人の想いは……やっぱ、最高やな!
「やめろ、アルトリアッ!」
「黙れ、はぁっ!!」
キィンという剣が打ち合う音で気がついた。
……あれ? 俺はコカビエルを斬りつけて、それでええっと……?
『気がついたか、我が血を受け継ぎ、牙狼の称号を受け継ぐ者よ』
声がした方向を向くと俺は言葉を失う。
そこにいたのは牙狼だった。いや、黄金を失う前の牙狼、本物の牙狼だ。
『お前が見ているのは先代の戦いの記録だ』
牙狼が剣を抜き、視線を向けさせる。
そこで戦っているのは黒い甲冑を着た女性と黄金の牙狼。
二人は剣を打ち合わせながら、斬り合っていく。その一撃一撃で周辺の風景が変わる。
これが本物の牙狼……か。
『お前は勘違いしている』
えっ?
『あの力は本来の牙狼の力ではない。先代自身の力だ。牙狼を纏えば強くなるとお前は思っているな、それは違う。魔戒騎士は纏う前から強いのだ』
……なら、俺は牙狼どころか魔戒騎士失格か。
俺は弱い、だってコカビエルに負けてしまったのだから……アーシアとの約束も守れない糞野郎だ。
『……かつて、お前のように力を求めた黄金騎士がいた』
そんな人がいたのか、黄金騎士でも。
『この世界では黄金騎士は牙狼だけだったか。……名を、バラゴと言った』
ん? あの牙狼さん? すげーこと言ったような気がするんだ、この世界?
『……彼の人生は悲しみと怒りしかなかった。その結果、彼は魔道に堕ちてしまった。あの騎士王のように』
「エクス……カリバァアアアアアアアア!!」
「くそっ!!」
なんかごん太ビームが……って、あれエクスカリバー!? 破片から作られていたエクスカリバーと形が違うんだが綺麗な長剣……ん? でも真っ黒くろだな。
『彼女は平穏を望む、良き王だった。しかし、民を守るために古から伝わる聖杯の力を使ったのだ……それが汚染されているとは気付かずにな』
じゃああの姿はその聖杯を使ったせいで?
『そうだ。そして先代とは良き友人だった……先代は止めようと必死だったが、聖杯の呪いに汚染された彼女を救う手立ては残されていなかった』
場面は切り替わり、ボロボロになり横たわった彼女と剣を逆手に持ち、剣先を振るえさせた先代がいた。
「やり、なさい」
「エクスカリバーはもうない!! ならお前を殺す必要はない。安心しろ、皆で探そう。きっと聖杯の呪いだって解ける」
「無理で、す。これは魂その、ものを変え、る毒、私はアルトリア・ペンドラゴンであってアルトリア・ペンドラゴンではないのです……お願いです、レイガ。あなたの手で終わらせて欲しい」
「い、嫌だ……僕には出来ないっ!!」
あれが先代の牙狼?
