緋弾のアリア〜蕾姫と水君〜   作:乃亞

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どうも乃亞です!
すごーく久しぶりになってしまった感…申し訳ないです
それではどうぞ


第42話

教務科(マスターズ)棟を出てから俺は先ほど緑松校長に言われたことを反芻していた。

 

「まだあの力を使いこなせていない、か」

 

聞いているとなんかもうどんな声音で言われたのかすらも覚えていないけど内容だけが頭に残るという稀有な経験をしつつ俺はこの言葉の真意を読み取ろうとしている。

 

確かに俺は水の超能力を存分に引き出せてない感覚はある。完成系がどういった方向性なのかはわからないけど伸びしろは感じるのだ。中学の時みたいな剣を持たせる方向性、射出系の方向性、はたまた防護系の方向性……色々考えているが恐らく緑松校長が言ったのはそっちじゃない。

 

ーー恐らく緑松校長は、俺が光秀公の先祖返りと言われていたことを見抜いている。

 

文献と先祖代々からの言い伝えでしか聞いたことないけど、光秀公はどうやら未来予知に類する超能力を持っていたらしい。名前は……確か、『仮想の未来視』だったか?ともかく、そんな感じの能力を持っていて本能寺の変を起こした理由もそれに起因するんだとかしないんだとか。

 

そんでもって俺のもう1人の有名な祖先の明智小五郎様にもそれは一部受け継がれていたらしく、本人は口にしていなかったが彼の軒並みならぬ推理力という形で表出していたようだ。

 

華龍組の時だったかみたく、俺が寝てる時にやけにリアルな夢(そして夢の内容は恐らく実際にあったか、これから起こること)を見るのはこの能力の副次的な効果らしい。初めて夢を見た時にそれを親に話したら大騒ぎになったことを今でも覚えている。

 

「つってもなぁ…使いこなせてないって言われても発動条件が把握できてないから特訓のしようがねえんだよなぁ」

 

意識的に使えたことが今まで全くないからどういう使い方をするのか、という時点で手詰まりになってしまっているのが現状だ。

 

俺はとりあえず近くにあった自販機でなんか買って、ゆっくり考えることにした。

 

「うーん、妥当にコーラかはたまたお茶か?第三勢力オレンジジュースも捨てがたいな…」

 

ぶつくさ言いながら人差し指が右往左往する。本当に何も考えていない時にスパッとドリンクが選べないのは悪癖だと理解しているが直す気は毛頭ない。

そんな俺の後ろから誰か来る気配を感じて振り返ってみると、不知火が何やらためらいがちに手を上げていた。いや何してんの君?

 

「よぉ不知火、なんか俺に用か?ジュースくらいなら奢るぞ」

「おう、それはありがたくもらおうかな」

 

そう言って不知火は右往左往していた俺の指を無視してさっさとコーラを押して取った。ここまで遠慮がない不知火の姿ってのはそうそう見られない貴重なもんだ。

不知火に倣い、俺も結局コーラを選んで近くのベンチに2人で腰掛ける。

 

「なんつーか…久しぶりだな、こうして不知火と2人で話すのは」

「そうだね…だいたい武藤君とか遠山君とかいたから2人ってのはないかもね」

 

そうだな…思えば2人で長々と駄弁るのなんかもしかすると試験の時くらい以来かもしれない。だいたい他にも人がいたり、俺が任務に行ったりしてるから意外と久しぶりな気がするな。

 

「んで…どうした?俺にできることなら他でもない不知火だ、割引してやるぞ」

「金取るのかい?というかそういうことじゃないよ」

「え?単位が足りなくて留年しそう?バカじゃねーのお前?」

「あはは…」

 

とりあえず適当に茶化すといつもの不知火だ。いやほんと何の話だろうな?

じゃあ何だよ、って視線を不知火に向けるとその変化を感じたのか、不知火はいつもの優男スマイルから割と真面目そうな顔に直して話す雰囲気になった。

 

「そうだね…レキさんのことだよ」

「あ?レキ?お前まさかレキに惚れたのか?」

 

ここでレキの話…か。正直先が見えない。何を言うつもりだ?茶化しても不知火の真面目な顔は崩れない。これは本気で真面目な時の不知火だな。基本的にこいつ、真面目だけどな。

 

「話を戻そうか。明智君とレキさんの関係が今、面倒なことになってるのは知ってる。明智君も言ってたからな。僕はあんまりこういうことに詳しくないから単刀直入に聞くよ?」

 

不知火はそこで一旦区切り、俺にこう問いかけてきた。

 

「明智君自身は、レキさんのことをどう思ってるんだよ?」

 

……。

 

………。

 

…………はい?

