ハイスクールD×D 黄金騎士を受け継ぐもの   作:相感

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ちなみに今の双葉は魔戒剣をかろうじて振るえるド素人です。


ライザー・フェニックス

 

 

「大丈夫か? イチ兄」

「……いや、無理」

「無理しないでくださいね」

 

 イチ兄の様子がおかしかった。

 寝不足なのはわかるが、げっそりとしているのだ……そういえば今日の朝、換気してたが、まさかなぁ。

 下の息子との対話に朝までかかったとかそんな冗談みたいなことは……昔あったわ、限界目指すぜ! とか言って上下運動をしまくったことを。確かあの時はやり過ぎて下の息子が擦れてヤバイことになり病院に行ったはずだ。

 

「……なんかあった?」

「い、いやなんで、もない」

 

 なんかあったなこりゃ。

 イチ兄の寝不足の顔に不安そうな顔色が見えたからだ。

 

「リアス先輩となんかあったな」

「み、見てたのか!?」

「わかりやすいんだよ、イチ兄は」

 

 あっさりとゲロるイチ兄に苦笑するが、これもイチ兄の良い面だと思う。

 ほら、こんなあっさり見つかるのに世の中の女性は一側面で……まぁ、のぞき見したりするしな、無理か。

 気づけたのは今日は朝の特訓が中止になったからだ。まぁ、俺は一人でしたんだが身に入らないね、一人だと。どっかしらでズルしそうになる。

 しかしリアス先輩がイチ兄の部屋で何をしたんだろうか。夜這いなんてことはないだろうな、イチ兄とリアス先輩がそんな関係とかあり得なくないが早過ぎるだろ。

 

「で? 何があった?」

「……すまん、言えない」

 

 深刻な表情で言う、イチ兄に俺は驚く。

 そこまでのことが起きてたのか……あぁ、そういえば昨日がさごさ言ってたがそれか。

 

「本当に大丈夫なんですよね?」

「うん、アーシア心配しないで」

 

 イチ兄は優しくアーシアの頭を撫でる。

 こうしてみると兄妹に見えるなぁこの二人、同世代なんだけどさ。

 結局、俺達は学校に行くまで微妙な雰囲気を引きずることになった。放課後に探り入れとくかーとこの時は軽く思っていた。

 

 

 

****

 

 

 

「んー、聞いてないなぁ」

「そうですか」

 

 旧校舎に向かう途中出会った木場先輩に聞いてみたが知らないと言ったふうに首を傾げた。

 いつも笑っていて表情が詠めない先輩だが、この反応は白と言ってもいいだろう。

 冗談は言うが嘘は言わないのが木場先輩のいいところだと俺は思っている。

 

「朱乃さんなら知ってるかもね。彼女、部長の懐刀だから」

「姫島先輩かぁ」

 

 聞いても笑ってはぐらかしそうだし、きっと「朱乃って呼んだら教えてあげますわ」とか言われる。というかこの頃、姫島先輩と呼ぶと凄い悲しそうな顔するのはやめて欲しい。

 名前で呼ぶとか俺にはハードルが高すぎる。あっ、イチ兄は呼んでるがな。

 まぁ、元々好奇心で聞いてることだし、眷属の問題に部外者の俺が口出しするのもあれだろう。首突っ込むにしてもそんな度胸俺には無いしなぁ。

 

「……双葉くん、下がっててくれ。まさか僕がここまで来るまでこの気配に気がつかなかったなんてね」

 

 目を細めて、顔を強張らせる木場先輩を見て、俺も構える。

 ……ザルバとか牙狼剣、部室に置きっぱなしなんだよなぁ。ザルバのやつが「四六時中持て」とか言うが銃刀法違反で捕まるわ!

 こういう事態が起きたし、持って行こう。うん、牙狼剣って制服で隠せるかな?

 そうして部室の扉を開くとそこはいつもの雰囲気ではなかった。

 先に来ていたであろうイチ兄とアーシアは縮こまってるし、子猫なんて部屋の隅で関わりたくないオーラ出してるし、姫島先輩なんていつもの朗らかな雰囲気が一変してブリザードが吹きそうなオーラ出してる。

 極めつけはリアス先輩だ。機嫌が相当悪いのかいつもの余裕そうな表情がない。

 あとなんかリアス先輩の近くにメイド服っぽい服を着た人がいる。

 

「ッ!!」

 

 一目見りゃわかる。

 この場にいる誰よりも強い。すまし顔で立っているが体から滲み出る圧力に俺は一歩下がりそうになるが、なんとか踏みとどまる。

 なにもんだ一体!?

