リリカルの大冒険   作:銀の鈴

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重要な部分以外はどんどん削って、さくさくと進めていくスタイルです。


第1話「車椅子の少女」

「おはよう、なのは」

 

「おはよう、なのはちゃん」

 

「おはよう、アリサちゃん、すずかちゃん」

 

朝のバス停で、親友達と待ち合わせをして一緒に登校をする。

 

一年前のあたしには、想像も出来なかった。

 

きっとあの頃のあたしは高嶺の花すぎたのだろう。男子達はもとより、女子達からも遠巻きにされていた。

 

例えるなら、雑草が郡なす草原に咲く一輪の薔薇の花だった。

 

全校生徒の誰もが憧れ、恋い焦がれる存在に話しかけれる蛮勇の持ち主はいなかった。

 

そんな憧憬の想いを向けられる本人としては、もっと気軽に接して欲しいと思うんだけどね。

 

だけど、そんな孤高な日々も永遠には続かない。

 

運命と出逢ったのだ。

 

 

――その出逢いは偶然だった。

 

 

だけど偶然は必然となり、いつしかあたし達三人を共に生涯を歩む運命の三人へと導いた。

 

笑顔をみせる親友達にあたしは笑いかえす。

 

凛と咲く、一輪の薔薇の花に――

 

 

――共に咲き誇る仲間ができた。

 

 

 

 

通学バスが到着した。

 

車内はうんざりするほどに混んでいたけど、あたし達が乗り込むと他の生徒達は通路を開けてくれる。

 

えへへ、こういう時は人気者は得だよね。

 

あたしの左右の腕を、まるで拘束するかの様に抱きかかえている両脇の親友達と共に悠々と最後尾のシートへと向かう。

 

満員の車内だけど、最後尾のシートだけはいつも空いている。

 

そこはあたし達の指定席だからだ。

 

これも人気者の特権だろう。あたしが何も言わなくても、周りの信望者達が色々と気遣ってくれるのだ。

 

あたしは両腕に温もりを感じながら機嫌よく歩いていく。

 

――ピタリ。

 

歩みが止まる。

 

ヴァージンロードを進むが如く、厳かに進んでいた歩みを止められた。

 

その元凶に目を向ける。

 

そこには、耳にはヘッドホンをはめ、顔を手元のスマホに向けている小僧が立っていた。

 

あたし達の進路上に立ち塞がった愚かな小僧。

 

その小僧は、周囲の有象無象共の――

 

「早くどけよ!」

「お前、死にたいのかよ!」

「もう遅いよ! 早く離れよう!」

「こ、殺されるぞ!」

「待って! 置いて行かないで!」

 

――などと言った助言にも耳を貸さずに、一心不乱に手元のスマホを見つめていた。

 

その狂気をも感じさせる執着の様子に、あたしの右腕を更に抑えつけるように抱きしめる力を強めたアリサちゃん。

 

可哀想に、きっと怖がっているんだね。

 

あたしは怖がるアリサちゃんを守るために、眼前に立ち塞がる狂気を孕んだ愚かな小僧に立ち向かう。

 

周囲の有象無象共は、我関せずといったていで無関係を装い、とてもじゃないけど当てにできそうにもない。

 

今、アリサちゃんを守れるのはあたししかいないんだ! その想いがあたしの背中を押す。

 

「そこをどいてよ」

 

あたしが声をかけても小僧はこちらを見向きもしない。

 

こちらと話をする気などまるでないのだろう。

 

無視をされたあたしは思わず殺気が漏れそうになる。

 

「ひぃ!? た、助けてくれ!!」

「ヤダヤダヤダッ!! ここから出してえっ!!」

「まだ死にたくねえよお!!」

「もうヤダッ!! この子どうにかしてよ!!」

「誰か助けてよお!!」

 

――少し、漏れたみたい。

 

騒がしくなった車内の騒動を速やかに納めるためにも、あたしはこの場から小僧を排除すべく動き……あれ、動けない?

