ハイスクールD×D 黄金騎士を受け継ぐもの   作:相感

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やっと、金色になれたんやなって


意地のぶつかり合い

 ようやく目が慣れたのか、イチ兄の場所をよく見ようとする。

 すると何かが高速で動き、ライザーに向かっていく。

 

「な、なにっ!?」

 

 驚いたライザーが正面から受け止めようとするが、向かっていく何かが強引に防御の上から拳を叩き込み、ライザーは態勢を崩すがなんとか受け止めて、剣で弾き飛ばす。

 す、凄い……なんだありゃ。

 

『まさか……赤いの、お前さんそこまでするか!』

「ザルバ?」

『よく見てみろ、お前さんの兄の姿を』

 

 イチ兄なのかよ!?。

 第一印象としては赤い小型のドラゴンだ。

 イチ兄らしき人影は空中に飛ばされるが背中から魔力を放出し、まるでブースターのようにふかせると強引に屋上の床を砕きながら降り立つ。

 赤い全身鎧、鋭角なフォルムで籠手が右腕にも装着されており、全身の各部に宝玉が嵌めこまれていた。

 な、なんだ!? まさかイチ兄まで魔戒騎士になったんじゃないだろうな。

 

『いいや、違う。あれは禁じられた外法にして神器の力を最大限に発揮した姿!』

「イッセー、あなた……禁手(バランスブレイカー)に!?」

「ええ、部長。十秒だけ無敵になれる俺の最後の奥の手! 『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』! 俺を止めたきゃ神か魔王さま連れて来い!!」

(テン)

 

 カウントダウンのボイスが俺たちに聞こえる。

 ……十秒か、俺も似たようなもんだ!

 牙狼剣を天に掲げ、円を作って鎧を召喚し、後ろにいるリアス先輩たちに叫ぶ。

 

「リアス先輩! アーシア! ここから退避してくれ!」

「いやです! 私はここに残ります!」

「双葉、あなたが逃げずに立ち向かうのに、主である私が逃げ出すなんて選択肢はないわ。ここに残り、あなたたちの戦いを見届けるわ!」

 

 ……強い人達だ、本当にな。

 だからこそ、ますますライザーに渡すわけには行かない、この人はそんなに安い女じゃない!

 

「では部長、下がっていてください。いくよ! 双葉くん!」

「はい!」

 

 師匠も両手に魔剣を想像して走りだし、肩で息をするイチ兄の隣に立つ。

 

「双葉、木場!」

「話すのは後だ! 君たち二人が戦える内に勝負を決める!」

 

 師匠の声に俺たちは武器と拳を構える。

 次の瞬間だった、桃色の炎が斬撃の軌跡を描いて飛んで来る。

 くそっ! これが烈火炎装の遠距離攻撃ってやつか!

 イチ兄と俺は屋上を蹴って回避するが、師匠は打ち消すのか剣を構えている。

 

『馬鹿野郎っ! 烈火武装の炎は普通の炎じゃねえぞ!』

「なにっ!?」

 

 ドゴォオオオオン!!

 激しい爆発音がして、師匠がいた位置から火柱が立った。

 師匠の叫び声が聞こえ、俺は足を止めてそちらに向く。

 

「師匠!!」

「双葉まだ来るぞ!!」

 

 イチ兄の声でなんとか避けるが、飛んできた斬撃は床を削り取りながら空中で大爆発を起こす。

 とんでもない威力だ、当たれば一撃で鎧が強制送還されるかもしれない。

 

「さすが禁手の一撃というべきか。中々効いたぞ!」

 

 受け止めて手がしびれたのか、手首を振りながらライザーはイチ兄に言う。

 効いてる風には見えねえよなぁ、クソッタレが!

