ハイスクールD×D 黄金騎士を受け継ぐもの   作:相感

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原作よりもちょびっと強い眷属の皆さん。


レーティングゲーム開始

 

 

「……ふぃー」

 

 トラップを仕掛け終わり地図にマークする。

 今いるのは再現された駒王学園の森のなかだ。

 転移が終わり、レーティングゲームの舞台は俺たちが慣れ親しんだ駒王学園のレプリカだった。

 まぁ、レプリカと言っても再現度百%のほぼ本物だったが。

 転移し、開始の合図が鳴ってからリアス先輩が始めたのは戦略を考えることだった。

 レーティングゲームというのは本物のチェスのように時間をかけるものだ。夜明けという時間制限もあるがそれを加味しても戦闘時間としては長い。

 まず俺達のスタート場所はいつもの部室、ライザーは新校舎と予想された。

 森は俺達の陣地だが、ライザーは新校舎そのものが陣地と言ってもいいだろう。

 数で圧倒されている現状、逆にこの旧校舎が陣地だったのはラッキーだと思っていい。新校舎だと入り口が多くあり、数が少ない俺達だとたやすく侵入されてしまう可能性があった。

 まずは体育館をとる、というのがリアス先輩の作戦だ。

 最もその前に森にトラップを仕掛けてアーシアとリアス先輩の防御を固める。

 それを頼まれたのは俺と師匠と小猫。

 正直に言うとこれは保険というよりも作動したら戻ってこれる防犯ブザーのようなものだ。

 本陣に残るアーシア、リアス先輩以外の全員が攻撃に打って出る。

 長期戦となり守りに入ったら負けるのこっちだ。ならば攻めて数を減らし、一気に均衡状態に持っていくというのが理想。出来なくても相手の『戦車』と『騎士』は排除したいし、プロモーションが可能な『兵士』は最優先で撃破する対象だ。

 万が一、向こうの八人の『兵士』が全員『女王』になったら勝ち目はない。

 いや、全力を出せば倒せるだろうがその後に控えるライザーとの戦闘が絶望的になる。

 特訓の際、何度もリアス先輩が言っていた事を思い出す。

 

『フェニックスの厄介な点はその不死性よ』

 

 そう、文字通りの不死。

 頭を砕かれようが、全身をずたずたに引き裂かれようがフェニックスの精神力が残っているのであれば名前のどおり不死鳥(フェニックス)の再生能力で瞬く間に再生する。

 特訓中に見た焼き鳥のレーティングゲームは、自身の不死性を活かした大胆不敵な作戦。負けはしてるもののそれは家同士のお膳立て、それさえ無ければ全勝という確かな実力をあいつは持っている。

 それだけ不死というのは厄介だ。

 もっとも弱点もあるし、無限に再生するわけではないと聞いたのでホッとする。

 だがライザーも強い、というかライザーが一番強い。

 ライザーの『女王』であるユーベルーナも厄介だったが、ライザーは頭一つ抜けている。

 ……正直に勝てる確率は三割行けばいいと思う。

 まぁ、勝つためにアーシアの私物を借りたんだし、なんとかするしかないがこれは奥の手だ。通常の戦いには出す訳にはいかない。

 悔しいがライザーの戦術眼は確かなものだ、一度種明かししてしまったら対策をとられると俺は踏んでいる。

 いくら奴でも弱点を付かれるならそれなりの対策は練っていると思う。

 

「双葉くん、どう? 終わった?」

「ええ、終わりました」

 

 既に設置を終えていたのか、師匠とその後ろにいる小猫が歩いてきている。

 念のため、三人は決めていた合言葉を言い合う。

 万が一幻術などで入れ替わっていたりしたら事だ、二重三重に予防線張っておくのも当たり前だろう。

 

「ちゃんとやりましたか?」

「やったからそんな目で見んな!」

 

 ジト目でこちらを見る小猫に反論する。

 畜生、俺だって朱乃先輩にそれなりに魔法の心得とか教えてもらったんだぞ! ただし攻撃魔法が全く覚えられるず、身体強化の魔法しかできてないがな!!

