リリカルの大冒険   作:銀の鈴

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とある魔術の禁書目録だあああっ!!!!


大魔王と禁書目録

「ふーん、ここが噂の学園都市なんだ」

 

最近、学校で噂になっている最先端の科学技術を用いて建設された学園都市。

 

今日はアリサちゃん達と見学に来ていた。

 

「へえ、噂通りの所ね。まるで、未来世界に迷い込んだみたいだわ」

 

「……そうだね、アリサちゃん」

 

アリサちゃんは目をキラキラさせて周りを見渡しているけど、すずかちゃんはあまり興味が無さそうだね。

 

「すずかちゃんは学園都市に興味がないの?」

 

「ううん、私も科学技術は好きだから興味ならあるわ。ただ…」

 

あれ、どうしたのかな? なんだか言いにくそうにしているよ。

 

「なによ、すずか? 言いたいことがあるならサッサと言いなさいよ」

 

気の短いアリサちゃんがすずかちゃんを急かす。

 

「う、うん。学園都市の科学力は凄いとは思うけど、なのはちゃんの“力”や“道具”のことを知っている身としては……ここってチンケに見えるよね?」

 

「すずか、あんた……気持ちはわかるけど、せめて言い方ぐらい気を使いなさいよ。いくら何でもチンケはないでしょう、チンケは」

 

「でもっ、チンケなものはチンケじゃない! 例えば、そこのチョコマカと鬱陶しい自動清掃機も何なのよ! なのはちゃんに貰った清掃用の道具なんか念じるだけで、屋敷中のニャンコの抜け毛が一瞬で消えちゃうのよ!」

 

「ああ、あれは便利よね。今まではメイド達がブーブー言いながら処理してたうちのワンコ達の抜け毛も一瞬だもの……たしかにあれと比べればチンケと言いたくなるかしら」

 

「そうでしょう! ここはチンケなのよ! これで世界最先端の科学技術だなんて、チャンチャラ可笑しくて笑っちゃうわ!」

 

「あの、すずか……? あんた、そんな性格だっけ? もっとお淑やかじゃなかった?」

 

「はっ!? コ、コホン。私が大人になったら世界の科学水準を一気に引き上げてみせるわ。楽しみにしていてね、アリサちゃん」

 

「そ、そうね。一応、楽しみにしておくわ」

 

「うふふ、じゃあ、今日はこのチンケな施設を見学して周りましょう」

 

「……チンケって言葉はやめないのね」

 

なぜだろう?

 

二人が、チンケ、チンケって言葉を口にするたびに胸がドキドキする。

 

……今度、フェイトちゃんとお姉ちゃんにも言ってもらおう。

 

アリシアには……いくら何でもまだ早いかな?

 

うん、もう少し成長してからアリシアにも言ってもらうことにしよう!

 

 

 

 

三人で街中を散策していると銀行強盗に出くわした。

 

「ここはあたしの出番だね!」

 

あたしは意気揚々と銀行強盗退治に乗り出そうと腕まくりをする。

 

「あら、あんたって、そんなに正義感が強かったかしら? あ、言っておくけど、強奪された現金でもそれを奪ったら犯罪よ?」

 

「なのはちゃん、銀行強盗を退治しても犯人を人体改造のモルモットには出来ないよ?」

 

「二人とも酷いよ!? あたしは純粋な想いで銀行強盗を退治しようとしてるんだよ!」

 

まったく、アリサちゃんとすずかちゃんはあたしという人間を誤解してるんじゃないかな!

 

「ふーん、純粋な想いねぇ。ちなみにその純粋な想いの中身を聞かせて貰えるかしら?」

 

アリサちゃんが胡乱げな目付きであたしを見つめている。

 

思わず、すずかちゃんに目を向けると、彼女はウンウンとアリサちゃんに同意するように頷いていた。

 

「もうっ、本当に二人とも酷いよ! あたし達は親友だよね! もっと、無条件にあたしのことを信頼して愛してよ!」

 

「あのね! 信頼はともかく、愛してよとか言うあんたは油断できないのよ!」

 

「……アリサちゃん、それはなのはちゃんの事は信頼はできるという意味かしら?」

 

アリサちゃんの言葉に、すずかちゃんが余計な事を問いかける。ショックを受けそうな返事をされそうだからそんな事を聞かないでよ!