 

「ケロッとしてなにいってやがるんだよ!?」

『当たり前だ。鎧の防御力を底上げするのも烈火炎装の力だ。この場で一番強いのは紛れも無いアイツだ』

 

 ドライグの言葉に驚く。

 マジかよ、牙狼と禁手の鎧が合わさっても無理のか。

 絶望が俺を遅い、鎧から重みを感じ始める。

 

『おい、赤いの、譲渡の力は覚醒したか?』

「ん? できるがそれがどうした?」

 

 譲渡? なんの話だ? と俺が首をかしげているがそれを無視してザルバは話を進める。

 

『ならいい。小僧、アレの出番だ! いいか、赤い小僧、この小僧がぶん殴る前に譲渡の力を左手のコレに付与しろ』

「何をごちゃごちゃと! 貴様らは焼きつくす! 赤龍帝も黄金騎士も焼き尽くせばリアスも諦めるだろうからな!!」

 

 ライザーは叫びながら背に桃色の烈火炎装の羽を作り出し、こちらに突っ込んでくる。

 俺は腰からアーシアから受け取った『アレ』を左手で握り締めると走りだす。

 

「フェニックスの業火に焼かれて燃え尽きろ、黄金騎士!!」

『フェニックスの炎はドラゴンの鎧すら溶かす、避けたほうが得策だぜ?』

 

 確かに、桃色の炎を纏った剣が俺めがけて振り下ろされるがまともに受けたらただじゃすまないだろう。

 けどな、一発ぶち込むなら受け止め方が早い!!

 

「こんのっ!!」

 

 打ち合った剣同士が衝撃波を発生させ、屋上の床がクモの巣状にひび割れていく。

 ま、マズイ……受け止めたのはいいが反撃できねえ!?

 

「剣なら勝てると思ったか! 多少の技量差なんて力で押しつぶせばいいんだよ!!」

 

 ライザーの剣を受け止める度、信じられない重さと熱量が俺に伝わる。

 牙狼が無かったら一秒も持たねえぞ。

 イチ兄も加勢してくれるが、ライザーは俺たち二人の攻撃をいなしながらも攻撃を加える。

 くそっ、剣術の方も心あんのかよ!

 死への恐怖と制限時間という縛りで沸き起こる焦燥感で手が震える。

 

「どうした!! 黄金騎士! そして赤龍帝! 恐怖しているのか! 当たり前か! 下級悪魔とただの人間、その鎧がなければお前らは俺の炎で死んでいた! 諦めろ! お前たちには勝ち目はない」

「それがどうした、このクソ焼き鳥がぁああああああああああっ!!!」

 

 思い切り牙狼剣を叩きつけてライザーの手の剣を取り落とさせる。

 しかし、ライザーは余裕なのか取り落とした剣を拾おうともせず、俺に向かって炎を纏わせた拳を突き出す。

 俺も左腕を突き出しパンチする。

 

『今だ、赤いの!!』

「おう! ドライグ!」

『Boost!! Transfer(トランスファー)!!』

「何をしようとも無駄無駄無駄ァッ!!」

 

 クロスカウンターの要領でライザーと俺の顔面に拳が叩き込まれる。

 叩きこまれた衝撃で意識が一瞬だけ遠のくがすぐさま戻す。

 ライザーは浅かったのか、体を少しのけぞらせるだけだった。

 

「くくくっ、悪あがき――――ゴバッ!」

 

 鎧が強制解除され、ライザーが血反吐を吐きながら膝を付く。

 どうやら、鎧をつけていても弱点はそのままみたいだな。

 俺は種明かしをするために左手を広げてライザーに見せつける。

 ライザーは鎧を纏っているがその顔は驚いているように見えた。

 

「十字架だとぉ」

「悪いな、元シスターがいたもんでな、少々拝借してきた」

「双葉、そいつを俺にくれよ」

 

 イチ兄が左腕で強引に十字架をひったくり、握りしめながらライザーの顎にアッパーカットを決める。

 吐血しながら飛ぶライザーは驚きの声を上げるが、俺もだ。てかイチ兄って悪魔だから触れられないんじゃ!?

