リリカルの大冒険   作:銀の鈴

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お久しぶりです。ハリーポッターを書こうとしたら、何故か大魔王様が御降臨してしまいました。一話完結の短編です。


番外編
大魔王と賢者の石


ある日、お空の散歩中に(フクロウ)と出会った。

 

 

“バッサバッサ”

 

 

一生懸命に何かを掴んだまま羽ばたいていた。ご飯を捕まえたのかな? と思ったけど、その足が掴んでいるのは封筒だった。

 

「伝書鳩ならぬ伝書梟かな?」

 

あたしは興味が湧いて、バッサバッサと一心不乱に飛び続ける梟に近付いてみる。

 

「ねえねえ、梟さん。何を運んでいるの?」

 

 

『ギャース!』

 

 

友好的にお話をしようとした美少女に対して、下等な梟は愚かにも威嚇をしてくる。

 

もちろんムカついた美少女は反撃に転じるよ。

 

【バギ】(もちろん超絶手加減バージョンだよ)

 

美少女が放った真空の刃は、狙い通りに封筒を避けて害鳥の梟のみを切り刻む。

 

「とお、フライングキャッチ〜☆」

 

機動力を失った封筒が風に飛ばされる前にキャッチする。

 

「さてと、中身は何かな?」

 

封筒を開けてみると中には書類が入っていた。

 

書類は英語で書かれていたけど、あたしは既に英語をマスターしているから問題はない。

 

「ホグワーツ魔法魔術学校の入学案内?」

 

この地球にも魔法使いは存在していたようだ。

 

「えへへ、宇宙人との戦争も終結して退屈だったから丁度いいかも」

 

嘗ては大魔王として名を馳せたこのあたしだけど、この世界の魔法に関しては初心者だ。

 

魔法学校で新たな魔の深淵に挑むのも一興だろう。

 

あたしは早速、魔法学校に入学すべく動き出した。

 

「先ずは家族と親友達を説得する必要があるよね」

 

【ルーラ】

 

きっと、あたしを心配して大反対するだろう家族と親友達をどうやって説得するかを考えながら、あたしは英国の空から姿を消した。

 

 

***

 

 

何故かトントン拍子に話が進んだ。

 

親友の一人である、すずかちゃんが特に積極的に動いてくれた。

夜の一族の伝手で英国の魔法学校へと入学の話をつけてくれたのだ。

 

特に家族や親友達の反対もなく、あたしは英国へと向かうことになった。

 

コッソリとアリサちゃんを【モシャス】でネズミに変化させて連れて行こうとしたけど、直前でリニスにバレて失敗してしまった。

 

仕方ないから次の機会を待とうと思う。

 

まあ、何はともあれ英国へ出発だ。

 

【ルーラ】

 

英国に着いた。

 

ホグワーツで必要なものは夜の一族が用意してくれたけど、杖だけは自作の物を使う予定だ。

 

「真・光魔の杖〜!」

 

嘗て愛用した“光魔の杖”を手本として、更に改良を加えた杖だ。

 

以前の杖は際限なく魔力を吸うため長期戦には不向きだった。

 

そのため、この“真・光魔の杖”は魔力の上限を設けた。その上限は、たったのメラゾーマ20発分程度だから百年でも千年でも余裕で維持できる。

 

だけど、上限を設けたため魔力刃の威力は、宇宙人の母艦を一刀両断できる程度の威力しかなかった。

 

そんな短所のある杖を使う理由は勿論ある。

 

それはこの杖を所持していれば、あたしが隠蔽しきれない魔力を消費してくれるからだ。

 

「ふふ、これであたしも普通の女の子だね」

 

完全に魔力の気配を消したあたしを警戒する者などいないだろう。

 

ここにいるのは、可憐でキュートな魔法使い見習いの普通の女の子だ。

 

ククク、これで誰にも警戒されることなく、学生生活を楽しめるね。

 

 

***

 

 

「ここ、空いているかな?」

 

ホグワーツ行きの列車の個室で寛いでいると、メガネと赤毛の二人組がノックもせずに扉を開けて入って来た。

 

失礼な小僧共だ。

 

「ここは満員だから他所に行ってね」

 

あたしは魅力的な笑顔で答える。

 

昔のあたしなら問答無用で叩き出していただろう。

 

ふふ、このあたしも優しくなったものだね。

 

「え、いや、その……僕には席が空いているように見えるんだけど?」

 

メガネがしつこく食い下がってくる。

 

「うん、そうだね。でも席は空いているけど、君達の席はないんだよ」

 

あたしは少しイラつきながらも優しく答える。

 