 

だけど、問いかけられたアリサちゃんの方は、その意味がわからないというようなキョトンとした表情になった。

 

「なに言ってんのよ、すずか? なのはは親友なんだから当然、信頼してるわよ」

 

性的な意味では事案にしようかと悩むレベルだけどね。と続けるアリサちゃんの言葉が耳に入らないほど、あたしは感動していた。

 

前世では友人と呼べるのはミストだけだった。

 

今世では友人は複数いる。だけど、あたしの事を“親友”だと言ってくれたのアリサちゃんが初めてだ。

 

今までは、あたしが一方的に親友だと言ってたけど、過剰な期待はしていなかった。

 

でも、アリサちゃんの方もあたしの事を親友だと思ってくれていたなんて――嬉しいよお!!

 

「ちょっ!? 抱きついてこないでよ! 鬱陶しいわね!」

 

思わず抱きついたあたしを、アリサちゃんも口では拒絶するけど引き離そうとはしなかった。

 

やっぱり、ツンデレは最高だね!!

 

それから、呆れた顔のすずかちゃんに見守られながら、あたし達は思う存分に抱き合う。

 

クンカクンカ。

 

うんうん、年々、成長してアリサちゃんの香りも大人になってきてる。

 

将来が楽しみだね。あたしも頑張って“アレ”を生やす魔法を開発するからね。

 

えへへ、実は研究の目処は立っているんだよ。

 

言霊魔法を使って“アレ”を生やすことには成功したの!

 

後はちゃんと生殖機能があるかの検証だね。

 

実戦投入はアリサちゃんが大人になってからだから、時間的余裕は十分にある。これからのんびりと検証する予定だよ。

 

ちなみに“アレ”は、普段は生やしていないよ。

 

下手に生やしたままだと、こうやってクンカクンカしてる最中にメタモルフォーゼしちゃうかもだからね!

 

今はこうやって、女同士の友情を確かめ合う抱擁で満足できるんだよ。

 

クンカクンカ、クンカクンカ、クンカクンカ。

 

満足ーーーーーっ!!!!

 

「いい加減に離れてよ! 本当に限界だから! 後でまた抱きついていいから! 本当に離れて!!」

 

下半身をモジモジさせたアリサちゃんの切羽詰まった絶叫にあたしは渋々離れた。

 

離れた瞬間、アリサちゃんが地面にヘタリ込む。

 

「お、お願い、なのは……て、転送して…う、動いたら……」

 

蒼白になって、プルプル震えているアリサちゃん。

 

ヤバい。本気で限界みたいだね!

 

あたしは急いでアリサちゃんを万一の事態に備えて、アリサちゃんの屋敷のトイレに転送した。

 

「アリサちゃん、大丈夫かなあ? 心配だよ」

 

「間違いなく、なのはちゃんの責任って分かってる?」

 

すずかちゃんのツッコミは、いつものようにスルーした。

 

 

 

 

アリサちゃん達に格好良いところを見せようと銀行強盗退治に乗り出す予定だったけど、いつの間にか銀行強盗は連行されていた。

 

近くの道路に大破してスクラップになった車が転がっている。

 

「犯人の車よ。中学生ぐらいのお姉さんが手から電撃を放っていたわ」

 

「電撃……ライデイン。この世界の勇者かもしれないね」

 

あたしの言葉にすずかちゃんは素直に頷く。

 

「そうね、猛スピードで迫ってくる車に眉一つ動かさずに対峙できるなんて、もの凄い勇気だと思うわ」

 

そう呟くすずかちゃんの顔には尊敬の色が浮かんでいた。

 

ムカッ。

 

「あたしなら百億の宇宙戦艦とだって眉一つ動かさずに対峙できるよ!」

 

あたしは、つい張り合うようなことを言ってしまう。

 

すずかちゃんは、あたしの言葉に驚いたように顔を向けてきた。

 

まずい、少し不機嫌な顔になってるかもだよ。

 

ムニムニと自分の顔を解して笑顔を浮かべる。

 

あたしの突然の行動にすずかちゃんは先ほどのアリサちゃんみたいなキョトンとした表情になるが、次の瞬間には今まで見せてくれた事のない優しい笑顔になった。

 

「うふふ、私もなのはちゃんの親友だって、胸を張って言ってもいいのかしら?」

 

「もちろんだよ! すずかちゃんはあたしの親友だよ!!」

 

当然、あたしはすずかちゃんに抱きついた。

 

 

 

クンカクンカーーーーーッ!!!!

