「ぜーはーぜーは……こ、この頃これしか、言ってねえ」
『シャッキとしろ、シャキッと』
清々しい朝の日差し、綺麗な山の風景、俺達は今プチ登山をしていた。
あの後、家に帰りイチ兄に説教受けた後寝たのだが、早朝リアス先輩に叩き起こされた。
『特訓するわよ!』
『はい?』
そして寝ぼけ眼で荷物をまとめさせられ、転移魔法陣で来たのがこの山の麓だったわけだ。特訓というので山の中でするのかと思ったらスケールが違った。
「まさか山の中に別荘とはね」
「ふ、双葉ちょっと待ってくれ」
イチ兄が膝をつく。
夜なら俺ですら勝てないのに、朝だとこのザマだ。
まぁ、これでも鍛えてきたしリアス先輩の朝練でさらに強くなった……んだが、俺もイチ兄と変わらない。
俺達が持っているのは女性陣の荷物だ。
これがまた重いのと何をそんなに入れる必要あるのかわからない化粧品。そのせいでさらに倍率ドン。
ちなみに子猫も似たような量だがお菓子を詰めて来たとドヤ顔で言うもんだから力が抜ける。
木場先輩も少ないとはいえ十日分の着替えやその他の道具が入った巨大なリュックサックを軽々と持っていた。畜生、キラキラと輝いて見える。
「も、持ちましょうか?」
「馬鹿言うな……これくらい出来なきゃ、あの焼き鳥に勝てるかよ」
カラ元気だがそう言わないと登れそうにない。
くそったれがあああああ!!
「うぉおおおおおっ!! イチ兄、俺が先に着いたら部屋に隠してあるエロ本捨てるからな!」
「ちょっ!? 双葉ぁ!! だったらお前、アーシア来るからって俺に渡した秘蔵本捨てるからな」
!? あ、アレを捨てる? 素晴らしい桃尻や形の良い尻が満載の俺の愛読書を捨てるだと!?
「ふっざけるなぁあああああ!!」
「こっちの台詞だあああああ!!」
『……ザルバ』
『何も言うなドライグ、俺達は使い手を選べないんだ』
泣きそうなドライグとザルバの声が聞こえるが知ったこっちゃねえ、こちとら命かかってんだ。
俺とイチ兄は自分たちでも信じられない速度を出して斜面を駆け上がり、同時にゴールした。
リアス先輩たちが呆れていたがエロが絡めば男はどんな辛いことでもできると俺は思っている。
****
「「……」」
「修行始まる前からグロッキーだね、二人共」」
クスクス笑う木場先輩に何も言えない。
疲労困憊、口からは魂が出ていきそうだ。ゴールした瞬間、天使の姿が見えたがぶん殴ってやった。アーシアの一件以来俺は神とか天使とか特に堕天使が嫌いになった。
悪魔バンザイ、魔王さま万歳、ただし焼き鳥は焼かれてしね。
「僕は着替えに行くよ……覗かないでね」
「「やめろぉ!!」」
同時に跳ね起きる。
冗談にしては質が悪いし、木場先輩はウチの兄との絡みを知っているのだろうか? 腐った方々が何やらその……イチ兄と木場先輩の絡みを書いているらしい。
こう男と男の友情ロマンティック? みたいな感じではなくアッー♂みたいな本。偶然見てしまった女子のノートに濃厚な、うぷっ、思い出すだけで吐き気してきた。
一休みして俺は与えられた、というか勝手に使っていいと言われた一室に荷物を置く。あとザルバはここに置いとけと言われたので自室に置いてゆく。
パパっと着替えてリビングに戻るともう皆がいた。
「修行開始よ」
そして地獄が始まった。
**修行編 木場先輩**
「遅い」
「ッ!!」
木刀が手から弾き飛ばされる。
だが俺は諦めずに木場先輩に掴みかかるが、避けられ突っ込んだ力を利用されて投げ飛ばされる。
「大きく振りすぎている。決めるときは良いけど基本は相手の動きを見てやるんだ」
「……もう一回お願いします!!」
最初に俺が言われたのは木場先輩との特訓だった。
思えば同じ剣使い、指導相手にはピッタリなのだが、俺が不甲斐なさ過ぎて相手になっていない。まだ昼の弱体化している木場先輩相手にコレじゃ、焼き鳥の
ちなみにイチ兄は子猫と修行している。
カンッ、カンッと打ち合いながら俺はフリードの動きを思い出す。
強かった、あいつは銃も使うが俺との戦いの時は剣だけで戦っていた。
あいつの動きを真似たら、少しは……。
「ッ!?」
木場先輩の表情が歪む。
いつの間にか俺が木場先輩の腕に木刀を当てていたからだ。じゃねえ!?