 

「脳筋……」

「『戦車』であるお前が言うか」

「まぁまぁ、二人共そこまでにしてそろそろ戻るよ」

 

 師匠に言われ、俺達はにらみ合いながら森を後にして旧校舎に戻った。

 リアス先輩の戦術を聞かないとな。

 

 

 

****

 

 

 

「祐斗、双葉、あなたたちは運動場の敵の牽制。出来たらでいいから撃破(テイク)して頂戴。そして陽動が終わったら双葉は朱乃の護衛について」

 

 旧校舎に戻った俺に下された命令はそれだ。

 機動力の高い師匠は狭い空間である体育館には向かないし、そっちには小猫とイチ兄が向かったので心配ないだろう……あっ、いや、心配はある。

 イチ兄がニヤニヤ笑いながら作っていた魔法、あれがすげー心配。

 

「双葉くん、ムリしないで行こう。運動場にはかなりの戦力が割かれているはず、ここで僕か君が撃破されたら僕たちは負けるかもしれない」

「はい!」

 

 運動場手前で師匠に言われるが、正直自信はない。

 向こうは全員俺より強いと思ったほうがいいだろう。今は夜だ、悪魔がもっとも強くなる時間、それに立ち向かう俺は命知らずだろう。

 森の中からこっそりと運動場を見るが……うわぁ。

 

「大漁大漁、よりどりみどりですね師匠」

「全く、ここまで戦力を割いてるとは思ってなかったよ」

『こりゃまた大勢いるな』

 

 見えるのは『兵士』が3人、『騎士』、『戦車』、『僧侶』が一人ずつとほぼ主力が出ている状態だ。伏兵もいる可能性も考えたらもうちょっとかな。

 泣けてくるわ、これは。

 

『で、どうするんだ?』

「真正面から行ったら叩き潰されますね、これ」

 

 既に先程から体育館からは激しい音が聞こえる。

 先行していたイチ兄たちがおっぱじめたんだろう。まぁ、盛大に破砕音が聞こえるが小猫が暴れまわってんだろうな、すげー気合入ってたしな。

 

『ここはおびき寄せたらどうだ。こっちはお前さんたちの庭だ』

「なるほど、ザルバの意見はもっともだね」

「いいこと言うじゃん、今日戦いが終わったら多めに魔力取っていいぞ」

『じゃあ残しておけよ? 使いきったら取るもんもクソもないからな』

 

 ザルバの軽口で俺たちは軽く笑う。

 長く生きてると言ってたがその通りでレーティングゲームの戦術にもある程度口を出してきた。こいつなりに協力してるし、焼き鳥が気に食わないよだ。

 ……そうだな、おびき寄せるのには賛成だ。森のなかには幻術がかけられているし、こっちにおびき出せばあとはどう料理するのも――――。

 

「なっ!? なんだっ!?」

「朱乃さんの攻撃だよ」

 

 一瞬の閃光の後にすさまじい衝撃と爆音が聞こえる。

 運動場ではなく音がした体育館の方を見ると黒煙と火の手が上がっている。

 

『ライザー・フェニックスさまの『兵士』三名、『戦車』一名、戦闘不能』

「す、すげえ」

「体育館ごと吹き飛ばしてるね、さすがグレモリー眷属の『女王』と言うべきだね」

 

 さらりととんでもないことを言っているが、姫島、じゃなかった朱乃先輩の本気がここまでとは思わなかった。

 イチ兄たちがしようとしたのは体育館に攻め入ること、ではなく相手を釘付けにすること。

 最低限の戦闘をして体育館を攻めると思い込ませたところを、『女王』である朱乃先輩の攻撃で一網打尽というのが作戦だったがうまく行ったらしい。

 ただしこの攻撃はチャージに時間がかかるそうで早々撃てないし、予備動作で通常時だと気づかれてしまうらしい。

だからこその陽動だったがうまくいってよかった。

 それに一気に四人の撃破は大きい! よしこのままの勢いでこっちも。

 そう意気込んでいた時、体育館の方から再び爆発音が聞こえた。

落雷の音ではなく何か爆弾のようなものが爆発した音……嫌な予感がし、アナウンスが流れる。

 

『リアス・グレモリーさまの『戦車』一名、戦闘不能』

「はっ?」

 

 頭が真っ白になり、次の瞬間俺は怒りで剣を握りしめる。

 小猫がやられた。

ただそれだけの報告で、森の中から飛び出そうとしたが震える手の師匠に止められる。

戦略的にも痛手なのは明らかだが、何より罠を仕掛けていた時のあいつの真剣な表情が忘れられない。

 恐らくは朱乃先輩の撃破に乗じて誰かが小猫を襲ったのだろう、汚い手だが有効な戦術だ、吐き気がするほど邪道な手だがな!!