 

 

 

***

 

 

 

アリサちゃんから携帯に連絡が入ったから、転送で合流した。

 

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

 

合流を果たしたあたし達は三人とも無言だった。

 

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

 

えっと。

 

 

「……」

 

「……」

 

「なにか言いなさいよ」

 

 

アリサちゃんの服装が変わっていた。

 

 

「あっ、忘れていました! 今日はニャンコトレーナー達の寄り合いがあったんです! 私はここで失礼しますね!」

 

あたしが反応する間も無く、すずかちゃんはダッシュで去っていった。

 

 

「……」

 

「あんたもなんか言いなさいよ」

 

 

いつも表情豊かなアリサちゃんが無表情だった。

 

 

「……」

 

「親友のあたしに何も言えないの?」

 

 

ごくり。

 

 

「あ、あの…」

 

「なによ」

 

 

あたしは覚悟を決めて、恐らくは傷ついているだろう親友を慰める言葉を口にする。

 

 

「あたしは、アリサちゃんのオムツなら喜んで替えるよ!」

 

「まずは謝れーーーーーっ!!!!」

 

 

アリサちゃんの蹴りが飛んできた。

 

 

***

 

 

「うう……この歳であんな粗相をするなんて」

 

「大丈夫、失敗は誰にだってあるんだから。大事なのはその失敗を繰り返さない事なんだよ」

 

「あんたが拘束したせいでしょうが!!」

 

あたしの愛のこもったハグを拘束だなんて言わないでほしいよ。

 

「はぁ、もういいわ。自宅のトイレだったから被害は最小限に抑えられたもの。さっきの蹴りでチャラにしてあげる」

 

えへへ、やっぱりアリサちゃんは優しいね。ところで、場所がここだったら許してくれなかった?

 

「ここって、この場所であたしが粗相をしてたらって意味かしら?」

 

うん、そうだよ。

 

「その場合、あんたを殺して、あたしも死んでたわ」

 

そこまでなの!?

 

「当たり前でしょうが!! ちょっとは自分の身に置き換えて考えて見なさいよ!!」

 

自分の身に置き換える?

 

「そうよ、あんたは平気なの? その、こんなところでアレをしちゃっても」

 

アリサちゃんの頰が少し赤くなっている。

 

「あたしは、アリサちゃんがどうしてもしたいならいいよ」

 

「へっ?」

 

アリサちゃんの目がまん丸になった。

 

本当はあたしも恥ずかしいけど、アリサちゃんの為なら我慢できる。

 

「アリサちゃんがここでオムツプレイがしたいなら、あたしは喜んでアリサちゃんのオムツを替えるよ。でも、アリサちゃんのそんな姿を他の人に見せるのは妬けちゃうから……やっぱり止めようよ」

 

「あたしを変態みたいに言うな!!」

 

ゼエゼエと荒い息をつくアリサちゃん。

 

大丈夫かな?

 

「落ち着いて、アリサちゃん。あたしはアリサちゃんがオムツプレイ好きの変態だったとしても最後まで味方だから安心して」

 

「いや、もういいわ。これ以上は勘弁してよ。今日のあたしにはもうライフが残っていないのよ。あんたとの漫才に付き合う元気はないの」

 

アリサちゃんは疲れた顔でそう言うと、ヨロヨロと歩いていく。

 

「悪いけど今日はもう帰るわ。立ち直れたらまた連絡するから……あんたからは連絡してこないで」

 

振り向いてくれないアリサちゃんに慌てて声をかける。

 

「アリサちゃん、ふらついているよ! 転送するから待って!」

 

「転送は要らないわ! い、今はまだ屋敷のメイドと顔を合わせたくないのよ」

 

えーと、事情はなんとなく分かっちゃったけど、それはメイドの仕事のうちだと思うから気にしなくてもいいんじゃ?

 

「他人事だと思って軽く言わないでよ! 苦笑されながら体を拭かれたあたしの気持ちがあんたに分かるって言うの!?」

 

いや、その、ごめんなさい。

 

分からないです。

 

 

「……やっぱりあと百回ぐらい蹴らせなさいよ」

 

 

あたしはその場から逃げ出した。

 

 

 

***

 

 

あたしは一人寂しく学園都市を散歩していた。

 

テクテクテク。てくてくてく。

 

あれ、いつの間にか隣にシスターの格好をした女の子が歩いている。

 

「あなたはシスターなの?」

 

「私はインデックスだよ?」

 

インデックス……?

 

あたしの問いによく分からない返事が返ってきた。

 

「インデックス……文房具じゃないよね。もしかしてあなたの名前なの?」

 

「もしかしなくても、私の名前なんだよ」

 

シスター……いや、インデックスは綺麗な瞳をあたしに向けていた。

 

「そっか、あたしはなのはって言うの、よろしくね!」

 

「うん! よろしくだよ、なのは!」

 

満面の笑みを見せるインデックスは、全身から光を出しているかのように輝いてみえた。

 

うん、この子は可愛いね!!

