こんばんはalnasです。久々のクオリディア・コードの更新です。
とは言え、もう最新話まで追ってくれてる人あまりいなそうなのが事実。クオリディア・コード自体が下火なのよね。
しかし、頑張るしかない。
さあ、今日も世界を救おうか!
「私ね、みゆちんのこと大っ嫌い!」
「――…………はい? え、ちょっと待って。俺の耳壊れた? もう一回言ってもらっていい?」
「私ね、みゆちんのこと大っ嫌い!」
「――――………………えっ!? ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!?」
これは、夏の1日。
いきなり人の部屋に踏み込んできた姫さんの満面の笑みから放たれた一言である。いや、もうほんとわけわからん。実は俺のこと大っ嫌いでしたって? そんな暴露いるかよ! だから毎回毎回<世界>の繋がりがないってか!?
「くっそ、マジでなんなんだよ!」
しかも姫さん、言うだけ言って速攻で帰りやがってからに……。
やっぱりあれか? ファーストコンタクトミスった当時のせいか? 我慢して溜め込んできて、いまになって爆発したとかいう……いやいやいや、待て、待つんだ。あの姫さんに限ってそんなことは――我慢してるだけだとしたら、ありえなくはない話か。
「なんだってんだよ……」
いや、本当にわけがわからない。
そもそもの話、うちの素直な姫さんがこれまでため続けるだろうか? うん、ないよな。ないはずだ。だいじょうぶ、落ち着け。まだ慌てる時間じゃない。
「慌てるには十分な時間だと思うが?」
「おめーはしれっと人の心の中を読むんじゃすいません、なんでもないです。だから刀は仕舞ってもらってもいいですかね?」
物陰に潜んでいたほたるが刀を鞘に収めながら姿を表す。
こいつ、さては今日も姫さんを追いかけてたな?
「で、慌てるには十分ってのは?」
「わからないのか? ヒメに嫌われたら死ぬぞ? 焦らないはずがないだろう。ヒメニウムの補給はおろか、ヒメと関わりを持てなくなるなど、人生の終わりに等しい。おまえはいま、死んでいるんだ」
「勝手に人を死んでる扱いするな」
「いやぁ、それはどうかな。さすがに姫殿に嫌われるイコール死は公式だよ? 今回ばかりはキミに同情してあげよう」
涙を拭いながらゴミ袋片手に登場してきた銀呼。
お巡りさん、こいつです。
「戻ったのか。それで、今日の戦利品は?」
「やあ、ほたる。今日の戦利品は使用済みの歯ブラシ、破れた靴下に、甘味用のスプーン、紙コップ……いや、大量だよ。あとは姫殿の写真さえ手に入れば今週も生きていけそうだね」
「そうか。中々いいものが手に入ったな。あとで見せてもらっても?」
「ああ、もちろんだとも。それで、これは相談なんだけど、前回姫殿が使っていた浴衣について――」
「――となると、あれか。なるほど、考えておこう。あの部屋は前回の状況のまま残されているだろうから、私たちが海騒動のときに使った部屋ならあるはずだ」
海騒動……正式名は決まってない、というか決まることはないだろうが、俺たち神奈川と東京、千葉の代表が集まっての調査に乗り出して、斬々と遭遇したときの事件の話だな。
浴衣か。姫さんの浴衣ねぇ……今度新しいもんでも贈ってやるか。
「って、違う違う。まずはなんで嫌われたかだろ俺」
「「それだ!」」
変態二人が声を揃えて叫ぶ。いや、いいよ。おまえらは変態トークに花咲かせてろって。
なんて俺の心の声が届くはずもなく、二人の話が加速していく。
「そういえば、自由はいつからヒメの下にいるんだ?」
「あー……いつだったかな? 最初は姫殿に対して礼儀のなってない神奈川の生徒としては異端も異端のような生徒だったんだけど、あれ? そういえば本当にいつからだったっけ……」
「確か、ランキングに注力しなくなった辺りで『あなたに、忠誠を、誓おう!』とか言って杖を叩き折りながらヒメさんについたのではないですか?」
「あ、それだよそれ。さすが柘榴、よく覚えてるね」
またもや突然出てきた変態が滑るようにウソを語る。
「ないことをあったかのように語るな盗撮魔。あ、ストーカーの間違いか」
ここにいる女性陣みんなストーカー間違いない。
「ストーカーでも盗撮魔でもありません私はヒメさんを見守っているのですいつなにが起きても対応できるようにするための備えですよ最重要案件を常に遂行しています」
「おう、もうなにも言わねえよ」
言っても治らん、変わらないのが四天王だ。きっと、俺が神奈川にいる間は、もう四天王も変わることもないだろう。ああ、それでいい。こいつらとも、思えば長い付き合いだ。