「僕達の席はないって、それはどういう意味なの?」

 

どうやら察しの悪いメガネのようだ。あたしは分かりやすく説明してあげる。

 

「さっさと失せてくれるかな? あたしは狭い部屋で男子に囲まれるのは嫌いなの。君達が可愛い女子だったら良かったのにね。じゃあ、さようなら」

 

ふふ、実力行使ではなく言葉で諭してあげるだなんて、本当にあたしは優しくなった。これもアリサちゃん達の影響かな。

 

「おったまげー、君って顔は可愛いのに性格は悪い『えいっ』ゲボォオオッ!?」

 

「ロンッ!?」

 

反射的に口の悪い赤毛に蹴りをくれてやった。

 

扉の外まで飛んでいった赤毛を追いかけて、メガネも出ていってくれたから一石二鳥だった。

 

ピシャン!

 

あたしは扉を閉めた。

 

 

***

 

 

コンコン

 

「ねえ、ここにヒキガエルが来なかったかしら?」

 

ノックと共に入ってきた女の子が、あたしに声をかける。

 

ん…?

 

ヒキガエル…?

 

あたしの聞き間違いだろうか。

 

「えっと、今、ヒキガエルって言ったのかな?」

 

「そうよ。ペットのヒキガエルがいなくなったから探しているのよ」

 

その答えにあたしは戸惑ってしまう。

 

あたし自身も色々と常識から外れた存在だと認めるが、ヒキガエルをペットにする感性は理解できない。

 

「へ、へえ、貴女ってヒキガエルをペットにしてるんだ。うん、人の趣味はそれぞれだから文句はないよ」

 

「え、違うわよ。私のペットじゃないわ。ネビルのペットよ。っていうか、魔法界ではヒキガエルのペットは普通じゃないの? 私の家族は魔法族じゃないからその辺りの常識には疎いのだけど」

 

「なんだ、そうだったんだ。あたしも魔法界の事は知らないから分からないけど、ヒキガエルをペットにしようとは思わないかな」

 

どうやらこの女の子は、あたしと同じように魔法界とは無関係な血筋の人間のようだ。

 

「じゃあ、あなたも私と同じで人間界の出身なのね。良かったわ、私だけ人間界の出身かもって心細かったのよ。そうだ、私の名前はハーマイオニー・グレンジャーよ。これからよろしくね」

 

「あたしは高町なのは、なのは・高町って名乗るのが英国流なのかな? こちらこそ、これからよろしくね、ハーマイオニーちゃん!」

 

「あ、うん! よろしくね、なのはちゃん!」

 

あたしが差し出した右手を彼女は嬉しそうに握り返してくれた。

 

 

***

 

 

列車が到着するまでの間、あたしとハーマイオニーちゃんは楽しくお喋りをして過ごした。

 

到着間際になってからハーマイオニーちゃんはヒキガエルのことを思い出した。あたしは、彼女がアワアワし出したのが微笑ましくて、つい笑ってしまい彼女に少し睨まれてしまった。

 

ホグワーツに到着した後は、何やら組み分け帽子とかいう怪しげなもので寮を選別をすると言われた。

 

「なのはちゃんと同じ寮になれるかしら?」

 

「大丈夫だよ。あたしは普段の行いが良いから同じ寮になれるよ」

 

「ふふ、その言い回しは日本人らしいわね」

 

そんなやり取りの中、ハーマイオニーちゃんの順番となり彼女はグリフィンドールとかいう寮になった。

 

たしか、ハーマイオニーちゃんの希望もグリフィンドールだったはずだ。

 

彼女の希望通りの寮になれて良かったけど、ハーマイオニーちゃんは心配そうにあたしの方を見つめている。

 

うんうん、大丈夫だよ。あたしも同じ寮に行くからね。

 

あたしは安心させるように手を振ってあげる。

 

ハーマイオニーちゃんも振り返してくれた。

 

そして、いよいよあたしの名前が呼ばれた。あたしは前に進み出ると古ぼけた帽子をかぶる。

 

「…何者じゃ、お主は?」

 

古ぼけた帽子が問いかけてきた。

 

「可愛い女の子かな?」

 

「…何も読めぬ。だが、閉心術ではないな」

 

なるほど、さっきから精神に働きかけてくる力を感じていたけど、それがこの帽子の能力なわけだね。でも、力が弱すぎてあたしの精神防御を突破する事は出来ないみたい。

 

「あたしには通じないけど、乙女の心を覗こうだなんて悪い帽子だね。お仕置きが必要かな?」

 