 

『来たか、坊主』

「……あなたが今代の黄金騎士ですか」

 

 なんか話しかけられたー!? てかザルバ、話すなよ! あと俺黄金騎士違います、一般ピープルです。

 何やら品定めされるようにこちらを見てくるメイド服の人。

 一回目を閉じ、ため息をつく。

 

「弱いですね」

「いや、そりゃ一般人ですから」

 

 ズバッと言われた言葉に苦笑しか出来ない。

 実際に弱いし、魔力あったとしても今の俺では宝の持ち腐れなのはわかっている。牙狼を身につけても本来の力を出し切れてない俺じゃため息を付かれたってしかたないのことだ。

 

「てかあなたは?」

「彼女はグレイフィア、グレモリーに仕えてくれている悪魔よ」

「どうぞお見知り置きを……と言いたいのですが、あなたは眷属の悪魔ではなく人間、早々に帰ってもらえると幸いです」

 

 おうふ、ストレートに言ってきたなぁ。

 でも、まぁグレイフィアさんの言うとおりだ。何かしらないがリアス先輩に関係した事案なら俺が頼まれるまで知らないほうが良いだろう。

 ちょっとイラつくがな! ストレートに「おう、てめえ関係ないから帰れや」と言われたほうがまだ納得できる。

 

「待ってちょうだい。双葉も……彼も眷属のようなものなの、同席してもらいたいわ」

「……お嬢様がそういうのでしたら」

「え、いや俺帰りま」

 

 すよとは言えなかった。

 部室の床に、見たことのない紋章の魔法陣が出現した。

それと共に広がる熱い炎。

 な、なんだ!? そういえばアーシア以外にも僧侶がいるって聞いたがそいつか!? あっ、ちげえわ、皆が敵意むき出しにして臨戦態勢に入ってる!

 

『小僧!』

「わかってるよ!」

 

 俺は部室の壁に立てかけてあった牙狼剣を取る。

 久々に持つこの剣はしっくりと来るが今は出てくる奴への対処だ!

 素早く剣を引き抜き、剣を頭上に掲げ、円を作り出す……あとは振り下ろせばいいだけだ。

 

「お待ち下さい、黄金騎士。今から来る方は敵、とは言いませんが客人です。鎧の召喚は控えて頂きます」

 

 有無を言わさない声に俺は一瞬怯んだ。

 しぶしぶという形で俺は剣を振り下ろすのを止める。……あっ、てかキャンセルってどうやんの? ザルバ。

 

『お前さんが念じるんだよ。そうすれば牙狼は冥界に還る』

「へえ、こうか?」

 

 消えろと念じると円が消えて、光も止まる。

 おー、出来るもんだなぁと素直に感心していると部屋に光があふれると同時に部室内に熱気があふれる。

 あっつ! あとぅい!! 火の粉が肌焼いてるんですがコレは!

 そして転移してきた奴が腕を薙ぐと熱気が四散する。

 何この登場の仕方、カッコええやん。

 

「ふぅ、人間界は久しぶりだ」

 

 そこにいたのは二十代前半くらいの男だった。

 赤いスーツを着崩しており、胸元まで開いてワイルドな感じに。

 顔も整っているが、何故か悪ガキという印象を持つのは何故だろうか? あとなんか女性見る視線がネチッコイ、うわ、子猫とか体抱えて嫌悪感表してるし

 

「愛しのリアス。会いに来たぜ」

 

 う、うわぁと俺は引く。

 イケメンが言うと花になるのだがコイツが言うと背伸びした子供が言ってるふうにしか見えないのは何故だろうか。

 リアス先輩なんて露骨に嫌そうな顔してるし、うわコイツナチュラルに尻触ってやがる。

 見かねた俺は口を開く。

 

「あ、あの? リアス先輩が嫌がってますし止めましょうよ」

「……貴様、人間か? リアスに媚びへつらっている奴が喋るなっ!!」

「なっ!?」

「双葉さん!!」

 