鎧の下から涙をボロボロと流す姿は黄金騎士というよりも、弱虫な騎士だと錯覚する。
あんだけ強いのに、涙をながすのか。
『アイツは歴代の中でも情愛に深く、そして最弱の騎士だった』
冗談きついですよ、じゃあ最弱記録更新している奴がここにいます。
『……だが、奴は歴代でも最高と呼ばれる黄金騎士となった。なぜだかわかるか?』
……心が、強いからだ。
魔戒騎士の基礎、誰かを守ろうとする強い意思、それが先代は人一倍強かったんだ。
『そうだ。あいつは弱かった、だが最期には黄金を解き放ち全てを救おうとした。あの暴れるニ天龍でさえもな』
凄いな、俺には真似できないよ。
……あっ。
先代は覚悟を決めたのか、涙を拭い剣を持つ手を力強く握りしめる。
「……いつか、私の家族と会ってください」
「その資格は僕にはない。僕の次の騎士、次の次の騎士くらいかな、それがきっとキミの魂にやすらぎを与えてくれる」
「すいません。あなたには、重みを背負わせてしまいます」
「気にしないでくれ。僕は牙狼だ、背負った重みがまた増すだけさ……じゃあ、アルトリア、元気で」
「あなたも」
そうして先代は彼女の胸に牙狼剣を突き刺した。
暫くそうしているとゆっくり彼女の体を地面に横たえる。
その時だった、誰かがそこに来た。
「レイガッ! ……アル、トリア」
そこにいたのは、コカビエルだった。
横たわる彼女に近づくと震える手で脈をとる。当然死んでいる。
『コカビエルが貴様を恨む理由が分かったか?』
……あぁ、先代からのとばっちりだってことははっきり分かったよ。
だが、これなら当たり前だろうな。コカビエルは彼女を愛していた……深く深くだ。
戦争を起こそうと言っている奴の言葉の端々から全て壊れてしまえという感情が見えた。
つまりこれ、世界を巻き込んだ盛大な集団自殺ってわけか。
『愛は人を強くする。だが愛すれば愛するほど喪った時、人は惑う……今代の牙狼よ。貴様の手であの堕天使の苦しみを切り裂くのだ』
……俺じゃ、無理だ。
必死に頑張ってもコカビエルに逆立ちしたって勝てるわけがない。
『だが貴様には仲間がいる。信頼できる仲間が』
なんでもお見通しなんですね、さすが俺のご先祖様……でいいのかな?
そうだな、俺一人でやり過ぎたんだ。
皆でやるんだ……そうすればきっと勝てる、今までだってそうやってきた。
『ならばゆけ……だが忘れるな、俺達はお前を見守っている。お前が迷った時、壁にあたった時、我らの誰かがお前に力を貸すだろう』
ありがたいことだ。
そいじゃ、ご先祖様、ちょいと頑張ってくるよ。最弱の黄金騎士、兵藤双葉としてな!
『……今はそう名乗っているのか。あぁ、双葉、最期に言っておく』
また凄い気になること言ってるが、なんでしょご先祖様?
『強くなれ、双葉。そして誰よりも優しい騎士になれ』
――――はいっ!
そう返事した俺の視界がまた真っ白になっていった。
**イッセー視点**
「ではリアス、結界は任せて下さい。あなたたちは無理せず、黄金騎士だけ救出したらすぐに帰ってきて」
「わかってるわよ、ソーナ。朱乃、お兄さまたちの到着時間は?」
「非常事態ということですが、手続きもあっておおよそ一時間」
俺たちは学園前の公園で現状の話し合いをしていた。
どうやら部長のお兄さん、サーゼクスさまが来るまで一時間かかるらしい。
あれから俺たちは可能なかぎりの準備をしたが、イリナは木場を背負ったゼノヴィアを庇い致命傷を負っていた。
もしもアーシアがいなければ最悪の事態に陥っていただろう。
木場は起きてから、現状を聞いてかなり取り乱したが今は比較的に落ち着いている。まぁ、内心俺のように煮えたぎってるだろうけどな。
生徒会の皆は学園を覆うように結界を張ってくれている。
さすがに聖書に載るレベルの堕天使を封じ込めることは出来ないが、中の戦闘音を外に漏らさない仕様らしい。
「ですが結界は気休めだと思ってください。コカビエルがその気になればこの町どころか、周辺都市まるごと更地になります。さらに既に校庭で力を開放し始めています」
とんでもないな、そんなとんでもない相手に一人で立ち向かったのか双葉は。
あと時間も迫ってるってことだな。
ふざけんな、この町で好き勝手させるか。将来俺がハーレム作って、部長たちと面白おかしく生きるつもりなのに!!
「学園のことはお気になさらずに……堕天使の幹部が相手です。原型を留めていれば御の字とまで思っています。ですがこのままでは学園どころの話ではなくなります」
畜生、学園の崩壊まで想定内かよ。
俺達の通う学園無くなったら恨むぞ、コカビエル!!
