いつもの世界を守るために   作:alnas

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どうもみなさんalnasです。
いまでも某混沌カードゲームで舞姫を使って勝てないものかと模索している暇人です。
うん、愛があればどうにかなるなんて嘘だったよ!
というのはさておき、クオリディア・コードもなんだか縮小してきた感じがひしひしと伝わってきますな。頼む、誰かまた火を灯してくれ!
というのも置いといて、始まるよ!


大切なことは

 

 歌声が聞こえる。

 繋がりが、勝手に増えて行くのがわかる。彼らの声が、力となって伝わってくる――。

 息は絶え絶えで、体はいうことをきかないくせに、戦おうと立ち上がる。

 救えと、守れと、俺の心が叫んでいる。

 ボヤけていた視界が、クリアになっていく。

 絶望的な状況が、僅かだが前進していくのがわかる。

 空の果てから、優しくも強い歌声が希望をくれる。優しさを、分け与えてくれる。諦めるなと、少しばかりの応援をくれる。

 歌に乗せて、多くの感情が流れ込んでくる。

 結局、ここまで来てしまったということだ。

「つまらない意地を張ってたのは、俺も一緒か……どうあれ、俺たちの喧嘩もここまでみたいだな」

 コードは破壊した。

 彼女は――舞姫はこの状況を正常に認識しているはず。

 亡くなってなどいない。俺たちの仲間は誰一人、おまえを残してきたわけじゃない。

「こうなりゃ前言撤回だ」

 俺の隣に、一人の男子生徒が降り立つのがわかる。

 視界の端に映るその制服は、東京の生徒だ。

「参りましたよ。でもまあ、俺も最初に言いましたしね。覚悟だけは決めときますってさ」

 自然と笑みがこぼれる。

 ああ、そうだった。ここに来る前に、そんなことを話した気がする。思えば、こいつにも不安なんかなかった。空から向かって来る彼女たちには、決意があった。

「最初っから、頼ってもよかったのかもな……けど、それはそれ。いままでのは全部、全部が俺の意地とあいつを救うための約束だった」

「でも、こっからは俺らも参戦してもいいすよね?」

 横に視線をやれば、笑顔を浮かべる今回の相棒が一人。

「はあ……」

 どういうわけか、ため息が漏れた。けれど、なぜか心地いい。

 一度は完全に追いやった。決着がつくまでは誰も来ないもんだと決めつけていた自分がいた。危険度は他の戦場より跳ね上がるんだから、当然だと思い込んでいた。

「悪いな。なら言わせてくれ。俺の――俺と舞姫の約束のためにも、力を貸してくれ!」

「もちろんっすよ! だって俺たち、仲間じゃないですか!」

 隣に並び立つコウスケに、俺も笑みを向ける。

 相手は神奈川最強。本来ならビビって動けなくなっても不思議じゃない相手に立ち向かえる強さ。無謀なんかじゃない。前に出れることは、立派なそいつ自身の強さだ。

「行くぞコウスケ! 捕まったら終わりだからな、気合入れていけよ!」

「了解! んじゃ行きますよっと!」

 コウスケの持つ出力兵装に乗り、素早く浮上してもらう。

 ある程度の高度を保ったところで、舞姫を見据える。

「薄々、わかっているんじゃないのか?」

「…………なにを」

 あいつも意固地だな。

 認められれば、楽なんだろうけど、生憎あそこまで追い込んだのは俺か。攻撃しまくったところで消耗戦は一点突破が得意な舞姫には効き目が薄い。

 歌が途切れる前になんとかしないと。いや、違うか。

 カナリアに無茶させる前に終わらせる!