 

 

***

 

 

「すごく美味しいんだよ、なのは!」

 

「うん、それなら良かった。好きなだけお代わりをしてね」

 

「おおっ! なのはは太っ腹なんだね。それなら次はこっちのチーズインハンバーグってのを食べたいんだよ!」

 

インデックスがお腹が空いていると言うからファミレスに連れてきた。

 

見ていて気持ちいいぐらいによく食べる子だね。

 

今日はアリサちゃん達と夕食も食べるつもりだったからお小遣いを多めに持っていて良かったよ。

 

ドンドン積み重なっていくお皿を見ながら、あたしはそんな事を考えていた。

 

 

 

 

「記憶がない……?」

 

「正確には一年ぐらいの記憶しかないんだよ」

 

食事もひと段落して、インデックスとお喋りをしていると、彼女からそんな爆弾発言が飛び出した。

 

インデックスはここ一年程度の記憶しかなく、しかも正体不明の敵に追われ続けているそうだ。

 

「ご馳走してくれてありがとう、なのは。でもここでお別れだよ」

 

「インデックス……」

 

インデックスの敵は、彼女に味方する者も巻き込んで攻撃するらしい。だから彼女はここで別れを告げる。

 

だけど、このあたしが気に入った少女の危機を見逃すとでも思っているのかな?

 

だとしたらこの大魔王も甘く見られたものだね。

 

「なのは、ダメだよ。私に関わろうとしちゃダメ」

 

そんなあたしの心を見透かすようの、インデックスはクギを刺してくる。

 

そして、インデックスは寂しそうな微笑を浮かべながら、あたしに言葉を投げかける。

 

「それとも、私と一緒に地獄の底まで着いてきてくれる?」

 

きっとこれが、インデックスの……彼女の別離の言葉なのだろう。

 

世界のどこに逃げても追い続けてくる敵。

 

そんな明日もわからない闘争の日々へと飛び込める人間など、そうそういないだろう。

 

だからあたしが返す言葉も決まっていた。

 

あたしは満面の笑みと共に彼女に言い放つ。

 

「別にその地獄そのものを壊しちゃってもいいんだよね?」

 

「ふえっ?」

 

想定外の答えに呆けたように大きく口を開くインデックス。

 

その口の奥を見つめながらあたしは思った。

 

“記憶喪失の原因、見つけちゃった”

 

 

***

 

 

あたしはインデックスをホテルに連れ込んだ。

 

大事な事だからもう一度言おう。

 

あたしはインデックスをホテルに連れ込んだ。

 

にゃはは、別にあたしの初陣じゃないよ?

 

あたしの初陣の相手はアリサちゃんだからね。

 

単にインデックスに仕込まれている魔術刻印を消すために、人気のない場所が必要だっただけだよ。

 

「ここに横になればいいんだね」

 

「うん、後はあたしに任せてね」

 

「私はなのはを信じてるよ。でも、無理はしてほしくないんだよ」

 

「にゃはは、分かってるから大丈夫だよ。無理はしないから安心して眠っててね」

 

“ラリホー”

 

インデックスのシスター服は、高い魔法防御を備えているみたいだけど、このあたしの魔法を防げるほどではなかった。

 

あっさりと深い眠りにつくインデックス。

 

「ホテルのベッドに無防備に眠る可愛い女の子」

 

これは辛い戦いになりそうだね。

 

あたしは邪念を振りほどきながら、インデックスに仕込まれている魔術刻印の解析を開始した。

 

 

 

 

10分後

 

「魔術刻印の消去に成功なの!!」

 

我ながら長く辛い道のりだったよ。

 

インデックスってば、寝相が悪いんだもん。

 

はだけたシスター服の下から覗く素肌の誘惑は強力だった。

 

もしも、昼間にアリサちゃんの匂いをたっぷりと補給していなかったら、このあたしといえど勝てなかったかも知れない。

 

「本当に恐ろしい子!」

 

ベッドの上でクークー寝息を立てているインデックスの姿を見ないようにしながら、あたしは勝利の美酒に浸るのだった。

 

 

 

 

あたしはインデックスをホテルに残したまま、インデックスの服を調達しに出かけた。

 

インデックスのシスター服は高性能だけど、敵はそのシスター服を目印にして追いかけているみたいだからだ。

 

インデックスの敵を屠るのは簡単だろうけど、問題はどれだけの数がいるのか分からない事だろう。

 

