緋弾のアリア〜蕾姫と水君〜   作:乃亞

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どうも乃亞です。1ヶ月のうちに二話も投稿できるとかいつぶりなんでしょうか。……調べてみたら3年ぶりらしい、まじか。
やっっっと原作1巻の内容に入ります。ピンクいのことアリアのファンの皆様おまたせいたしました。
それでは第69話、よろしくお願いします。


第69話

「…司さん、零司さん。そろそろ起きてください、6時です」

「…んぅ…。おはようレキ、今日も早いな」

「おはようございます、零司さん。春休みが終わって今日から1学期なので準備は早めにした方がいいですよ」

「もう出来てるよ」

 

 時間が過ぎるのは早いと良く言うが、その過ぎ行く時の中でも変化は色々ある。例えばレキが俺の家で半同棲みたいな状態になってたり、逆にレキの部屋は俺たちの銃の整備とか作業の部屋とかになりつつあったりするのは些事と言っても過言じゃないだろう。

 ……まぁ教務科(マスターズ)にはバレてるんだろうが、完全にこれまでの実績で見ないフリをしてもらってるんだろう。

 

 そういえば変化といえばキンジも色々変わってたな。まず強襲科(アサルト)から探偵科(インケスタ)に転科し、その上で期末試験をサボった。お陰で今のあいつは探偵科のランクEの昼行灯。武偵をやめようと思ってるかどうかはあの日から全然聞いてないけど、おそらく今も前向きじゃないんだろう。

 

 朝食を作りながらそんなくだらないことを考えてたのだが…そうか今日から2年生か。今年はチーム編成とかも考えていく年になるのか。

 

「なぁレキ」

「なんですか?」

「お前は今年決めることになるチーム編成とか考えてるか?」

 

 隣で漬物を切っているレキは包丁を動かす手を止めて少し考えている。あ、そういえば最近のレキは朝昼晩の食事にカロリーメイトを摂る頻度が下がった。俺がご飯を作るからっていうのもあるが、一番はレキ自身が料理を白雪あたりに教わってるのもあるだろう。元々手先はその絶対半径(キリングレンジ)が示す通りかなり器用なので、料理することに慣れたらそれなりの才能を発揮するだろうことは予想できた。

 そんなレキはどうやら結論がまとまったらしい。

 

「零司さんについていきますよ」

「…多分ついていくのは俺の方だろうがな」

 

 いやぁ、最近は平和で良き哉良き哉。願わくばこんな穏やかな時が続けば良いものだが。

 ……続かないんだろうなぁ。

 

 

 〜〜〜〜〜

 

 クラス分けされた2年A組のメンツを見てみるとまぁまぁ見知ったメンツがたくさん。レキはもちろんのこと、理子や不知火、武藤までいる。あとは…始業式になぜか現れなかった俺の元相棒兼親友のキンジもいる。ぐったり机に突っ伏してるけど。

 

「1学期の始業式からサボるとか、お前はいつから不良になったんだ?」

「違う。これは断じて俺の意思じゃない」

「本当か〜?着衣の乱れといい、汗をかいた跡といい、寝坊したから急いでチャリで来ましたって言ってるようなもんだが」

 

 そう言って俺は自分のベルトをポンポンと示す。ぐったりしててもズボンにベルトが通ってないのくらいは見えるぞ。

 

「…朝から事件に巻き込まれたんだよ」

「…なるほどな。ご愁傷様」

 

 …さっき周知メールで来てた自転車爆破事件の被害者がキンジなのか。やっぱり運の悪さには定評があるなコイツ。

 なんて話をしていたらがらりら。HRをするために今年の担任である高天原ゆとり先生が入ってきた。

 我が校の教師にしてはかなり穏やかで気が弱い、我が探偵科の担当教師こと高天原先生。…その実、傭兵あがりだから全く油断ならない。そもそも蘭豹先生と綴先生という武偵高屈指の危険人物とルームシェアしているのに無傷なんだから警戒しないわけがない。

 

「はいはーい、みなさん席についてくださーい。HRを始めますよー」

 