体育館の見空中に浮かんでいる朱乃先輩とその前で笑っている人影が見えた。アレは確か……焼き鳥の『女王』だ。

 確か『爆弾王妃(ボム・クイーン)』とか呼ばれたやつだったか。

 焼き鳥の右腕で頭がきれる上、その戦法は強力。

 炎の魔力を相手の気づく暇を与えずに懐で起爆する戦法は卑怯だが効果的だ。

 気をつけていたが、まさかこんな序盤に投入してくるとは思わなかった。

 くそ、すまん、小猫……。

 

「師匠!」

「……あぁ、僕達も打って出よう。双葉くん、僕が囮になるから――避けるんだッ!!」

 

 咄嗟の叫び声と防衛本能で俺は身をひねる。

 次の瞬間、俺の頭があった部分に炎を纏った剣通り過ぎる。

 

「師匠ッ!!」

「くっ、『騎士』に『兵士』か!」

 

 いつの間にか周囲に、甲冑を着た女性とメイド服のような格好をした女性二人に、褐色の踊り子のような格好をした人たちに囲まれていた。

 しまった、俺のせいだ。さっきの怒りで魔力が少し漏れたんだ!

 

「私の名前はライザーさまに使える『騎士』! カーラマイン。グレモリーの『騎士』よ、名を名乗れ!」

「参ったな、名乗られてしまったら返すしか無い。僕はリアス・グレモリーの眷属、『騎士』木場祐斗!」

 

 やべえ、師匠カッコいいのとこの騎士の女性も中々正々堂々だな。

 とりあえず向こうは『騎士』同士で戦うんだろう、問題はこの『兵士』三人の方だ。

 

「黄金騎士、だったかしら。向こうの『騎士』くんも好みだけど貴方も中々」

「そいつはどーも……」

 

 魔力を体に流し込み、息を深く吐く。

 するとメイド服を着ている傍ら、セミショートの『兵士』が笑いながら言う。

 

「私達三人を相手するの? いくら黄金騎士とはいえあなたは『人間』、怪我しない内に降参(リザイン)しなさい」

「はっはっはっ、『騎士』とかまだしも十把一絡げの『兵士』じゃ相手になんねえよ」

 

 俺の言葉に反応して、向こうの怒気が強まる。

 それでいい……別に勝たなくていいんだ。俺の役割は補助、師匠のフォローするのが俺の仕事だ。

 今は向こうの『騎士』と戦う師匠の邪魔をさせないこと、相手が怒って俺に向かってくるのが理想的だ。

 

「後悔しないで頂戴っ! 死んでもね!」

「堕天使に言われたことあるよ、それ」

 

 『兵士』の三人がこちらに突っ込んでくるが……舐めてるのかな? 俺にも追える程度の上に真正面に突っ込んでくる。

 全く、人間だと舐めすぎだろ、コレなら迎撃できるよ。

 

「なっ!?」

 

 驚きの声を上げるのはふんわりヘアーのメイド服の女性。

 避けられると持ってなかったのか突き出した拳が、空振りしているのを信じられない目で見ていた。

 そのまま俺はその手を掴み、後ろから接近していた踊り子の女性に投げ飛ばす。

 

「このぉっ!!」

「おっと」

 

 ショートヘアの……面倒くさい、ショート、ふんわり、踊り子でいいか。

 ショートは魔力弾を俺に飛ばすが、イチ兄の魔力弾を受けた後だとショボく感じるし、魔剣に魔力を回して真っ二つに斬る。

 分かれた魔力弾が着弾し、地面をえぐるのを見るとそれなりに威力はあるらしい。

 

「ふっ!?」

「は、はや――――がっ!?」

 

 驚愕しているショートの懐に飛び込み、拳を腹部に叩き込む。

 怯んだショートの頭が下がっていたので剣の柄で顎を殴り飛ばす。

 空中に浮いたショートは受け身を取ること無く、そのまま地面に激突し四肢を投げ出し気絶していた。

 

「マリオン!! 貴様ぁ!!」

『小僧、後ろから来てるぞ』

「言われんでもっ!」

 

 ザルバに言われる前に、しゃがんで飛んできた魔力弾を回避する。

 全く、師匠に散々やられたわ、そんな攻撃!