「いい? 皆、ここはライザー戦とは違い致命傷を受ければ撃破なんて生ぬるい場所じゃないわ。でももう一度言うわよ、皆で生きて帰ってまたここに通うの。いいわね?」
『はいっ!』
俺たちは声を合わせて返事をする。
だが木場の暗い顔が気になったので話しかける。
「どうしたよ、木場」
「僕のせいだ……もしも双葉くんが死んでいたら、僕はなんてキミに謝ればいい?」
はぁ、そんなこと悩んでたのかよ。木場、お前自惚れんな。
「双葉はな、誰だってそうやってたよ! あいつは俺なんかよりも馬鹿だ。頭いいくせにネジが外れると怪我しようが何しようが止まらねえ。だから自惚れんな、お前のせいじゃない。俺達がアイツを止められなかったせいなんだよ」
心の何処かで双葉は大丈夫、なんて思ってたんだ。
でもアイツはこの前の使い魔の森でクロに危ない目にあったばかりだったんだ。
兄貴として情けねえよ、ホント。
「いいか、皆で帰るぞ。もしも自分が死んでもとか思ってたら俺がぶん殴ってやる! お前は部長の『騎士』で双葉の師匠だ! あと、アイツに貸してるエロ本を取り戻さなきゃいけない!」
そうなんだよ! 特盛りおっぱい五十連打ァ! をアイツに貸したままなんだ。
部長のおっぱいもいいけどやっぱ写真でみるおっぱいは捨てがたいんだよなぁぐへへへ。
「途中までカッコいいと思った気持ち返してください」
「あ、ははははは。イッセーくん、真面目にやろうよ」
「俺はいつだって真面目だよ!!」
笑いが起こる。これから死地に行くとは思えないな。
そんな時だ、木場から受け取った魔剣を弄りながらゼノヴィアが話しかけてきた。
「キミたちはいい関係みたいだね。正直、羨ましいよ……ふふっ、なんでだろうね、悪魔と共闘するのにこれっぽっちも嫌悪感が無いんだ。これではアーシア・アルジェントを笑えないな、私も立派な異端者だ」
「ほんとうに良いのか? ゼノヴィア、上に報告しなくて」
そうなんだよ、ゼノヴィアのやつ上に報告してないんだよ。
けれどあいつは笑いながらこっちを見る。
「こちらが出せる戦力はたかがしれてるし、物理的な距離もある。天使ならまだしも、この状況では生半可な戦力を出すわけには行かないだろうしね」
「いいの? これが終われば異端者扱いされるかもしれないのに」
「構わない。あの時、私は双葉に命を救われたんだ。なら、彼を助けてるのが筋ってものさ。主も許してくれよう」
最初は嫌なやつだとも思ったんだけどな……イリナが聞いてたらブチ切れるんだろうけど、今は戦力がいるんだ。
猫でも天使でも何でも借りたい。
「兵藤! あいつを頼んだぜ!」
「おう!」
『相棒、気合が入っているな……ザルバの様子はどうだ?』
箱のなかに入れたザルバを見る。
あの林の中に転がっているのを朱乃さんに発見された。
だけど一言もしゃべらないんだよな、大丈夫か?
『しかし相手がコカビエルか。相棒、人間であるお前の弟があれだけ頑張ったんだ、ドラゴンが何もしないってのは嘘だぞ』
「わかってるよ、誰に喧嘩売ったかわからせてやろうぜ、相棒」
見せてやるか、逆ギレして神と悪魔と天使と堕天使に喧嘩売ったドラゴンの力をさ!
**イッセー視点のまま**
正門から入った俺達は校庭にへと急いだ。
だが校庭を見た瞬間に言葉を失う。
神々しい光を放ちながら宙に浮かぶ五本の聖剣と魔法陣の中央で何かしている爺さん、そしてその傍に十字架に括り付けられた双葉を見た途端、頭が沸騰するほどの怒りを感じた。
「双葉さん!!」
アーシアが悲鳴を上げるが双葉は反応しない。
全身が焼きただれていた。生きているのか死んでいるかもわからない状態にしてられるかよ!!
「ようやく来たか、リアス・グレモリー」
空中に椅子を浮かせ、そこに頬杖を付きながらこちらを見るのは……コカビエル!!
