リリカルの大冒険   作:銀の鈴

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金髪が増えてきた。


12話「フェイト・テスタロッサ」

「あの、フェイト・テスタロッサと言います。よろしくお願いします」

 

ぺこりと頭を下げるフェイトに、一同はなぜか困惑の表情を向ける。

 

「もうっ、フェイトちゃんが一生懸命に挨拶をしてるんだから、ちゃんと皆も応えてあげてよ!」

 

あたしがプンプンと怒ってみせると、すずかちゃんが手を挙げた。

 

「すずかちゃん、どうぞ」

 

「あの、質問です。どうしてウチの裏庭から戻ってきたら金髪美少女を連れているのですか?」

 

「うんうん、いい質問だね。答えは複雑のようにみえて実は簡単なのです。分からないかな?」

 

アリシアが手を挙げる。

 

「アリシア、どうぞ」

 

「はい、お姉ちゃんは金髪萌えだからです!」

 

「うんうん、いい答えですね。あたしに金髪美少女の良さを教えてくれたアリサちゃんには、後でぺったんこの胸に豊胸マッサージをしてあげるね」

 

「誰がぺったんこよ! あたしは標準よ! すずかとかの胸が小学生の癖にデカすぎるだけよ!」

 

「私もそんなに大きくないよ? ふふ、アリサちゃんも直ぐに大きくなるから心配しなくても大丈夫だよ」

 

「おおっ!? すずかちゃんの上から目線だよ! レア物だね!」

 

「むきー!! 誰も気にしてるなんて言ってないでしょうがっ!!」

 

トントン

 

「なに!?」

 

フェイトちゃんがアリサちゃんの肩を叩いた。フォローをしてあげるのかな?

 

「どんまい」

 

「やかましいわぁああああっ!!!!」

 

まさかの止めだったよ!

 

「ところで、フェイトさんでしたよね」

 

「は、はい。フェイトです、あなたはすずかさんですよね」

 

「うん、よろしくね。」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

「それでね、もしかしたらフェイトさんは、アリシアちゃんのご親戚かしら?」

 

「あっ、それはあたしも思ったわ。アリシアとフェイトって似てるわよね」

 

「ふぇ!? わたしと似てるの?」

 

やっぱり、すずかちゃんとアリサちゃんも二人が似てると思うよね。

 

こうして並んでいると、成長前・成長後って感じだね!

 

はっ!?

 

テレビで一瞬で成長させる手品として売り出せば一発屋としてブレイク出来るかも!

 

「そうかな? 自分だとわからないけど、似てるのかな?」

 

アリシアが興味深そうにフェイトちゃんの周りをグルグルと回りながら観察する。

 

フェイトちゃんは少し恥ずかしそうだ。

 

モジモジする姿は、何だか新鮮でいいかも。

 

「活発で強気なアリサちゃんと、大人しくて弱気なフェイトちゃん。あぁ、性格の違う姉妹みたい…あたしはどっちを選べばいいの?」

 

「あのね、お姉ちゃん」

 

「どうしたの、アリシア?」

 

アリシアが何だかモジモジとしている。何だか言いたいことが有りそうだけど?

 

「言いたい事があるなら遠慮せずに言っていいんだよ。もしかして、うん◯でもしたくなっちゃったの?」

 

「「うん◯ネタは、もう止めて!!」」

 

うわっ!?

 

アリサちゃんとすずかちゃんの二人から叫ばれてしまった。

 

どうしたんだろう。何だか顔色が悪いけど、何かあったのかな?

 

「あれ、そういえば二人とも服が変わっているけど、着替えたのかな?」

 

「「ギクッ!?」」

 

今まで気が付かなかったけど、あたしが裏庭に飛び出す前と服装が変わっているよ?

それに何だか石鹸の匂いがするような?

 

クンクンと二人の匂いを嗅ぐ。

 

「二人ともお風呂に入ったの?」

 

「そ、そそそんなこと忘れたわ!」

 

「か、過去は振り返らない主義だから!」

 

二人とも急に挙動不審になったよ?