 

右腕を見る。

 

アリサちゃんがプルプルと震えながらあたしの右腕を抱き寄せている。そのか弱い力にますます保護欲が刺激される。

 

でも、動けなかった原因とは関係なかった。

 

はて? どうして動きが止まったのだろう。

 

なんとなく左腕を見る。

 

すずかちゃんが真っ赤な顔で、アリサちゃんの数倍の力で左腕の関節を極めていた。

 

そっか、左腕の関節を極められていたから動けなかったんだ。

 

ん?

 

あれ?

 

どうして、すずかちゃんは関節を極めてるのかな?

 

「待って、なのはちゃん!」

 

ハテナマークなあたしだったけど、すずかちゃんの必死な叫びに納得する。

 

すずかちゃんもアリサちゃんと同じように、この人の話を聞かない傍若無人で狂気を孕んだ愚かな小僧に怯えていたんだと。

 

あたしはなんてバカなんだろう。

 

たとえ腹黒いすずかちゃんといえど、彼女も女の子なんだから怯えても不思議じゃなかった。

 

あたしはすずかちゃんを安心させるべく言葉をかける。

 

「安心して、すぐに始末するからね」

 

騒がしかった車内が水を打ったかのように静かになった。

 

ゴクリと、誰かの喉がなる音がやけにハッキリと聞こえた。

 

すずかちゃんがあたしの関節を極めたまま必死に叫ぶ。

 

「なのはちゃん! あの子はもう気を失ってるから!」

 

すずかちゃんの言葉に小僧に目を向ける。

 

そこには、立ったまま白目を剥いて気絶している小僧がいた。

 

「あんたどんだけ馬鹿力なのよ! さっさと力を抜きなさいよ!」

 

アリサちゃんが悲鳴めいた叫び声をあげた。

 

すずかちゃんの瞳が真紅に輝きだす。夜の一族としての力を発現させながらあたしの関節を極めているようだ。

 

そんなあたし達の様子を周囲の有象無象共は息を殺して見つめている。

 

なるほど、これはアレだね。

 

美少女三人がキャッキャウフフと戯れているのを微笑ましく見つめているというシチュエーションなわけだ。

 

「にゃはは、あまり注目を浴びたら照れちゃうよ」

 

あたしは照れ隠しに笑いながら、最後尾の指定席に向かった。

 

もちろん気絶した小僧の横を通り過ぎるときには魔法(若禿の呪い)をこっそりとかけておく。

 

アリサちゃんとすずかちゃんを怯えさせたお仕置きは必要だろう。

 

シートに腰を下ろしたあたしはひとまず胸を撫で下ろす。

 

今朝も親友達を守り抜くことに成功した。

 

あたしの左右の二人は、シートに座りながらもあたしの両腕をいつものように――まるで拘束するかのような熱烈さで組んでいる。

 

組まれた腕からは二人の体温と共に彼女達の愛情が伝わってくる。

 

だけど忘れてはならない。彼女達がまるで幼子のようなあからさまな愛情表現をするのには理由があることを。

 

彼女達は超絶美少女のあたしを超えるほどではないけれど、あたしに並ぼうかといえる程度の美少女達だ。

 

男共だけではなく、女共も彼女達を放ってはおかない。

 

その美貌を狙う野獣共に日夜脅かされている二人は無意識に愛するあたしの庇護を求めている。

 

そして幸いなことにあたしには力があった。

 

かつては神をも超えると称された力。その全ての力を取り戻したとはまだまだ言えないけど、少なくとも親友達を守り通すだけの力はあると自負している。

 

愛する親友達。

 

そして、あたしを愛してくれる親友達。

 

その関係に未だに気恥ずかしさを感じるが、それは決して悪いものではない。

 

だってこの想いは、彼女達に仇なす邪悪な存在を悉く殲滅し尽くす決意をする程度には強いのだから。

 

ふと、視線を感じて前方に目を向ける。

 

一人の野獣のごとき男が此方の様子を伺っていた。

 

どうやらまた親友達を狙う輩が現れたようだ。

 

 