「降りてきやがれええええええ!!」
「そう焦るな赤龍帝……なるほど、そいつを助けに来たか? だが虫の息だぞ? 早く治療しないと時期に死ぬ。バルパー、エクスカリバーは?」
「あと五分もせずに統合できる」
エクスカリバーを統合!? んな事させるかよ!!
「イッセー! 朱乃! 手はず通りに行くわよ!!」
「はい! 部長、朱乃さん肩を!!」
俺は溜めていた力を二人に譲渡する。
ドライグに言うには多少パワーダウンするが、二人までなら同時に譲渡できるようになったんだそうだ。
俺達の作戦はこうだ。二人に譲渡し、一気に勝負を決める!!
「喰らいなさい!!」
「雷撃よっ!!」
で、デカい。
譲渡した俺が言うのも何だけどいつもの十倍くらいの大きさはある魔力弾と雷撃がコカビエルを襲う!
だが奴は両手を突き出し、片方の手で二つの一撃を同時に防いで見せた、嘘だろ!?
「なるほど、譲渡した力がここまでになるとは……だが練りが甘い」
パンっという音と共に、二人の攻撃が消えた。
くそっ、やっぱダメだったか……でも想定内だ。この程度で倒せるほど甘く見ちゃいねえよ。
そんな時だった。バルパーが歓喜の声を上げる。
「完成だ」
ヤバイ、予定より早いぞ!? 本当ならこの間に双葉を回収してずらかるはずだったのに! エクスカリバーの完成が早過ぎる!!
「エクスカリバーの完成により下の術式も完成した。これはな、地脈を利用した崩壊術式でな、あと二十分ほどでこの街は崩壊する」
「そういうこった、悪魔くん、あと教会のワンちゃん。尻尾振って逃げな、テメエらのせいで死ぬ一般人のことを思いながらな、ギャハハハ!!」
フリードこの野郎ッ!!
下卑た笑いをしながら、フリードは鎧を纏うと宙に浮かぶエクスカリバーを手にとった。
「いいよなぁ? ボス、こいつらを切り刻んでも……にしてもあのツインテール女は切りがいなかったわー。「ゼノヴィアはやらせないー」とかなんとか抜かしておいて、殺されかけてやんの」
ゼノヴィアの目の中に怒気が含まれる。
無理も無いだろう、ゼノヴィアが無事なのも必死にイリナが守ったからだと聴く。なんでもその時のフリードは五本あるエクスカリバーの内、三本を所持して戦っていたらしい。
「先輩、ここは共同戦線と行こうじゃないか。悪いが今のアイツは一人で勝てるとは思えない」
「あぁ、だがいいのかい? アレは君たちの聖剣だろうに」
ゼノヴィアは心底侮蔑した顔で、フリードの持つエクスカリバーを睨みつける。
「アレはもう聖剣ではない。持ち主によって魔剣、いや異形の剣に変えられた剣だ。核部分さえ無事なら何度でも復活することが出来る」
「……なら遠慮はいらないね」
二人でフリードと戦うのか、なら木場に譲渡しねえとな!!
そう思っているとバルパーが木場を見て笑っていたのに気づく。
「まさかあの時脱走した者と会えるとはな。覚えていないか? 私もあの場にいたんだよ」
「……思い出したさ。周囲の大人たちと違い、僕らを嘲笑っていたお前を!!」
「勘違いするな。アレは嘲笑っていたわけではない、歓喜していたからだよ……君たちのおかげで私の研究は実を結んだんだからね」
な、何言ってるんだ? あのじいさん、ボケて狂ったか?
