ハイスクールD×D 黄金騎士を受け継ぐもの   作:相感

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アカンアカン、筆が止まらねえ。


コカビエル

 またしても数日が経った。

 あの後、俺達はゼノヴィアたちがくれた神父服(偽物)を受け取り町中をねり歩いていた。

 俺は少し都合があるからと部活に顔を出さなくなったがイチ兄たちはマズイ。匙先輩も手伝ってくれるが、生徒会の仕事もあるしソーナ先輩にバレないようにしてくれるがバレるのは時間の問題だ。

 ……俺って問題児だよなぁ、未来の義理の姉に対してなんてことを。今度お菓子でも作ってご機嫌を取らなきゃ、あと漬物。

 今日はなんとか全員揃っているがバレたら大目玉だわ。

 

「収穫なしか」

「おかしいな、あのクソ神父ならホイホイ釣れると持ったんだが」

 

 匙先輩が苛立ちげに言うが仕方ないだろう。

 ここ数日、小猫や師匠の使い魔も送っているが手がかりが全く無い。

 ……今日はここまでかな、と思っている時、ゾワッとした感覚が俺を襲う。

 

「師匠」

「分かっている、構えて」

「木場? 双葉、どうし――――」

「神父の一団にご加護あれってなぁ!!」

 

 素早く師匠から事前に受け取っていた魔剣を抜き放ち、上から奇襲してきたフリードの攻撃を受け止める。

 

「双葉くんじゃないかぁ! くそったれの黄金騎士が死ね!!」

 

 力を篭められると魔剣の刀身に、あいつのエクスカリバーが食い込んでくる。

 くそっ! 相性が悪すぎたか!!

 俺は魔剣から手を離すと同時に、魔剣に込めていた魔力を一箇所にまとめて爆発させる。

 

「大丈夫か!?」

「イチ兄構えろ、気抜いてると腹かっさばかれて死ぬぞ」

 

 あれでやれるほどぬるい奴じゃない。

 案の定、かすり傷ひとつないフリードがいつの間にか俺達と距離をとっていた。

 

「ご明察~、随分強くなったじゃないかー……でも残念、オレっちも魔戒騎士なんだよぉお!!」

 

 エクスカリバーを地面に突き刺して、腰に差していた魔戒剣を引き抜く。

 そして十字架を描くように剣を振り、円を描いてから斜めに十字架を切り裂いた。

 フリードの体に白と黒の鎧が装着される。

 刺々しい各部の突起と上半身に羽織っている黒いフード付きジャケットの下にはまるで骸骨のような狼の顔があった。

 

『邪狼騎士・骨牙(コガ)か……なるほど、暗黒騎士になりかけたアイツの鎧は異教徒の坊主には使いやすいってか』

「おい、ザルバ、暗黒騎士ってなんだよ!」

「わかりやすく言うなら魔戒騎士の闇部分さ。エクスカリバーだけだと思ってたんだけど、コイツがどーしても着いて来たいって言うからなぁ、オレっちに力貸してくれたのよ」

 

 ザルバ、魔戒騎士ってのはこんなのばっかなのか、さすがに俺自信無くすぞ。

 

『全くロゼのやつ、任せとけと言いながらこの始末か……』

「双葉くん、悪いけど鎧の召還を」

「させねえよ!!」

 

 一瞬、フリードの姿を見失ったが気配を感じて魔戒剣を抜く。

 振り下ろされた剣はなんとか魔戒剣で受け止められ、俺は一息をつく。

 

「俺のエクスカリバーは『天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)』。テメエはただの人間だろうがとっととぶった切られろ、黄金騎士ィ!!」

「斬ってみせろよ、このくそ神父!!」

 

 魔力を全身に流して、フリードと鍔迫り合いをする。

 しかしこの野郎も大概だわ! パワーで押されてる。ヤバイ、このままだと押し切られる。

 

「させない!」

「邪魔すんなこのクソ悪魔ァ!!」

 

 師匠が加勢してくれるが、フリードは聖剣で強引に魔剣を斬り壊す。

 ッ!! やっぱダメか。神器と折れてても世界最高クラスの聖剣じゃ……。

 

「そんな魔剣モドキじゃ無駄無駄ぁ! ほんまモン持ってこいや!」

「伸びろ、ラインよ!」

 

 いつの間にか、匙先輩の手の甲にデフォルメされたトカゲの顔のようなものが現れる。

 なるほど神器を持っていたのか、だから悪魔に。

 するすると伸びていく舌はフリードの足に巻き付いた。

 

「そいつはちょっとやそっとじゃ切れねえぞ! 双葉、木場! 今のうちにタコ殴りにしてやれ」

「なめんなぁああああっ!!」

 

 フリードが叫び、俺と師匠を剣圧で吹き飛ばす。

 よし、今なら!!

