リリカルの大冒険   作:銀の鈴

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かつて、深夜アニメ界で一世を風靡した魔法少女まどか☆マギカ。なのはとは魔法少女つながりで相性がいいかな?と思って書いてみた。


大魔王とまどか☆マギカ

そこは凄惨な事故現場だった。

 

燃え盛る炎とむせ返るほどの血の匂い。

 

すでに息をしていない者も数多くいた。

 

そんな地獄のような光景の中、彼女は――巴マミは絶望を受け入れていた。いや、受け入れざるを得なかった。

 

自分の近くには息絶えた家族の姿。そして自分自身も四肢が捻じ曲がるほどの大怪我を負っていた。

 

これで希望を持てという方が無茶というものだろう。

 

(ふふ、せめてもの救いが大怪我すぎるせいで痛みすら感じないことかしら?)

 

マミは混濁する意識の中で、そんな埒もないことを考えていた。

 

それが、目前に迫る死という絶対なる恐怖に耐える為の、力無き少女の唯一の抵抗だった。

 

「やあ、大丈夫かい?」

 

そんなマミの前に白く耳の長い妙な生き物が現れた。

 

(なに、この妙な生き物は? 幻覚かしらね)

 

人語を話す見たこともない妙な生き物。こんな状況でなかったら用心深いマミは決してその言葉に耳を傾けることは無かっただろう。

 

「時間がなさそうだから手短に話すよ。僕と契約して魔法少女になってくれたら、どんな願いごとでも一つだけ叶えてあげるよ」

 

妙な生き物がそんな胡散臭い取引を口にする。

 

(ふふ、もうすぐ死ぬ私に願いなんか聞かれても困るわね)

 

最後にみる幻覚にしてもナンセンスね。と思いながらマミの瞼は閉じられていく。

 

「その願いごとが、その大怪我を治してほしい。だったとしても勿論叶えてあげるよ」

 

閉じようとしていたマミの瞼が再び開く。僅かだが、その瞳に力が戻る。

 

(なんなのよ、この幻覚は。希望を持たせるような戯言を聞かせないでよ)

 

絶望の淵にいるマミは、自分の幻覚ながら腹が立ち殴りたい衝動に駆られる。

 

マミは最後の力を振り絞り、拳を振り上げようとしたが無常にもその小さな拳はピクリとも動かなかった。

 

その事実に絶望の二重底に落ちていくマミ。そして、妙な生き物はここぞとばかりにマミに希望という甘い毒を垂れ流す。

 

「さあ、どんな奇跡でも一つだけ叶えてあげる。僕と契約をして魔法少女になっ「チェリオー!!」ヘブッ!?」

 

「そのセリフは僕のものだ!! さあ、見知らぬ女の子よ! 僕と契約をして魔法少女になってよ! そして、なのはみたいなバッタもんとは違う王道の魔法少女ストーリーを僕と綴ろう!」

 

マミは魂の底から溜息を吐きたくなる。

 

(ハァ…耳の長い人語を操る妙な生き物を人語を操るイタチが蹴り飛ばした。そして、こっちのイタチも胡散臭いことを言ってるわ)

 

今際の際にみる自分の幻覚がこんな低レベルなものだと信じたくないマミは泣きたくなった。いや、全力で泣いた。

 

「泣いている暇はないよ。さあ、早く僕と契約をして魔法少女になってよ」

 

「ちょっ!? 泣かないでよ、見知らぬ女の子!」

 

(イタチの方がまだマシね)

 

泣きじゃくる自分を前にして、尚も契約を迫る妙な生き物と一応は慰めようとするイタチ。

 

比較レベルは低いがまだしもイタチの方がマシだとマミは思った。

 

(それにどっちも未確認生物(UMA)だけど、イタチの方が地球産っぽい分、信用出来そうね)

 

イタチの方は長年生きたイタチが妖怪化したのだと考えられるけど、耳の長い妙な生き物はどう見ても地球外生物にしか思えないとマミは考えた。

 

妖怪が信用できるのかと問われれば、甚だ疑問だが、他の星の生き物よりかはマシだと思おう。

 

今にも死にそうな重体なせいで、色々な脳内物質がドバドバ出ているマミは、アーパーになっている思考でそう結論づけた。

 

そして、何故か幻覚と思いながらも契約しようと決意する。

 

(私はイタチさんと契約……声が出ない!?)