それは木場もゼノヴィアも同じだったらしく、不可解な顔をしながらバルパーを見つめていた。
「私はな、聖剣が好きさ。幼いころは君たちと同じ、聖剣の伝説や伝記を読みふけった。だが私には適正がこれっぽちもなかった、君たちの誰よりも下だったよ。だからこそ、私は人工的に使い手を創りだそうとした」
「御託はいい、さっさと要点だけ話してくれ」
かなり切れているな、木場。
今すぐにでも双葉助けたいだろうしな。
「なら言おうか。君たちの誰もが適正がなかったわけではない、ただ基準に届かなかったのだ。だから発想を逆転させた、足りないなら足りない分を誰かに加えればいいとな」
「ッ!! なるほど、私達が祝福され入れられるもの……」
ゼノヴィアが合点がいったのか暗い顔で俯く。
バルパーは驚くくらい無邪気な顔をしながら俺たちに言った。
「そう! 因子だ! 人は誰しも少量だがそれを持っている。なら抜き出せばいいのさ、足りない分をな!!」
「……まさか、僕らを殺した理由は因子を取るため?」
「あぁ、そうだ。その結果、因子の塊が五つも出来たのだが……私のやり方は安定性を欠いているらしくてね、そこにいるお嬢さんのようにうまく定着しない場合がある」
「そうそう、俺以外の使い手はみーんな死んじまったよ……さぁて問題、もしも因子を入れてもなお足りなかったらどうなるでしょうか?」
なぜだか凄い嫌な予感がした。
バルパーは両手に持った光り輝く球体の一つを木場の足元に投げる。
もう片方を双葉に……まさかっ!?
「拒否反応が出で苦しみ出して死ぬんだとよ!」
「や、やめろ!!」
「悪いな、ボスの命令なんだ。うーそ、実は俺ちゃんの嫌がらせでした、死ねをや双葉ァああああああああああ!!」
双葉の体の中に球体が入りこんだ。
その瞬間だ、双葉の体が激しく痙攣し、白目をむきながら絶叫し始めた。
「あああああああああああああああああがああああああああああああああああッッ!!!」
朱乃さんたちが目を背ける。
フリードの言う通りならこのままじゃ、双葉が!!
「バルパー・ガリレイ、貴様は本当の悪魔だ。ここにいる悪魔たちと比べ物に無いくらいの悪魔だッ!!」
「黙れッ! 教会のクズどもは私を異端と罰したが、貴様を見ろ! あいつらは何も変わっていない! 私の、俺の研究を横取りしただけだ! 俺を悪魔といったな、ならその過程で生まれた貴様はバケモノというわけだ」
「黙りなさいッ! 私たちとあなたを一緒にしないで。いくら悪魔でもここまでの非道をする者は許されないわっ! 今すぐ双葉から因子を離しなさい」
バルパーァアアアアアアアアアアアア!!
俺は怒りのまま走りだそうとしたが木場に止められる。止めるなよ木場ァ!!
「ダメだよ、今行ったらキミはフリードに殺される。ここは僕達に任せてくれ」
「でも、でも双葉がッ!!」
「……安心してくれ、赤龍帝。因子ならば私が全て引き抜こう」
ゼノヴィア、お前そんなことが出来るのか!?
頷くゼノヴィアだったが、その顔はまるで死刑を待つ囚人のようだった。
「だがアレだけの因子を体に取り込めば、私が死ぬだろうな」
「お前、なんで!」
「分からないさ……だが私はそれほど恩義を感じているということさ。私をあそこまで思ってくれた人は、あの人やイリナくらいだ」
お、お前そこまでッ!!