「おいっ、あの方達を見るんじゃねえよ!」

「でもよ、けっこう可愛いよな、あいつら」

「か、可愛いって……お前にはあの方の殺気が分からないのか!?」

「殺気ってなんだよ? 他の奴らもそんな事言ってるよな」

「お前……鈍すぎるよ。絶対に早死にするよ」

「はあ? なんだよそれ?」

「ひぃっ!? あの方に気付かれてる!! お、俺は関係ないからな!! もう俺には近付くなよ!!」

「おいっ、どうして離れるんだよ!」

 

 

薄汚い野獣は欲望に濁った目で親友達を舐め回すように視姦している。

 

もう我慢が出来なかった。いや、我慢をすべきではない。あたしの親友達を穢すものを存在させてはいけないのだ。

 

「あのクソ野郎を始末してくるね」

 

あたしは席を立とうと腰を上げかける。

 

「とおっ!」

 

アリサちゃんが突然、あたしの膝にダイブしてきた。

 

浮き上がっていた腰が再びシートに沈む。

 

「たあっ!」

 

驚くあたしをよそに、すずかちゃんまでアリサちゃんに覆い被さるようにダイブしてきた。

 

全身で感じる親友達の愛しい重さと温もり。

 

そしてその至福の匂いに包まれて、あたしは酩酊感にも似た幸せな気持ちになる。

 

 

「今日も良い日になりそうなの!」

 

 

あたしの新たな人生は愛に満ち溢れている。

 

 

 

 

「ふう、どうして通学バスに乗るだけでこんなに苦労しなきゃいけないのよ」

 

「でもよかったね、アリサちゃん。今朝は誰も被害にあってないよ。気絶だけならノーカンだよね」

 

「気絶がノーカンってあんた……もうっ、普通は被害がないのが当たり前なのよ! どうして通行の邪魔だとか、目が合ったとかで毎朝乱闘になるのよ!! あんたはチンピラかって言いたいわ!!」

 

「まあまあ、なのはちゃんも悪気がないんだよ。あれでも私達を守っているつもりだしね」

 

「……すずか、あんた最近あいつに甘いんじゃない?」

 

「そうでもないよ。でも以前よりかはなのはちゃんの事を身近に感じているかもね」

 

「あいつを身近に!? あんたどうしたのよ!!」

 

「え? 別にどうもしないよ。ただ最近はなのはちゃんのやんちゃぶりも可愛いなって、思えるようになっただけだよ」

 

「うーん、あんたの感性がよく分かんないわね。何もしかして、あいつから貰った裸マント(マジックアイテム)が気に入ったとかなの?」

 

「その(黒歴史)には触れないで!!」

 

「ご、ごめん。あたしが悪かったわ。でも、あんたのあの姿を見た奴は全員、なのはが記憶を奪ったんだからそんなに気にしなくても」

 

「アリサちゃんはいいよね!! 大太刀振り回して、炎弾を撒き散らして格好良かったもんね!!」

 

「いや、その、本当にごめん。この話題はやめるね」

 

「……永遠に封印してね」

 

 

***

 

 

市立図書館で時々見かける車椅子の少女がいる。

 

高い場所に置かれている本を取ろうと、一生懸命に手を伸ばしている姿が健気に見える美少女だ。

 

あたしは影ながらそんな少女を応援(暇な時には、うんしょうんしょと頑張っている少女を物陰からジュースを飲みつつ心の中で声援を送って見物してた)していたけど、最近気付いた事があった。

 

どうも彼女には魔力があるみたいなのだ。

 

あたしが気付くのに遅れたのにはもちろん理由がある。

 

彼女の僅かばかりの魔力が、何かに吸い取られていたからだ。

 

そのせいで元々が小さな魔力が更に小さくなり、あたしの目から逃れていたわけだ。

 

「なんだか気に喰わないの」

 

あたしが見守っていた少女に隠し事をされていた気がして気分が悪い。

 

あたしは少女の身辺調査をする事にした。

 

 

 

「にゃはは、今日はアリサちゃんとすずかちゃんが忙しくて遊んでくれないから、丁度いい暇つぶしになりそうだね!」

 

 

 

 

〜次回に続く〜

 

 




(大魔王様にとって)重要な部分以外は(適当に)どんどん削って、(アリサちゃんやすずかちゃん達との大人への階段を)さくさくと進めていく(大魔王)スタイルです。(なんてね♪)
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