 

だが、世界はマミに厳しかった。

 

マミは気付いていなかったが、彼女の喉は潰れていたのだ。

 

もしも、契約を迫っていたのが一匹だけならマミは頷くだけで良かったのだろう。だが、二匹いるせいでどちらかを選ぶ必要があった。

 

ここでマミの体の状況を整理してみよう。

 

右腕! (へし折れてて動きません!)

 

左腕! (ピクリとも反応しません!)

 

右足! (目を背けたい状態です!)

 

左足! (だから見たくないっての!)

 

喉! (ひゅーひゅーと空気が漏れています!)

 

つまり、マミは選ぶことが出来なかった。

 

(絶望した! 幻覚にすら頼れないなんて! せめて最後の幻覚ぐらい優しい嘘で私を甘やかしてよ!!)

 

この世界の余りの残酷さにガン泣きするマミ。

 

この世に神は存在しないのだろうか?

 

この無力な少女を救うことは出来ないのだろうか?

 

「何やってんのよ、イタチ?」

 

そんな哀れなマミの耳に新たな声が聞こえてきた。

 

(今度はなに? 人語を操るマングースかしら?)

 

そんな投げやりな思いで、マミは声の主に視線を向ける。

 

(女の子……?)

 

視線の先にいたのは、マミよりも年下らしき可愛い女の子だった。

 

(無事な子がいたんだ!? お願い、早く救急車を呼ん……ちょっと待って?)

 

マミはその女の子に違和感を感じた。

 

ジッと観察してみる。

 

服装はごく普通に年齢にあった可愛いものだった。

 

手足も2本ずつある。角も尻尾も羽だってない。目鼻口の数も自分と同じだ。

 

(うん、ただの女の子だよね)

 

心の中で胸をなで下ろすマミ。

 

一方、その女の子というとイタチとお喋りをしていた。

 

「それで、あんたは何をやっていたのよ?」

 

「なのは! 実はこの怪しい生き物がその女の子を魔法少女に勧誘してたんだよ!」

 

イタチが指差す先には、なのはと呼ばれた少女が現れた瞬間から銅像のように固まって動かない妙な生き物がいた。

 

「何こいつ? モンスターなの?」

 

「きっと僕のライバルだよ! このフェレット界の貴公子である僕のライバルに違いないよ! 女の子を魔法少女に勧誘する僕のライバルだ! 今こそ死蔵されているデバイスの「うるさい」ブキャラッ!?」

 

なのはは、騒ぐイタチを煩そうに蹴り飛ばした。

 

「ふーん。魔力は強そうな雰囲気なのに、あんたからは弱い魔力しか感じないね」

 

なのはは、妙な生き物を観察している。

 

「名前は何ていうの?」

 

「……」

 

なのはの問いかけに黙秘する妙な生き物。

 

「へえ、キュゥべえって言うんだ。変な名前だね」

 

「……どうして僕の名前が分かったんだい? もしかして誰かから教えられていたのかな?」

 

この妙な生き物はキュゥべえと言うのね。いまや蚊帳の外に置かれているマミは呑気な感想を覚えた。

 

「あはは、やっと喋ってくれたね、キュゥべえ――ううん、インキュベーター」

 

「っ!?」

 

なのはから大きく距離をとるキュゥべえ。

 

「本当に君は何者なのかな?」

 

「にゃはは、あたしには勧誘しないの? 魔法少女にならないかって」

 

なのはの全てを見通すような目にキュゥべえは最大の警戒をする。

 

「君に魔法少女の資質はないよ」

 

キュゥべえの言葉に嘘はない。魔法少女に必要な資質――それは魔女化の際に莫大なエネルギーを生む器の持ち主を指していた。

 

キュゥべえの前に立つ不気味な少女は、何やら怪しい力を持っているようだが、魔法少女としての資質は微塵も感じなかった。

 

「ふーん、魔女化の際の絶望という感情を莫大なエネルギーに変換できるんだ」

 

「……君はどこまで知っているんだい?」

 

無表情のまま、キュゥべえはなのはに尋ねる。

 

「あはは、それならあたしには資質はないかな。だって、絶望という言葉はあたしには無縁だもん」

 

次の瞬間、何かが爆発した。

 

それは物理的な現象ではなかった。だが、近くにいたマミは本能で理解した。目の前のただの少女だったなのはという存在が、“変わった”ことを。

 

「…………君は神とでも名乗るつもりかい」

 

キュゥべえのその言葉に、常に冷静だったなのはが初めて怒気をみせた。

 