 

「馬鹿な、おまえは悪魔だろうに!? 何故十字架を持てる!」

『簡単だ、フェニックス。こいつはな、自身の左腕を代償に禁手という力を手に入れたのさ!』

 

 リアス先輩の息を呑む声が聞こえる。

 それは俺も同じだ。

 馬鹿野郎と叫びたいが、イチ兄ならやりかねない。何かを守るためにはなりふり構わず実行する……俺なんかより魔戒騎士の素質があるんじゃないか?

 イチ兄は十字架を握りしめ絞り出すように言う。

 

「あぁ、今の俺の左腕は正真正銘のドラゴンだ。悪魔じゃない!」

「狂っている……イカれている、おまえを心底畏怖したよ! だがな! 俺も負けてられなんだよ!」

 

 空中で羽を広げ、ライザーは再び鎧を装着する。

 クソッタレが何回装着すりゃ気が済むんだよ!!

 

「お前たちを倒す! そしてリアスという最上の褒美をもらう!」

「だから部長は俺のもんだっていってんだろうがぁああああああああああっ!!」

 

 イチ兄が鎧の背中部分についたブースターをふかしながら、ライザーへ突っ込む!

 ライザーは剣に炎をため、同じく突っ込む。

 イチ兄の拳とライザーの剣がぶつかり合い、激しい閃光と轟音が起きる。

 

「いってぇっ!!」

「ぐっ!?」

 

 屋上の床にイチ兄とライザーが落下する。

 しかし、イチ兄の体からは鎧が消失していた。

 

「イチ兄!?」

「どういうことだよ、ドライグ! 十秒経ってないぞ!」

『お前の実力では十秒保たなかったということだ……代償は足りていたんだがな』

「アレだけ修行したのにか!?」

『赤い小僧、悪魔の修行は数年、下手すりゃ十年単位だ。しかし数秒といえども禁手になったのは誇るべきだぞ』

 

 イチ兄は悔しげに屋上の床をドラゴンとなった左腕で殴りつける。

 マズイな、戦えるのはまた俺だけか!?

 そう焦っているとライザーが落下したところから膨大な魔力と熱量を感じた。

 

「よくやったと褒め称えよう! ここまで俺を追い詰めた奴はいなかったよ! 赤龍帝に黄金騎士、その名は伊達ではなかったと記憶しよう! だがおまえ達はもう限界だ!」

 

 ライザーは俺達に感服しているのか、いつものような小馬鹿にした声色は感じない。

 天に掲げた剣先にはまるで太陽のように凝縮された火球があった。

 烈火炎装の炎と魔力の全てを俺たちにぶつけるつもりか。

 

「あと一年、いや半年もあれば俺はお前たちに負けていただろう。だがこの瞬間では俺の方が強い! お前たちを倒せばあとはリアスを撃破して終了だ」

「……ザルバ、溶ける覚悟しとけ」

『アレを受け止める気か!? 死ぬ気か!』

「双葉、馬鹿いうな!! あんなの受けたら死ぬぞ!」

 

 死ぬ気はないが自信はないし、あんなもんが直撃すればリアス先輩やアーシア、負傷しているだろう師匠が危ない、そのくらいの威力はあるだろう。

 一歩踏み出すと、熱波と魔力の波が俺にぶつかる。

 

――――怖い、逃げ出したい、無理だ。

 

 俺の心がそう叫ぶ。

 

 だけど――――。

 

 

「たしか牙狼は皆の希望になんだろ! だったらなってやろうじゃねえか!!」

 

 強がりでも何でもいい、心を奮い立たせる。

 牙狼の言葉の意味、旧冥界語で「希望」を意味するとザルバは教えてくれた。

 ならなってやるよ、この絶望的な状況を打破して希望になってやる。

 

「くくくっ、おまえも大概に狂っているな! 気にいったよ! レイヴェルの眷属にしてトレードで俺の眷属として鍛えてやろう!」

 

 いるかボケええ!! と心の中で叫ぶ。

 というか、地味にこいつ俺を悪魔にする気だよ! ますます負けられなくなったわ!