「す、すいません! 無我夢中で」
「……少しレベルをあげようか」
あ、あれ? と思っていると木場先輩が何本も木刀を出す。
もしかして怒っている?
「あ、あの木場先輩」
「手加減はするけどなるべく避けてくれ、いいね?」
あっ、俺死んだと思った瞬間、俺の顔面に木刀が突き刺さった。
その後ズタボロにされた俺は我に返った木場先輩から必死に謝られることになった。
……くぅ、まぁいいや後半は木場先輩の動きも結構見えたし。
あと木場先輩のことを師匠って呼ぶことにしました。剣教えてもらってるしね。
本人は恥ずかしそうに頬をかいてた。……男の俺でも少しドキリとした。畜生イケメンっていいなぁ。
**修行編 姫島先輩**
「魔力を感じるの。全部じゃなくていいわ、ほんの少し欠片でも意識できたらあなたは強くなれるわ」
姫島先輩に手取り足取り魔力の使い方を教えてもらう。
ヘタすればリアス先輩たちよりも多い魔力を持ってるんだ。使いこなせればかなりの戦力になる。
しかしながら分からない。
全部とはどのくらいなのか? ぼんやりと思っているとアーシアから歓声が上がる。どうやら魔力が出たらしい。
俺とイチ兄は未だに出来ない。
「んー」
「分かりませんか?」
「いや、なんかそれっぽいのは分かったんですけど……」
体の奥底にざわざわした感触をするものがあるのが分かった。
魔力かどうかわからないが何か大きなもの。
そういうと姫島先輩はニコリと笑う。
「それが魔力ですわ。そうですね、お椀で水を掬うイメージかしら? 何分、双葉くんは魔力量が多いから」
お椀で掬う……試しに俺はその大きなものに手を触れるようなイメージをして、目を閉じた。
ほんの少しだ、ほんの少しで良い。
イメージの中の俺は手でその大きなものに触れたのだが、そこで何故かズッコケて大きな何かに体全体が浸かってしまった。
イメージの中で何してんの俺ぇ!?
「きゃっ!?」
「うおぉっ!?」
「ひゃっ!?」
何か風が吹き荒れる音と複数人が倒れる音がした。
驚いていると俺の周囲三メートルくらいか、その地面が削れていた。
……えっ? これやったのもしかして俺?
「ふ、双葉くん、何したの?」
「い、いや、なんかお椀で掬うって言われたんで手で掬うイメージしたら何故かイメージでその……ナニカに落っこちちゃって」
「凄かったぜ、こうバーって黄金のオーラみたいのが見えたぜ」
「綺麗だったです」
黄金と言われると嫌でも牙狼を思い出すが関係ないと思いたい。
俺は拳を握って開いてを繰り返して、意識を集中する。
するとさっきまでの苦戦はどうしたのか、右手に黄金のオーラが出る……これが魔力か、なんか暖かい。
「……」
「綺麗」
アーシアたちがマジマジと見てくる。
おおぉ、綺麗って言われるとすげえ嬉しいなぁ……おー、ポカポカして……ポカ、ポ……あっつぅうううううううううううう!!!
じゅううううううううという香ばしい匂いと共に俺の腕が焼かれていた。
ア、 アババババッババッババ、アレか強すぎて手が焼かれてんのか。誰か止めてえええ!!