ときに誤解から神奈川中を追い回され、ときにつまらない嫉妬から四天王チャレンジ杯とは名ばかりの多対一の――俺と四天王全員との試合が始まったり、お菓子争奪戦が起きたりと……あれ? 俺が被害者の思い出しかないな。気のせいかな? 気のせいじゃないか、そうか。
「それで、ヒメと自由のことなんだが」
「ああ、そうだったね。ほたるも知ってると思うけど、自由は最初、姫殿をこれでもかってくらい嫌っていてね」
「毎回毎回ヒメさんに噛み付いてくる困った生徒でしたいまも困ってますけど」
余計なお世話です。俺の問題です。
そう返さなかったのは、余裕がないのと、相手をしたくないからだ。主に肉体言語での。
「それに、こう言うのは癪だけど、当時の自由のチームは恐ろしく強かった。僕たち四天王と戦ったのなら、おそらく――いや、絶対かな。負けていたのは僕たちだっただろうね。自由自身も、<アンノウン>相手にはいまとは別人と思うほど積極的でね。彼のチームが最前線で暴れ、後ろに姫殿が控えているうちは、神奈川の敗北はないって言われていた程だ。まあ、そんな天下も、長くは続かなかったけどね……」
悠長に語っていた銀呼が、後半につれて声を低めていった。同時に、こちらにも控えめにだが何度も視線を送ってくる。
わかっている、わかっているんだ。
俺の問題だろう。いまの俺を創り上げた根幹部分だろう。だから――。
「そうだな。最強と呼ばれていた時代が終わったのは、結局、最強を担っていた俺のミスだった」
――語るのは俺の役目だろう。
「当時の俺は仲間たちと<アンノウン>を狩り続ける、戦闘集団でな。ランキングを上げること、各々の力を高めることのみに注力していたと言ってもいい」
代表格としては、斬々だろう。いや、それだけじゃない。あの集団にいた面子全員か。
誰もが互いの違いを認め、個人技を磨き続けた。
あの日だって、決して油断はなかった。負けるはずもなかった。現に勝ったさ。勝ち続けてしまったんだ。それこそが、俺のミス。
「誰もが、リーダーである俺が止めると言うまで<アンノウン>を狩り続けた」
「自由……」
「わかってる。あのとき侵攻してきた<アンノウン>の数は膨大で、前線を維持するには俺たちしか残ってなかったんだ。それでも、俺たちは勝ち続けた。斬って、刳って、叩きつけて、<アンノウン>を倒し続けた。だからかな? 余裕だと思ってたのかもしれない。自分たちなら、この程度いけるんだって。一人が限界を迎えていることに気づけなかったのは、そいつが<アンノウン>に食われた後だった。そこからかな。ランキングにも、戦うことにも拘らなくなったのは」
なにかを言いたそうにしているほたるの顔が視界に映るが、彼女は結局、なにかを言う前に口を閉じた。
目を瞑っていると、色々なことを思い出す。
あの日、天羽自由が語った過去。ヒメの話から、以外な過去を聞いたものだと思う。資料で知っていることと、本人から実際に聞くことでは、やはり違いがあるものだ。
だが、やはり自由は強かったのだろう。天羽斬々の絶対的な力の前にも屈さず、誰の命も諦めまいと最後まで抗ったのだからな。
「そんなおまえも、もういない」
数日前の<アンノウン>との決戦の折、突如として乱入してきた天羽斬々との激戦の末、自由はヒメを庇って重症を負った。元々ひどい怪我を負っていたが、そこに更なる一撃ときては、頑丈さが取り柄のあいつでも……くそっ、心のどこかであいつはだいじょうぶだろうと思っていた私が情けない!
ここのところ、ヒメが無理して振舞っているのはわかっている。
加えて、東京のカナリアも失踪したのだ。東京主席のバカが使い物にならなくなり、そのしわ寄せがヒメにきている……私には、せめてヒメが気負いすぎないように側にいることしかできない。
「おまえなら、どうしたのだろうな」
私がすべてを取り戻すまでの間、ヒメを支えていただろうおまえなら、この事態も収められたか?
おまえはこんなところで、消える存在だったのか?
調査に出ていた海の海面を眺めながら、らしくない思考が過る。
やめておけ、と自分の中で囁く自分がいる。楽観的な希望を持つなと、現実を受け止めろと。そうだ。あいつがいなくなった以上、もうヒメを支えられるのは私しかいないのだ。いつまでも、あいつの死を受け入れないわけにはいかない。
この先の世界のためにも、次に進むべきだ。
「おまえとは、特別仲良くしていたわけではなかったが、決して嫌いではなかった。ヒメをこれまで守ってくれて、側にいてくれて――ありがとう」
番外編? いいえ、本編です。
これを本編と言い切るのです。え? 姫さんと自由の仲直り? それはほら、姫さんが笑顔だったことから、察するしかないよね。