「ひっ!? ま、待て、これは仕事なのだ。悪気はないゆえ許してくれぬか!」

 

帽子から伝わる力を遡って、あたしの力が帽子の核に触れたことに気付いたみたいだね。

 

あたしが少し圧力を加えれば、帽子の核を潰すことは簡単にできる。

 

その事に気付いている帽子はブルブルと震えている。

 

「うーん、確かに少し可哀想かな? それじゃあ、あたしをグリフィンドールにしてくれたら許してあげるよ」

 

「グリフィンドォオオオオオオール!!!!」

 

帽子が力強く宣言する。

 

うんうん、勇気に溢れたあたしはグリフィンドールに決まったよ。

 

ハーマイオニーちゃんが満面の笑みで喜んでくれた。

 

 

***

 

 

「ハリーポッター?」

 

「ええ、魔法界の英雄よ。名を呼んではいけないあの人を倒したのよ」

 

ハーマイオニーちゃんが、同じ寮になったメガネが英雄だと教えてくれた。

 

っていうか、名を呼んではいけないあの人って誰のことかな?

 

ハァ、と呆れた感じで溜息を吐いたハーマイオニーちゃんが教えてくれた。

 

かつて、英国の魔法界に君臨した闇の帝王の伝説を。

 

 

カクカクシカジカ〜

 

 

「なるほど、恐ろしい闇の帝王は赤ん坊に倒されたんだね……ププッ」

 

「笑っちゃダメよ! 魔法界の人達は本気で恐れているんだから!」

 

「でも、その話だと闇の帝王さんは、少しばかり魔法に優れていただけだよね? そんなの大勢で囲んでボコっちゃえば良かった気がするんだけど?」

 

「少しばかりじゃなくて、魔法界でも一二を争う程の魔法使いだったのよ。並みの魔法使いでは帝王の前に立つことすらできなかったはずよ」

 

「それなら遠距離からライフルで射殺すればいいんじゃないかな?」

 

「誇り高い魔法使いは、人間界の武器なんか使わないのよ」

 

大勢の人が殺され続けても、誇り高い魔法使い達は人間界の武器なんかに頼らず、闇の帝王さんから隠れて震えていたわけ?

 

「魔法使いってバカなのかな?」

 

「それを言ったらお終いよ!」

 

ハーマイオニーちゃんに魔法界の様式美について説明された。

 

でも、やっぱりバカだと思った。

 

 

***

 

 

寮ではハーマイオニーちゃんと同室になった。

 

人数の関係で本来は四人部屋らしいけど、あたし達は二人っきりだ。

 

こうなってくるとなんだか運命を感じるよね。

 

前世では友人と呼べるのは、ミストだけだったのに今世ではあたしの周りには人が集まってくる。

 

きっかけは、アリサちゃん達と出会ったことだろう。

 

あの時、あたしの目の前で攫われたアリサちゃんとすずかちゃん。

 

その理不尽な行為を見過ごせずに、あたしは命懸けの戦いの果てに二人を助け出した。

 

そんな命と魂が交差する激しい戦場で育まれたあたし達の友情は、私にとってかけがえのない一生の宝物だ。

 

すずかちゃんなんかは友情の証として、彼女の一族にまつわる秘密を教えてくれたもの。

 

そんな二人に感じた運命のようなものをハーマイオニーちゃんにも感じる。

 

「ねえ、なのはちゃん、そんなに見つめられたら着替えにくいんだけど」

 

「うん、分かったよ! 着替えを手伝えばいいんだね!」

 

「そんなこと言ってな…きゃあ!? そこは触っちゃダメ!!」

 

えへへ、これから楽しくなりそうだね!

 

 

***

 

 

「嘘だっ!!」

 

「な、なに? 急に叫んだりしてどうしたのよ、すずか?」

 

「ええ、何故かしら? どうしても否定したい気持ちに襲われたのよ」

 

「もう、なんなのよそれは? なのはがいないのが寂しくて、いないことを否定したい。とかかしら?」

 

「それはないわね。むしろこのまま英国に永住してもらいたいぐらいよ」

 

「……それは酷すぎない?」

 

 

***

 

 

初めての授業に向かう途中で、あたしはニャンコと出会った。

 

リニスの影響で、あたしはニャンコ派といっても過言ではないだろう。

 

あれ、そういえばイタチは生きてるのかな?

 

リニスが人型になるようになってからは、イタチのことは忘れていたよ。

 

籠の中でミイラになってたりして?