 

「シュリヤー!! こいつはただの人間じゃないっ!」

「一般人だよ、コンチクショウ!!」

 

 剣を振るい、再び飛んできた魔力弾を切り裂く。

 ごきげんだな、この魔剣気に入ったわ。

 

『ほう、やるじゃないか』

「意外とな」

 

 飛んでくる魔力弾を回避したり、切り飛ばしたりしながらザルバと会話する。

 ……いや、本当に意外すぎる。三人でひーこら言うかと思ったら一人撃破、二人にも余裕を持って対応できている。

 俺が予想以上に強くなったのか、それとも向こうが弱いのかわからないけど……やらせてもらう!!

 わざと足元に魔力弾を着弾させ、土煙を起こさせる。

 

「ど、どこだ!」

「下だ、ビュレント!!」

 

 ビュレントと呼ばれた踊り子が態勢を低くする俺を見つけるがもう遅い。

 剣を振り上げ、下着みたいな防具ごと柔肌を斬る。

 ボロンとおっぱいが見えるが残念俺は尻派だし、敵に容赦する気もないんでね。

 

「ぶっ飛べ」

 

 手のひらに魔力を集中させ、踊り子の頭を掴み強引に地面に叩きつける。

 追撃に手のひらの魔力を爆発させると、綺麗な顔が台無しになり白目向いている踊り子が出来た。

 

「ば、馬鹿な……相手は人間だぞ、眷属でもない者がなぜ!!」

「お前らが弱いだけだろ」

 

 間髪入れずにふんわりの顔面に拳を叩き込み、膝蹴りを腹部に当てるとふんわりの体が浮き上がった。

 血反吐を吐きながら、ふんわりは手のひらをこちらに向ける。

 

「嘘……でしょ、ただの人間にぃいいいいいっ!!」

 

 苦し紛れの魔力弾が至近距離で発射されるが、俺は手に魔力を集めてそれを弾き飛ばす。

 ふんわりの顔が固まったのを見て、俺は笑顔で言ってやる。

 

「ただの人間舐めんな」

 

 手に集めた魔力を維持して、再び顔面に拳を叩き込む。

 ズドン!! 

 そんな音を立てて吹き飛んだふんわりは、近くの木に背をぶつけズルズルと力なく地面に横たわる。

 

『ライザー・フェニックスさまの……『兵士』三名、戦闘不能』

 

 何故か息をのんだアナウンスが聞こえた。

 どうしたんだろうか?

 

『大方、お前さんの戦いを見て驚いてるんだろうよ。ちなみに俺もぶったまげた』

「師匠より遅かったし、まさかここまでうまくいくなんて俺も思わなかったよ」

 

 そういえば師匠はと思って周囲を伺うと激しい剣戟の音が聞こえる。

 あー、あぁなると師匠って止まらねえんだよなぁ。

 

「驚いたな、ただの人間に倒されるほど彼女たちは弱くなかったはずだが」

 

 ふと前を向くと顔の半分を仮面で隠した女性と西洋のお姫様みたいな格好した女の子がいた。

 二人共こっちを警戒してんな。

 

「確か『戦車』と『僧侶』だったな」

「あぁ、私はイザベラ。黄金騎士、名を恥じぬ実力を持っていると見受ける」

「嫌ですわイザベラ。この方もどうせ頭のなかは剣剣剣、全くカーラマインったら突っ込んだかと思えば騎士ごっこなんて」

 

 うわぁ、毒舌というか辛辣だなぁおい。確かに騎士ごっこと言われても仕方ねえが、正々堂々やってるしお前味方やん。

 てかイザベラさんはともかくこの頭ドリルの子、全く構え取ってないんだがどういうこっちゃ。

 

「あぁ、この子は気にしないでくれ。この子は我が主、ライザーさまの実の妹君なんだ」

「…………ウッソだろお前」

 

 全然似てないつうか、身内、それも妹を眷属ってあの焼き鳥、まさかシスコン!?