 

完全に思考が空白に飲まれた後、俺はかろうじて不知火の言葉を反芻する。

 

「……レキのことをどう思ってるか、だと?」

「そうだよ、最近の明智君があんまりにも見てられないからこんなガラじゃないことしてるんだけど、どうなの?」

 

そこに不知火の俺に対する配慮というか何というかが垣間見えたので俺もそれには真面目に応えようと決意。

 

「そう……だな」

「……」

「レキは…狙撃手としての才能はすごいよな。狙ったところを外すのを見たことがない。跳弾狙撃もなんのそので絶対半径(キリングレンジ)は2051mだろ?とんでもないやつだよ」

「うん、それで?」

「でもあいつコミュニケーション能力が絶無だし感情の振れ幅もないし何考えてんのかわかんねえところあるよな。それが今の謎の狙撃拘禁に繋がるし」

 

不知火は黙って俺の話を聞いている。あくまで最後まで話を聞くぞっていう姿勢なんだろうな。

 

「そう、狙撃拘禁だよ。なんで俺が選ばれたのかわかんねぇしあいつに聞いても風がどうとか言ってよくわかんねぇし。技術で俺を圧倒したかと思ったら何を考えたか俺の部屋に入ってきて居候になるし。挙げ句の果てにはいきなり婚約とかいってくるしマジでどういうことなんだよ。100歩譲って俺の部屋で生活することは許しても羞恥の欠片もなくシャワー行くからって俺の前で服脱いだりするし」

「……」

「そんであいつからはなんの説明もない。ぶっちゃけ心労で頭がどうにかなりそうだよ。クラスの奴らを筆頭にゴシップ好きなアホ共は俺たちの関係を深読みしてくるし。それで今日終業式で明日から夏休みだろ?どうすればいいのかわかんねぇよ、ほんとに……」

「……」

 

こういう時に空気を読んでくれるやつの存在は武偵高の中じゃなかなかに貴重な存在だ。そんな不知火が友人でいてくれてよかったよ、ほんとに。

俺は思いの丈を不知火に惨めに、着飾らずに、素直にぶつける。

 

「それであいつのことを調べてみても要領を得ないことばかり。対策なんかとれやしない。ほんとに、どうすればいいんだろうな」

 

怪人ローズリリィの話は先ほど蘭豹先生にも釘を刺されたのでしないがそれ抜きでも俺の憔悴具合ってのはバレバレなんだろうな。

俺の話がここで区切りがついたと判断したのか、不知火は少し顎に手を当ててさらに問いを重ねてきた。

 

「明智君の言いたいことが全部理解できたかと言われたらそれはできてないんだと思う。だけど1つだけいいかな?」

「……何だ?」

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……!!確かに俺は、レキのことをどう思ってるのか。それは今の話で言葉にしていないし、俺もほぼ考えたことがなかった。

 

「俺は…レキのことが…」

 

どうなんだろうか。思い出すのはアドシアードの時、人形焼を嬉しそうに食べていた姿。マサトも含めて捜査をした時、私服がないと言ったレキをクイーンズイーストに引き連れ、私服を買ってやった時に見せた、あからさまでこそなかったがその嬉しそうな姿。

 

俺は、レキのことが……

 

「好き、なんだろうか?」

 

少なくとも嫌いじゃない。では好きなんだろうか?今のこの状況でレキに出てけって言わない程度には好いているのか?

……わからんなぁ…。

 

でも1つだけはっきりとわかる。俺は滅多に見せないし変化も極微小なものだが、レキの笑顔は好きなんだとおもう。守りたいと思う程度には。

 

「俺も今ははっきりはわかんねぇけど、こんだけは多分言える。レキが危険な目に会うようなことがあれば守りたい。多分そうは思うんだ」

 

俺がはっきりとそれを口にすると不知火はいつもの優男スマイルを向けてくる。

 

「それって、多分明智君がレキさんのことを好きだからじゃないかな?」

「そうなの…かね??」

「僕も生憎経験がなくってね。はっきりとは言えないけど、明智君はレキさんに恋してるんじゃないかな?そうじゃなきゃ明智君の実力なら物騒だけどレキさんを病院送りにしたりできるんじゃないの?それをしないってことはそういうことなんじゃないのかな?」

「そんなことするわけねぇだろ!……あ」

 

思わず声を荒げた俺に不知火のほらね?という視線。それに思わず声が出てしまった。なるほどな。不知火め、カマかけたな。

 

それと同時になんとなくだけど心の負担が軽くなった気がしなくもなかった。少なくとも夏休みを普通には過ごせるくらいには。

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