 

まあ、別にいいか。

 

「ニャンコ、おいで〜☆」

 

“プイッ”

 

気まぐれなニャンコらしく、あたしをチラリと見たあと顔を逸らされてしまった。

 

あたしはちょっぴり殺気をだして威圧してみる。

 

ニャンコの動きがピタリと止まる。

 

ギギギと音が出るような動きで、ニャンコがあたしの方に顔を向けてくれた。

 

あたしはニッコリと笑うと再び、声をかける。

 

「ニャンコ、おいで〜☆」

 

“ニャ、ニャア”

 

気まぐれなニャンコらしく、掌を返したようにゴロゴロと喉を鳴らして甘えてきた。

 

「あはは、お前は甘えん坊だね」

 

あたしがニャンコを抱き上げると顔を舐めてくる。

 

「おや、私の猫が懐くとは珍しいな」

 

背後から近づいていた人間から声をかけられた。

 

どうやらニャンコの飼い主さんの登場のようだね。

 

 

***

 

 

ニャンコの名前はミセスノリス。飼い主さんはフィルチさんだ。

 

フィルチさんとはニャンコ好き同士として気が合った。

 

フィルチさんの事務室でお茶とお菓子をご馳走になりながら、あたし達はニャンコ愛を熱く語り合う。

 

「そうなんだ、ミセスノリスはすぐに行方不明になっちゃうんだね」

 

フィルチさんは、飼い猫がすぐに行方不明になるせいで心配させられるとぼやく。

 

気まぐれなのはニャンコだから仕方ないけど、フィルチさんの気持ちは分かるよ。

 

「それなら簡単な魔法で居場所が分かるようになるのがあるから教えるよ」

 

あたしの言葉にフィルチさんが悲しそうな顔になる。なんとフィルチさんはホグワーツで働いているけど魔法が使えないそうだ。

 

ここはニャンコ仲間のよしみで、あたしが一肌脱ぐ場面だね。

 

「フィルチさん、少し痛みを伴うけど魔法を使えるようになる方法があるんだけど…どうする?」

 

遥か昔に、あたしが暇潰しで研究していた人体改造の技術を応用すれば、魔力をもたない人を魔力持ちに改造できる。

 

フィルチさんは疑うような顔で悩んでいたけど、物は試しということで首を縦にふった。

 

ククク、人体改造は今世では初めてだよ。

 

あたしは、少しワクワクしながらフィルチさんの改造手術に取りかかった。

 

「ギィァアアァアアアアアアアアーーーーーッ!?!!??!!!!」

 

うんっ、フィルチさんの悲鳴はうるさかったけど、中々に有意義な時間を過ごすことが出来たよ!

 

ちなみに、あまりの痛みのせいかフィルチさんは改造中の記憶を失っていた。

 

改造後、基礎的な魔法なら使えるようになったフィルチさんは、あたしのことを女神のように敬うようになった。

 

えへへ、これでニャンコ仲間の結束が強くなったね。

 

 

***

 

 

今日は魔法薬の授業がある。

 

前の世界では、魔法薬はあまり発達していなかったから非常に興味深い。

 

もしかしたら、“アレ”を生やす魔法薬も作れるかもしれないね。

 

え?

 

惚れ薬はいらないのかって?

 

そんなものはいらないよ!

 

だって、人の気持ちを薬なんかで操ろうだなんて邪道だもん!

 

それにね、イヤよイヤよも好きのうちっていう言葉もあるんだよ。

 

あたしがアリサちゃんの身体を弄ったら凄くイヤがるから、きっとアリサちゃんは凄くあたしことが好きなんだよ。

 

だからね、あたしは惚れ薬なんかに頼る必要はないの。

 

ん?

 

まだ何かあるの?

 

人体改造で“アレ”を作れないのかって?

 

そんな無茶を言わないでよ!

 

改造手術は、魂が塩になりそうになるほど痛いんだよ!

 

あんなの受けるバカな女の子はいないわよ!

 

まあ、受けるとしたらバカな男の子ぐらいだよね。

 

そういえば、フィルチさんは男の子だね。納得だよ。

 

さてと、真面目に授業を受けなきゃね。

 

目指せっ、“アレ”を生やす薬だよ!

 

ハーマイオニーちゃんも一緒に研究しようね!