どうすりゃいいんだよ、このままじゃ双葉が……でもゼノヴィアまで死んじまったら、イリナは。
「君たち兄弟は優しいね……私が処理してきた悪魔にもキミのような人がいたかもね」
「ダメだ、犠牲なんてもう沢山だ!」
ゼノヴィアの肩を掴んだのは、木場だった。
その目には涙が溢れていた。
「僕たちはダメだった。けれどキミは聖剣を持てたんだろう、なら簡単に死を選ばないでくれ! キミのその力はキミだけのものじゃない、因子として集められた人たちやその過程で犠牲になった僕達の命も入っているんだ」
「先輩……だがどうしようもないだろう! あのまま双葉を見殺しにするのか」
流れ落ちた涙が、木場の足元に転がる球体に触れた瞬間、淡い光が校庭を包み込んだ。
「これは……」
「馬鹿な、ただの因子のはずだ。こんな現象は私は知らんぞ!」
「この戦場に漂う力が因子を球体から解き放ったのです。命を弄ぶあなたたちには到底理解できるはずがありません!!」
光がポツポツと木場の周りに集まり始め、人の形を取っていく。
輪郭が見え始めると、それは俺達よりも幼い少年少女たちだった……あれが木場の同志たちか。
**木場視点**
僕の人生は恐怖ばかりだった。
救えなかったもの、逃げ出したことへの恐怖、そして犠牲になった皆の気持ち。
恨まれていると思っていた、怒っていると思っていた、蔑まされると思っていた。
なのに……今見える皆の顔には僕が生きていたという安堵の気持ちが伝わってきた。
「な、ぜ……何故だい。僕は皆を見捨てた、一人で逃げてしまった! ずっと、ずっとずっと怖かった! 僕だけがこんな生活をしていていいのかって、僕だけがこんな素晴らしい友人たちと出会ってもいいのかって! 僕だけが……ッ、生き残ってしまって」
――――いいんだよ、イザイヤ。僕達のことはもういいんだ。
――――そうよ、イザイヤはいつだって私たちのこと心配してたんだから。
ローマン、サナリィ……あぁ、覚えているよ。誰一人だって忘れたことはないッ!!
他の皆も似たようなことを言っている。
でも、僕はダメなんだ。せっかく出来た弟子すら守れないッ!
――――違うよ! 言ったじゃないかイザイヤ! 黄金騎士は何度だって立つんだ!
マイリー……そうだね、でも彼はもう本当にボロボロで。
――――何言ってるのよ、男の子は傷ついてなんぼでしょ?
メイ、キミはいつもそう言って励ましてくれたね……。
「う、うぉおおお、ああああああああああああああ」
「馬鹿な、そんな馬鹿な!! 適正なんてなかった! 私のようにお前はゼロだったはずだ!!」
さっきまで絶叫をあげていた双葉くんが四肢の拘束をもぎ取り、地面に転がっていた。
彼の体からも同志たちの姿が見える……彼に聞こえているだろうか? あの周囲にいる同志たちの頑張れという声が。
――――あれが黄金騎士か、頼りなさそうなのに中々ガッツあるぜ?
ギラン、キミは毒舌家だったはずだけどずいぶん丸くなったね。
そうだろう? なんたって彼は黄金騎士で、僕の弟子なんだ。
「ありえん、ありえんありえんありえん! こんな現象は知らないっ!!」
「うるせえ、なぁ……聞こえねんだよ、この子たちの声が」
双葉くんはゆらゆらと立ち上がった。
全身から血が吹き出し、今にも死んでしまいそうなのに彼は立った。
――――皆、歌おう! イザイヤとあの黄金騎士のために!
周囲の同志たちの口から歌声が聞こえる。
……あぁ、覚えているよ。これは皆で歌った、あの歌だ。
苦しくても、辛くても、寂しくても皆で歌い励ましあった、あの歌だ。
「聖歌……なんて、なんて優しい声」
「お、おぉおお、主見ていますか……」
アーシアさんとゼノヴィアが涙を流しながら、それに聞き入った。
あぁ、僕も歌おう、あの時のように!
「うるせえ、うるせえうるせえ!! なんだこの耳障りの歌は! ふざけんな、お前らは救われちゃいない、報われちゃいない、惨めに、惨たらしく殺されたクソみてえな命だ!! 何笑ってんだよ!」
「フリード、テメエには一生わからねえだろうよ。この子たちは生きていた、最期の一瞬まで必死に生きていたッ!! 報われない? 惨め? あぁ、そうだろうよ! だけど、彼らの生きた証はそこにいるっ! 師匠が幸せで平穏であるなら、この子たちはいつまでも笑顔でいるんだよッ!!」
拳を握りしめ、挙動不審になるフリードの顔に双葉くんは殴りつける。
普通、鎧に焼かれるはずの腕は何故か焼けいなかった……いや違う、焼けるはずがなかったんだ。その腕には『黄金の鎧』が装着されていた。
「い、いつ、いつ召還したぁ!! テメエの魔戒剣はあの林に置きっぱなしだろうが! ふざけんな! チートも大概にしやがれ! なんでお前だけなんだ、なんで俺じゃない。俺だって、俺だって魔戒騎士なんだよぉおおおおおおおおおおっ!!」
フリードが闇雲に剣を振り回すが、双葉くんは冷静にソレをかわしていく。
しかしフリードも叫びながら、エクスカリバーの力を使って避けていく双葉くんの体を追撃していく。
だが、当たりそうになるとその部位に黄金の鎧がどこからともなく飛んできて、彼の体を守る。
よく見れば彼の回りにいる同志たちが金色に輝いていた。
「俺には何もねえ! 家族も! 力も! 暖かい記憶もなんもねえ!! なんでだよ黄金騎士、なんで今さら出てくるんだよ。何でも持ってるお前が俺の前に立つとかやめてくれよ。お前が前に立っていると……俺、僕が間違ってるみたいだろうがぁああああああっ!!」
渾身の一撃だろう、双葉君めがけて聖剣と魔戒剣が振り下ろされる。
危ないっ!!