延々と湧き出る敵をモグラ叩きのように潰していくのは、いかにも面倒くさい。

 

それでも敵が多少なりとも歯応えがあれば、日常のちょっとしたスパイスにでもなるだろうけど、インデックスから聞いた話だとただの雑魚達の集団でしかない。

 

「そんなの相手にしてらんないよね」

 

インデックスの服は自動的に世界中を転移し続けるように細工をしておけばいいだろう。

 

インデックス自身には隠蔽の効果のあるアイテムを渡すつもりだ。

 

「これで一件落着だね!」

 

「そうはいきません」

 

軽い足取りで歩いていたあたしの進路を塞ぐように剣を持った女性が現れた。

 

長身でスラリとした体型の美人さんだ。ポニーテールもよく似合っているけど、ジーンズの片方の裾を根元でバッサリと切断している。それにTシャツを態々ヘソ出しになるように結んである。

 

うん、間違いなく露出趣味のお姉さんだね!

 

「出てこなかったら見逃してあげるつもりだったよ?」

 

「ふふ……そうでしょうね。残念ながら、あなたに勝てる幻想すら抱けそうにありません」

 

魔力を“抑えていない”あたしの前に出て来た女性は、全身に冷や汗をかきながらも震えてはいなかった。

 

「覚悟は出来ているんだね」

 

あたしはその女性の殉教者のような瞳に興味を覚えた。

 

「私は彼女を守ると誓いました。その誓いを破るわけにはいきません」

 

「彼女を……守る?」

 

「あっ……………………リテイクをお願いしても宜しいでしょうか?」

 

うーんと、面白そうだからいいかな。

 

「こほん……覚悟は出来ているんだよね」

 

「……これが私の使命です。この命に代えても彼女の身柄は奪わせていただきます」

 

命に代えても…か。

 

そこまでの想いをインデックスに抱いているということは……つまり、目的はそういう事だよね。

 

「インデックスの純潔は貴女に渡さないの!!」

 

「何言ってんだお前は!? お前の脳味噌は腐って…………こほん、リテイクツーをお願いしても宜し『そこまでだ、神裂』何故こちらに来たのですか、ステイル」

 

面白いお姉さんと遊んでいたら、長身で赤毛の不良神父って感じの若い男が割り込んできた。

 

“メラ”

 

「どわぁああああっ!?」

 

轟音を発しながら燃え盛る炎が不良神父へと襲いかかる。

 

「クソッ、問答無用ってわけかよ!!」

 

「ステイルッ!?」

 

「お姉さん、お話の続きは向こうでお茶でも飲みながらしよう?」

 

不良神父は懐から怪しい札を取り出すと早口で何かを口走る。呪文かな? 興味は湧かないけど。

 

その呪文と札が効果を現したのか、あたしのメラは進路をずらされてしまった。

 

「この俺が炎にやられるわけがないだろうがっ!!」

 

「ステイルッ!! 貴方のお尻が燃えていますよ!!」

 

「うわっちゃあ!? 神裂っ、助けてくれ!!」

 

「動かないで下さい!! 今、服ごと火を消し飛ばして差し上げます!!」

 

お姉さんは持っていた剣を振る。

 

不良神父の服が細切れになる。

 

あたしは携帯で電話をかける。

 

「もしもし警察ですか。裸の変態男がいます。場所は……」

 

「てめえっ!? くそっ、お、覚えてやがれ!!」

 

「待って下さいステイル!! せめてこれを!!」

 

「すまん、借りるぞ!!」

 

あたしの110番に逃げ出す変態男にお姉さんはスカーフのような布を投げ渡してあげる。

 

腰に布を巻いた変態男が逃げていく。

 

「悪が栄えることは決してないの!」

 

あたしの正義が勝ったのだ!

 

「ふふ、この余が勇者の真似事とはな。あの者が見たならなんと言うかな」

 

きっと驚愕のあまり顎が外れるだろうと、もう二度と会うことのない強敵()の姿を幻視した余は愉快な気持ちになった。

 

「いや、ちょっと待ってくれないか。うまく思考が回らない。結局、貴女は何がしたいんだ? ステイルもわざと見逃してくれたのだろう?」

 

頭を抱えたお姉さんがそんな事を言ってくる。

 

「じゃあ、お茶でも飲みながらお話をしようよ、お姉さん」

 

あたしは、露出趣味だけどエロかっこいいお姉さんに友好的に笑いかけた。

 

「ひぃっ!? い、一体何を企んでいるのですか!?」

 

……チャーミングなあたしの笑顔を見たお姉さんに何故か怯えられた。

 

どうしてかな?

