リリカルの大冒険   作:銀の鈴

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日常編(?)は終わりました。


8話「未知との遭遇」

「これが母なる星……地球」

 

大気圏を越えた(そら)から見つめた地球は、青く澄み渡り美しかった。

 

それは今朝のことだった。あたしはふと思いつき、トベルーラで宇宙まで行けるかを試したところ、無事に重力の井戸からの脱出に成功した。

 

もちろん、空気の層を纏っているから息が出来なくなるなんて間抜けな真似にも陥っていない。リニスに注意されていなくても自分で気付いていたわ。

 

目の前の地球に手を伸ばすと、手に掴めそうな錯覚に襲われる。

 

あたしは幻想的な風景にしばし時を忘れた。

 

 

「……さて、そろそろ帰ろうかな」

 

今日は美しい地球の姿を堪能できた。やはりテレビの画像と比べれると、生は迫力が違う。

 

なにか越しよりも、やはり生が一番だね。

 

「帰りはルーラで一気に跳ぼうかな?」

 

あたしが迷っていると、ほんの僅かな時空の歪みが近くで生じるのを感じた。

 

「今のは誰かが転移をした?」

 

伝わってきた感覚は空間転移のものだ。

ルーラとは少し波動が違うが、間違いないだろう。

 

転移先はおそらく日本だ。注意を払っていなかったから確信はないけどね。

 

でも時空の歪みがまだ残っているから、転移元は分かる。

 

「ククク、この世界にも転移が可能な存在がいたのね」

 

魔法が発達していない世界だと思っていたけど、あたしが知らないだけなのかしら?

 

「そういえば、身の回りの狭い範囲しか調査していなかったわね」

 

前世では野望に燃えて、世界中を巻き込んだ戦乱を起こしたけど、今世では個人的な幸せだけを求めるつもりだから世界規模の調査は行っていない。

 

「でも用心のために調べておいた方がいいわね」

 

もう戦争をする気などないけど、世界の戦力把握はしておいて損はないと思う。

 

突然、何かの拍子で巻き込まれても面倒だしね。

 

とりあえず、あたしは転移元へと調査に向かった。

 

 

 

 

異空間に隠されていたそこは遺跡というか、庭園というか、不思議な構造ではあったけど、明らかに地球の技術レベルを超えているように思えた。

 

「もしかして、宇宙人の前線基地だったりするのかな?」

 

昨日テレビで見た特番でも、地球には既に宇宙人が住んでいるとやっていたもんね。

 

もし宇宙人が地球を狙っているのなら、そのような輩は排除せねばならないだろう。

 

大魔王であるあたしが、地球を守る為に戦うなど笑い話にもならないけど、あたしの地球を侵略など許せない。

 

「少し情報収集をしておこう」

 

あたしは慎重を期するために呪文を唱える。

 

“トヘロス”(敵避け)

 

“トラマナ”(罠無効)

 

“レムオル”(透明化)

 

“フローミ”(迷宮認識)

 

“レミラーマ”(財宝探索)

 

「ふふ、勇者みたいだね」

 

他人の住居に押し入って、価値のあるものを強奪する。

今思えば、勇者なんて押し込み強盗と変わらないよね。

 

とりあえずレミラーマ(財宝探索)の反応がある場所に向かうとしよう!

 

 

 

 

「ふふん、魔法はちゃんと効くみたいね。」

 

宇宙人の前線基地と思われる場所を探索しているあたしは、障害もなく内部に侵入する事に成功した。

 

基地の内部は、近未来的な雰囲気を感じさせるものだ。

 

やはり、ここは宇宙人の前線基地で間違いないだろう。

 

「問題は宇宙人の目的ね」

 

ただの監視なら大目にみよう。科学の発達した宇宙人が、進化途中の人類を観察しているだけなら理解も出来るからね。

 

だけど、侵略が目的ならこの大魔王が叩き潰してやる。

 

あたし自らが征服する気はもうないけど、この星はここに住まう者達の物だ。

宇宙人ごときにくれてやるつもりはない。

 

「とは言っても、敵の情報は必要だよね」

 

かつての世界では神をも凌ぐと謳われたあたしだけど、今のあたしはかつてほどの力は出せない。

魔力自体は衰えてないけど、魔族だった頃の強靭な肉体と違い、脆弱な人間の肉体では全力の魔力行使に耐えられないからだ。

 

「もしも宇宙人の科学力が、今のあたしでは手に負えないレベルなら覚悟が必要ね」

 

あたしの体内にある魔力の源である“鬼眼”の存在を感じながら考える。

 