 

「……あたしがいなくなってから何かあったのかな?」

 

「「何もないよっ!!」」

 

間髪入れずに揃って返事をする二人。

 

ここまで息が合った二人は初めて見るんだけど。

 

「そういえば、アリシアのにゃんこソードはどうな「「どうもなってないよ!!」」そ、そっか」

 

これ以上は、踏み込まない方が良さそうだね。

血走り始めた二人の目も怖いしね。

 

あたしは気分を入れ替えてアリシアに問いかける。

 

「それで、アリシアは何が言いたかったの?」

 

「うん、このあいだね。お兄ちゃんがお部屋で忍さんの写真を見ながら『我が恋人ながら美人だよな』って、言ってたの」

 

「ふふ、恭也さんは姉さんにメロメロですからね」

 

すずかちゃんは嬉しそうに笑う。

 

あたしとしては少し恥ずかしいけどね。

 

「それでね」

 

アリシアの話には、まだ続きがあるみたいだね。

 

「忍さんとすずかさんが一緒に写ってる写真を見ながら『すずかちゃんも可愛いよな』って、言ってたの」

 

「もう、恭也さんは正直な人ですね」

 

すずかちゃんがどこなく嬉しそうに言う。

 

あたしとしては、小学生相手に何を言っての? 馬鹿なの?って言いたい気分だけどね。

 

「それからね」

 

まだ、続くみたいだね。

 

「忍さんとすずかちゃんの写真をジッと見つめながら『男なら姉妹丼を狙ってみるべきかな?』って、言ってたよ」

 

「ひっ!?」

 

すずかちゃんが体を隠すように自分自身を抱きしめながら短い悲鳴をあげる。

アリサちゃんは意味が分かっていないみたいで首を傾げている。

 

「姉妹丼って何のこと?」

 

「よく分かんない。でも、アリサさんとフェイトさんが姉妹みたいなら、お姉ちゃんも姉妹丼を狙えばいいのかなって、思っただけなの」

 

「それだっ!!」

 

アリシアの言葉にあたしは天啓を得た気分になる。

 

そうだ! そうなのだ!!

 

無理に片方に決めなくていいんだよ!!

 

“二兎を追う者は一兎をも得ず”

 

そんなことわざがあるが、それがこのあたしに――この大魔王に当てはまる筈がない。

 

別にあたしに、先人の残した言葉を蔑ろにするつもりがあるってわけじゃない。

 

むしろ様々な時代を生きた先人達が残した言葉は侮れないとさえ思っている。

 

だけどあたしは、もしも先人達があたしの考えを愚かと否定したのなら、こう答えるだろう。

 

『とはいえ、かつては大魔王はいなかったのだ』

 

 

 

 

 

 

モニターの中で、元気に走り回るアリシアの姿に私は涙を流す。

 

あの日、突然現れた正体不明の少女が、奇跡のような――いいえ、紛れもない奇跡を起こしてアリシアを生き返らせてくれた。

 

少女はそのままアリシアを連れ去ってしまったけれど、今にして思えばそれが最善だったと思う。

 

目を覚まして再会した母親が余命幾ばくもないなどと知れば、あの子はどれほど悲しむだろうか。

 

それなら、少しばかりの希望を持ったまま生きていく方が、あの子の為にはいいだろう。

 

私は残りの余生を、こうしてあの子の元気な姿を見ながら過ごせるだけで満足出来るのだから。

 

まあ、あの少女が私の事を誤解しているみたいだから、こうして覗いている事がバレないようにと、少女がアリシアから離れた時にしか覗けないのが辛い所ではあるわね。

 

でも、大魔導師と呼ばれたこの私を遥かに凌ぐ魔力と、奇跡そのものと言える魔法を操る少女が、アリシアの保護者としてあの子を守ってくれるなら、私は安心して逝く事ができるわ。

 

あら、アリシアが二人の少女を壁際に追い詰めたわ。

 

「そこよっ、一気に勝負を決めちゃいなさい!」

 

アリシアを応援する私。

 

ああ、こんな日が再び来るなんて!

 

私が幸せを噛み締めていると、私の住居である『時の庭園』を覆う防御バリアーに何かが引っかかった反応があった。

 

「もうっ、良いところなのに、また野良宇宙怪獣でもかかったのかしら?」

 

『時の庭園』は異空間に停留させているけど、野良宇宙怪獣の中には異空間に潜れるものも多い、たまに引っかかるから外して逃すのが面倒だった。

 

「でも、放っとくと腐るから臭いが凄いのよね」

 

モニターの中では、ジリジリと迫るアリシアと、何とか隙をみて逃げようとする二人が見える。

 

生で見えないのは残念だけど、早く逃がさないとバリアーで焼け死ぬだろう。そうなったら余計に外すのが面倒だから仕方ない。

 

「録画はしているから、後でゆっくり見るとしましょう」

 

私はよっこいしょと腰を上げた。スッと動く身体にふと疑問を感じる。

 

「そういえば、最近は身体が軽いわね?」

 

不治の病に冒された身体は鉛のように重かったのに、最近はその重さを感じなくなっていた。

 

アリシアが生き返った喜びが影響した、精神的なものかと思っていたけど、それにしては身体が軽すぎる。

 

「あの時の魔法が影響してる…?」

 

あの少女がアリシアを生き返らせた後で唱えた呪文。たしか『べほま』と言ったかしら?