「ククク、このあたしを神如きと同一視するなんて……どうやら消滅したいようね、あんた“達”は」

 

「っ!?」

 

キュゥべえは突然その場を逃げ出した。

 

それを追いかけると思われたなのはは、何故か黙ってキュゥべえを見逃す。

 

「逃してよかったの、なのは?」

 

イタチが不思議そうに問いかける。

 

「にゃはは、サーチは続けているからいつでも捕まえられるよ」

 

「ハハ、そりゃそうだね。なのは(大魔王)から逃げれるわけがないんだ」

 

イタチが遠い目をして笑う。

 

そんな一人と一匹の掛け合いをマミは微笑ましく思い見つめていた。

 

(うん、こんなとぼけた幻覚を見ながら逝くのが気楽でいいかも知れないわね)

 

マミは先ほど姿を消したキュゥべえの正体も気になったが、どうやら彼女に残された時間は尽きたようだ。

 

マミの視界がどんどん暗くなっていく。

 

(この続きは、来世で死ぬときかな?)

 

とぼけた幻覚に負けるものかと、意味不明の意地をみせたマミが、とぼけた思いを抱いた。

 

(バイバイ、イタチと……なのはちゃんだったかな。あなた達のお陰で少しは死ぬのが怖くなくなったわ。ありがとう)

 

マミは穏やかに瞼を閉じる。そして、そのまま暗く冷たい底なしの場所へと魂が堕ちて……

 

(やっぱりイヤッ!! このまま死にたくない!!)

 

マミの瞼が再びカッと大きく開く。

 

(誰か助けてっ、助けてくれたら何でもするわ!! 魔法少女だろうと何だろうとなってやるわ!! だから、だから助けて!!」

 

魂が堕ちていく恐怖の中、マミの魂は絶叫をあげた。

 

「金髪のお姉さん……マミさんって言うんだね。そっか、マミさんはまだ死にたくないんだね」

 

暗闇の中で声が聞こえた。

 

マミは、すでに光の無くなった瞳を必死にその声へと向ける。

 

根拠はなかったが、マミには何故か分かった。

 

この声が奇跡へと続く唯一の道だということが。

 

(お願い助けて!! わたしはまだ何もしていない!! わたしが生きた証を残していない!!)

 

何かが頭に触れた気がした。

 

「にゃはは、アリサちゃんみたいに綺麗な金髪だね。よかったね、マミさん。実はあたしって、金髪好きなんだよ。だから助けてあげる」

 

もしもこの時、マミが平常心を保っていたなら「何よそれ!? 金髪じゃなかったら助けない気なの!? あんたバッカじゃないの!!」と、どこぞのアリサ某のように激しく突っ込んで、なのはの機嫌を損ねていたかも知れなかった。いや、逆に気に入られる可能性も高かった。

 

何はともあれ、この時のマミは平常心とは真逆の心境だった。

 

それゆえ、こう思った。

 

(ありがとう、お母さん!! わたしを金髪に産んでくれて!! これからは毎日髪の手入れは欠かさないわ!!」

 

頭に触れていた手から、満足そうに頷く気配が伝わってくる。

 

マミは奇跡へと手が届いたのだ。

 

暗く冷たい場所へと堕ちかけていたマミは、どこかで“べほま”という言葉が聞こえた気がした。

 

 

***

 

 

あたしの腕の中で、すぅすぅと穏やかな寝息を立てる金髪少女(マミさん)

 

「にゃはは、今日は可愛い拾い物をしたの!」

 

「可哀想に、よりにもよってなのはに拾われちゃうなんて」

 

「うるさい、イタチ」

 

生意気なイタチを教育をしようと蹴り飛ばしかけたとき、周囲の地面に広がっていた血溜まりに足を入れかけてしまった。

 

「もうっ、アリサちゃんとお揃いの靴が汚れちゃう所だよ」

 

足元が気になると周囲の煙たい空気も気になってくる。あたしはクンクンと服の匂いを嗅いでみた。

 

「……すずかちゃんとお揃いの服がけむっぽくなってる」

 

“火よ、消えよ”

 

この世界の魔法を解析して、あたしが新たに開発した言霊魔法によって周囲の炎が消火された。

 

「まったく、意味ある言葉に魔力を乗せるだけで、理論上はどんな現象でも起こせるなんて反則だよ」

 

イタチはあたしの魔法を羨ましそうに見ている。

 