 

 

***

 

 

「完全記憶能力のせいで、一年以上経つと脳が圧迫されて死んじゃうの?」

 

エロかっこいいお姉さんこと、神裂火織(かんざきかおり)にインデックスの事情を聞いた。

 

「そうです。ですから私達は彼女に嫌われてでも任務を遂行しなければならないのです。どうか、貴女にもご理解していただきたい」

 

うーん、そういう理由なんだね。

 

確かに死ぬよりかは記憶を失う方がマシかな。

 

でもね。

 

「それなら脳を圧迫している10万3000冊の魔道書の記憶を奪っちゃえばいいよね?」

 

「えっ!? いや、その、それは、魔道書の記憶を保持するのが彼女の大事な『禁書目録』の役割でして、そう簡単にその記憶を手放すわけにはいかないと思うわけで…」

 

火織はあたしの提案にそんな巫山戯た答えを返す。

 

「あんたにとって、インデックスの幸せよりも魔導書なんぞの方がよっぽど大事なんだね。その程度の想いなら捨てちゃえばいいんだよ。そしたら火織も無駄に苦しまなくて済むよ」

 

「巫山戯るな!! あんたに何が分かるって言うんだ!! 私達がどんな想いであの子の記憶を……」

 

火織は一瞬激昂するが、すぐにその瞳に涙が浮かぶ。

 

余はその涙を見ながら苦笑する。

 

「クク、笑わせてくれる」

 

「なんだと!?」

 

「貴様は何を悲劇ぶっている。貴様は友の心よりも魔導書を保存するなどいう下らない役割が大事なのだろう。ならば、喜んで友の心を奪うがいい。それが友の心を裏切った貴様の義務と責任だ。それを放棄するのなら貴様には任務という免罪符を口にする権利すらないわ」

 

「う、ぐぅ……わ、私は…どうすれば…」

 

火織は頭を抱えて悩みだす。

 

まったく、ウジウジと鬱陶しいなあ。火織がエロかっこいいお姉さんじゃなかったら、とっくに消しているよ?

 

「もうっ、仕方ないからあんたに判断情報を追加してあげるね」

 

「は、判断情報……?」

 

火織が顔をあげた。その表情には縋るような感情が浮かんでいた。

 

「黙って聞け」

 

「は、はい!」

 

「あたし思うんだけど、10万3000冊の魔道書の保存に人間の脳を使うのって効率悪いよね。だって、人間なんていつ死ぬか分からないんだよ? 病気や事故で明日どころか10分後に死んだって不思議じゃないよ。そしたら10万3000冊の魔道書は無くなっちゃうの? もう二度と手に入らなくなっちゃうの?」

 

あたしの言葉に火織は目を見開くだけで答えは持ち合わせていないみたいだった。

 

「ところで、インデックスの脳に10万3000冊の魔道書を記憶させた方法はどうやったのかな? 実物を読んだのかな? それとも術式で焼き付けたのかな? どっちにしろ10万3000冊の魔道書の“原本”はインデックスの脳の“記憶”とは別にあるんだよね」

 

火織の顔色が、どんどん悪くなる。

 

「あたしの考えだとインデックスの『禁書目録』という役目は、“原本”の10万3000冊の魔道書を守るための目眩しだと思うよ。派手に動き回る人間って目眩しに丁度いいよね」

 

火織はもう突っ伏して顔を上げる元気も無くなった。

 

「それで、火織にとって“友の心”と“代わりのきく目眩し”のどっちが大事なの?」

 

顔を上げた火織の表情を見れば、答えは聞かなくても分かった。

 

「うん、良い顔になったね。火織」

 

「はい、ありがとうございました。お陰で全ての迷いが晴れました。上層部がそのような巫山戯た役割を彼女に押し付けるのなら、私はもう上層部になど従いません」

 

「ううん、そこは従おうよ。その方が後々楽だよ」

 

「へっ? それはどういう意味なのでしょうか?」

 

「にゃはは、インデックスの役割が目眩しならそのインデックスの代わりを用意すれば面倒がなくて良いよね」

 

火織の話だと、今までにインデックスが記憶している魔導書を魔導書として使用した事はないそうだ。

 

あくまでも彼女の役割は魔導書を保存する『禁書目録』だからだ。

 

その時点で、彼女の真の役割は目眩しだと分かりそうなものだけど、エロかっこいいお姉さんの火織は脳筋っぽいから気付けないみたいだね。

 

火織のいう上層部を潰すのは簡単だけど、裏の世界は色々と勢力争いが繊細だからあまり搔きまわすと、すずかちゃんとこの“夜の一族”に迷惑をかける可能性がある。

 