 

「ええ、いいわよ。ところで“アレ”って何のことなの?」

 

うん、それはね。

 

ゴニョゴニョ

 

「なっ!? そんなの研究しないわよっ!!」

 

真っ赤になったハーマイオニーちゃんは可愛かった。

 

 

***

 

 

今日はハーマイオニーちゃんと空を飛ぶ練習だ。

 

明日から飛行訓練が始まるけど、人間界出身の彼女は今まで飛んだことがないらしい。

 

そのため不安なっていた彼女のために、あたしはコーチ役を買ってでた。

 

「まずは手本を見せるね」

 

【トベルーラ】

 

あたしは適当にクルクルと飛び回ってみせる。

 

「すごい、そんなに自由に空を飛べるのね」

 

「ハーマイオニーちゃんなら直ぐに飛べるようになるよ」

 

「そ、そうかしら? 凄く難しそうだったけど」

 

ハーマイオニーちゃんは不安そうだったけど、トベルーラは意外と簡単な魔法だ。

 

十分な魔力量さえあれば、あとは制御力と持続力があれば誰だって使いこなせる。

 

「じゃあ、魔力放出からいってみよう!」

 

「魔力放出ってなに?」

 

「……」

 

「……」

 

「き、基礎から始めれば、三ヶ月もあれば魔力放出が出来るようになるかも?」

 

「飛行訓練は明日だよ!?」

 

あたしは、うな垂れてしまったハーマイオニーちゃんを慰めた。

 

 

***

 

 

今日は飛行訓練の授業だ。

 

そして、あたし達の前には魔法の箒が置いてある。

 

えっと、この世界ではマジックアイテムを使って空を飛ぶんだね。

 

うんうん、あたしも勉強になったよ。

 

だから、ハーマイオニーちゃんもそのジト目をやめて欲しいな。

 

 

***

 

変身魔法の授業では、マッチ棒を針に変えろと言われた。

 

あたしにとってはモシャスを応用すれば簡単なことだけど、この世界の魔法をマスターするために先生の説明通りの魔法を使うことにしている。

 

「やりました、先生出来ました!」

 

「素晴らしい出来ですね、グレンジャー。グリフィンドールに一点加点します」

 

ハーマイオニーちゃんは成功したみたいだ。彼女はとても勉強家だから魔法の上達が早いね。

 

ふふ、魔法の先達として、ハーマイオニーちゃんに手本を見せてあげよう。

 

 

願わくば、これが彼女にとっていい刺激になりますように。

 

 

さてと、これはイメージが大切な魔法なんだよね。

 

あたしは強い意志力にて、鮮明で明確なイメージを行う。

 

安っぽいマッチ棒が、硬質の金属となる様を。

 

硬質の金属が、鋭い刃を持つ刃となる様を。

 

小さく鋭い刃が、巨大化する様を。

 

鉄の剣が、火によって鍛えられる様を。

 

鋼鉄の剣が、魔力を帯びる様を。

 

魔法剣が、火の属性を帯びる様を。

 

炎の剣が、洗練される様を。

 

灼熱の魔剣が、小さな普通の針になる様を。

 

赤い針が完成した。

 

「先生、あたしも出来ました!」

 

「おや、赤色の針ですね。着色した技量は素晴らしいです。グリフィンドールに一点加点します」

 

「やったあ!」

 

喜ぶあたしの隣では、全てを見ていたハーマイオニーちゃんが絶句していた。

 

「ふふ、ハーマイオニーちゃんなら頑張れば同じことが出来るようになるはずだよ」

 

囁くあたしの声に、彼女は小さく身を震わせた。

 

 

***

 

 

ホグワーツには巨人が生息している。

 

噂によると巨人族の最後の生き残りらしい。

 

巨人族といえば、サイクロプスやギガンテスが思い出される。

 

ふふ、懐かしいね。

 

そうだ! 貴重な最後の生き残りなら記念に剥製にしておこうかな?

 

こういうところが、あたしは女の子になっちゃったんだな〜と自分でも思うところだね。

 

なんていうのかな、感傷的というか、センチメンタルというか、女の子っぽくてちょっと恥ずかしいかも?

 

えへへ、それじゃあ、巨人狩りに行こうっと。

 

 

***

 

 

あたしの前に立ち塞がるメガネと赤毛。

 

へえ、いい度胸をしているね。

 

あたしの狩りを邪魔しようだなんて。

 

「もういい、お前らは逃げろ! このままじゃあ、お前らまで殺されちまうぞ!」

 

「何を言ってるんだよ、僕達がハグリットを見捨てて逃げるわけないだろっ!!」

 

「お前、いい加減にしろよな! どうしてこんな事をするんだよ! 僕達は同じグリフィンドールじゃないか!」

 

「この化け物にそんな常識なんか通じんぞ! いいから逃げろ!」

 

「嫌だっ、ハグリットを見捨てるぐらいなら僕はこいつと戦うよ!!」

 

「ハリー、僕達だけじゃ無理だ! ここは一旦逃げて助けを呼ぶべきだよ!」

 

「馬鹿を言うな、ロン! こんな化け物に背中を見せれるわけないだろっ!!」

 

なんでだろう?