「ふ、双葉くん! 魔力をどっかに放出して!!」
「ほ、放出!?」
「どこでもいいから! そのままだと腕は焼き落ちるぞ!」
あっ、イチ兄マジで? もう手の感覚無いんだわ。
てかど、どうやって……あ、アレだ。ボックマンXみたいなイメージで手から撃つ。多分魔法は使用者のイメージが重要だ。
右腕を突き出し、左腕二の腕にそえる。
「ボックバスタァアアアアアアアア!!」
すると黄金の色した魔力が射出され、目の前の山に着弾する。
ズゴォオオオオオオオオオン!!
……ポカーンとする。
それは皆も同じだった。激しい音に驚いたのか、木場先輩たちも集まって目を点にする。
目の前の山肌が削れていた。そりゃもうごっそりと。
「……双葉」
「あい」
「あなた数日間、朱乃に付きっきりで教えてもらって、魔力の制御を覚えなさい。あとアーシア治療してあげなさい」
怒られたが、このままだと俺の魔力で周囲が更地になるのは目に見えていた。
……だが希望も見えた。これを制御できれば、俺の身体能力を強化できるらしい。
ただし、俺の体には封印が施されることになった。いくら強力でも今の俺だと扱えないと判断されたからだ。
そういえばイチ兄が姫島先輩から大量の野菜を渡されていたがあれはなんだろうか。
イチ兄の顔からしてろくな事は考えて無さそうだが、真面目に修行するなら別にいいんだろう。
**修行編 小猫**
「へぶしっ!」
吹き飛ばされ、巨木と熱いキスを交わす俺。
凄いよね、今日だけで十回目だよ。ちなみに周囲の人影っぽいめり込みは全てイチ兄だそうだ、この子怖いっす。
リアス先輩の説明では小猫は格闘術の殆どをマスターしていると聞いてたが、一番凄いのはそのパワーだろう。
俺を両腕で持ち上げて犬神家させた時はどうしようかと思った。というか犬神家好きすぎだろ、小猫のやつ。
「弱い……」
「無茶言うなよ、お前すばしっこい上にちっさいから……あっぶな!!」
勢い良く飛び込んできた小猫の拳が辺り巨木がミシリと言う。
……当たってたら死んでたな、間違いない。
「何か?」
「いえ、サー……じゃなくてマム! 何でもありません」
小さいは禁句にしよう、命が何個あっても足りねえや。
機嫌が悪いのもあってかなり重たい一撃をさっきから打たれる。多分日曜日のデートが無くなったせいだろう。
……そこまでパフェ食いたかったんだな、あいつ。
しかしながら小猫の動きは参考になる。力任せの攻撃かと思いきや、搦手を使ってきて防御を崩されて投げられたりする。
あと小猫の小柄な体も厄介だ。目を離したつもりはなかったが懐に入られてワンツーフィニッシュを決められたりする。
「クッ!!」
「防御に意識を割きすぎです。攻めてきてください」
無茶言うなぁあああ!! こちとらスルリと避けられるのに、向こうの攻撃を受けたらほぼ戦闘不能だ。
防戦一方になるのは仕方ないが、小猫の言うとおりだ、攻撃してみよう。
「こなくそぉっ!!」
「……えいっ」
グチャァという音がして、俺の顔に子猫の拳が叩きこまれた。
そのまま倒れて呻く。
て、手加減してるだろうけど滅茶苦茶いてえ、というか顔は止めてくだちい。
「戦意を削ぐには顔が一番です。あと打撃は体の中心点を狙うのが一番です」
「そう……かいっ!!」
痛がっているふりをして拳をつき出すが避けられる。
その上、腕を固められて寝技系に持ち込まれた……あだっだだっだだっだだ!?
