんと、無茶苦茶なんだから。でもありがと、真琴。

 

 

「みんなの力、おかりします!!なんてな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

真琴の冬木の聖杯戦争は終わった。しかし彼自身の戦いは終わらない。次の聖杯戦争は果てしない聖杯探索か、それとも偽りの聖杯戦争か、それは分からない。

 

そう、未来は決まっていないのだから。だから本当は『ありえない』『不可能』というのは早計なのかもしれない。もしかしたら未来では今の『ありえない』が『ありえる』ことになっているかもしれない。『不可能』が『可能』になっているかもしれない。

 

だからこそ真琴は進み続ける。『ありえない』を実現するために。

 

 

 

終わり




遂に終わったぞーーー!!!いや前作のISに比べたら短かったですけど、それでも51話。いや100話とか越してる人すごいね!自分はちょっとキツイっす。

さてさてこのfateですが、もしかしたらホロウかGOかfakeに続くかも?それは分かりませんね。一応次回作も少しは考えてるんです。でも時間がね。まずは『IS.バイク名人』を終わらせないとね。

えーーここまで付き合ってくださり、ありがとうございます!
fateについてニワカ知識がチラホラしたかもしれないこの作品を最後まで読んでいただき本当にありがとうございます!
ではまたどこかでお会いしましょう。その時までにはもう少し上手くなって帰ってきますよ!多分!ではでは!

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