 

まるで、あたしが悪者のような言い草だ。

 

それに、こんな美少女をつかまえて化け物呼ばわりは酷いと思う。

 

こんなことなら、久しぶりの狩りだからといって巨人を甚振って遊んだりせずにサッサと始末しておけば良かったよ。

 

そうすればこんな邪魔なんか入らず、気持ちよく巨人の剥製が手に入ったのに。

 

なんだかやる気が無くなっちゃった。

 

もういいや。

 

【メダパニーマ】(集団混乱)

 

赤毛が言ってたように、あたし達は同じグリフィンドールだからね。

 

最初の一回だけは、あたしに敵対したこととか、全部を無かったことにしてあげる。

 

でも、次にあたしの邪魔をしたら消しちゃうからね。

 

 

裸踊りを始めた三人を残して、あたしはその場を後にした。

 

 

***

 

 

「ハリー達が、立ち入り禁止の部屋を探っているみたいなのよ」

 

ハーマイオニーちゃんから相談をされた。

 

なんでもハリー達が規則を破ろうとしているのを止めたいらしい。

 

「ハリーといえば、あのメガネの事だったかな?」

 

「あなた、まだ覚えていなかったの!?」

 

「男には興味ないもの」

 

「や、やっぱりそうだったのね」

 

自分の身体を隠すようにしながら後ずさるハーマイオニーちゃん。

 

その距離を詰めるあたし。

 

「どうして離れようとするの? ハーマイオニーちゃん」

 

「なのはちゃんこそ、どうして近付いてくるの?」

 

互いに互いの隙を伺い合う。

 

一瞬でも気を抜いた方が負けるだろう。

 

「安心して、ハーマイオニーちゃん」

 

「何を安心するのよ」

 

「あたし達は女の子同士だよ。どんなことが二人の間で起こったとしても、ハーマイオニーちゃんが妊娠することはないから安心していいよ」

 

「その言葉のどこに安心していい要素があるのよ!?」

 

「それで、立ち入り禁止の部屋って何のこと?」

 

「急に話題が戻ったわね」

 

ハーマイオニーちゃんは呆れた顔になるけど、やっぱり関心が強いらしく話を続けてくれた。

 

「ハリー達が忍び込もうと企んでいるみたいなのよ」

 

「別に関係ないんだから放っておけばいいと思うけど、ハーマイオニーちゃんは真面目だよね」

 

「あのね、ハリー達が妙なことをすれば減点されるのはグリフィンドールなのよ」

 

あたしは得点なんかに興味はないんだけど、ハーマイオニーちゃんの相談なら無下にはできないよね。

 

「うん、分かったよ。ハリー達をブチのめして諦めさせればいいんだね」

 

「違うわよ!? そんな物騒な手段じゃなくて、普通に説得を手伝って欲しいだけよ!」

 

「うんうん、“お話”をすればいいんだよね。任せておいてよ!」

 

胸を叩いて請け負うあたしを何故か不安そうに見つめるハーマイオニーちゃん。

 

どうしたんだろう?

 

 

 

 

 

「…もしかして、頼む相手を間違えたかしら?」

 

 

***

 

ハリー達を昼間に説得しようとしても惚けられるから、夜中に例の部屋で待ち伏せることにした。

 

「待ち伏せはいいけど、見廻りのフィルチさんに見つかったら私達が叱られるわよ」

 

心配するハーマイオニーちゃんにあたしは安心させるように微笑む。

 

「ふふ、大丈夫だよ、フィルチさんには今夜のことは話を通しているからね」

 

「うそ!? あのフィルチさんをどうやって説得したの!?」

 

「えへへ、ネゴシエーターなのはとは、あたしのことだよ」

 

戯けて言うあたしにハーマイオニーちゃんは尊敬の眼差しを向けてくれる。

 

「なのはちゃんが頼りになる……うぅ、良かったよう。なのはちゃんに相談した私の決断は間違っていなかったのね」

 

「涙目になるほどの事じゃないよね!?」

 

 

あたし達は例の部屋の前に来た。

 

「中に入ってみようか?」

 

「それは規則違反よ。ハリー達を止めにきた私達が『バキッ!』って、言ってるそばから扉を破らないでよ!?」

 

扉には鍵が掛かっていたからブチ破ってみた。

 

「なのはちゃんなら魔法で開けれるよね!?」

 

あたしが中を覗くとワンコが唸っていたから威圧して大人しくさせた。

 

「なんだ、ワンコのお部屋だったみたいだね」

 