 俺は吹き飛ばされながら、鎧を召喚し、ソウルメタルの重量を操って地面に降り立つ。

 

「やっとお出ましか牙狼ォ! おんや~、まっくろくろすけじゃないか、黄金取り戻してねえのに黄金騎士っておかしいやつだなぁ。あと隣のイケメンくんはこの前無様に逃げたやつか、今度こそ逃さねえぞ!」

「双葉くん、行くよ!」

「はい、師匠!」

 

 同時に突っ込み、俺は魔戒剣、師匠はエクスカリバーと打ち合う。

 だが奴は今動けない。匙先輩の神器のおかげで足が止まっているが……コイツの技量には舌を巻くね。

 俺と師匠が打ち合っているのに、全く隙が出来ない。

 というか聖剣の能力で師匠以上に早いぞ、匙先輩の援護がなかったらやばかったな。

 

「どうしたどうした! 二人がかりでコレかぁ? いんや、そっちの悪魔が足手まといなんだよねえ。いい加減に理解しろよ、聖剣に魔剣モドキじゃ勝てないって」

「うるさいッ! 僕は認めさせる、この力で認めさせなきゃならないんだ」

「へえ……なるほど、あんた聖剣計画の生き残りって奴か。なら羨ましいよなぁ、お前らの無駄死で俺みたいなのがこれを扱えるんだからさぁ!」

「……お前はここで殺すッ!!」

 

 師匠の剣戟がさらに早くなるが、打っては砕かれ、打っては砕かれの繰り返しだ。

 くそっ、こうなったら!!

 

「イチ兄!! 師匠に譲渡だ!!」

「了解!」

『Transfer!!』

 

 イチ兄が走りながら師匠の背中に触りつつ、譲渡の力を流し込む。

 俺は鎧を解除してイチ兄を抱きかかえるとその場から離れる。

 

「もらった物だから使わせてもらうよ! 『魔剣創造(ソード・バース)』ッ!!」

 

 周囲一体に魔剣が咲き誇り、その全てがフリードに向かって射出される。いや、違う、高速で動く師匠が一本一本抜き取り、投げつけているんだ。

 

「大道芸だな、クソッタレの悪魔!!」

 

 両手の聖剣と魔戒剣で魔剣を次々と撃ち落としていく。

 しかし、それは囮だ。フリードの後ろから音もなく忍び寄った小猫が拳を握りしめる。

 すると小猫の拳に白いオーラのようなものが漂い、勢い良く打ち込んだ。

 

「ガハッ!!」

 

 パンと勢い良く鳴った音と共に、フリードの鎧が解除され膝をつく。

 よく見ると小猫の頭と腰から猫の耳と尻尾のような物が生えていた。

 

「う、嘘だろ。猫又とか絶滅したんじゃないのか、こんなレアもんいるなんて聞いてねえぞ」

「……気を纏った拳であなたに打ち込みました。鎧であまり通りきりませんでしたが、それでも体の気脈を乱しました。あなたはもううごけません」

 

 す、すげえな……鎧通しってやつか? 今のは。

 というかコレが小猫が隠してた力か、そういえばクロのオーラと似ていたような。

 

「そして俺の神器、『黒い龍脈(アブソーブション・ライン)』でお前の力を吸い取る。悪いな木場! 勝負邪魔しちまって。だけどコイツはヤバイ! 野放しにしてたら会長たちすら危害が及ぶかもしれない!」

「ハ、ハッハ! いいのかい? 俺がエクスカリバーを扱える奴らの中で一番強いんだぜ? もちろん魔戒騎士も俺だけ、他の雑魚で満足できるのかね。そんな奴を五人がかりで倒すとかとかお前のお仲間さんは喜ぶのかね」

 

 師匠の顔が引きつる。

 こ、この野郎卑怯な手を!! 俺は魔戒剣を構えながら震える師匠に叫ぶ。

 

「師匠! 申し訳ないですけどコイツはここで倒します!」

「それは困るな、黄金騎士。魔戒騎士のデータなんて取る機会など早々ないのだからな」

 

 声がした方向を向くと神父服を着た初老の男性がこちらを値踏みするように見ていた。

 

「バルパーのじいさん」

「……そうか、貴様がッ!!」

「魔剣創造。なるほど、使い手の技量と想像力次第では無類の強さを発揮する神器だ……その顔、覚えているぞ? あの時逃げ出した実験体か」

 