「不意打ちは感心しません」
「イタタタッ! 悪かったって!」
地面をたたき、タップする。
接近戦で子猫に勝てるようになるにはいつになるのか。
「もう二セット行きましょうか」
「助けてええええええええええ!」
残りのニセット、俺は大自然と何度も抱擁を交わし、命の呼吸を感じた。
あと何回か天使が見えたが光の槍を乱射してきやがった、この前殴ったせいかなぁ?
**修行編 ザルバ**
「も、持つだけでいいのか?」
『本来なら何かしらぶつけたいんだが、今のお前さんじゃそこまでの精神力は無いだろう』
休憩のため自室に戻るとザルバが修行を付けてくれることになった。
ちなみに修行は至ってシンプルだった。
牙狼剣を持つだけ、ただし一定の高さから下ろしたらダメという物だ。
簡単だと思ったのだがこれがキツイ。
「……! くそっ」
『心が乱れてるぞ』
段々と牙狼剣が重くなってくる。
牙狼剣を構成しているソウルメタルという物質は、使用者の想いに答えるというのは先日の素振りでザルバに教えてもらった。
この前からわかっていたがこの剣、持ってるだけで精神力を吸い取る魔性の剣だ。なのでリアス先輩と姫島先輩が異空間に繋げる栞をくれた。普段はそこにしまっておけというわけだ。
ちなみに俺以外が持つと凄まじい重さらしく誰も持てなかった。
「まだかよ……」
『……もういいぞ』
牙狼剣を地面に落とし、俺は尻もちをつく。
武器を満足に持てないとかイチ兄以下だわ、ホント。
『お前さんが鎧を纏って全力を持って牙狼剣を振るえるのは99,9秒ってところだな』
「鎧なしだと?」
『540秒……つまり五分くらいだ、だが消耗してると鎧に食われかねないからその状態で召喚するときは俺が止めるが』
鎧に食われる、か。
「鎧に食われるってどういうことなんだ?」
『精神力を使い果たした魔戒騎士は鎧を操ることができなくなる。そうなったら自力解除はほぼ不可能だ、一応外部からも解除できるが……あとその状態で無理して動こうとすると鎧が暴走する』
えっ、何? 鎧って意思持っているの?
じゃあ鎧が独りでに動き出すとかありそう。
『その状態をな、心滅獣身という。その状態になればお前は周囲を破壊し尽くすまで止まらんぞ』
「……肝に銘じとくわ」
ザルバが止めてくれるなら心配なら大丈夫だろう。
だが俺の性格は俺が一番良くわかっている。
近しい者が傷つけられる、またはピンチに陥ったら迷わず無理をするのが俺だ。
そうなった時、俺は――――
『心配するな、お前は黄金騎士だ。例え未熟だとしてもその名を受け継ぐものだと牙狼剣が判断したから抜けたんだ』
「だから俺は……まぁ、黄金騎士でいいか、もう」
正直、平々凡々の生活は今でも望んでいるがそうも言ってられないだろう。
黄金騎士牙狼、大層な二つ名だ……俺にはもったいないほどな。
よしっ!
「まだまだやるぞ!」
『やる気になったか。じゃあ、これを毎日十セットだ』
「やっぱ黄金騎士の名前返還していいですかね」
**修行編 イチ兄&リアス先輩&アーシア**
「ま、まだまだいけるぜ?」
「こ、こっちも」
とやせ我慢をするが俺たち二人の体力は限界に近かった。
「ほらー! 二人共休まないの!」
「「ち、ちくしょおおおおおお!!」」
泣きながら山道を走る。
今の俺達は登ってきた山道を降りて駆け上っての繰り返しをしていた。ちなみに背中には岩が括りつけられており、その上にはリアス先輩と先輩の使い魔が人化して乗っている。
「次はいつもの筋トレよ」
「イチ、兄、生きてたら薄い本貸してくれよ」
「おう、お前のもな」
サムズアップして往復を終えてからすぐに筋トレを開始する。
ちなみに筋肉痛が地獄でもアーシアの神器で元通りになるため、アーシアも木の下で待機している。
人間である俺はある程度手心加えられているが、イチ兄はというと。
「うむむむ」
「さっ、腕立て三百行ってみましょうか」
岩+リアス先輩が乗った状態だ。
ちなみに俺の上にはアーシアが乗っている。それでもくっそきついんですけどねええ!!