それを回避するために、あたしが作った実体を持つ幻のインデックスに彼女のシスター服を着せて世界中を巡らせればいいよね。

 

そして年に一度、火織が記憶を消す儀式を行う振りをする。

 

もしも火織がインデックスの担当から外されたら、あたしが幻のインデックスを事故にでも見せかけて処分すればいい。

 

強力な防御魔法がかけられているシスター服は残して、肉体は跡形もなく焼き尽くされるような事故にすれば上層部に気付かれることはないだろう。

 

「それなら直ぐにでも事故に見せかけて彼女が亡くなった事にすればいいのでは?」

 

脳筋のエロかっこいいお姉さんの火織が単純な意見を言う。

 

「ダメだよ。事故があれば調査のために魔術師達が派遣されるよね?」

 

「それはまあ、そうでしょうね。ですが、貴女の力なら偽りの事故だと見破られる心配は要らないのでは?」

 

「そういう心配はしてないよ」

 

「では、どのような心配事があるのでしょうか?」

 

「遠くにいれば気にならないけど、近くをウロチョロされたらつい潰したくなるかも、だよね」

 

堪え性のない発言をしたあたしは照れ隠しに「にゃはは〜♪」と明るく笑う。

 

だけど、火織はそんなあたしとは対照的に乾いた笑い声をあげていた。

 

 

***

 

 

火織と別れた後、事件は起こった。

 

インデックスの服を調達したあと、ホテルに戻るとインデックスが居なくなっていたのだ。

 

「あたしのインデックスがっ!?」

 

あたしが直ぐにインデックスを探しだして駆けつけた時には手遅れだった。

 

あたしの眼前には無情な光景が広がっていた。

 

「とうまに全てを見られちゃったから、とうまに責任を取ってもらうんだよ!」

 

「信じてくれ! 俺は無実なんだ!!」

 

「とうまは酷いんだよ! 私を無理矢理裸にしたくせに!」

 

「違う! いや違わないけど、たぶんあんたが考えているようなシチュエーションじゃないぞ!!」

 

「とうまは酷いんだよ! 裸になった私を押し倒したくせに!」

 

「だから違う! いや、これも違わないけど、絶対にあんたが想像している状況とはかけ離れているからな!!」

 

「とうまは酷いんだよ! 押し倒した私のおっぱいも触ったくせに!」

 

「だから違う! いやいや、確かに触ったけど、完全無欠にあんたが妄想しているラブラブな状況とは別物だからな!!」

 

「とうまは、とうまは……わ、私のこと…きらいなのかな…?」

 

「っ!? ち、違う!! ああ、もうっ、どういう状況なんだよっ、チクショウ!! ああ、そうだよ!! 会ったばかりだけど、俺はお前のことが……い、インデックスの事が大好きだよ!!」

 

「とうま!! 私も、私も、とうまが大好きなんだよ!!」

 

二人は互いの愛情を確かめ合うかのように強く激しく……そして、愛おしそうに抱きしめあった。

 

 

 

そして、あたしは――

 

 

 

――砂糖を吐いた。

 

 

 

げろげろ。

 

 

 

***

 

 

「アリサちゃん、聞いてよーーーっ!!」

 

あたしは傷心を慰めてもらうべくアリサちゃんのもとに転移した。

 

「あんたから連絡してくんなって言ったでしょうが!!」

 

「だから連絡じゃなくて、直接来たんだよ!!」

 

「こ、こいつは屁理屈ばっかり言うわね」

 

「そんな事より話を聞いてよ!!」

 

拳を握りしめてプルプルと震えてるアリサちゃんを宥めながらあたしの話を聞いてもらう。

 

 

「ふーん、友達になった女の子に両思いの彼氏が出来たんなら良い話じゃない。何が問題なの?」

 

「ええっ!? そうなの!?」

 

「別に相手の男は悪い男じゃないのよね? それなら友達として祝福してあげなさいよ」

 

「でもでもっ、あたしが面倒みてあげようと思っていたのに、いきなり二人で同棲するっていうんだよ!!」

 

「それって、生活費はどうするのよ?」

 

「……相手の男がバイトを増やすって言ってた」

 

「へえ、甲斐性のある男なのね。ふふ、いいじゃない、若い頃の苦労は男を育てるって言うからね」

 

「うう、でもでもっ、インデックスも絶対に苦労するよ!!」

 

「あんたの友達は苦労したくないって言ってるわけ?」

 

「…………相手の男を支えるとか何とか言ってた」

 