 ごっ! と不愉快な顔をした男性が俺にめがけて火の玉を投げつけてくる。

 驚くリアス先輩と悲鳴をあげるアーシア……そうかい、そっちがその気なら、俺だって考えようはある。

 鞘から再び剣を抜き頭上に掲げ、円を描く。

 

「ッ!? 召喚の……お前、魔戒騎士か!!」

「ご名答」

 

 振り下ろすと同時に鎧のパーツが周囲を飛び回り、火の玉とその余波を打ち消す。

 そして俺の体に装着されていく。

 

「そ、その黄金は……牙狼!? 馬鹿な、失われたはずでは」

 

 俺の姿を見て男性は驚愕しているが……また牙狼に頼っちまったな。

 頼らなかったら今頃俺はローストチキンにでもなっちまってたかもしれないしな。今回は緊急事態ってことで。

 

「ライザー様。彼こそが今代の黄金騎士であり、今はお嬢様の元に身を寄せていると事前にお渡しした資料に記載して置いたはずですが」

 

 グレイフィアさんの雰囲気がヤバイ。

 具体的に言うとこの場にいる全員が顔が青くなっている……アカン、この人武装派メイドや。スカートに銃器隠し持ってたりする系や。

 ガタガタと震える男を見て、俺はため息をはいて鎧を外す。

 さっきので分かったが牙狼は俺の意思一つで着脱可能だ。一部分を着脱させるとか出来そうだがどうだろうか? まぁ、やらないけど。

 

「とりあえず……話聞かせて下さい、リアス先輩」

「そ、そうね」

 

 まだ青い顔をしたリアス先輩だったが、俺の平気そうな顔を見てホッとしたのか、顔色が徐々に戻ってくる。

 アーシアは涙目でこちらに駆け寄ってくる。おー、よしよし怖かったなぁ。

 でだ、この男性はホント誰だ?

 

「あの、この人誰ですか?」

「チッ、黄金騎士ともあろうものが知らないとはな。リアス、お前の下僕、教育がなってないんじゃないのか?」

 

 一々癇に障る野郎だなぁと思う。

 よし、コイツのアダ名は焼き鳥に決定しよう。炭火焼きも候補に上がってたがなんか頭の髪型が鳥っぽいから焼き鳥。

 そんなことを考えているとグレイフィアさんが口を開いた。

 

「この方はフェニックス家の三男、上級悪魔のライザ―・フェニックス様であらせられます」

 

 はえー、つまり純血の悪魔か? リアス先輩と同じの。

 ……つうことは貴族なんだろうが、なんとまぁ絵に描いたようなボンクラ貴族の坊っちゃんのことで。

 まぁ、前の大戦で純血の悪魔の家が半数以上消えたって話だし、コイツは甘やかされて来たんだろうなぁと勝手に想像する。

 

「そしてグレモリ―家次期当主、リアスお嬢様の婿殿です」

 

 へえ、婿殿……婿? つまりこの人がリアス先輩の夫になる人か。

 

「ええええええええええええええええええええええ」

 

 イチ兄が大声で驚くが、俺もぽかんと口を開く。

 こんな奴が部長のお婿さんとは……なんかきな臭くなってきたなぁ。

 

 

 

****

 

 

 

「いやー、リアスの女王が淹れてくれたお茶は美味いものだな」

「痛み入りますわ」

 

 にこやかに笑うが内心ブチ切れているのがよーわかる。

 だってあららやうふふ言ってないもの。閉じた目でわかりにくいけど、あれ絶対表情読み取らせないようにしてるだけだよ。

 そんな焼き鳥、もといライザーはリアス先輩にセクハラしていた。

 ソファに座っているのだが遠慮無く肩やら手、それに髪の毛を触っている。

 ……正直、イチ兄の怒りも感じているので耐えれてるが牙狼剣の柄を持った手が離れない。

 万が一にでもキスしようなものなら、グレイフィアさんの逆鱗に触れようが何しようがこの焼鳥は三枚に下ろす。

 

「……木場先輩たちは知ってたんですか?」

「それとなく、ね。会ったのは初めてだよ」

 

 普段の三倍増しで笑う木場先輩の雰囲気は、抜身の日本刀のように鋭い。

 騎士(ナイト)でもある木場先輩は主への忠誠度は言わずもがな。というか親しい人がこんな嫌がることをされて怒らない奴はいない。

 あのアーシアでさえ、焼き鳥に侮蔑に似た視線を送っていることからどれだけ嫌われているかはわかるだろう。

 

