プロローグ、ぱーとつーだよ。
「第九十七管理外世界」 にて巻き起こった一連の騒動は、彼の管理外世界を無期限の《不可侵監視対象世界》に指定とされることにより、ひとまずの幕引きを図られる事となった。
この決定に際して、一部より反対の声が上がったが、時空管理局の上層部は強権を発してその声を封じ込めた。
その行為は多くの反発を招いたが、「第九十七管理外世界」に生息する前代未聞の危険生物の脅威の前には些細な事柄として上層部は黙殺した。
その危険生物による被害は、非公開資料によると時空管理局が誇る時空航行部隊一個師団にまで及んだと噂されている。
***
階段を駆け上がる。
風が頬を撫でていった。
僅かに潮の香りが混じったそれは、目的の場所が近いことを教えてくれた。
――――トンッ。
軽い足音を立てて、あたしは目的の場所に到着する。
朝日が輝いていた。
愛する人々が住まう街を優しい光が包んでいる。
そんな当たり前の光景が凄く尊いものに思えた。
ふと、空を見上げる。
そこには透き通るような蒼い空が、新たな一日を祝福するように広がっていた。
「うん、今日も頑張ろう!」
“ギシィッ”
空間が軋むような音を立てて、あたしの周囲に複数の魔力球が具現化する。
光り輝く魔力球は、互いにぶつかる事もなく高速で身体の周囲を不規則に飛び回る。
魔力球の数を増やしながら身体を浮遊させていく。そして、同時に魔力球の速度を上げていく。
魔力球は際限なく増えていきながら、速度も上限なく上がっていく。
増え続ける魔力球は、あたしの周囲を結界のように隙間なく覆い尽くす。
傍目には普通の結界のように見えるだろうけど、実際には高速で不規則な軌道を飛び回る魔力球だ。
もしも触れれば、激流に手を差し入れたかのように弾き飛ばされるか、運が悪ければ砕け散るだろう。
もっとも、この結界もどきに突撃するようなバカはいないだろうけど。
魔力球が十重二十重と重なり、徐々に厚みに増していく。
魔力球の数が一億を超え、その速度が音速に達した頃に初めて僅かな負担を感じ始めた。
こんな基礎的な訓練でも際限なく負担を増やせるからこそ、あたしは毎朝の日課にしていた。
あたしは訓練を続ける。
結界もどきの厚さが一キロを超え、速度が光速に達する。すでに魔力球の数は数えていない。
ここで一旦、魔力球の数と速度を増すのを止める。身体の上昇は大気圏最上部で止まっている。
あたしの意識は魔力操作に集中しているけど、まだまだ余裕があった。
更なる負荷をかける為に魔力球に新たな魔力を込めていく。
魔力球の魔力密度が増していき、同時に輝きが強まっていく。
魔力球の一つ一つに限界まで魔力を込め圧縮していく。一つの魔力球に対してメラゾーマ三発分に値する魔力量で限界に達する。
今や本気で訓練に集中しているが、これが全力かと問われれば“否”と答えるしかない。
ニヤリと唇が歪むのが分かる。
ここからが本番だ。
光速で移動させている魔力球に回転を与える。つまり地球のように公転しながら自転をしている状態とする。もっとも魔力球は公転のように規則正しい軌道ではなく不規則な軌道で動かしているけどね。
やがて、自転の速さも光速に達した。
あたしの額から一筋の汗が流れる。
膨大な魔力の制御と操作を行いながら、両手を腰だめに構える。
イメージするのは、あたしが“あたし”ではなく、“余”だった頃の
膨大な竜闘気を一気に放出する必殺技。
今にして思えば、あの技は無尽蔵ともいえる魔力量を誇る余にこそ相応しいだろう。
たが余は竜闘気の代わりに魔力を放つだけの単純な真似はせぬ。
限界まで魔力を込め圧縮した魔力球には、自転による回転エネルギーと複雑な公転による運動エネルギーを与えていた。
余の魔力に、回転と運動エネルギーを加えた破壊力は竜闘気をも上回る。
余は暗黒の宇宙に視線を向けた。
全身から闘気が溢れ出す。余は構えた両手を宇宙に向けて気合いを込めて突き出す。
「
余が放った魔力砲は、時空振動すら起こしながら宇宙空間を切り裂いていく。
かつての
「フハハハハハッ!! 今の余なら貴様如きに負けることなどあり得ぬぞ!!」
余は勝ち誇る。もう二度と会う事は叶わぬ
――そして、“あたし”はにっこりと微笑む。
「にゃはは、ちなみに構えに意味はないの…☆」
あたしのは魔法だから、構えはただの演出なんだよ。
投稿は不定期になります。気長にお付き合いをお願いします。