「うふふ、その子もいい女じゃない。好きな男と苦労を分かち合うなんて素敵だわ。一体何が問題なのよ? 本当に大変なときはあんたも助けてあげるつもりなんでしょう?」

 

「もちろんだよ!! あたしは自分が気に入った相手を見捨てたりしないもん!!」

 

「あはは、それなら心配事なんかないじゃない。新しい友達を取られたなんてボヤかずに、あんたも友達なら笑って祝福してあげなさいよ」

 

そう言って、優しく笑うアリサちゃんにあたしは、「うん」と答える以外の選択肢はなかった。

 

グスン。

 

 

「それじゃあ、インデックスにお祝いを言ってくる。ついでに魔導書の記憶も消してくるよ」

 

「魔導書の記憶? 何よそれ、ちょっと詳しく聞かせなさいよ」

 

あたしはインデックスの事情をアリサちゃんに説明した。

 

「それであたしはインデックスを助けるために10万3000冊の魔道書の記憶を消すことにしたんだよ」

 

「あんたって妙なところで馬鹿なのね」

 

「ふえ?」

 

アリサちゃんは呆れた顔をしながらも人間の脳の構造について説明してくれた。

詳しくは省くけど、人間の脳は10万3000冊の魔道書を丸暗記していても死ぬことはないそうだ。

 

「にゃはは、なるほどね。アリサちゃんって頭がいいね」

 

「あんたの方が頭はいいわよ。単にあんたが興味のない分野だったんでしょう。でも個人的に興味はなくても最低限の知識ぐらいは集めておきなさい。じゃないと今回みたいに間違った判断をしちゃうわよ」

 

「うん、そうだね。今回は反省だよ」

 

うんうん、流石はアリサちゃんだね。将来の伴侶のあたしの事を想って、敢えて耳に痛いことも言ってくれるよ。

 

「大好きだよ、アリサちゃん!」

 

「だから抱きつくなっての!!」

 

 

***

 

 

インデックスの10万3000冊の魔道書の記憶はそのままにする事にした。

 

記憶に問題がないのなら、将来インデックスの役に立つかもだからね。

 

まあ、この話は火織には内緒にしている。だって、自分の間違いを説明するのは嫌だもん。

 

あたしには元大魔王としてもプライドがあるから、失敗話を下手な相手には出来ないもの。

 

これがアリサちゃんやすずかちゃんのような親友相手なら失敗話も笑って話せるけどね。

 

とにかくアリサちゃんのお陰で、インデックスには笑って祝福を伝えることが出来た。

 

ついでに10万3000冊の魔道書の記憶をコピーさせてもらったから、魔法研究の資料にさせてもらうつもりだ。

 

その記憶の対価として、インデックスがツンツン頭の部屋に住むことを関係者に暗示をかけて納得させてあげた。

 

もちろん、対価とは関係なしにインデックスに危機が迫れば無条件で力を貸すよ。だって、インデックスは友達だもん。

 

インデックスの身に危険が迫ったなら、あたしが相手になるよ。

 

まあ、今は少し気になったこれだけをしておこう。

 

あたしは天を仰ぎ、声を紡ぐ。

 

 

【余を覗き見る愚か者よ】

 

 

***

 

 

――同時刻某所。

 

 

【余を覗き見る愚か者よ】

 

『なっ!? この思念は!!』

 

【一度のみ忠告をしよう】

 

この瞬間、私は死を迎えた。

 

そして、再び生を得た。

 

『…………今のは現実なのか?』

 

【忠告は一度のみ。二度目は破滅を与える】

 

『…………』

 

私は彼の者の監視を止めた。

 

 

***

 

 

「にゃはは、ついでに1000万個ほど潰しておいたの」

 

あたしは覗き見をしていた変態に警告をした。

 

まったく、この世界は変態が多くて困っちゃうよ。

 

そういえば、インデックスの相手の男も妙なモノを右手に宿していたよね。もしかしたらあいつも変態かも?

 

うう、やっぱりインデックスが心配だよ。

 

でも、ちょっとぐらいの障害は人生のいいスパイスになるもんね。

 

うん、本気でインデックスが困るまでは見守るスタンスでいこう!

 

じゃないと、またアリサちゃんに窘められちゃうもんね!

 

よしっ、今からアリサちゃんに会いに行こう!!

 

 

 

 

アリサちゃーーーーん!!!!

 

クンカクンカーーーーっ!!!!

 

「だから抱きつくなっての!!!!」

 

 

 

 

 

 




我ながら訳わからんほど気ままに書きました。少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
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