「いい加減にして頂戴! 私は以前にも言ったはずよ。あなたとは結婚しないと!」

 

 我慢の限界だったのか、ソファから立ち上がりリアス先輩らしからぬ大声で焼き鳥に言う。

 だが当の焼き鳥は余裕そうな表情だ。

 

「以前にも聞いた。だけどなリアス。俺達のお家事情はそうは言ってられない」

「私は次期当主、婿くらい自分で決めるわ。それに大学を出るまで自由にさせてくれる、そう約束したはずよ!」

「事情が変わったんだよ。俺達の両親は今すぐにでも君と俺をくっつけて子供がほしい。君は先日堕天使と一線交えたそうだね。大切な君に何かあれば、俺も心苦しいし、両親も悲しむじゃないか」

 

 ……俺のせいか、と握りしめた拳で俺は俯く。

 確かにあの戦闘ではリアス先輩になんとも無かったが、先輩のご両親からみれば娘が危ないことをしたと考えるに違いない。

 純血の悪魔が少なくなっている現状で、女という貴重な存在である先輩に万が一という事があれば悔やんでも悔やみきれないだろう。

 だからこそ、俺は自分を許せない。助けてくれた先輩を助けられないことやこんな焼き鳥にリアス先輩の将来を任せることになったなんて。

 

「君の家は兄妹の二人きり。兄君は家を出てしまったね。つまりは君しかいないんだよ、グレモリーという家を存続させるには。それとも何か? 君は君個人のワガママで長く続いた家を取り潰す気かい?」

 

 いい加減にしろと言おうとしたが姫島先輩に肩を抑えられ、木場先輩には剣を喉に当てられる。

 ……しかしよく見ると二人共手が震えていた。

 それを見て、俺も溜飲を下げる。叫びたいのはこの二人だろう。俺なんかよりもリアス先輩の付き合いは長い。

 小猫も無関心を決め込んでいるが体から出ている怒りのオーラは隠せない。

 

「余計なお世話と言っているのよ。私はあなたとは結婚しないわ! 自分が良いと思った人と結婚する。古い家柄でもそれは自由にさせてもらうわ!」

 

 焼き鳥のオーラが膨れ上がり、持っていた紅茶が奴さんの熱で瞬時に沸騰する。

 あーらら、フラレて切れてやんの。

 

「俺もな、フェニックスの看板を背負っている悪魔なんだよ。はっきり言うとな、お前がここにいなかったら俺は人間界なんぞに来なかった。お前が来ないというのであれば眷属全ていや、お前をここに縛っているもの全てを燃やしてでも連れて帰るぞ」

「……冗談も大概にしろよ、焼き鳥」

「……あぁ、双葉。悪いが俺も限界だわ」

 

 こちらを睨みつける焼き鳥を俺は睨み返す。

 上級悪魔って凄いね。この前のレイナーレよりも圧力あるわ。……だけど、引けねえんだわ。

 コイツは今、リアス先輩の都合を無視しようとした。

 全く気に食わないが万が一、焼き鳥がリアス先輩を愛していたのなら俺はここで引き下がっただろう。

 だけど違う。コイツは自分の家の都合を理由にリアス先輩に求婚しているだけだ。

 

「俺の知っているリアス先輩は安い女じゃない。とっとと冥界に帰れ、焼き鳥」

「貴様、人間の分際で俺に歯向かうとはいい度胸だっ!!」

 

 部屋全体に焼き鳥のオーラが充満するが俺はちっとも怖くなかった。

 しかし、その空気はグレイフィアさんの冷静な声が鎮圧する。

 

「ライザー様、黄金騎士様、おやめください。これ以上やるとなると私も黙っているわけには行きません。私はサーゼクス様の名誉によりここにいます。ですのでこの場に置いて一切の遠慮はしないつもりです」

 

 ……無言で俺と焼き鳥は臨戦態勢を解く。

 サーゼクス……そういえばリアス先輩のお兄さんの名前だったか。

 

「……最強の『女王(クイーン)』と呼ばれるにそんなこと言われたら止まるしか無いな」

「……すいません、頭に血が登りすぎました」

 

 平謝りするが俺と焼き鳥は睨み合うのを止めない。

 するとグレイフィアさんがまた口を開いた。

 