 穏やかながら、勘がいい奴が気づくか気づかないかギリギリの威圧感のある声を出しながら入ってきた高天原先生に従って全員が席に着いた。ちなみに自由席なので名前順もへったくれもない。多分明日は明日で席順変わってるんだろうな。

 

「うふふ。じゃあまずは去年の3学期に転入してきたカーワイイ子から自己紹介してもらっちゃいますよー」

 

 ん?3学期に転入?まさか…。

 ニコニコの高天原先生に促されて教壇に上がったピンクブロンドを見て思わず天を仰ぐ。なるほどな、ここに繋がってくるのか。

 

 教壇に上がったピンクブロンドこと神崎・H・アリアは、あのバカことシャーロック・ホームズの直系の曾孫。ロンドン武偵局の若きエースとしてヨーロッパで仕事している押しも押されもせぬSランク強襲武偵様だ。俺が知ってる限りは99回連続1発の強襲で犯罪者を逮捕しているとかいうとんでもない奴。ヨーロッパに留学してた時に何回か共同で仕事したことがあるが、まぁ人の話を聞かない、猪突猛進の脳筋気味な癖に天性の勘でピンチは全て乗り切るとかいう、俺が言うのも変な話だが頭おかしいことを成し遂げてる奴なんだが…

 

「先生、あたしはアイツの隣に座りたい」

 

 …ボーッとしてたらなにやらアリアは後ろの方を指差してご指名。というかそっちは確か…?チラッと後ろを見やると『勘弁してくれ…って顔で椅子から転げ落ちたキンジがいた。南無三。

 そこから一気に盛り上がるアホ共や余計な気をきかせる武藤、恋愛脳ここに極まれりのトンチンカン推理を披露する理子によって教室は一気に馬鹿騒ぎに。てかそこでニコニコしてる高天原先生、こういうのを諌めるのが担任の役目だろ。

 俺は理子と武藤を軸に盛り上がるアホ共を尻目に再びアリアの方を見る。俺の記憶が正しければ確かこいつって…あっこれやばいな。即座にレキに暗号を送って机の下に入るように指示する。噴火3秒前、2、1…

 

 ずぎゅぎゅん!

 

 ほらやっぱり。アリアは恋愛話が大のニガテ。確かデ○ズニーの映画で顔が真っ赤っかになってたくらいには苦手なはず。そんな奴を炊きつけたらまぁこうなるよな。

 

「れ、恋愛なんて……くっだらない!」

 

 まぁ今日は噴火(はっぽう)だけでよかった。噴石(バリツ)だの火砕流(ジャンピングニー)だのといった二次被害がないだけマシだ。

 

「全員覚えておきなさい!そういうバカなこと言うヤツには……」

 

 あぁ、まだ言ってるのねその台詞。

 

「風穴開けるわよ!」

 

 

 〜〜〜〜〜

 

 

 あんなインパクト満点な自己紹介のネタにされたキンジにはやはりと言うかなんと言うか、昼休みにアホ共から質問責めにあっていた。すごい逃げたそうな顔をしていたキンジが思わずかわいそうになってしまったので、こっそりまばたき信号で『ジュウゴビョウ カセグ』と伝えて簡易的なフラッシュバンを放ってやった。……借り1な。

 

 これでうるさい連中もまとめて全員(逃げたキンジを追って)外に出て行ったのでゆっくりとレキとお昼を取れると思っていたのだが。

 

「……」

「……」

「……」

「………なんか言えよ、アリア」

 

 俺とレキは見事にアリアにとおせんぼうされている。正直逃げるのは簡単なんだが後のことを考えたら得策ではない。…少し付き合うか。

 

「キンジについて教えなさい、零司」

「キンジねぇ。俺は何も知らんぞ」

「嘘ね。中学の時に話してた相棒、あれキンジでしょ?」

 

 よくそんな昔の与太話なんざ覚えてるものだ。いや俺も覚えてるけども。日本で何をしてたの?みたいなことを聞かれた時に少し喋ったか。

 

「……はぁ、まぁいいか。レキ、こいつとも一緒にお昼食べるぞ。アリア、こいつはレキ。狙撃科のSランクだ」

「レキです。よろしくお願いしますアリアさん」

「こっちもアリアで良いわよ、よろしくね」

 

 

 

