久々に1話を見ていたら過去編か書きたくなりました、どうもalnasです。
過去編書いていると姫さんとの絡みが絶望的なまでにないので次は本編に帰りたいところ。
この嫌悪を知らない無垢な少女。
夢を見て、理想を語り続ける純粋な力の権化。
ああ、どうして俺は、彼女にここまで必死になるのだろうか。
決まっているとも。
俺の<世界>がそうであるように。
彼女の思想が、見ている世界が理解できないように。
俺は天河舞姫という存在を壊したいのだ。屈服させたいのだ。自分でもわからない感情に、決着をつけたいのだ。
この、行き場のない怒りを、彼女にぶつけたいのだ。
だから俺は――。
「俺自身のために、おまえに勝つ」
結論から言おう。
ボロ負けでした。言い訳のない程にボロ負けでした。
いまも体が動かず、青空の下、大の字に倒れている状態だ。青生からは動けるようになったら帰ってくれればいいとこの場に残されたが、あれはどう見ても処理が面倒だから好きにしてくれといった具合だろう。
「あそこで相手に背を向けるなどあり得ません」
「攻め方が甘い。あれではカウンターを決めてくれと言っているようなものだぞ」
「自由ちゃんは〜視野が狭いよね〜」
流れを見守ってくれていた月夜、姉さん、眼目がそれぞれ意見を述べる。
そうですか、俺はそこまでダメダメでしたか? ダメダメでしたね!
格好つけて挑んだものの、戦闘開始から20分経過した辺りで天河舞姫による衝撃波に吹き飛ばされた隙を突かれ剣を突きつけられて終わり。
続けることもできたが、ここでとっておきを見せるのは惜しいと思い留まった次第だ。
「あれ、続けてたら潰せたかな?」
「無理だろうな。あれに勝ちたければ、基礎を上げろ。耐久性を増せ。小細工などあれの前には磨くだけ無駄だ。技と言えるだけの技量に達した技術か、圧倒的なパワー。それと、遥か格上に挑んでいける精神力。それらが揃わなければ勝てん」
姉さんの冷静な声が届く。
戦闘に関しては抜群のセンスを持つ姉さんが言うのだから、その通りなんだろう。仮に続けていたとしても、勝つことはできないどころか、奥の手を知られてしまうだけ。
「ダメかぁ……」
遠い。あまりにも、あの背中は遠すぎる。
けれど、戦うことはできている。
ならばあとは、倒すだけの力をつけるだけだ。それさえなんとかなれば、俺はあいつに勝てる。
「とりあえずはランキングでも上げるか」
「まだ上げるの〜?」
眼目が面倒そうに聞いてくるが、当然だ。この世界ではランキングが全てを左右すると言っても過言ではない。上げれるものは上げなくては。
「いいじゃないか。強くなるには戦闘あるのみさ」
「実戦が力をつけやすいのは事実だが、少しは抑えることも覚えたらどうだ? ランキングが一桁に入ってからというもの、おまえのペースは徐々に上がってきている。無理のしすぎは身を滅ぼすぞ」
「うっ……確かにちょっと休みを挟むべきかとは思うけど、それじゃダメかなって……届かないからさ、この手」
空に手を伸ばすも、掴めるものなどなく。
まだだ。まだ弱い、弱すぎる。
これじゃあ、いずれなにもかも失いそうで。やはり、俺には強くなる以外の道がない。そうでなくては、あいつを否定することすらできないじゃないか。
守るのも、勝つのも、全部強さから成るものだ。なら、俺もそうなる以外にないだろ。
勝ち続ける。
強くなり続ける。
毎日、毎日!
「今日がすべて……今日を生きる」
「またそれか。悪くはないが、もう少し未来も見たらどうだ?」
「未来は姉さんが見といてよ。俺はいまこの瞬間を生きるだけで精一杯だからさぁ……だから、この先の未来のことは姉さんが考えておいてよ。そんで、たまに俺たちに話をして、ちょこっとだけ手を貸して、そんであるべき方向に導いてくれればいいさ」
俺を見下ろす、困ったような、楽しそうな姉さんに向けて答える。
「未来か……おまえたちの望む未来に導くのは若干退屈なんだがな」
「そう言わずに。姉さんにしか頼めないからさ、こんなこと」
「ふむ……まあ、弱い弟の頼みだ。考えておくとしよう」
なんだってんだ? 姉さんにしては要領を得ない話だった気がしたが、それでも口から出た言葉は事実だ。
この中で未来を見据えて動けるのなんて姉さんが適任に決まってる。
さて、それはいい。
それより重要なのは天河舞姫にどう勝つかだ。
経験値はそう変わらないはずなんだが……やっぱ<世界>そのものに差があるのだろうか? けれど、誰も天河舞姫の<世界>がなんであるか知らないと言う。
前に一度、あいつ自身に戦いの最中問いかけたが、結局よくわからずじまいの答えしか得られなかった。あれは隠そうとしたものじゃなく、自身でもわかっていないタイプのものだ。
「わかんねぇ……」
「なにが〜」
「天河舞姫の<世界>だよ」
「ふ〜ん。どうでもいいからパスかな〜」
眼目は本当にどうでもよさそうに振る舞いながら、飛ぶカモメを視界に収めながらゆらゆらと揺れている。
月夜も俄然せずといった具合で、やはりどうこうするつもりはなさそうだ。
「おまえら、いつまでここにいるつもり?」
「自由さんが動けるくらいに回復したら、でしょうか?」
「そうかよ――……悪いな」
「いえ。そう思っているのなら、あんな簡単に攻撃を貰わないでください。あの程度をかわせないのでは、私がっかりです」
手厳しいことで。
神奈川の生徒で天河舞姫の攻撃をかわせる奴なんてそう多くない。四天王の奴らでも初撃はかわせても二撃、三撃と続けば沈むだろう。
いくら四天王を名乗っていたとしても、純粋な戦闘能力では他の生徒に部があるといっても過言じゃないのだから。全体2位に位置付けている姉さんや8位の俺がいい例だろう。
「あれーまだいるー?」
そんなことを考えていたら、大きく明るい声が訓練場の入り口から響いてきた。
天河舞姫。
俺を負かしていき、そのまま<アンノウン>と戦いに行った張本人がわざわざ出てくるか。
「チッ」
ついつい、腹の内に籠るものが出そうになるのを必死に抑え込む。
今日に限っては俺の方が弱かった。弱者が口だけで物を言っても通じるわけがない。幼子の癇癪と一緒になっては、伝えたいことも伝わらない。
強さは認める。それは身体能力も、<世界>も、意志もすべてだ。けど、願いは決して認めない。
それが俺の天河舞姫に対する変わらない形だ。
「天羽自由くん、今日はお疲れさま。私とあれだけ戦えるのってすっごいことだよ! また今度、勝負しようね! 私に勝ったら、主席の座はちゃーんとあげるからね。じゃあ、明日も早いから、しっかり休んで」
笑顔を振りまきながら帰っていく小さな背中。
あの少女は、無垢すぎる。
「眩しいな」
チカチカと、陽の光が俺の視界を遮るように。視界に映る少女の姿が歪む。
「強い光は、より強い影を生む。あんただって、いつまでも周りを信じてはいられないはずだ」
いや、わかっている。
あのカリスマは常軌を逸脱しているし、見ている者を引き込む。そんなことはわかりきっている。人を惹きつけるだけの力があり、単騎での突出した<世界>を宿しながら、どうして浅はかな願いを口にする……ッ!
「だからおまえは嫌いなんだよ、天河舞姫……傲慢なだけトップの方が、どれだけ愚かでも救われたことか」