「両家の方々は言っておりました。お二人の意見が食い違う、と。ですのでこちらとして手打ちも兼ねて最終手段を用意させて頂きました」

「最終手段?」

「お嬢様。意思を押し通すのであれば、『レーティングゲーム』にて決着を着けるのはいかかでしょうか?」

 

 驚く周囲と何が何だか分からない俺。

 すると今まで黙っていたザルバが眠そうな声で話しだした。

 

『レーティングゲームってのは悪魔どもが始めた遊びみたいなもんだ』

「……あぁ、アレか。悪魔版のチェス」

 

 話半分に聞いてたから今の今まで忘れていた。

 確か爵位持ちの悪魔がするゲームで、ウチの世界のチェスの駒に見立てて、下僕達で争うゲームだったか?

 あれ? でもさ。

 

「成熟した悪魔しかやれないとか聞いてたんですが?」

「はい、ですので今回は非公式のレーティングゲームとなります。非公式ならばお嬢様でも参加できますし、大抵の場合――――」

「身内同士、御家絡みのいがみ合いよ」

 

 まぁ、つまりは受けなければ結婚させるぞって魂胆が見える。

 しかしそれを聞いた焼き鳥はニヤニヤと嫌な笑みを浮かべる。

 

「へえ、いいのかい? 俺はもう公式戦の経験もある。それにリアス、君の眷属はここにいるのが全員と一人使えない奴がいるだけと聞いたが?」

「ッ……」

 

 イチ兄、姫島先輩、木場先輩、子猫、アーシアにリアス先輩……なんでもリアス先輩は眷属の数がとても少ないらしい。

 ちなみに眷属はフルで15人、大半が兵士(ポーン)なのだがイチ兄を転生する際に兵士(ポーン)の駒8個をすべて使ったそうだ。

 絶望的と言ってもいいだろう。

 数は力だ。勝てない相手でも人数がかさめば勝率は上がるし、何よりチェスを参考にしたレーティングゲームなら数は大事な要素の一つだろう。

 さらに言えば、こっちはイチ兄とアーシア(素人)もいる。

 イチ兄は強くなったがそれでも強さにムラっけがあるし、アーシアに至っては戦闘能力が皆無だ。

 実質四人で戦えと言ってるようなもんだ。

 リアス先輩の頬を汗が落ちる。

 負けたら即結婚、拒否しても即結婚という最悪の包囲網だ。

 

「いいわ! 受けてやるわよ!」

「それでこそリアスだ……おっと、俺の眷属たちも紹介しようか」

 

 焼き鳥が指を弾くと魔法陣が再び光る。

 そこから出てくるのは……えっ、いや、マジで?

 

「……十、五人ッ!? フルメンバーじゃねえか!」

 

 そこにいたのは様々な種類の美少女。

 イチ兄を見ると血涙を流しながら焼き鳥を睨んでいた。

 あっ、やめろください。違うんです、ウチの兄の悪い癖なんです。

 そんな様子に若干引く焼き鳥と頭を抱えるリアス先輩。

 

「お、おい、リアス。なんかコイツ血涙流してんだが」

「……彼ね、ハーレム王目指してるの」

 

 嬉しさのあまりの血涙か、あっライザーの眷属たちも引いてるわ。

 でもアーシアが大慌てでハンカチを渡している、やっぱアーシアは天使! これ間違いない!

 まぁ、真面目に考えるか。

 正直に言って勝ち目は薄い。今のままだと数の暴力に為すすべなく倒される。

 さすがにリアス先輩と姫島先輩が抜きん出ているからといってライザーを圧倒できるほどとは思えない。

 圧倒できるならこんなレーティングゲームなんてせず堂々と戦えばいいしな。

 

「ライザーさまぁ、ちゅーしてください」

「ハハッ、そりゃいいな。あいつらに俺たちが熱々なところを魅せつけてやろう」

 

 そう言ってライザーは下僕の一人と熱いディープキスをし始めた。

 ……うわぁ、人前で何考えて……イチ兄、頼むから憧れないでさすがに人前でディープキスする兄とか許容できないから。あっ、アーシア見ちゃいけません、あんなの目に毒です!