「わかるか、舞姫。俺たちにはたくさんの、本当にたくさんの仲間がいる」

 彼女は知らないことだが、さっきまで一緒に戦ってくれていた、敵だったはずの隠谷と依藤。

 危険を承知で駆けつけてくれた、コウスケとカナリアたち。

 最初っから頼んでいたわけじゃない。みんな、自分の意思で力を貸してくれている。多分、いらないと言っても聞かないだろうお節介を焼いてくれている。

「いらないとか、死んでも言えなくなったけどな」

 実際、いいタイミングだった。あと一歩足りないところに駆けつけてくれたんだ。ちょうど、機動力が欲しかったんだよね。

「コウスケ、舞姫の周りを旋回するように動けるか?」

「楽勝っすよ!」

「なら頼む。時間も押してることだし、保護者の乱入がいつあるかもわからない」

 途中で千種たちをまいてきたのは間違いだったかもしれないな。あいつ、たまに変なこと思いつくし……横槍が入らないといいんだが。

「とりあえず最速でいきますんで、振り落とされないでくださいね!」

「頼むよ。思いっきりやってくれ」

 言うが早いか、兵装をすぐさま発進させるコウスケ。

 俺たちが動き出したのを見てか、舞姫も構えを取る。だが、果たしてこのまま、全員で舞姫を攻撃するのが正解なのだろうか? コードはもう壊した。なら、次は? 説得を続けている間に決定打が欲しいのは変わらない。けれど、それがあいつを倒すのとはどうにも合致しないときた。

「否定するだけじゃ足りないなら……まったく、本当に神奈川の奴らってのはしょうがない」

 昔から手間のかかる……初めて出会ったときから今日まで、何度無茶をしてきたか。何度、あいつの顔を見てきたか。そして何度、俺が救われてきたか。

「っと!? ちょ、なんでそこいらの石が<アンノウン>より危険なんすか!?」

 思考を巡らせる間も、コウスケは懸命に舞姫の投石を避け続ける。

 上を見上げれば、カナリアが到着していたらしく、手を振っていた。が、こんなときに返す余裕はない。

「みゆちん!」

 石が当たらないとくれば構わずに突っ込んでくる舞姫。

 説得も、否定の言葉も、彼女の意識を余計に戦いへと向けるだけだ。固執させるだけの言葉なんて、いらないんじゃないのか? もしそうなら、必要なのは!

「舞姫!」

「へ? あ、ちょっと自由さん!? 神奈川首席にむかってダイブとかマジっすか!? って聞いてないし!」

 彼女が俺を呼ぶのなら、俺もまた、彼女の名を呼ぼう。

 避けるだけじゃ、逃げ続けるだけじゃ無意味だ。なにも前には進まない。

 あいつとの約束を、彼女の小さくも大事な世界を嘘にはさせたくない。いまの視野の狭ばった彼女には届いていない友達の歌声を、俺が抱いている想いも、天河舞姫の夢見る優しい世界も、彼女から無くしたくない!

 ――だから。

「俺の声を聞け、舞姫! 自分の心の叫びに耳を傾けろ!」

「うるさい……うるさいッ!」

「駄々っ子か……もういい! いまから直接、おまえ自身に伝えてやろうじゃねえか!!」

 俺たち子どもが持っている不思議な力。程度の差はあれ、宿ってしまった<世界>。いつも気にかかっていた。他のみんなは、自分の持つ世界だけで完結しているのに、と。

「舞姫、俺はな。俺は、ずっとおまえの在り方が羨ましかった。おまえの<世界>を創り上げる夢の内容を知ってからずっと、それでも普通であれるおまえが」

 奇しくも、他人の夢を重ね合わせて創り上げられた俺の<世界>には、俺の存在はなかった。だから俺は、俺一人では<世界>を十全に扱えないし、人が多い程、<世界>は出力を上げられる。

 それは俺の力なのかと、何度も何度も何度も自分に問いた。だからこそ、『幸せな世界』なんて漠然とした夢を見ていたと聞かされたときは驚いた。

 なんで潰されないのかと、どうしてそこまで自信満々なのかと疑った。

「でも違った! おまえはてんで普通の女の子で、ずっと重圧に、周りからの期待に応え続けていただけの我慢強いだけの女の子だった!」

「だから私は――」

「だから俺は、いつだっておまえに協力してきた!」

 俺と舞姫の距離が迫る。

「みんな、みんな強い私が必要なの! なにもかも守れる私じゃないと、誰も救えないし、誰もついてきてくれないから!」

 激情が押し寄せてくる……避けようのない、少女としての舞姫の叫びが届く。

 普段の彼女からは想像もつかない弱音。その一言が、彼女を縛っていた呪い。

「ふざけんな!」

 そしてなにより、俺が否定したい思想。

「誰がそんなおまえに協力したいだなんて言った! 俺は、強いおまえを求めていたか? ぜんぶなにもかも完膚無きまでに守り通したおまえしか見ていなかったとでも言いたいのか? 俺が、ほたるが、神奈川の全員が求めていたのは、強いだけのトップじゃない! そこにいるのが、天河舞姫だからついてきてたんだ!」