 マズイ、こんな時に仇であるバルパーが出てきたんじゃ、師匠が冷製でいられるはずがない。

 バルパーは師匠を一瞥するとフリードを一喝する。

 

「何をしているんだ。キミに使った因子を有効活用してくれたまえ。体に流れる因子を聖剣に込めろ、切れ味が増してキミの中の因子も活性化するだろう」

「こうか! そらよ!!」

 

 光り輝く聖剣が匙先輩の神器を切り裂いた。

 畜生、小猫が打った一撃も因子の活性化で打ち消されてんだな! さっきまで動けない感じだったのにピンピンしてやがるよ!

 

「逃げるぞじいさん!」

「逃がすかッ!」

 

 イチ兄の横から飛び出してきたのはゼノヴィアとイリナだった。

 二人の聖剣とフリードの聖剣と魔戒剣が火花を散らす。

 

「フリード・セルゼンとバルパー・ガリレイ。貴様達の罪は重いぞ。神の名のもとに断罪しよう」

「神? 俺の前でその憎たらしいクソ野郎の名前出すんじゃねえよ、クソビッチが!!」

 

 ゼノヴィアとイリナがコンビネーションで斬りかかるが……やっぱ、イリナのやつ実力を隠してやがったわ。俺と打ち合った時と比べ物にならないくらい早いし、エクスカリバーの能力で上下左右全てから斬りかかってやがる。

 フリードの表情が段々と険しくなってくる。さすがにあの二人を相手するのは辛いだろうな、魔戒剣のせいで精神力も使うだろうし。

 

「フリード、撤退するぞ。魔戒剣を振りすぎるなと言っているだろうに」

「うるせぇ!! でもちょーっちヤバイな、逃げさせていただきますわ、悪魔と教会のクソ連合が!!」

 

 フリードは懐から光の玉を取り出す。

 あっ、ヤバイ、アレこの前の閃光弾か!?

 

「間に合えっ!!」

 

 なんとか玉が地面と接触する前に、障壁を張った瞬間、眩い光が一面を照らす。

 また戦うかもしれないと思って朱乃先輩に、一通り障壁系は教えてもらったんだよな……まさか本当に必要になるとは。

 障壁で防いだおかげで俺の視力はそのまんまだ。

 フリードは片手でバルパーを持ち上げるとそのまま飛び上がって空中に消える。

 

「逃がすかよっ!!」

 

 俺も足に魔力を溜めて、壁を蹴り上がりながら屋上に上がる。

追ってくると思っていなかったのか、フリードは驚愕した表情でこちらを睨む。

 

「しつこいね! 双葉ァ!! てめえをぐちゃぐちゃに潰して殺したいけど今は逃げさせてくれや!」

「一般人すら殺すテメエを野放しに出来るわけねえだろうが!!」

 

 屋根をアクション映画のように翔るとは思わなかったわ。

 フリードが時折こちらを向いて、銃を乱射してくるがそれを魔戒剣で弾き飛ばす。

 銃口みてれば大体の着弾点わかるんだよ、こんちくしょう!! あの時撃たれてくっそ痛かったから朱乃先輩に依頼して、銃弾避ける訓練とかしてたんだよ!

 フリードは苦笑いしながらこちらを見る。

 

「見ない内に強くなりすぎだろ!! この前まで一般人だったのが一端の剣士みたいになりやがって……さすが黄金騎士ってか、吐き気がするね!」

「お前みたいなのがあの後来るんでな! あと黄金騎士名乗るならそれ相応に力つけねえとダメだからな!」

 

 そのまま暫くフリードを追撃していると町外れの林に着地する。

 ……逃げるのに飽きたかな?

 

「しつけぇ!! ……でも残念でしたぁ、たった一人で追いかけてきたのはいいけど罠かどうか確かめようぜ」

 

 なんだと思う暇もなく、魔法陣がいくつも……あれ? 三個ほどあるんだがあの魔法陣見覚えがあるぞ? 確か召喚用の魔法陣だ。

 出てきたのは十メートルは超えている巨大な三つ首の犬だ。使い魔の森で出てきたワンコロ思い出すな。

 

『ケルベロス、地獄の番犬を人間界で召喚するか!』

「ザルバ、どんぐらい強い?」

『少なくともあの森で戦った犬どもとは格が違うと言っておこう』

「俺の手で殺したかったが、まぁいいや。お前のズタボロの死体を見せりゃあのビッチ悪魔たちもショック受けるだろうからな、やれぇ!!」

 