 そんな表情が出ていたのか、イザベラさんが困った顔をしながら頬を掻く。

 

「ライザー様曰く、『妹をハーレムに入れることは世間的にも意義がある。ほら、近親相姦に憧れたり、羨ましがるやつっているじゃん?俺は妹萌えじゃないから、上級悪魔としてカタチだけってことで』だそうだ」

「うん、わかってたが言っとくわ。お前らの王、アホだろ」

 

 次の瞬間、イザベラさんの拳がギリギリで避けた俺の鼻先を掠める。

 あっぶね、気を抜いてたら殴り飛ばされていた。

 

「……主を馬鹿にされるのは眷属として不愉快だ」

「そっちはウチの先輩を不愉快にさせてる、これであいこだろ」

「それもそうか、だが我が主は本気でリアス・グレモリーを愛している……私達の誰よりもな」

 

 寂しそうな顔をしながら言うイザベラさんに同情する。

 あんのアホ焼き鳥、身近に好いてくれる奴いるじゃねえかよ、そっちほっぽいてハーレム作るとか言ってたのか、アホか。いつかかなーしみのー(Nice boat)するかもしれんな。

 同情はするが今は敵だ……だが戦車相手だとキツイな。

 高火力高防御とまさに『戦車』の名にふさわしい力を持っているだろうし、今の一撃は本気じゃない。

 マズイな、ここまで時間を使うつもりはなかったし、朱乃先輩の元に行かないと。

 

「待たせたなぁああああ!! 双葉っ! 木場ァ!!」

「イチ兄!!」

 

 その時、森の中から勢い良く突っ込んできたのはイチ兄だった。

 多分戦闘音を聞いてこっちに駆けつけてくれたんだろう。

 

「リアス・グレモリーの『兵士』か!」

「おうよ! あんたの相手は俺だ! 双葉! お前は朱乃さんのもとに!」

「サンキュー! 気をつけろよ! イチ兄!」

 

 バトンタッチし、俺は走りだす。

 後ろで激しい殴打の音が聞こえるがイチ兄なら大丈夫だ! 多分な!!

 

『おい、ぶん殴られるが赤いのは大丈夫か?』

「頑丈が取り柄のイチ兄だ! 大丈夫!!」

 

 急いで森を抜けて運動場を突っ切りながらテニスコートを目指す。

 あそこに朱乃先輩の魔力を感じる!!

 

『急げよ、小僧! 『女王』がやられたら一気にゲームの戦局がひっくり返るぞ!』

「わかってる!!」

 

 無事でいてください、朱乃先輩!!

 

 

 

**朱乃視点**

 

 

 

「くぅっ!」

 

 息をつく暇もなく、次々の私の飛ぶ先を予測してユーベルーナは爆炎を放ってくる。

 

「どうなさいましたか? 『雷の巫女』この程度ですの?」

「余裕ですわ……ねっ!!」

 

 私も落雷を放ちつつ確実に彼女にダメージを蓄積させていくけれど決定打が撃てずにいた。

 それは向こうも同じこと、私と彼女は似ている。

 お互いに固定砲台のような役割を持っているけれども、彼女の方が技量は高く、一撃の重さなら私が高い。だからこそ先程から膠着状態が続いている。

 既に着ている制服はボロボロ、そして残りの魔力も心許ない。しかしそれは向こうも同じこと。

 軽口を叩いていますけど、その顔には余裕の顔が徐々に無くなってきていました。

 

「必死ね、あなたたちの『戦車』がよっぽど大事だったのかしら」

 

 相手に気づかれないように歯を食いしばる。

 大事、なんてものじゃない。グレモリーは眷属を大事にする、それは眷属も同じ。

 眷属になればその子はもう家族。過去に何をして、何が起きていようが全力で守りぬくのが信条。

 その家族が闇討ち同然の攻撃で倒された。

 

「あら、怖い顔。試しにあの黄金騎士のガキを撃破しようかしら」

「なんですって?」

 

 聞きづてならない言葉を聞いた。

 あの子を、双葉くんを撃破? この……このっ!!

 

「攻撃が激しくなったわね。やっぱりあなた彼に惚れているのね、この前の部室で会った時に一目見て気づいたわ……でも駄目じゃない、『女王』がそんなことじゃ」

「あぐっ!?」

 

 しまったと思った時にはもう遅かった。

 いつの間に仕掛けていたわからないけれど、背中に爆炎を受けた私は、バランスを崩し地面に真っ逆さまに落ちる。

 ……このままじゃ、リタイヤね、でも、あいつだけは倒していくわ!!