部屋の中を見渡してもワンコ以外に目ぼしいものは無かった。

 

「ワンコじゃなくて、ケルベロスよ! でも、こんな危険な魔獣を飼っていたのね。たしかに立ち入り禁止になるは『ほーら、お手をしてごらん』ケルベロスに芸を仕込まないで!?」

 

しばらくワンコと遊びながら待っているとハリーと赤毛がやって来た。

 

「あはは、そんなに顔を舐めちゃダメだよ」

 

「ケルベロスって、意外と可愛いかも?」

 

「ほら、ハーマイオニーちゃんにも挨拶をするんだよ」

 

「チンチンはさせなくていいわよ!!」

 

「やだ、ハーマイオニーちゃんってば、どこを見てるの?」

 

「あんた、ぶん殴られたいのかしら?」

 

「…気の所為かな? ハーマイオニーちゃんの口が徐々に悪くなってる気がするよ?」

 

「誰のせいだと思っているのよ!!」

 

「……」

 

「…戻ろうか、ハリー?」

 

不思議なことに、あたし達が説得する前にハリーと赤毛は戻っていった。

 

まあ、楽でいいかな。

 

 

***

 

 

この世界の魔法を学んでいると不思議に思うことがある。

 

どうして呪文を唱えるときに杖を振るのだろう?

 

「杖は魔力を増幅してくれて、呪文は魔力の方向性を定めてくれるのよ。そして、杖の動きが魔力を正しく導いてくれて魔法が完成するわ」

 

あたしの疑問にハーマイオニーちゃんが答えてくれるけど、その答えには納得出来なかった。

 

「でも、あたしは呪文だけで魔法を使えるよ?」

 

「うん、きっとなのはちゃんは特異体質なのよ。何事にも例外はあるもの」

 

どこか遠くを見るような目をしながらハーマイオニーちゃんは呟く。

 

「うん、そうよ。なのはちゃんの理不尽な魔法も例外。なのはちゃんの規格外の魔力量も例外。なのはちゃんのヤバい性癖も例外。うんうん、なにも問題はないわね」

 

よく分からないけど、ハーマイオニーちゃんは何かを吹っ切ったような清々しい笑顔を見せてくれた。

 

 

***

 

 

凄まじくニンニク臭い教師がいる。

 

教室中に充満する臭いは、もはや公害といっても過言ではないだろう。

 

その教師の言い訳として、その昔、吸血鬼に襲われたのが原因だと言っていた。

 

その言葉で脳裏に浮かんだのは、すずかちゃんの姿だった。

 

あんなナンチャッテ吸血鬼に怯えるのは、教師失格じゃないかな?

 

それに対吸血鬼の装備を常備しているということは、この教師はすずかちゃんの敵だよね。

 

すずかちゃんはアリサちゃんを巡るライバル関係でもあるけど、あたしの親友でもある。

 

そんなすずかちゃんの敵となりうる奴は潰しておくべきだろう。

 

あたしは友情のために動くことを決意した。

 

ふふ、大魔王だったあたしが、人との友情のために動くだなんて、今のあたしの姿を見たら勇者達は驚くだろう。

 

ククク、驚きすぎて腰を抜かすかもしれないね。でもきっと、驚いた後は勇者達は喜ぶのだろう。この大魔王の変化に。

 

たぶん、今のあたしなら魔族だけに捉われずに、全ての種族のことを考えられる真の大魔王として……ううん、もう過去のことだよね。

 

あの世界のことは、あの世界に生きる者達が考えればいい。

 

あたしはこの世界に生きる唯の人として、この手で出来ることを為すだけだ。

 

「うんっ、あたしは友情のために戦うよ!」

 

きっと、この胸にある温かい気持ちが、勇者達が感じていた気持ちと同じものなのだろう。

 

ならば、あたしもこの気持ちと共に戦おう。

 

かつて、強大な大魔王に立ち向かった勇者達に、このあたしが負けるわけにはいかないのだから。

 

 

***

 

 

それは深夜のことだった。

 

ニンニク臭い教師が、愚かにもたった一人で森へと立ち入ったのだ。

 

ガサッ

 

「ひいっ!? な、なんだ、ただの風ですか…」

 

ただの風に怯えながらも、その臭い教師は歩みを止めようとしない。

 

一体何の目的でこんな森の中に?