 

『魔力を開放するぞ! もうどうにでもなりやがれ!』

 

 タガが外れたように、魔力が俺の全身に巡り、鎧の中にある俺の身体を焼く。

 めちゃくちゃ痛いが封印された状態じゃ間違いなく耐え切れない。だが、このままいても俺の体はあと一分も耐え切れないだろう。

 牙狼だっていつ強制的に外れるかわからない。

 

「本当に受けきるようだな! ならばよし! 受けきってみせろ、黄金騎士ぃいいっ!!」

 

 ライザーが剣を振り下ろし、火球がゆっくりと迫ってくる。

 チリチリとした肌の痛みを感じる。まさか鎧を突き抜けて炎の熱がきてんのか!? とんでもねえな! 上級悪魔ってのは。

 

『上級悪魔どころか最上級悪魔の一撃だぞ! 消し炭になっちまう』

 

 そんなザルバの叫び声を無視して、火球に突っ込み剣を振りかぶる。

 とてつもない熱と力が牙狼剣から伝わり、俺の体が吹き飛びそうになる。

 それをこらえて、足と腕に魔力を回してなんとか堪える。

 ブチブチと腕と足から何かが引きちぎれる音がするが気にしてられない。耐え切れなければ牙狼の鎧ごと、俺は消し炭になるからだ

 

「ぐ、ぐぉおおおおっ!」

 

 火球を剣で受け止めるが徐々に体が後ろに下がっていく。

 体中が燃えるように熱い。全身から血が噴き出し、鎧を内側から赤く染め上げる。

 口からも血を吐き出すが、あまりの熱量にすぐに蒸発してしまう。

 

「双葉っ!! やめろ、やめてくれ!!」

「やめない! イチ兄が残っていればまだ勝機はある! いいからブーステッド・ギアで力ためてろ!!」

 

 もう殆ど俺には力が残っていない。

 そして火球を受け止めきれないのはわかりきっているが、この火球のコントロールをしているのかライザーは剣を振り下ろした格好で止まっている。

 イチ兄が力をためきれれば!!

 

「双葉っ! ドライグ!」

Burst(バースト)

 

 無機質な音声が響き、イチ兄が激しく吐血する。

 イチ兄の体が地面に横たわり、痙攣している。

 

「こんなっ、時にっ!」

『馬鹿野郎、禁手の後だぞ。無茶に決まっている、コレ以上するなら相棒の寿命が削れるぞ!』

 

 当たり前か、今まで連戦していたのにも関わらず左腕を代償に禁手なんかしたんだ。

 とっくの昔にイチ兄は限界だったんだ。

 なら俺は……弟として兄を守る!!

 徐々に剣に力を篭め、火球を押し戻していく。

 なぜだか体から力があふれる。俺も限界なんだがな、火事場の馬鹿力ってやつか。

 

「まだ抗うか! 何故戦う! そこまでボロボロになりながら、もう限界だろう! 苦しいだろう! おまえはリアスの眷属ではないのに何故そこまでする!」

「俺はな、気にいってるんだよ。オカルト研究部って場所で笑うリアス先輩の顔がなぁ!!」

 

 牙狼剣が魔力に反応し、黄金の輝きを見せる。

 

「グレモリーだとか、上級悪魔だとかそんなの関係なく、あそこでイチ兄たちと笑い合う顔が無くなるんだったら俺は徹底的に抗ってやる! 俺は眷属じゃない、だから後輩としてリアス先輩のために戦う!」

 

 ピシ。

 そんな音を立てながら火球に亀裂が入る。

 牙狼剣の黄金が剣の柄を伝い、腕に広がり、そして俺の全身に広がる。

 暖かい、ライザーの火ではなく俺の体を包み込むこの光が妙に暖かい。何故か、母親に抱かれているようなそんな感じがする。

 

「馬鹿な、受け止められるはずがない! どうした翔牙! 数々の敵を焼きつくしてきたおまえの炎はこの程度か!!」

 