 ありったけの魔力をかき集め、勝った気でいるユーベルーナめがけて落雷を叩き込む。

 彼女は反撃されると思っていなかったのでしょうね。飛んできた雷が胸に直撃して、私のように地面に落ちていく。

 

「ぐ、ぐぅううう!」

 

 なんとか受け身をとるけれど、落下した衝撃で全身を打ってしまう。

 けれど良かったわ、この傷なら自分で治療してなんとか戦線復帰出来る。無理なら少し休んで、アーシアさんの元に戻れば完全に傷の方は回復できるわ。

 

「さすが『雷の巫女』ここまでとは思いませんでしたわ……けれども、残念ですわ」

「何故、傷が……」

 

 こちらに歩いてくるユーベルーナは全くの無傷でした。

 おかしい、回復したにしても早すぎますしアーシアさんのような回復の神器ならば力の波動を感じるはず……まさか。

 

「フェニックスが身内だとこれも融通が効くのよ」

「フェニックスの、涙っ!」

 

 フェニックスの涙、レーティングゲームにおいて最上級の回復アイテムとして高額で取引される代物。まさか、用意していたなんて!!

 いえ、それは想像が出来たはずですわ。相手はフェニックスの涙の大本であるフェニックス家、この戦いに万が一の可能性も無くすため持ってきてもおかしくはないはずですわ。

 ……ごめんなさい、リアス。私はここまでみたい。

 

「ふふっ、これが物語なら馬に乗った騎士でも登場するのかしらね。でもこれは現実、そんな都合のいいことは存在しないわ!!」

「……ッ」

 

 ユーベルーナが魔力を溜める。

 ……体を動かすと激痛で意識が朦朧となる。

 駄目、みたいね、もう。

 

「諦めたみたいね。さぁリタイヤして我が王(ライザーさま)に蹂躙されるそちらの王(リアス・グレモリー)を見ていなさい! 弱い弱い『女王』さまっ!!」

 

 双葉くん、ごめんなさ――――。

 

「おぉおおおおおおっ!! 牙狼ぉおおおおおおっ!!」

 

 諦めていたその時、爆炎の前に双葉くんが割り込んできた。

 そして彼を包む光があまりにも眩しくて、目をつぶってしまいました。

 ……どうなったのかしら、私はリタイヤしてしまったのかしら。

 

「ごめんなさい、朱乃先輩……遅くなりました」

 

 ゆっくりと目を開けると、そこには鎧を纏った双葉くんが私を庇っていました。

 自然と涙が流れてしまう……まるで、本当に物語の騎士みたい。

 

「黄金騎士だからかしら? いいタイミングね」

「黙ってろ……」

 

 今まで聞いたこともない彼の声には、怒りしか感じませんでした。

 守ってもらっているはずの私も体の震えが止まらない。これが、黄金騎士の威圧感なのかしら。

 それはユーベルーナも同じようで顔を歪めながら、彼に向かって爆炎を放ち続ける。

 

「このっ! このっ!! ただの人間が鎧を纏ったくらいで」

「ただの鎧じゃないっ!!」

 

 彼が剣を抜くと辺りに浮遊していた魔力が四散する。

 ……凄い、これが本気になった双葉くん。

 

「俺は牙狼ッ! 黄金騎士だ!!」

 

 そう言って彼は跳躍した。

 

 




ライザーの眷属の名前わからないです。木場が倒した三人名前あるけど誰が誰だか……もしも分かってて間違えたら訂正お願いします。てかこれ書くために久々にアニメ見ました、小猫のちっぱいカワイイヤッター!! 全くDVDは最高やで。
ちなみに今回兵士の三人を軽々と倒していますが、木場を舐めてたとはいえ瞬殺された三人に負けるわけ無いだろ! ということで楽に勝たせました。正直、ライザー自身が強すぎて、この時期だと眷属の人たち弱いよねって話。まぁ、双葉は周りが悪魔なせいで自分を卑下しすぎてます、強化の魔法を使ってる時点で十二回強化したイッセーと同等より少し下程度です。
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