 フリードの号令で、召喚された三体のケルベロスがこちらに突っ込んでくる。

 これはちとマズイな、鎧召喚しなきゃ死ぬかも。

 

「破砕せよ、我が剣よ!!」

 

 剣を天に上げた瞬間だった、一匹のケルベロスの横っ腹にゼノヴィアが突っ込みながら叫んだ。

 聖剣は眩いほどの光を発しながらズブズブと腹部を切り裂く。絶叫しながら転げまわるケルベロスから離れ、ゼノヴィアは俺の隣に着地する。

 

「無茶をする」

「サンキュー、正直オレ一人だとあのワンコロにビーフジャーキーみたいに切り裂かれてたかも」

「僕も忘れないでね」

 

 いつの間にか追いついていたのか、師匠がもう一匹のケルベロスの足元に降り立ち。

 ギザギザした刃の魔剣を足の腱の部分に押し当て切り裂く。

 高速で動く師匠は、ケルベロスの四本の足全てを切り裂き転倒させる、ゼノヴィアと同じように俺の隣に立って残心をする。

 残るは一匹、なら俺がやりますかね。

 

「ザルバ、魔力開放だ! 景気よくぶっ放すぞ!」

『制御は任せとけ、あの時のアレをするんだろう?』

 

 ケルベロスに向かって走りながら、体をめぐる魔力を魔戒剣を持つ両手に集め、さらに刀身へと流しこむ。

 金色に輝いた魔戒剣からゴッ! という音とともに光輝く魔力の刀身が形成される。

 

『そういえば名前がなかったな、これに』

「んじゃ今つけるか……シンプルに『轟剣』ッ!!」

 

 両足を踏ん張り、地面を削りつつ振り上げた一撃をケルベロスは避けられず真正面から食らう。

 肉の焼ける音とケルベロスの断末魔が響き渡る。

 

「オイオイ、マジかよ……」

「お、おぉおおおおおおおおっ!!」

 

 真っ二つになったケルベロスが塵芥と化して、宙に霧散していく。

 ダメ押しに俺は魔力の刀身を切り離し、倒れているケルベロスたちめがけて放り投げた。

 ドゴォオオオオオオオン!

 と凄まじい音を立てて、投げた魔力はケルベロスごと地面を抉り取った。

 

「ふぅー……ざっとこんなもん」

 

 魔戒剣を栞にしまって、予備の魔剣を別の栞から取り出す。

 さすがにちょっと消耗しすぎた、これ以上戦うとコカビエルまで保たねえや。

 

「今代の黄金騎士は一般人と聞いていたが……聞き間違いだったようだ、英雄級の化物ではないかッ!!」

 

 なんかバルパーの糞野郎が驚愕しているが、このくらいイチ兄でも出来るだろ。

 あの人はパンチだが一撃の重さなら、倍加し終わったイチ兄が一番強いはずだ。譲渡すりゃ師匠だって似たようなこと出来るだろうしな。

 

「驚いたな、そこまでの魔力を持っているとは」

「なんでも魔力だけなら最上級悪魔並みらしいぞ、俺は。ほらぼけっとしてないで聖剣構えろ……あれ? イリナは」

「は、速すぎよ、皆」

 

 息を切らしながら走ってきたイリナは恨めしそうに俺を睨む。

 えっ? 俺のせいじゃなくね!?

 

「僕の弟子は凄いだろう?」

「あぁ、惚れ惚れするほどだ……黄金騎士、これが終わったら教会に来ないか? キミなら良い戦士になれる」

「バーカ、俺は教会が大嫌いだ。だけど人助けならいつでも大歓迎だ」

 

 苦笑しながら、ゼノヴィアの言葉を返す。

 教会は嫌いだが、人助けってことなら力貸してもいいかもな……もしかしたら、依頼を片付ける内に天使と会えるかもしれないしな。アーシアのため、一発ぶん殴らないと気がすまない。

 

「あーらら、どうするよバルパーのじいさん……正直、これキツイぜ?」

「……いや、大丈夫だ。あの人が来られたぞ」

 

 ゾクッと今までにない重圧が俺たちを襲った。

 ライザーの比じゃないほどヤバイものだ……な、なんだ?

 

「上だよ、双葉くん」

 

 呆然としながら師匠の言葉に従うと、沈む夕日を背にし、背中に十枚の羽を生やした男が浮かんでいた。

 装飾の凝った黒いローブと腰に一本の剣を指している若い男性……コイツがコカビエルか!

