プロローグ
うぅぅ。なんか眩しい。ここどこだよ……。
……まぁ第一声はこれだろ?
「知らない天井だ!」
『威勢がいいな少年』
わぁお! 誰かいたんかい! 恥ずかしいわ!
『ま~そう言うな。ってかここ天井ないよ少年?』
そこにいたのはいかにも神様みたいな格好してるおじさんだった。
『誰がおじさんだ』
「すまない。そこそこイケメンでチャラそーな兄さんだった」
『まぁそれでいいよ少年。実は今回君を転生させなくちゃいけなくなったんだよ』
ん……? てんせいテンセイ転生っ!?
「って何だっけ?」
『あれだよあれ、仏教とかで出てくる人は何度も生まれ変わってるー的な?』
「あぁ、あれね? でも仏教って神様じゃなくて仏様じゃね?」
『神様なんて一言も言ってないよ? ……神様なんだけどね。まぁそれは置いといて。まず君が死んだって事を信じさせなきゃだね』
俺は呆けてしまった。チャラそうなお兄さんが宙に浮いてるとか、そのお兄さんが神様宣言したとか、この場所が地平線まで真っ白とか、心を読まれてるとか気になるところは色々あったけど、さすがに現実的に考えてそれはないと思ったからだ。
なぜなら……
『なぜなら今君は呼吸をし、考えを巡らせ、二本足で立ち、ここに存在しているからとか思ってるんじゃない? 心の中を見ただけだけど。そんなに疑うならVTRでも見る?』
そう言われた瞬間自分の頬がぴくぴく動くのを感じた。「君は死んだ!」なんて言われても普通なら何言ってるの? で済まされるかも知れないが、この空間はそれを許さない。神様がチャラそうなお兄さんということを除けば、多くの人達が想像するような神のいる空間に類似しているからだ。
『VTRーどうぞ』
「確かに死んでた。車にはねられて死んでた」
たしかに死んでいたが、おかげで意外と自分が冷静なことに気付けた。
ただ自分の中にある今の思いは、
「女の子が助かってよかった」
今見たVTRとやらは、引かれそうになった女の子を突き飛ばし自分が身代わりになるという光景だった。
『どうやら信じてくれたみたいだね』
「今の見て思い出したよ。自分が死んだこと。理解が遅くて悪かったな。今見てるものが全て催眠術的な何かとも考えられるから、まだ1割くらい疑ってるけど」
『そう。まぁ俺は気にしないよ。その助かってよかったって感情が、今回の転生と繋がるんだ』
どういうことなのだろうか。女の子が助かってよかったと思う感情と転生では全く持って無関係。そもそも何故神様は自分を転生させなければならないのかという疑問も思い浮かぶ。
『1割でも死んでることを疑っているなら仮に死んだということにしてあげよう』
「めんどくさ」
『お前がめんどくさいんだよ。で、俺の仕事ってのはその魂を何処に送ればいいかを決める仕事なのさ。その材料ってのが善と悪の度合いなんだよ』
「それ以外に何がある? 逆にそれしか思いつかないんだけど」
『色々あるよ。この判断の仕方は沢山ある中の一つだよ、一次試験みたいなもの。逆に言うと君はその一次試験すら雲行きが怪しい困ったやつってこと』
何も言い返せず沈黙を許してしまう。言い返せないのはまだ自分が何も知らないからなのだが。
『話続けるよ? その困った原因ってのが、君はほぼ善100%で構成されている魂ってことなんだよ』
開いた口が塞がらない。神様のその発言はいきなり背負い投げを食らったように意外な驚きだった。
『君は汚れたところがほとんど無い、善で埋め尽くされている魂さ』
「……仮にもしそうだとして、何の不都合があるんだよ?」
『いいかい、人間ってのは善と悪があってこその人間。どちらかしかないってのはもはや怪物だよ』
「善だけに染まっている俺は怪物だと?」
『そうだね、少なくとも君が生きたままだったら周りは少しずつ崩れていっていたと思うな』
自分は納得してしまっていた。自分は学校に全然馴染めておらず、周りとの価値観が180度と言ってもいいほど違っていた。
『でも君はまだ希望がある』
「だから転生……」
『そ、人生をやり直すんだよ。先に言っておくけど、これは提案じゃない。命令だ。絶対に行わなくてはならない。もしこの命令が飲めないのなら、魂を殺さなきゃならなくなる』
虎と同じ檻の中に入れられたような気持ちとはこういうことを言うのだろうか。下手をしなくても虎相手より酷いことになる。魂の殺害、それは本当の意味での消滅を意味しているのが本能的に理解できた。それだけ目の前にいる神様からは殺気が溢れているのだ。間違いなく脅しではない。
「……わかった、もう道はそれしかないんだな」
『悪いと思っているよ。でも今のうちに対処しとかなきゃいけないことだからね』
安堵でため息と一緒に瞳が閉じる。
『じゃあ詳しい説明をするね』
神様は少し間を置いてから話し始める。自分がまだ恐怖から解き放たれていない事への配慮だろうか。
『君にはある世界に転生してもらう、そこで君の魂の善と悪をなるべく均等にさせるのが今回の目的ね』
「あぁ、そこは聞いたよ」
『そうだね。あとこれは君が一番気になってるところだろうけど、転生する世界は「とある魔術の禁書目録」の世界だよ。この世界を選んだ理由としては、まぁ主人公が君と似ていて善人間だからかなー。能力はそこそこいいのにしてあげるから頑張って』
……………………は? なにそれ? なんでラノベ?