 二回ほど下僕たちとディープキスした焼き鳥はどうだという風にドヤ顔している。

 

『呆れ果てるだけだな、フェニックスの小僧。いや、そこにいる紅い毛の嬢ちゃんが悪魔の中じゃ異質なだけか』

「おう、ザルバもっと言ってやれ」

「魔導輪ごときがっ! 騎士といなければ存在すら危うい存在がほざくかっ!!」

『悪いな、俺はお前さんよりも長生きしている。……それに俺はこの空間が気に入ってるんだ』

 

 おぉ、ザルバ見なおしたわ! 今日はたっぷりと魔力取っていいぞ!

 しかし、ライザーは突然出していた火を消して、俺を見てニヤリと笑った。

 

「……グレイフィアさん、非公式のゲームだ。眷属以外の人物も参加させるというルールも付け加えて貰えるかな?」

「えっ」

 

 グレイフィアさんは少し考える素振りを見せるとポンと手を打って言う。

 

「有り、でしょう。伝説の黄金騎士を倒したとなればご両家からの太鼓判は間違いなしでしょうし」

「……まじかよ」

 

 一気に責任感が出てきた。

 万が一俺が下手をこいたらリアス先輩は即結婚ということだ。

 まぁ、散々っぱら挑発したし、出れるかどうか聞いてみようと思ってたことだ。

 

「ちょうどいいさ、お前みたいな女ったらしにリアス先輩は任せられないからな……あと焼き鳥が食いたかったところだ。自分から燃えるんなら楽でいい」

「き、貴様っ!! どこまで愚弄すれば気が済む!!」

「誇りと驕りを間違えてる奴に払う敬意なんてねえよ。せめて下僕達との関係を清算してから出直してこい。ゲームで存分に戦おうぜ」

「いいや、双葉。ゲームなんて要らねえよ! ここで全員ぶっ飛ばせばいい話だ!」

 

 いつの間にか 赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を装着したイチ兄がそこにいた。

 嘘だろ!? と思ったが本気のようだ。既に倍加が済んでいらしくイチ兄の体から力を感じる。

 

「ま、待てイチ兄! ここだとまずい!!」

「知ったことじゃねぇ! 部長のため、そして俺のためこの焼き鳥はぶん殴らなきゃ気がすまねえ!!」

 

 私情じゃねえか!? というかマジで突っ込んでいったよ!?

 焼き鳥目掛けて突っ込むイチ兄のまえに、小猫のみたいな背たけの少女が立ちふさがる。

 長い棍を器用に回しながら構える姿を見て、俺は走った。

 相当あの武器を使い込んでいる! あんなやつと戦えば……。

 

「グッ!?」

「イチ兄!!」

 

 想像通り、腹部に攻撃を食らったイチ兄がその場で浮き上がる。

 なんとか間に合い受け止めるが……マズイな、想像してたよりも強いかも、こいつら。

 アーシアも駆けつけ、癒やしの力で治してくれる。

 そんなイチ兄の姿を見て、ライザーは笑いだした。

 

「弱いなぁ。ブーステット・ギア? 神や魔王すら屠るという一品だっけなぁ、そいつは。だが未だに神や魔王は滅ぼされたことはない。つまりだ、歴代の使用者はどいつもこいつも使いこなせてない弱者ってことだ! ハハッハ!! この分だと伝説の牙狼も不甲斐ないんだろうな」

「ッ!!」

 

 思わず剣を抜こうとするが直前で止める。

 事実だからだ。悔しいが俺たち兄弟が持つ力は強大であるがその殆どを使いこなせてはいない。

 俺なんて牙狼なんて要らないとすら思っていたほどだ。

 その結果がコレだ。大口叩いといて手も足も出ない……レイナーレの時から何一つ変わってねえじゃねえか!!

 何が適当に生きようだ、何が平々凡々だ。そんな言い訳はもう通用しないと分かってたのに!!

 悔しが俺を見て、少し気分が良くなったのか焼き鳥は笑う。

 

「いい目だ。所詮は人間、ってことか」

「……気は済みましたか?」

 

 グレイフィアさんからの声は冷たい。

 恐らくは失望しているんだろう。

 床に拳を叩きつけ、歯を食いしばる。

 

「お二人の合意を私、グレイフィアが確認いたしました。ですので諸々の準備期間として十日後にレーティングゲームを開始したいと思います。ゲームの指揮もこのグレイフィアが務めさせていただきます」

 

 リアス先輩と焼き鳥が頷く。

 その間、俺とイチ兄はうなだれて立つことも出来なかった。

 