 

「……黄金、騎士か。弱い、弱すぎる。先代ならば自分の拳にてケルベロス程度は倒していたぞ」

「一般人の俺に何を期待してんだよ、んなもん出来たら化物だよ」

『余裕こいてる場合じゃねえぞ小僧、このままだとこの場にいる全員が皆殺しにされる』

 

 んなもんわかってるよ、ザルバ。

 ゼノヴィアたちでさえ、足が震えているんだ……これが堕天使の幹部かよ。いるだけで重圧感が半端ねえわ、ごめんライザー、お前なんてどうってことないとか言えるほど怖いわ。

 聖書に名前が乗るってのは伊達じゃねえな。

 

「どうした、教会の戦士、リアス・グレモリーの『騎士』と黄金騎士よ。戦わないのか?」

「ッ……」

 

 剣先が震える、足も震える、心も震える……だけどッ!!

 

「ほう、一歩動いたか……そうでなくては面白く無い」

「……師匠、ゼノヴィア、イリナ。全員逃げろ、ここは俺が食い止める」

「ば、馬鹿を言わないでくれ!! キミを置いて逃げろっていうのか!?」

 

 師匠が叫ぶが、俺は牙狼の鎧を召還し威圧するように睨む。

 

「行ってください。俺たちだけじゃ無理だ……それに、目的もなしにこの町に来たわけじゃないんだろう? コカビエル」

「あぁ、そうだ……この町の主、リアス・グレモリーは魔王の妹だそうだな。そしてもう一人の悪魔もそうだ」

 

 えっ、もう一人の悪魔って……ソーナ先輩!?

 

「そしてこのエクスカリバーに引き寄せられてミカエルか、もしくは天使が来ると思ったんだがな。雑魚とは方腹が痛い」

「……そんなことをすれば戦争が起きるぞ!」

 

 ゼノヴィアが叫ぶとコカビエルはにやりと笑いながら言う。

 

「そうさ、戦争がしたいんだよ俺は! あの時の……あの大戦争をもう一度起こせば今度こそ全てが消滅する。悪魔も、堕天使も、天使もすべてがな!!」

「馬鹿な、一人でラグナロクでも起こすつもりだったのか!?」

 

 戦争ってのは牙狼が黄金を解き放ち、三大勢力が力を出し尽くした大戦争だって聞いたが、あんなもんがもう一度起きたら本当に世界が消滅しかけないとかリアス先輩言ってたが……そんなものを起こそうとしてたのか、こいつは!!

 冗談じゃない、もう悪魔とか教会とか聖剣とか言ってる場合じゃねえぞ。

 

「なおさら止めなければならない、イリナ!!」

「分かってる、命に変えても――――」

「無駄死する気か、この馬鹿野郎!! いいからとっとリアス先輩の元へ行けっ!! もう教会とか悪魔とか言ってる場合じゃないんだろう! お前の上司でも誰でも良い、コイツ止められる奴呼んでこい!」

 

 この場にいる全員が逆立ちしたって勝てない相手だ。

 それに聖剣を渡すのはもっとマズイ。コイツのことだ、派手な花火を打ち上げるための起爆剤料に使われちまう。

 ……なら、誰かが死ぬ気で足止めするしか無い。

 師匠はダメだ、生きてリアス先輩の『騎士』でいてもらわなきゃ困る。ゼノヴィアとイリナは聖剣云々よりも生きて返すと俺は決めてるからダメ。

 

「俺が止める。伝説の牙狼なんだろ、死ぬ気でやりゃなんか出来るだろう」

「駄目だ、師として弟子を置いていくなど出来ない。ましてやキミには帰りを待っている人がいるだろうッ!!」

「友情ごっこはそれだけでいいか? どのみち、貴様らを生きては返さん。特に黄金騎士、鎧を纏ったのは間違いだったなッ!! その鎧を見ると俺は憎悪しか生まれないッ!!」

 

 ギュゥゥゥゥンという威圧する音とともに現れたのは、巨大な光の槍だった。

 俺の『轟剣』が赤ん坊の腕みたいに見えるぜ……駄目だ、アレをまともに受けたら皆死んじまう。

 ……コカビエルは何故か牙狼に憎しみを抱いている、なら好都合だ。

 

「すいません、師匠。ゼノヴィア、イリナ、あとは頼んだ」

「何を――――ぐっ!?」

 

 俺は振り向きざまに、師匠の腹部を柄頭で突いた。

 吐瀉物を吐きながらうずくまる師匠の頭に牙狼剣の鞘を振り上げ、そして勢い良く下ろした。

 なんの防御も出来なかった師匠は、これで気絶したはずだ。

俺の行動が理解できていないのだろう、ゼノヴィアたちは不可解な顔をしていた。

 