「にゃはは、たしかに応用がきく魔法ではあるけど、その代わり魔力消費量は他の系統の魔法と比べたら一桁以上多くなるよ」

 

どんな魔法にも長所と短所がある。

 

例えば、メラゾーマと同等の威力の炎を言霊魔法で再現しようと思えば、メラゾーマ10発分程度の魔力量が必要になる。

 

研究を重ねて作られた呪文は、その威力と魔力消費量とのバランスがとれているけど、言霊魔法の場合は違う。言霊による結果を得るために、膨大な魔力で強引に現象を引き起こしているだけだ。

 

つまり、あたしが元々使える魔法を言霊魔法に置き換えるメリットは全くないけど、新しい効果の魔法が欲しい時には、開発する手間が省けるわけだ。

 

「でも、なのはみたいにSランク魔導師が百人いたって敵わないほどの魔力量がなかったら下手に使えないよね」

 

「うん、それが言霊魔法の最大の欠点だね。保有魔力量よりも多い魔力が必要な呪文を唱えちゃったら、干からびるまで魔力を吸い取られたあげく、効果もでないからね」

 

これが本当の骨折り損のくたびれ儲けだね。

 

「まあ、今みたいに炎を消したいときは便利だよ。ヒャド系の魔法でも消せるけど、威力の調整とか面倒くさいもん」

 

「さっきの魔法で、なのはが消費した魔力量はどのぐらいなの?」

 

“マヒャド”

 

空に向けてマヒャドを放つ。

 

少し手加減をしたけど、巨大な氷の塊が空の彼方に飛んでいった。本当は氷の嵐を起こす呪文だけど、嵐になったら周囲が滅茶苦茶になって後始末が大変だから効果を低下させた。

 

「これの5発分ぐらいかな」

 

「……うん、僕は絶対に言霊魔法は覚えないよ」

 

イタチは今日二回目の遠い目になった。

 

「う、ううん…」

 

あ、眠っていたマミさんが起きそうになってる。

 

マミさんは目をこすりながら体を起こす。

 

「あれ、どうしてこんな所で寝てるのかしら?」

 

マミさんは記憶が曖昧になっているみたいだね。よし、ここはあたしが教えてあげよう。

 

「あのね、マミさん。マミさんはあたしの所有物になったんだよ。これからは命の恩人のあたしに一生尽くして生きていってね」

 

「……」

 

あれ、反応がない?

 

あたしはマミさんの目の前でヒラヒラと手を振ってみる。

 

だけど、マミさんは何の反応もせずに一点を凝視していた。

 

そのマミさんの視線の先を追ってみる。

 

血みどろの死体が数人分ある。

 

あまり見ていて気分の良いものじゃないと思うけど、マミさんは目を大きく見開いて凝視している。

 

何だか呼吸も荒れてきたような?

 

うん、やっぱり死体なんか見たくないよね。

 

あたしは死体を無くすことにした。

 

“ザオリク×人数分”

 

「もう大丈夫だよ。マミさん」

 

死体を燃やしてもよかったけど、ついさっき炎を消したばかりだったから、生き返らせる方を選んだ。

 

「うそ……おかあさん、おとうさん、それに……ユミ!!」

 

マミさんは転びながらも一心不乱といった感じで駆けていった。

 

「うんうん、美しい家族愛だね」

 

イタチが納得顔で頷いている。

 

「……えっと、よく分かんないけど、流石はあたしだね!!」

 

マミさんがすごく喜んでいるみたいだから細かいことは気にしないで良いよね!!

 

抱きしめ合うマミさん達の姿を微笑ましく見つめるあたし達は、迫り来る魔女達の脅威と恐るべきインキュベーター共の策略にまったく気付いてはいなかった。

 

 

 

「なーんてね…☆」

 

 

 

 

 

〜Fin〜




実は私は魔法少女まどか☆マギカを見ていません。ネットから漏れ聞こえてきた情報だけで書いてみました。きっと、雰囲気はこんなもんだと信じています。イタチのライバルっぽい妙な生き物と有名人らしいマミさんをメインに据えてみました。
この後は魔法少女になったマミさんの勇姿が見れる筈でした。
でも、話の方向性はこれで十中八九は間違いないと私の勘は告げていますが、大ハズレだったら恥ずかしいので、マミさんが救われた原作前の場面で終わりました。
もしも、続きが読みたい奇特な人がいれば、私が昔録画したまま見ていなかった魔法少女まどか☆マギカを視聴するまで気長に待っていて下さい。
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