 

あの時に魔法が発動した際、その魔法光はアリシアだけじゃなく、私をも包み込んだ。

 

恐らくは回復呪文だと思うあれが、私の身体を治した?

 

ふふ、まさか敵だと思っている私を治すわけがないわよね。

 

……でも、あれからよね。身体が軽くなったのは。

 

間違って、私まで治したとかかしら?

 

それこそあり得ないわね。私を遥かに凌ぐ魔導師がそんな初心者みたいな失敗をする訳がないわ。

 

それならどうして?

 

はっ!?

 

まさか彼女は全てを知った上で、私を治した!?

 

あり得る話ね。あれほどの魔導師ならそれも不思議じゃないわ。

 

知った上で私を治したとしたら、それはどうしてかしら?

 

アリシアを生き返らせて私の不治の病まで治した。

 

普通に考えれば彼女は私達の恩人だわ。

もしも私に望むことがあれば、何だって言う事を聞くわ。わざわざ黙ってこんな事をする必要なんか無い筈よね。

 

それを敢えてしたという事は、他に望むことがある?

 

私に恩人からの強制ではなく、自らして欲しいこと?

 

そんなことが……

 

あっ!

 

まさかっ!?

 

まさかフェイトのことっ!?

 

愚かな私がアリシアの代わりにと生み出してしまったフェイト。

 

アリシアの代わりなどいない事に気付いた私が、愛してあげれなかったフェイト。

 

フェイトを愛してしまったら、アリシアの事を諦めてしまいそうで怖かった。

 

そんな事など無いのに。

 

アリシアとフェイトは、二人とも私の可愛い娘よ。片方だけしか愛せないなどあるはずが無いわ!

 

ああ、彼女はきっとこの事を気付かせたかったのね。

 

どうやって私達の事情を知ったのかは分からないけど、彼女ほどの大魔導師なら不可能などないだろう。

 

心優しい彼女は、私達の家族を救おうとこんな事を、それも命だけでなく心まで救おうとしてくれたのね。

 

私は涙が流れるのを止めることが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

落ち着いた私は、バリアーを見に行くことにした。

 

本当は直ぐにでも彼女に御礼を言いに行きたかったけど、それは私がフェイトと仲直りしてからだ。

 

彼女の気持ちに応える為には、フェイトを愛している姿を見せる必要がある。

 

このままフェイトの問題を放ったまま会いに行けば、きっと彼女は相手にしてくれないだろう。

 

でも、アリシアは凄く活発な子で、愛情表現も向こうからグイグイしてくれたから私は応えるだけで良かったけど、フェイトは大人しくて、どう接したら喜んでくれるのかが分からない。

 

「……抱きしめてチュウでもしたら喜んでくれるかしら?」

 

色々と考えながら歩いていると、バリアーに引っかかっている物が見えてきた。

 

ん?

 

あれは野良宇宙怪獣じゃないみたいだわ。

 

「た、助けて……」

 

半分ほど焦げている黒ずくめの少年が、バリアーに引っかかりながら助けを求めていた。

 

「えぇっ!? ちょっと僕っ、大丈夫なの!?」

 

私は驚きながらも急いで少年をバリアーから助け出した。

 

「うぅ…あ、ありがとうございます」

 

「ううん、僕が引っかかっていたバリアーは、私が住んでいる所のバリアーなの。だから私の方こそごめんなさいね」

 

私の言葉を聞いた少年は、私を責めるどころか、逆に感謝し始めた。

 

「それならお姉さんは、やっぱり僕の恩人です。そのバリアーがなければ、僕は異次元の彼方まで飛ばされていました。本当にありがとうございます……」

 

そこまで言うと少年は意識を手放した。

 

「早く治療をしなきゃいけないわね」

 

私は少年を抱きかかえると治療ルームへと向かった。

 

「フェイトとの事は、少し後にするしかないわね」

 

意識を無くしながらも、私の手を離さない少年に母性本能をくすぐられる。

 

 

「ふふ、それにしても“お姉さん”なんて呼ばれるのは何年ぶりかしら」

 

 

 

私はちょっぴりドキドキしながら先を急いだ。

 

 

 

 

 




助けられた少年の正体とはっ!?
次回っ!!
13話『姉さん女房は最高だよ!!』
乞うご期待!!
(もちろん冗談です)

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