「……何を」

「師匠が逃げるわけがない。ならこうして無理やり気絶させて連れて行かせるしかねえだろ」

「我々がコイツを見捨てたらどうするんだ? キミは悪魔と教会の溝の深さを知らないのか!?」

「悪いが口論してる暇はない。お前らの上司か、リアス先輩……いやリアス・グレモリーにこの事を話せ。もう教会とかそういうこと言ってる場合じゃねえのは分かってんだろ?」

「ッ……何故だ、何故私達を逃がす。我々はキミにとって不愉快な存在ではなかったのか?」

 

 ゼノヴィアの震える声を聞きながら、俺がありったけの魔力と牙狼剣に注ぎ込む。

 不愉快、か。あぁ、そうだ、教会なんて大っ嫌いだし、アーシアのことを侮辱したお前らなんて正直野垂れ死ねとか思ったよ。

 でもな、やっぱ俺は目の前の誰かを見捨てれるほど、大人じゃないし、俺は――――。

 

「俺は魔戒騎士、守りし者だ……ただ、それだけのことだ。ほらさっさと行け、追っ手が来るだろうけど、死ぬんじゃねえぞ」

「……すまない、黄金騎士」

「あぁ、そうだ……俺の名前は双葉だ。兵藤双葉、黄金騎士って言われると堅苦しくてな」

 

 牙狼剣から魔力を開放し、向こうの槍と同じくらいの大きさの刀身を作り出す。

 体全身が焼き付くように熱いし、いたるところから血が噴き出てる……コイツはマズイな。

 

「あぁ、双葉。絶対に死ぬなッ!」

「ごめん、双葉くん……あなたは立派な騎士よ!」

 

 その場から二人が消えたことを確認すると、俺は剣を振り上げながらコカビエルに話しかける。

 

「待っててくれるなんてな、慈悲か?」

「いいや? 貴様の綺麗事に吐き気がしていただけだ……安心しろ、奴らもフリードが追っている。アイツも魔戒騎士と聖剣の力もあればあの程度軽く片付けるさ」

「分かってねえな、コカビエル……」

 

 両足をしっかりと踏ん張り、魔力をぎりぎりまで溜める。

 ザルバはさっきから無言だが、俺の魔力制御に全てを使っているんだろう……悪いな相棒、次の相棒の時はもうちょい楽な感じになっててくれることを祈るわ。

 

「この町にはまだ俺の兄、兵藤一誠とリアス・グレモリーがいる。あの人達なら、お前にも一矢報いてくれるさ」

「……期待しよう。赤龍帝に魔王の妹、さらにはバラキエルの娘もいたな」

 

 バラキエルの娘? 誰だそれは?

 まぁいいさ、向こう側でイチ兄たちと出会ったら聞いてみるか。

 

「金色を失いし、黄金騎士よ……今こそ彼女を殺した報いを受けよ」

「……先代に言えッ!!」

 

 俺とコカビエルは同時に攻撃を繰り出した。

 衝撃波と激しい閃光、だけど俺の魔力の刀身が容易く崩され俺の視界が真っ白になる。

 

「……ごめん、朱乃先輩」

 

 何故か、アーシアでも、イチ兄でも、両親でもなく、何故か朱乃先輩の笑顔が脳裏に写った……。

 激しい衝撃が俺を襲う……もうダメかも……な。

 

『小僧ッ! 双葉ッ! 気をしっかり持てぇ!! お前は守りし者だろうが! 守る奴が先に死んでどうする!! 一矢報いてみろ、双葉ああああああああ!』

 

 す、まん……ザルバ、せめて、せめてお前だけでも。

 俺の次、の、騎士を頼ん、だ。

 

『双葉ァッ!!』

「う、うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 手の甲から強引にザルバを引き離し、どこかへ投げる。ただでは死なねぇよ!!

 最後の力を振り絞って、俺は光の中を進む。

 一歩進むごとに鎧が外れていく……もうちょいだ、もうちょっとだけ耐えてくれ!!

 お前が牙狼(希望)って名前なら俺の希望も切り開いてくれよ、牙狼ォオオオオオッ!!