「は、え? ……はっ? はぁっ!?」
驚きで足元がぐらつくのを覚える。白であるはずの床も黒く見えてしまっている。コレは重症だ。
そう思ったが、なかなか地面が踏めない浮遊感が延々と続くばかりだ。周りをよく見ると床が黒くなっているのは自分の下だけ。
つまり……
『やっぱ転生って言ったら落とし穴でしょ。健闘を祈っているよ、真蓮君』
と神様が言うと、そのまま重力に従い落下していく。
「そんなとこまでテンプレかぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!!!」
真蓮はこれから起こることは前途多難しかないだろうと、確信したのだった。
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今回はしっかり天井がある。しかしここはどこだ? なんか応接間っぽい空間。俺は何処の何時に転生したんだ? あと身体の感覚が変だ。体が小さくなった感じ? だいたい五、六歳ってところか
「やっと目を覚ましましたか」
そう言ったのは幼い少女だった。
長い髪をポニーテールに括り、Tシャツに片方の裾を根元までぶった切ったジーンズというなんとも奇抜な格好をしていた。
「えっと、あなたは?」
「あぁ申し遅れてすみません。わたしは神裂火織と申します。以後お見知りおきを」
「あ、はい」
「ここは長崎にある神崎教会です。しかし、あなたはなぜ教会の前で倒れていたのですか?」
え? そんなことになってたの俺? 正直自分の待遇に驚いた。
「もしかして記憶がないのですか!?」
どうやら神崎さんは俺がなんて言い訳するか考えている様を記憶をなくしたのだと勘違いしたらしい。
ん? あれ? なんか思い出せない。
これ本当に記憶喪失じゃない?
名前以外がすっぽりとなくなってしまっている。
「どうやらそうみたいで何が何やらわからなくて。唯一わかるのは名前だけです」
きっと今自分は怯えているのだろう。正直今覚えているのは、自分の名前と神様との会話のみだ。
「そうですか。でも大丈夫です。思い出すまでの間この教会にかくまう余裕があります。一緒に頑張っていきましょう」
心の糸が緩んだ時に生まれる悲しい心地よさに満たされる。おもわず涙ぐんでしまいそうだ。
「どうしてそんな初対面なのに優しくしてくれるんですか?」
「『私がそうしたい』じゃダメですか?」
俺はこの日この少女に感謝し、尊敬し、憧れた。
「そういえば、まだあなたの名前を聞いてませんでしたね」
「あぁ。俺の名前は真蓮だ。苗字は思い出せない」
「そうですか。ではあなたは今日から神裂真蓮です。異論は認めません! 私、昔からお姉ちゃんというものに憧れていたんですよ!」
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時代は進み10歳。俺は天草式に加盟した。そして姉さんを師匠とし、魔術の鍛錬をしている。
俺が基本戦闘で使う魔術は投影、強化くらいである。
でも代わりにそれ以外の、普通の魔術師が使うような基本的な魔術にはめっぽう弱く、姉さんには申し訳ないと思っていたりするが『誰にだって苦手なことはあります。私だって結界のような細かい魔術は苦手で向いてません。自分の長所を伸ばしましょ?』なんて言われた。
だがその年に姉さんは天草式を離れた。姉さんは神の加護ゆえ幸運に恵まれてきた。けどそれは、周囲の人間に不運を押し付けてしまうということでもある。
それに苦悩した末に天草教を出奔してしまった。12歳で単身英国に渡って行き、今は教皇を建宮斎字が代理として務めている。
なぜ代理が神裂火織の弟の神裂真蓮ではないのかというと、俺も天草式を離れることになったからだ。
「俺が学園都市に?」
「そうだ。お前には学園都市に通ってスパイをしてもらう」
「それはまた突然に。なぜ俺なんだ? 建宮。俺と同じくらいの年のやつなら他にもいるだろ」
「そりゃあ、俺がお前が一番適役だと思ったからよな。精神的にお前が一番大人だ。これでも俺はお前を結構買っているんだぜ」
とのことらしい。まぁ俺の魔術は天草式にあまり向いていない。どちらかと言うと、単独行動での使用を得意とする魔術だ。まぁ、出来ないことはないが……けど相当理不尽だと思う。さみしいと思ってしまう。まぁ目的がスパイなので連絡が取れなくなる訳では無いだろう。
「待ってください、真蓮さん!」
「五和。悪いな、
「どうして真蓮さんなんですか? 離れ離れなんてやだよ。女教皇も、先日イギリスへ行ってしまったじゃないですか!」
「別に二度と会えないわけじゃない。泣くなよ、向こうに行ったら連絡するから」
「絶対にしてくださいよ? 約束ですから」
「うん、約束だ」
五和は仲のいい幼なじみだ。自分の頭の中にある原作知識は薄れ始めているのだが、五和の知識は多少あった。
コミュ障なので上手く話せないにも拘らず五和から話しかけてくれた、数少ない友人であった。
五和もそれに近い存在のようで、自分が居なくなるのを悲しんで泣いてくれる優しい子だ。
「じゃぁな五和。また会おうな」
五和は鼻をすすりながら顔を縦に振り、うんと言ってくれた。こうして俺は五和に見送られ、遠く離れた学園都市へ行くこととなったのだった。
読者から作者に転職しました。神裂の魔射殺です。結構編集しました。少しづつ投稿する予定ですので応援よろしくお願いします。