 

 

****

 

 

 

「ッ!!」

『おいおい、そんな感情で剣を振るっても何も効果はないぞ』

 

 うるさいという暇もなく、俺は牙狼剣を思い切り振る。

 あのあと、牙狼剣とザルバを持って部室を飛び出した俺は町外れの公園で素振りをしていた。

 鍛えるためじゃない、何かしてないと俺は怒りでどうにかなってしまいそうだったからだ。

 

『魔戒騎士の基本は平静さだ。どんなことにも動じないその鋼の精神、そいつがなきゃお前さんは闇に食われるぞ』

「どうでも……ッ!!」

 

 二百回を超えてから急激に重くなってきた剣を落としてしまう。

 くそっ……今の俺じゃこれが限界なのか。

 ガクリと膝をつくと急激な眠気が俺を襲う。

 

『ソウルメタルは想いに反応して重くとも軽くとも固くとも柔らかくもなる。だがそうするのはお前の精神を反映してるからだ』

「……んな、武器、どう、扱えってんだ、よ」

 

 あっ、マズイと思っていると地面に倒れて瞼が落ちていく。

 ……くそっ、俺はもっと強く、なるんだ。

 気を失う前、ザルバの言葉だけははっきりと聞こえた。

 

『怒りを胸に刻め、誰かを守る気持ち。それこそが魔戒騎士の最大の武器だ』

 

 

 

「にゃあ……」

「んっ……クロ?」

 

 ペロペロと舐められる感覚で俺は起きた。

 

『ようやく起きたか』

「ザルバ、今何時だ?」

「夜中の三時だ」

 

 うそぉ!? と思って起き上がると辺りは真っ暗だった。

 よ、良かったぁ、牙狼剣突き刺さった状態で誰かに見つかったら警察待ったなし。一応ここが町外れでほとんど来ないこと知っといてよかったわ。

 心配そうに擦り寄るクロの頭を撫でる。

 そういえばここ最近はここで会うなぁ。

 

「はぁ、クロー聞いてくれよー……だから逃げるなっての」

 

 すかさず逃げようとするクロの首筋をつぅーっとやって動きを止める。

 にゃろう……あっ、そうだ。

 

「そうそう、猫缶持ってきてるぞ、今日は」

「にゃああ!!」

 

 そこら辺にほっぽいてあった鞄の中から猫缶「ドキッ☆ 風味豊かの猫の香り」というなんとも微妙な商品を出す。ちなみに昔から売れてるロングセラー商品らしい。

 指で開けるとなんとも言えないような匂いが香る。……一応、人間でも食えるんだよなこれ。なんか味見は人間がしてるなんて話を聞いた覚えがある。

 猫缶に夢中になるクロを見ていると癒されるし、何故か体が調子が良い。

 気絶してたからかな? にしても体の調子が妙にいい。まるでマッサージされたあとみたいな感じだ。

 猫缶を食べ終えたクロは一鳴きすると俺に背を向けて歩き去ってしまった。

 ……帰るか、明日から猛特訓だな。

 俺は猫缶や鞄を拾うと歩き出す。

 

『……オイ、小僧。あの猫は?』

 

 不意にザルバが聞いてくる。

 

「ん? クロのことか? 昔、助けて以来懐かれちゃって、でも首輪あるし飼猫だと思うが」

『あいつの正体を知らないのか? ……まぁ、害を与えていないってことは明かす気がないってことか?』

 

 ザルバの言葉が気になったが俺は特に気にしなかった。

 クロはクロだ、たまに会う黒猫それ以上でも以下でもない。

 だが、俺はザルバの言葉が気になって周囲の確認が疎かになっていたんだろう。俺の後ろ姿をずっと見ている着物姿の女性がいたのに全く気づかなかった。

 

 




小猫「……名前間違えてたんですね」

ちゃうねん、こねこって変換すると一番最初が子猫になるんや、許してや城之内。3巻部分だとクローズアップ現代するから。

小猫「許さない」

アッー!?



とまぁ、盛大な誤字やらかしてましたのでここで謝罪を……信じられるか? 全巻持ってるのに間違えたんだぜ? いや、ホントすいませんでした、小猫ファンの皆さんには不快な思いをさせてしまったことをお詫び申し上げます。
こんなダメダメな作者ですがどうぞこれからもよろしくお願いします。
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