 

「す、進んできたのか、この中を!?」

「う、うぉりゃあああああああああああっ!!」

 

 光から飛び出した俺は、鎧が外されたのに魔戒剣に戻らない牙狼剣でコカビエルを切りつける。

 鮮血が舞い、コカビエルの体が曲がる……だがここまでだった。

 体から力消え、俺の手から牙狼剣が離れていく……ごめんな、皆、後は頼んだ。

 目をつぶった瞬間、腹部に蹴りを入れられ、俺は地面に叩きつけられる。あまりの衝撃で限界だった俺の意識は急速に落ちていった。

 

 

 

**リアス視点**

 

 

 

「……」

 

 言葉が出なかった。

 イッセーたちが勝手に行動したのを怒り、お仕置きとして尻を叩いている最中、とてつもない力が現れるのを感じた。

 向かっている途中、大きな音とまばゆい光が見えた瞬間、私たちは嫌な予感がした。

 そして着いた時には全てが終わっていた。

 

「……あ、あぁあ……」

 

 朱乃が震えながら、ソレを見た。

 双葉の牙狼剣が地面に突き刺さっていた。

 その横に血まみれの制服の欠片がひらひらとしているのを、私は無感情で見ていた。

 不思議と悲しみはない。

 いや、違う。頭が理解していないのだ。

 優しい将来の義理の弟。私とイッセーの仲を知り、色々とサポートしてくれた彼が死んだという事実に頭が理解しようしない。

 見ればソーナも呆然と魔戒剣を見つめていた。

 

「双葉、双葉どこだぁあああああああ!! いるなら返事しろよ、嘘だろ!? お前は帰ってくるんだろうッ!! 双葉、双葉あああああああああああ!!」

「やめなさいッ、イッセー!! ……帰るわよ」

「部長ッ!!」

 

 彼の怒りの視線が突き刺さる。

 けれど私はそれを真正面から見て冷静に言う。

 

「あの子がただで死ぬわけ無いじゃない。一緒にいたはずの祐斗も、あのエクソシストたちもいないわ。……一緒に逃げているのかもしれないわ」

 

 自分で言っていて嫌になる。

 魔戒剣がここにあって、鎧を召還したときの状態でここにあるとすれば生きている可能性は低いし、この場に残された血痕の量からして生きている確率は限りなくゼロでしょうね。

 でもそれでも信じたかった。だってあの子は牙狼なんですもの、魔界の子どもたちが夢見て、憧れたあの黄金騎士になった男。死んでいるはずがないって信じたい。

 

「朱乃、行くわよ」

「……はい、部長」

 

 うっすらと涙の跡が残っている。

 朱乃の気持ちを考えれば無理は無いわね。私だってイッセーが同じ立場になったら……でも私は皆の『(キング)』なのよ、私は決してうろたえてはいけないの。

 

「会長、大丈夫ですって! 双葉が、あの黄金騎士がそう簡単にくたばるわけがないですよ!」

「……そう、ですね。黄金騎士はボロボロになっても最期には勝ちます」

 

 ソーナもいい眷属を得たらしい。

 匙くんか、イッセーと同じく龍を身に宿した転生者、彼がこれからどうなるかも楽しみにね。

 

「リアス・グレモリー……さらにはセラフォルー・レヴィアタンの妹君まで来たか」

「コカ……ビエルッ!!」

 

 皆の顔つきが変わる。

 当たり前ね、双葉を殺したかもしれない人物だもの……私だって怒りを抑えるのに必死よ。

 

「逃げた奴らとはまだ会っていないのか……無駄死だな、黄金騎士は」

「黙れっ!!」

 

 朱乃の雷撃がコカビエルを襲うが翼でいなされる。

 格が違いすぎる……いえ、朱乃の真の力を使えばあるいは。

 

「コカビエルの娘よ。雷撃だけか? 父の一撃はこの程度ではないぞッ!!」

「あの人と一緒にしないで、返して、返してよ!! 双葉くんを返せええええええ!!」

 

 叫びながら雷撃を繰り出すが結果は同じこと。

 つまらなそうにコカビエルは攻撃を弾くだけだ……いえ、何故か彼は右腕を庇うように戦っている? 何故?

 

「ふん、リアス・グレモリー、気づいたか……あいつも魔戒騎士だったということだよ。全く忌々しい奴らだ、死んでもただでは死なん。最期、光に焼かれながら俺に一撃を加えたよ。人間に傷つけられるのはあの時出会ったデュランダル使い以来だ」

 

 ただでは死んでなかったのね、双葉。

 堕天使の幹部に傷をつけるなんてあなたはやっぱりすごい子よ。だからこそ、その成長を最後まで見たかった……。

 

「いい、皆。あそこを狙うのよ……あの子が残してくれた最期の贈り物よ!」

「部長、いいですかね……俺はもう我慢出来ない」

 

 イッセーが涙を拭って、前を向く。

 戦士の顔になってきたわね、少しエッチなのがたまにキズだけどそこが可愛いのよ、この子は。

 

「ここで決着つけるのもいいが……どうせならふさわしい場所で決着をつけよう。貴様らの根城、駒王学園でな」

「なんですって!? あなたわかっているの!? あそこは」

「俺は戦争を起こすためにここに来たッ!! 来ないなら来なくていい。その時はこの町が吹き飛ぶだけだからな」

 

 な、なんですって!?