“鬼眼”の力を解放すれば、あたしは人間を超越できるだろう。

 

その代償として、人としての生は諦めなければならない。

 

「まあ、それは最終手段だよね」

 

あまり悲観的に考えるのは良くない。

 

かつて、絶望的な戦力差を跳ね返した勇者達のお気楽さを見習うべきだろう。

 

どんな状況でも笑顔を忘れてはいけない。

 

「にゃはは、意外と大した事のない宇宙人かもしれないもんね」

 

あたしはお気楽に笑い前に進んだ。

 

 

 

 

あたしの前にケースに閉じ込められた少女の姿があった。

 

「まさか、地球人をモルモットにしているの?」

 

ケースの中の少女は、既に息をしていなかった。

 

透明のケースに触れながら少女の顔を確認する。

 

「まだ5歳ぐらいかしら?」

 

まるで寝ているような幼い少女の髪は金色だった。

 

自然とあたしは、親友のアリサちゃんを思い出した。

 

「アリサちゃんと同じ、金髪なんだね」

 

宇宙人の目的が何かは分からないけど、この瞬間、あたしは宇宙人は敵だと認識した。

 

バキッ!!

 

透明ケースを砕き、あたしは少女を抱き上げる。

 

「大丈夫だよ。あたしが助けてあげるね」

 

鳴り響く警報の中、あたしは優しく腕の中の少女に語りかける。

 

その時、空間の歪みを感じた。

 

「何が起こっているのっ!?」

 

目の前に転移してきた黒衣の魔女。

 

恐らくはこいつは宇宙人なのだろう。

 

見た目は地球人と大差なく見えるが、内包する魔力が地球人とは桁外れに大きかった。もっとも、あたしと比べればドングリの背比べに過ぎない。

 

「お前がここの主人か?」

 

「貴方は何者なの!? どうやってここに侵入したの!?」

 

あたしの質問に答えずに、宇宙人は喚き散らす。

 

「いいえっ、そんな事はどうでもいいわ!! それよりその手を離しなさい!!」

 

宇宙人は、あたしよりもこの少女の方が大事らしい。実験体としてだろうか?

 

フフ、どんな実験をこの子に施していたのか知らないけど、そんなものはこのあたしが台無しにしてやろう。

 

“ザオリク”(死者蘇生)

 

この世界では奇跡の呪文をあたしは唱える。

 

頬に赤みが差し、穏やかな呼吸を始める少女。

 

“ベホマ”(最上級回復呪文)

 

そして、あたしは敢えてベホマ(最上級回復呪文)を唱える。

 

もしも、彼女の身体によからぬ細工が施されていたとしても、この大魔王であるあたしのベホマなら全てを無効に出来る。

 

「何が起こっているの…?」

 

呼吸を始めた少女に、目の前の宇宙人は現状を理解出来ないようだった。

 

この反応であたしは理解する。

 

少なくとも、魔法技術ではあたしは宇宙人を凌駕していると。

 

「宇宙人よ。貴様の目的が何かは知らないが、地球に手を出すつもりならこの大魔王が貴様を潰す」

 

“メラゾーマ”

 

具現化するフェニックス。

 

「なっ!? 何なのその馬鹿げた魔力は!?」

 

「これは警告だ。地球から立ち去れ、立ち去らなければこうなる」

 

フェニックスが天井に向かって羽ばたく。

 

謎の物質で出来た天井を蒸発させながら、フェニックスはその勢いを弱めることなく地上にまで到達して、そのまま飛び去っていった。

 

「う、うそ…何て威力なの」

 

よしよし、宇宙人は予想通り驚いているようだね。

 

「この娘は、大魔王が保護する。さっさと地球から去れ」

 

“ルーラ”

 

あたしは呪文を唱えた。

 

 

 

 

「それで、その子を連れてきた訳ですか」

 

「仕方ないよ。あのまま宇宙人の所に置いとけないよ」

 

「はぁ…今頃プレシアは怒り狂って…いえ、先ほどの説明の通りならプレシアだったら冷静に状況を理解して、アリシアの復活を喜んでいる可能性が高いですね」

 

家に帰ったらリニスが、あたしが抱いている少女を見て酷く驚いていた。

状況を説明しても、リニスはよく分からないことをブツブツと呟いている。

 

「まあ、この子を無事に保護できて良かったよ」

 

あたしの部屋のベッドで穏やかな寝息を立てる少女を見ながら、あたしは満足感に浸っていた。

 

 

 

 

 

 

 




次回、宇宙戦争編開幕なの!!(嘘です)


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