 

そんな疑問がほんの僅かだけ心を過るが、あたしにとっては心底どうでもいいことだから直ぐに忘れた。

 

今のあたしの心にあるのは熱い友情だけだ。

 

もちろん、友情のためといっても正義を語るつもりはない。

 

何故なら正義というのは立場によって変わるものだからだ。

 

しかし友情だけは変わらない。

 

友情は何よりにも勝るものだろう。男女の愛情も友情には勝てない。ただし、女女の愛情は友情に匹敵するかもだけど。

 

例えば、こんな言葉がある。

 

『結婚は死が二人を分かつまでだが、親友は死んでも親友だ』

 

まさに至言だろう。

 

親友に託された想いは永遠だ。

 

それに対して、夫婦は離婚後、再婚できる。

 

勝敗は明白だろう。

 

さて、人気もないことだし、あたしの友情を示してあげる。

 

【イオナズン】

 

ドカーン!!!!!!!!

 

 

***

 

 

「ただいまっ、皆んな!」

 

「あんた、まだ一ヶ月しか経ってないのに、どうして帰ってきたのよ」

 

アリサちゃんは、親友が帰ってきた喜びを必死に隠す。そして呆れた顔を作りながら質問をしてきた。

 

本当はあたしに抱きつきたいほど嬉しんだよね。

 

うんうん、あたしは分かっているから安心してね。

 

「その顔はなんかムカつくわ」

 

「いひゃいよー、ホッペおしゅねらないれー!」

 

うう、アリサちゃんのツンデレが痛い。

 

「誰がツンデレよ!!」

 

「まあまあ、それで何があったの? 突然帰国するなんて?」

 

すずかちゃんが、怒れるアリサちゃんを宥めてくれる。

 

「うん、実はね。夜中にホグワーツで謎の大爆発が起こって、ホグワーツの殆どの建物が破壊されちゃったから休校になったの」

 

「ええっ!? なによそれ!! 大惨事じゃないの!!」

 

「うん、そうだね。でも、人的被害は少なかったから不幸中の幸いだね」

 

「あれ、そうなの? でも、殆どの建物が破壊されたんでしょう?」

 

アリサちゃんとすずかちゃんが不思議そうな顔になる。

 

たしかに殆どの建物が粉々になるほどの大爆発が起きながら、人的被害が少ないといったら不思議に思うよね。

 

でも実際に亡くなったのは、たったの一人だけだよ。

 

その人はホグワーツの教師だったから、もしかしたらその人が何かの魔法を使って、大爆発から学院の皆んなを守ったのかもしれないね。

 

「そうだね、もしかしたらその先生が、なのはちゃんの命の恩人なのかもね」

 

すずかちゃんが静かに呟いた。

 

うん、ニンニク臭いけど良い先生だったと思うよ。

 

「それで、なのはちゃんはその夜、どんな魔法を使ったの?」

 

「それが大変だったんだよー! イオナズンを唱えたら、思った以上の爆発が起こるし、全校生徒と教師達にザオリクをかけるのに朝ま……ううん、何でもないよ」

 

思わず口を滑らせそうになったけど、ギリギリセーフだよね?

 

「あ、あたしは何も聞いてないから! 無関係だから巻き込まないでよね!」

 

「そうね。私も何も聞いていないわ。どうせ、証拠なんかないだろうから問い詰めても仕方ないもの……弱みを掴めたら良かったのに」

 

ふぅ、なんとか誤魔化せたみたいだね。

 

それにしても友情のためとはいえ、あの夜は酷い目にあったよ。

 

まさか徹夜でザオリクを唱える羽目になるなんてね。

 

やっぱりイオナズンじゃなくて、イオにしておくべきだったと思う。

 

念を入れてイオナズンを唱えたのは失敗だったね。

 

まさか森どころかホグワーツ全体を破壊しちゃうだなんて建物が脆すぎだよ。もしかしたら違法建築だったのかな?

 

ハーマイオニーちゃんもホグワーツが休校になって落ち込んでたんだよね。

 

今度、慰めに行かなくちゃだね。

 

まったく、色々と大変だよ。

 

 

 

 

“だけど” と、あたし──“余”は思う。

 

 

“余”は、腹黒そうな顔をしている今世での親友に目を向ける。

 

 

被害は大きかったが、“余”は守ることができた。

 

 

“余”の大事な親友のことを。

 

 

あの時の“お前”のように戦って守り抜いた。

 

 

ナンチャッテ吸血鬼のことを。

 

 

ふふ、今の“余”(大魔王)は、“お前”(勇者)と並ぶことが出来ているか?

 

 

ふと、どこかで笑い声が聞こえた気がした。

 

 

懐かしく感じるその声に、“余”も知らずに笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

〜Fin〜




終わり良ければ全て良し!最後は良い話風に終われた筈だよね!
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