 再び火球の圧力が強まり、また俺の足が少しずつ後退する。

 けれども俺は先程まで感じていた、俺の中の怒りや恐怖が薄まっていくのを感じる。

 なぜだか分からない、一人で牙狼剣を受け止めているはずなのに誰かに手助けされているようなそんな感触も感じる。

 

『お、おい、小僧!? お前さんまさか』

 

 ザルバの声も、後ろで叫ぶイチ兄の声も遠く感じる。

 ただ牙狼剣を握る感触だけが伝わる。

 

 ――――強くなれ

 

 耳元で誰かの声が聞こえた。

 誰かはわからない、聞いたこともないし、この絶体絶命の状況で俺が幻聴でも聞いたのかもしれない。

 幻聴でも何でも良かった、その一言が俺の背を押してくれた。

 

「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 喉が壊れるほど叫び、俺は受け止めていた桃色の火球を切り裂く。

 二つに裂けた火球は彼方へ飛んでいき、地響きを立てながら学校のどこかに着弾した。

 まだ刀身に残る炎を振り払うように剣を振ると、火打ち石で火をおこしたように突然、剣と鎧に緑色の炎が着火する。

 

「烈火炎装!? 俺の火を利用したのかぁ!」

「切り開いてみせる、リアス先輩の希望を!!」

 

 剣をザルバに押し当て、研ぐように手前に引く。

 そしてライザーと同時に跳躍し、剣を打ち合う。

 キィィィィンと金属音が響き、そのまま空中でライザーと斬り合い、殴り合う。

 

「こいつ、急に動きが!?」

「ッ!!」

 

 徐々に俺の剣の速さがライザーを超え、奴の鎧を切り裂き、殴りつける。

 自分でも驚くくらいに体が軽いし、鎧は俺の思うように動く。

 

「認めん、認めんぞ!! 黄金騎士など! ただの伝説だ!」

 

 地面に着地し、ライザーの拳と俺の拳がぶつかり合う。

 するとライザーの鎧に罅が入り、突き出した腕の部分が砕け散る。

 驚くライザーは無防備に体を晒す。俺は大きく牙狼剣を振り、斜めに切り裂いた。

 

「ぐああああああああっ!?」

「金色の……光?」

 

 切り裂いたライザーの胸部から金色の光が俺に向かって降り注いだ。

 後にライザーの口から聞いたのだが、光にあたった牙狼が黄金の輝きを取り戻したと言った。

 しかし、この時の俺はそれに気づかず掌底でライザーの体を吹き飛ばした。

 

「何者だ、何者なんだお前は!!」

 

 傷を抑えながら、剣でフラフラと立つライザーにそう叫ばれ、俺は剣を構えながら自然と名乗った。

 

「我が名は牙狼! 黄金騎士だ!!」

 

 我に返り、俺は呆然と金色に輝く腕や胴体を見る。

 場違いだと分かっているが、綺麗だと思ってしまった。

 そんな時だ、イチ兄が立ち上がり叫んだ。

 

「弟が命張ってんだぞ……いいから、力を寄越せぇえええええええ、ブーステッド・ギアァアアアア!!」

『Limited over boost!!』

 

 イチ兄の手に再びブーステッド・ギアが装着され、俺の隣に立つ。

 無言で目配せした俺達は、レイナーレと戦ったように同時に走りだした。

 堕天使と戦ったときと違うのはイチ兄と俺が並走できていることだろう。もう『騎士』になられても追いつけるぜ、イチ兄!!

 

「こんの! 化物どもがぁあああ!」

「お前に言われたくは」

「ないっ!!」

 

 肩で息をしていたライザーは俺達に炎と烈火炎装の斬撃を放ってくるが、明らかに最初よりも威力が桁違いに下がっていた。

 俺が斬撃を切り裂き、イチ兄は炎を拳で打ち消す。

 そして同時に踏み込み、拳と剣をライザーの体に叩き込む!