「あ、あの無理しないでくださいね?」
「無理しなきゃ、あの焼き鳥には勝てないさ」
こんな事言ってるが背中から感じる柔らかい感触で息子がヤバイ。
って、アーシアだぞ!? 乗ってるのは!! なに興奮してるんだ!! この子は善意でやってくれるっていうのに。
くっ、これはリアス先輩が俺に課した精神修行の一貫か。
尻派の俺には地獄のようだ。感触を楽しむことすなわち、アーシアを辱める行為……ならばっ!!
「うぉおおおおおっ!!」
「あら、双葉に負けそうよ。頑張れ、お兄ちゃん」
「お、お兄ちゃ……ぶ、部長ぉおおおおおっ!!」
全力で頑張る俺に触発されてイチ兄も速度を上げる。
この後、二人してぶっ倒れ、アーシアの治療を受けるのであった。
****
特訓も終わり、俺達は別荘に帰って食事をしていた。
「う、うまい……うまいぞぉおおおお!!」
モグモグと出される料理を食べていく。
本当に旨い。
木場先輩が採ってきた山菜はおひたし、リアス先輩が獲ってきたイノシシはステーキに魚は塩焼きに。
昼食は軽かったので、夕食が豪勢とは聞いていたがここまでとは。
アカン、涙出てきた。だって百回は死ぬん出るもん、何回アーシアの癒しの光に助けられたことか。
「お、おかわりも沢山ありますからね?」
「はい、じゃあおかわり!」
少し顔を赤くしている姫島先輩に茶碗を出す。
今日調理したのは姫島先輩だ。……くぅ、米の炊き方も完璧だわ。
「姫島先輩凄いですね、毎日でも食べたいくらいですよ」
「ほ、本当ですの!? 作ります、いや作らせて!」
身を乗り出して言う姫島先輩にちょっと引く。
い、いや確かに毎日食いたいのは本当だが、それは悪いと思う。
それに母さんの料理も食いたいしなぁ。
「……私もスープ作ったんですよ」
あっ、アーシアが拗ねてる。
ちょこんとテーブルに置いてあるスープはアーシアが作成したものらしい。
そういえば味噌汁ないし、これで代用……。
「うまぁああああああっ!! おかわり!」
オーバー気味に言いすぎだろうがほんとうに美味しい。
絶妙な塩加減と具がないのに感じる素材の旨さがベネ! こりゃご飯進みますわ。
「良かったです! これで私も……」
「うめええ!! あっ、師匠、俺の狙ってた肉とらないでくださいよ。小猫、地味に魚盗るなよ! 俺のだぞ! あっ、でアーシアどうした?」
「……よそってきますね」
何故か意気消沈しているアーシアが気になったが、今は飯だ食わなきゃ明日も耐え切れん!!
無言でガツガツと食べて、お茶を飲んで一息つく。
ふぃー……幸せぇ。
「さて、イッセー、双葉。特訓してみてどうだったかしら?」
「……その」
「俺が一番弱い、だろ? イチ兄」
「いや、そんなことは……」
事実だからはっきり言う。
俺が一番の足手まといだ。夜になればここにいる誰よりも貧弱だ。
牙狼だって99,9秒、つまり一分半しかつけてられないし、ザルバに聞いたがこれだけでも俺の精神力は尽きるんだと。
本来、魔戒騎士は幼少期から訓練を受けてようやくなるらしい。……ほんと、牙狼剣はなんで俺を選んだんだろうな。
魔力の方も形にはなったが、攻撃に転用するとガス欠するし、今出せる分以上を出すとなると特訓してたように余剰魔力で俺の腕が焼け落ちる可能性もある。
……ほんんんんっと足手まといだな。
「俺がやれるとしたら陽動ですかね。ひたすら走り回って場を引っ掻き回す」
「そうね、今の状態ならそれがベスト……と言いたいけど、今のあなたじゃそれすらも無理よ」
バッサリと言われるがそうだと思う。
昼間の師匠にすら追いつけない足しか思ってない俺じゃ、捕まってリンチされるがオチだ。
イチ兄も俺とどっこいだが、ブーステッド・ギアがあるからな。
十秒間ずつ力が倍加していくので、今使える分の倍加でも敵にとっては脅威だろう。
アーシアなんて言わずもがな。傷を治療できるってだけで再優先撃破対象になるだろう。
だが俺はただ牙狼ってだけだ……情けない。
「さぁ、食事が終わったしお風呂に行きましょう。ここは温泉だから素敵なのよ」
暗い気分に気づいたのかリアス先輩が手を叩いて俺の思考を戻してくれる。
温泉かぁ……金持ちってのは凄いもんだ。
ん? 温泉?