「うそ……」

「嘘じゃねえ! 神奈川の仲間の、いったいどこを見てきたんだアホ娘!」

 おまえと話すときの楽しそうな、嬉しそうな仲間達。

 誰も彼もが構いたくて、構ってほしくてたまらないと言っていた。決して、最強の少女を欲していたわけじゃない。みんながついていけていたのは、天真爛漫なその人間性があったからだ。

 みんな、おまえの笑顔が好きだったからだ。

 そう、他でもない、俺自身も――。

「いつだって、みんなおまえを見ていた。心配していた。憧れてきた。好いていた! 本当はわかっているはずだ! たとえおまえが最強じゃなかったとしても、変わらずみんな、側にいたはずだって!」

 もう拳は必要ない。

 喧嘩のための力は、もういらない。

「でも、でも……そうしたら私は…………」

「不安なら、それでもいい」

 彼女の拳が届く範囲にまで落ちてきても、それが俺に当たることはなかった。

 代わりに、小さく傷だらけの一人の少女を側に引き寄せる。

「長い時間、一人で頑張ってるとさ、段々わからなくなるんだ。<世界>は俺以外を見せ、俺はその<世界>を見ていることしかできない。でも、あるとき気づいたことがある」

「……」

 声は帰ってこない。でも、抱き寄せた彼女の頭がひとつ頷いたのが伝わってくる。

「俺はきっと、誰かにそいつの持っているモノを見せるためにこの<世界>を見ているんだろうってな。自分の見ている世界を、人を自覚するのは難しい。世界は自分の主観によって形成されちまうから、尚更な。だからこそ、俺の<世界>は在るんだろうって」

 舞姫の手が、俺の制服を握る。

「自分以外の誰かに、そいつの大事なもんを伝えてやるために在ったんだなって」

 どうしてか、なんてのはわからない。いったい、いつどこで、俺にそんな感情が芽生えていたのかんて知れるわけがないんだから。

 でも理由をつけるのなら、きっとこのときのために。

 そうあったのだと、信じたい。

「俺さ、いつも戦闘のために<世界>を使ってるだろ? でもな、繋げるってのは、本来こういうこともできたんだ」

 淡い光が、俺たちの周囲に舞い出す。

「これって……」

「俺の<世界>だよ。さて、じゃあ舞姫。確かおまえとは初めてだったと思うけど」

 淡い光が、彼女を包む。俺ではなく、舞姫をだ。

 繋げるのは、俺の見てきた光景。

 舞姫の周りにいる生徒たちや、彼女自身。なんでもない、いつも通りの代わり映えしない風景。

 平和で、優しさに溢れている、強さも守る力も関係なく、誰もが笑いあう日常。

「みゆちん、これって……私――私はずっと……」

 声音だけで、よくわかった。

 瞳から溢れる涙だけでも、理解できたに違いない。

 長かった。

 でも、こいつの本音は聞けたし、真向からぶつかりあって言葉も交わせた。なにより繋げることもできた。

「んじゃあ、もうわがままはいいよな?」

「うん、うん!」

 ったく、無茶させやがって。

 満面の笑顔ひとつ取り戻すのに、ここまでする羽目になるとはな。ああ、違うか。俺が取り戻したかったから、ここまでできた、のかな?

「どっちでもいいか」

 いまはとりあえず、

「おーいコウスケ! 着地する余裕もないし、回収してくれぇぇぇぇぇぇっっ!!」

 救助が間に合うことを祈りますか。

 どちらにせよ、長いのはまだ、これからかもしれないしな……。

 こちらに猛スピードで接近してくるひとつの影を視界に捉えながら、俺は取り戻したモノをなくさないよう、再び手に力を込め始めた。




この雑感、なんとも言えない。
たぶん次は番外編もしくはifルートになるかなと。
では、また次回。
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