 ライザーは大きく態勢を崩すが、気迫で踏みとどまり、俺とイチ兄に同じように拳と剣戟を加える。

 それをまともにくらうが、俺達も歯をくいしばって踏みとどまりもう一度同じように切り裂き、殴る。

 

「この野郎っ!! 倒れやがれっ!」

「舐めるなよ、俺はライザー・フェニックス! いずれは冥界を背負っていく男だ!! こんな場所で負けていられるか!!」

 

 もはや戦いではなかった。

 攻撃とも言えない殴打と剣戟の応酬。どちらかが先に倒れるか根比べというわけだ。

 なるほど、魔戒騎士に選ばれるだけはある。こいつは磨けば光るぜ!

 

「焼き鳥、いやライザー・フェニックス! 俺はあんたを誤解してたよ、ただの女たらしかと思ったら中々熱いじゃねえか!!」

 

そう言って、俺はいつの間にか腰にマウントしてあった瓶を握り締めるとライザーに向かって投げつける。

 コレはアーシアの私物である聖水だ。だが上級悪魔には効かないと事前に聞かされている。

 だが当たってくれと俺は願う。

 

「聖水だと!? 上級悪魔に効くと思っているのかぁああっ!!」

 

 怒りに震えた叫び声を上げながら、ライザーは俺とイチ兄を強引に弾き飛ばし、そのまま聖水の瓶を斬り壊す。

 やった! 普段のライザーなら避けていただろうが、頭に血が上った今のあいつならそうしてくれると信じてたぜ!

 瓶からこぼれた中身がライザーの鎧を濡らすがライザーは自分のミスも気づかず鎧の下で不敵に笑うように嘲笑する。

 

「無駄だと言っているだろうがァーッ!! 聖水程度ではこのライザー、を……」

 

 気づいたか、でもおせえよ。

 もうイチ兄は俺の意図に気づいてくれたのか、にやけながら俺にウィンクする。

 

「火を消すなら水だよな! 双葉ァ!」

『Transfer!!』

「しまっ――――」

 

 本来ならば、この聖水は目くらましのように使おうと思っていたんだ。

 けれどもイチ兄の譲渡の力を使えば、何倍にも効力を上げられる。

 そう、上級悪魔すら滅するほどにな!!

 

「ぐぉおおおお!?」

 

 熱した物を水で急速に冷やした時のような音があたりに響く。

 ライザーは苦悶の声を上げながらもがき苦しむ。

 背中から放出していた炎の翼が歪み、ついには消え鎧も装着が解除される。

 

「な、めるなぁああああっ!」

 

 ライザーが走りだし、俺に向かって拳を突き出す。

 今まで一番重い一撃が俺の腹部に突き刺さり、俺はたまらず血を吐きながらうずくまる。

 決死の一撃だったんだろう。上級悪魔、フェニックス家というプライドも捨てて襲いかかるライザーの一撃は、さっきの火球よりも心が篭っていた。

 全身から力が抜け、膝をつくと金色に輝いていた鎧が再び黒くなり、俺の体から離れる。

 

「WRYYYYYYYYYYYYY!! 死ねおやぁあああっ! 人間!!」

 

 狂ったように叫びながら、ライザーは血を吐きながら炎を纏った拳を俺に振り下ろす。

 イチ兄は間に合わないし、防御魔法をしても耐え切れないだろう。

 リタイヤを覚悟し、俺は振り下ろされる拳を見つめる。

 スローモーションのように向かってくる拳は俺に当たる前に、天高く舞った。

 

「遅くなったね、双葉くん。よく頑張ったよ」

 

 いつの間にか、俺の前に立った師匠がライザーの腕を跳ね上がるように斜めに切り上げていた。

 いつものようににこやかに笑っているが、上半身の服が焼け焦げているのを見るとかなりやばかったらしい。よく来てくれました、さすがは師匠!