「ぐ、ぐへへへ」
「覗いたら斬るぞ、イチ兄」
アーシアも入るんだ。
栞から牙狼剣を取り出して睨みつけるが、トリップしているイチ兄には無駄だった。
「馬鹿野郎!! 風呂だぞ! 覗かないで何が男だ!」
『ハハハッ! 今代の赤龍帝は真っ直ぐだな、気にいったぜ』
『まぁ、ここまで正直な宿主はいなかったが……なぁ、相棒、本当にあの技を完成させるのか?』
「当たり前だろ!? あれが出来たら……、ぐ、フフフ」
嫌な予感しかしない、何をする気だ。
そういえば必死に魔力で野菜の皮剥きしてたが……いや、そんなまさかな? さすがのイチ兄だとしても魔力の才能をそこにつぎ込むわけがない。
「ちなみに僕は覗かないよ」
「木場ァ!!」
「イッセーは私達の入浴覗きたいの?」
「覗きたいです!」
あぁ、もうリアス先輩は……実を言うと俺も覗きたいけどさ。
そりゃここまでの美少女の風呂覗くのは男の夢みたいなもんだろう。だがアーシアがいるから我慢我慢。
「私は双葉くんが見たいというのなら良いですよ」
「まじで!? ……あっ、ちょっ、ちがっ!」
「不純です……」
こ、小猫そんな目で俺を見るなぁあああ!! そりゃ姫島先輩から名指しで言われたらさ、こうなるだろ?
その気持ちをわかってくれたのかイチ兄が肩をたたいてサムズアップしてくれる。さすが俺の兄だ!
「やっぱり双葉さんは大きい胸の方がお好きなんですか?」
「えっ? い、いや、俺は……」
服の裾を掴まれながらアーシアに言われて俺は言葉に詰まる。
大きい胸もいいけどさ、やっぱ俺尻派だから。だがそれをアーシアに言うのは気が引ける。
そういう知識ないのは確認済みだ。コウノトリ信じてそうだもんなぁ。
「アーシア、コイツ尻派だから安心しろって」
「ばっ!? イチ兄!!」
アーシアが顔を真赤にして俯いてしまう。
そりゃそうだよねえ!! 胸よりもデリケートなゾーンだもんな、そこが好きですとか言われても引かれるもん。だから隠しているってのに!!
「えっと……ふ、風呂行こう! 師匠、イチ兄! 男同士の仲良くするのもいいだろ!」
「えっ? 双葉くん?」
「お、おい双葉!!」
俺は師匠とイチ兄の手をとって、かけ出した。
恥ずかしすぎる!! との一点でこの場から離れたがイチ兄たちに風呂場でからかわれるんじゃね? と風呂場に着いてから気づいた。
あっ、そうそうイチ兄は日頃の
あと師匠は腰の剣も名剣でした……。
魔力あっても使いこなせないと意味が無いという教訓。
基本的に双葉はイッセーより強くなる可能性はありません。乳龍帝に勝てるわけ無いだろ、バカヤロウ勝つぞお前(ry)なんてことはありません。