 コカビエルの言葉に皆が驚く。

 

「戦争をするぞ、サーゼクスの妹、セラフォルーの妹よ! ……そうそう、そこにボロボロになった黄金騎士もいるぞ。生死は知らんがな!!」

 

 そう言うとコカビエルは消えてしまう。

 ……マズイわね、あの目、あの言動完全に狂っているわ。確かコカビエルは先の戦争で大事な物を失ったと聞いたけど、まさかこんなことを企てていたなんて。

 お兄さまならきっと来てくれる、だけど呼んだら本当に戦争が起こりかねないわ。

 

「リアス、呼びましょう……これは私達だけの問題じゃないわ」

「でもっ!」

「リアス、呼ぶべきです。姉さまを呼んだらこの地は更地になってしまうけれどサーゼクス様なら治めてくれます。私たちは私達の出来ることをしましょう……この町を、あの学園を、こんなことで失いたくはないでしょう?」

 

 ……そうね、私のちっぽけなプライドで遅くなる前に連絡はつけましょう。

 けれど、これだけは譲れないわ。

 

「双葉、いいえ黄金騎士は私達が救出します。彼には助けられた恩義があるわ」

「なら、私もいいかな」

 

 聞き覚えのある声を見ると、祐斗と仲間のエクスカリバー使いを背負ったエクソシスト……確かゼノヴィアだったかしら? 彼女がボロボロになりながら、そこにいた。

 

「すまない。彼には私達も命を救われた……エクスカリバーは奪われたけど、ちゃんと先輩は届けたよ」

「……ありがとうとは言わないわ。あなたたちが戦っていたら――」

「あぁ、そうさ。私たちは逃げた、けどそれは彼の願いでもあった……だが私は首を刎ねろと言われたら刎ねるし、命もくれてやろう。けれど、あの堕天使に何かしないと自分が許せないんだ……頼む、私にも戦わせてくれ」

 

 ……彼女の瞳を見て理解した。

 そして耐え切れなくなって私は涙を流した。

 馬鹿すぎるわ、あの子は……見捨てたってここにいる誰もが納得するし、祐斗が気絶しているのは彼を殺させないため。

 お人好しがすぎるのよ、ただの人間だったのに。

 一人で背負い込んで、傷ついて、こんなにも泣いてる人たちがいるのに。

 

「なぁ、ゼノヴィア、アイツは強かったよな?」

「あぁ、今まで見たどんな騎士よりも大きな背中だったぞ……あれが黄金騎士、いや兵藤双葉なんだな?」

 

 イッセーも涙を流しながら、ゼノヴィアの肩に手を置いていた。

 やるしかないわね。

 

「やるわよ、ゼノヴィア。でもここで言っておくわ! 誰も死なないで! 死んだら双葉に会わす顔がないわ。救出したら、皆で説教よ!」

 

 私たちは頷き合って声を揃えた。

 待ってなさい、双葉。沢山怒ってあげるわ。

 

 

 




死んだと思ったか? 残念だったな、トリックだよ(by双葉)

あっ、ここまでゼノヴィア盛りたてておいてなんですが、ゼノヴィアはイッセーハーレムです。好意>>>(越えられない壁)>>>尊敬になってますので、ゼノヴィアは親友ポジションで落ち着きます。ここだけの話、アーシアが当初の予定ならゼノヴィアがINしてました。プロットって大事! 
次回、牙狼、黄金に輝く、ガンダムファイト(いや待てや)


◯邪狼騎士・骨牙(コガ)
 出そうと出そうと思っていた暗黒騎士モドキ。
 かつての戦争では陽狼(かげろう)騎士と名乗っていたが、力を追い求めるあまり心滅獣身と化し、冥界の一部都市を破壊した。その後、克服しかけるがセラフであったガブリエルに鎧が解除され、半分魔戒騎士、半分暗黒騎士という中途半端な状態になった(装着者は死亡した)。その後、教会によって清められていたが今回フリードに強奪された。
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