 

「ぐぎゃあああ! リアスの『騎士』か、邪魔をするなぁあああああああああ!」

「残念ですが『騎士』だけではありませんわ」

 

 師匠が素早くライザーから距離を取ると、ライザーめがけて雷が落ちる。

 もはや避ける力すら無いのか、絶叫しながらライザーは雷を一身に受ける。

 この攻撃は間違いない、あの人だ。

 空中にいつもの様に笑みを浮かべながら雷撃を再びライザーに当てる。

 

「今までの鬱憤をこめた一撃です、たっぷり味わってくださる?」

「『女王』までこ、の……このクソどもがぁああああああっ!」

 

 叫びながら、ライザーは体にまとわりつく雷撃を振り払い、背中から再び巨大な炎の翼を広げる。

 まだ粘るのか、魔戒騎士に選ばれただけあって気力は無駄にあるな!

 

「何故だ、何故わからない!! この縁談はフェニックス、グレモリーだけの問題じゃない。悪魔の未来がかかっている! 貴様らのような転生悪魔や人間にわかるか! 純粋悪魔というのが如何に重要なのかと!!」

「わかってたまるかよっ!!」

 

 もう振ることすら出来ない牙狼剣を放り投げ、俺は師匠の静止を振りきって走りだす。

 そう分かってたまるか。未来だとか、家の問題とか俺にはとんとわからねえ、でもこれだけはわかる。

 リアス先輩は自分が選んだ誰かと結ばれたいって望む、ただの女の子だってことだ!!

 

「俺は人間だ! そんなことは知ったこっちゃねえがこれだけは言える。心底惚れてもいねえ女を、家の都合で泣かせてんじゃねえよ!! 焼き鳥!!」

「双葉ああああああああああああああああっ! これが本当にラストだぁあああああ!!」

『やれ! 小僧、いや双葉ッ!!』

「おぉおおおおおおおおっ!!」

『Dragon over Transfer!!!!』

 

 握りしめた拳にありったけの魔力を込め、ダメ押しにもう一本持ってきた聖水をふりかける。

 イチ兄の譲渡の力もあり、何倍にも膨れ上がった魔力は固体化して俺の拳を金色に染め上げ、光り輝く。その形は口を大きく開いたドラゴンのようだった。

 それを見たライザーが慌てふためく。

 

「お、俺はライザー、ライザー・フェニックス!! 栄えあるフェニックス家で上級悪魔なんだ! こんな、こんなやつにこのライザーがやられるなぞぉおおっ!」

 

 最後の足掻きなのか、鎧を召喚することも忘れライザーは振り絞るように炎の塊を俺に投げつけてくる。

 しかし、焼きつくすように襲いかかる炎を、朱乃先輩と師匠が打ち消してくれる。

 

「行ってくれっ! 双葉くん」

「思い切りぶん殴って差し上げて!!」

 

 ゆっくりと歩を進め、

 そしてライザーに向けて思い切り拳を振りかぶりながら叫ぶ。

 

「この一撃はイチ兄(赤龍帝)と!!」

 

 屋上の床を砕き、奴の頭部を狙って拳を放った。

 

(黄金騎士)の!!」

 

 ライザーは防御魔法を使い、障壁を作るが俺の拳はそれをガラスのように容易に破壊し、右頬の部分から思い切りぶん殴る。

 

「怒りの一撃だぁああああああああああ!!」

 

 ズゴォオオオオオオオオオンッ!!