「それで?何が聞きたいんだ」

「さっきも言ったけどキンジについて。どんな武偵でどんな実績があるのか。戦闘のタイプはどういったものなのか洗いざらい教えなさい」

「それはお前が昔言ってたパートナーの候補としてキンジがあがったってことか。……まぁ洗いざらいは教えないけど現状教えても良い範囲だけはヒントをやる。それでいいな?」

「……まぁいいわ、それで?キンジってどんな人なの」

 

 あんまん…確かももまんだったか?を頬張りながらアリアは先を促す。相変わらず人使いは荒いようで。

 

「今は探偵科のEランクだけど、それは去年度末の考査に出てないから。入学時は強襲科のSランク。まぁ、抜き打ちで隠れてた試験教官まで全員捕縛したって言ったらどのくらいの実力なのかわかるだろ」

 

 まぁここまではデータを探せばすぐ出てくる程度のものだ。俺が言わなくても調べはつくだろ。

 

「んで戦闘のタイプか。堅実に相手の特徴を抑えつつ制圧するタイプかなぁ、強いて言えば。相手が格上の時に意外性のある一手で戦況をひっくり返せる度胸も…まぁある」

「やっぱりすごい奴なんじゃない!零司の相棒なだけはあるわね」

「元、な」

 

 間違いじゃなかったんだわあの時のアレは!などとふんふん頷いてるアリア。まぁここまではいいデータを先に開示したわけだしいい食いつきになるわな。

 

「……ただし」

「ただし?」

「キンジはいい時の出力と悪い時の出力の差が大きいんだよ。俗な言い方をすればムラがあるって奴だ。そのムラの理由は…いやこれは俺が話すことじゃないな」

「何よ、言いなさいよ」

「人様の個人情報をその人の知らない所でむやみやたらと流す奴がいたとして、お前はそいつを信用できるか?」

「…あまり信頼は置けないわね」

「だろ?そこから先の情報は本人(キンジ)からの信頼を得て本人(キンジ)から聞きな」

 

 まぁキンジは絶対言わないだろうがそれをいうのは無粋という奴だ。…さて、ここからは俺のターンだ。

 

「にしてもキンジがねぇ…。なんでアイツなんだ?朝の周知メールの件か?」

「……アンタには教えない。というか教えられない」

 

 あーはいはい、その返答までのラグと赤面で全て理解しましたよっと。

 まず周知メールの被害者、つまり自転車を爆破されたのはキンジで確定。そしてそんな哀れなキンジを救出(セーブ)したのはアリア。これはおそらくアリア単独での救出。なぜかというと、この前来たばかりのアリアに呼んだらすぐに来てくれる協力者を作れるだけのコミュ力なんて期待できないから。

 自転車を爆破されるってのがどういう状況なのかよくわからんが目視で視認・解除できない上に普段確認しない箇所、俺ならタイヤのホイールの中とかサドルの裏とかって場所が思いつくが、ともかくその辺に爆発物をくっつけられたんだろう。

 そして救出したときにアリアとキンジで()()()()()()()()()()が発生し、キンジがヒステリアモードになったんだろう。これはさっきのHRの前にキンジがベルトをしていなかったことと、そのHRの時にアリアがキンジにベルトを渡していたことからも推察される。んで、ヒステリアモードの時のキンジの冴えた動きを見てアリアはパートナー候補として目をつけた。こんなところだろ、そこまで難しい話じゃないな。

 

「ふーーーん、まぁそんなアリアに1つだけ教えてやる。キンジは押しに比較的弱いが押しすぎると意固地になる。まぁ要は加減が大事って奴だ」

「な、なんの話よ!」

「さぁ、なんの話だろうな?」

 

 まぁあんまりイジると厄介なこと(風穴)になるからな。ほどほどが大事、これはマジで。

 

「……まぁいいわ。また何かあったらアンタら2人にも協力要請するからそのつもりでいなさい」

「他の依頼が空いたらな」

「わかりました」

 

 相変わらず素直にモノを言えない奴だな。この調子じゃキンジを懐柔するのも時間がかかるだろう。

 

 俺はクラスのアホどもに追いかけ回されてどこにいるかもわからないキンジに向けて心のなかで合掌しておくことにした。南無三。




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