 そんな破砕音を立てながら、俺の一撃はライザーの頬を完全に捉える。

 その瞬間、金色の閃光がフィールドいっぱいに広がり、俺の視界を金色に染め上げる。だが拳に伝わる感覚を信じて殴り抜けた。

 

「ゴバッ……に、人間に、俺が……」

 

 光が収まり、血反吐を吐きながらライザーは前のめりに倒れ、そして起き上がることはなかった。

 だが俺も似たようなものだった。今までの反動か、俺も口から大量の血を吐き前のめりに倒れる

 周囲から皆の声が聞こえるが限界を超えた俺の意識は闇に飲み込まれるように消えていった。

 

 

 

**観客席視点(三人称)**

 

 

 

「……ライザー・フェニックス様、リタイア。よって勝者はリアス・グレモリー様です」

 

 アナウンスするグレイフィアの声は硬かった。

 特訓前に出会った黄金騎士、いや未熟な魔戒騎士とも言えない少年の戦いぶりに驚嘆していたからだ。

 『兵士』三人を倒し、『女王』を膨大な魔力で押しつぶし、仲間の援護もあったが圧倒的実力差のライザーを倒したのだ、驚かない方が無理という話だ。

 グレイフィアだけではない、この観客席で見ていたグレモリー家とフェニックス家も息を呑んでいた。

 負けるとは露とも思っていないと言えば嘘になるが、少なくとも修行前のリアスたちの実力はライザーに遠く及ばなかった。さらにはかつてフェニックスが打倒し、勝ち取った鎧を纏ったライザーがあそこまで追いつめられるとは予想していなかった。

 さらには黄金を失った牙狼が一瞬だけでも黄金を取り戻したという事実は、先の大戦で実際に戦った両家に与えた衝撃は大きかった。

 そんな重い雰囲気の中、初めに口を開いたのはグレモリー家の当主、リアスの父であった。

 

「フェニックス卿。今回の婚約、このような形になってしまい、申し訳ない。無礼承知で悪いのだが、今回は――――」

「みなまで言わないでください、グレモリー卿。お互い欲を出しすぎたのです。すでに純血悪魔の孫がいるのにも関わらず、我々は子供に欲を押しつけすぎた」

「いえ、私こそ娘に自分の欲を押しつけすぎました」

「……赤龍帝と黄金騎士、兵藤くんと言いましたが。あの二人はライザーにとっていい薬になったでしょう。フェニックス、魔戒騎士共に絶対ではないということを知っただけでも息子にとってはいい縁談となりました」

「フェニックス卿……」

「未熟と高をくくっていたのは私も息子も同じです。黄金騎士、その名は伊達ではなかった。娘さんはいい縁を持っているようだ」

 

 晴れ晴れとしたフェニックス家当主とは違い、グレモリー家当主はその言葉で顔をしかめる。

 

「黄金騎士に赤龍帝、まさか娘が巡りあうとは」

赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)白い龍(バニシング・ドラゴン)、封印されてもなお戦い続ける二つのドラゴンの片割れ、目覚めているのかそれとも……それとかの魔戒騎士の情報は?」

「今だ捕捉できていません。そもそも本当にいるのかどうかすら」

 

 今まで押し黙っていた若い男性、現魔王であるサーゼクス・ルシファーが口を開いた。

 

「厄介なことだ。ニ天龍ですら頭がいたいというのに」

「牙狼が復活したことと関係があるのでしょうか? 牙狼は古来より大きな戦乱を開くキッカケになりました」

「無視できない要因だと思いますが、彼が黄金騎士であるならアレもいずれ彼の前に立つでしょう」

 

 サーゼクスは目を細め、愛しい妹の眷属たちが必死に治療している未熟な黄金騎士を見る。

 その目から何を思っているのか推し量れないが、期待のような色が見える。

 

「報告では、暗黒騎士でしたか……黄金と暗黒、この時代で何が起きるのやら」

 

 




今回の勝因、ライザーが舐めてたのと双葉が予想以上に牙狼の力を引き出せていたのとイッセーが原作以上に寿命削りながら戦ったため。
正直に言いますと、今回勝てたのは本当に奇跡。あとライザーが原作以上に粘ったのはやっぱり魔戒騎士に選ばれる精神力だったということ。
ライザーは中の人ネタで時間止めたりさせたかったがまぁそこは、当初の予定だと魔戒騎士ではなくテッカマ◯エビル的な強化骨格つけさせようかなと思ってました。
あと予想外にライザーの魔戒騎士化が受けてよかったです。
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