――――心配症だなぁ、イザイヤは
――――だから皆で心配したんだよね、ちゃんとうまくやってるかなーって。
同志たちの笑い声が聞こえる。
そこにいたのは両手で聖剣と魔戒剣を受け止める牙狼の姿があった。
「間違っているだろうが、いたずらに命を奪い、誰かをバカにし、自分すら偽るテメエが正しいわけがないだろうッ!!」
「う、うるさい、俺は、俺はなぁ!! 魔戒騎士だ!! それだけは譲れねえぞ!」
「なら、俺は……いや、我が名は牙狼ッ! 黄金騎士だッ!!」
双葉くんの両手から黄金の波動が打ち出され、フリードが吹き飛ぶ。
次の瞬間、双葉くんの足元に何かが突き刺さる……アレは、牙狼剣。所持者の想いに答えたのか。
「うぉっ!?」
振り向くとイッセーの腰にあったザルバが飛び出し、双葉くんの手の甲に嵌った。
『よぉ、小僧。ちったぁマシな姿になったな』
「あぁ、この子たちのおかげだ」
頭部だけ鎧を纏っていない双葉くんの目は優しかった。
彼は周囲の魂に何かつぶやき、頷くと僕を指差した。
「師匠、彼らの言葉を聞いてあげてください」
僕の回りにいた同志たちの魂が青白く光る。
そして金色に光る同志たちと混ざり合い、幻想的な色になる。
あぁ、あぁあああ……僕らは、僕らは光になれるんだね、皆。
――――あぁ、だからこそお前に力を貸そう。
――――一人がダメなら皆で。
――――イザイヤ、受け取って? だって僕らは。
「家族だから……う、うぅあああ」
目から涙が溢れ、僕は膝を付き俯く。
なんて、なんてバカだったんだろうか。僕は、僕は生きてよかったのに、復讐に生きようとしてしまった。
僕は大馬鹿者だ、リアス・グレモリーや兵藤双葉という最高の人たちと巡り会えたのに……僕は本当に馬鹿野郎だ!
「受け入れて、師匠……ほら、あの子たちが運んできてくれた」
双葉くんの言葉で天を見上げる。
いつの間にか大きな光が僕を包み込んでいた。
あぁ、わかるよ。これは皆の光だ……暖かくて、優しい、皆の気持ちだ。
――――受け入れて、聖剣を
――――怖くないよ、だって君は黄金騎士のお師匠さんじゃないか
――――たとえ、神がいなくても
――――神が見てくれなくても
――――僕達の心はいつだって
「ひとつだ」
その時、僕の体が光り輝き一本の剣が胸から飛び出た。
黒と白の禍々しいオーラと聖なるオーラの二つを持った剣……これが、僕の新しい力ッ!!
僕は涙を拭って立ち上がる。
もう涙はいらない。笑って生きていこう、それがきっと
「バルパー・ガリレイ……あなたは許すことが出来ない。あなたを見逃せば、第二、第三の僕らが生まれてしまう」
「……興味深い経験だ、この奇跡を再現できれば私はさらに高みへと登れる!」
「出来るはずがねえだろ、お前はただいたずらに命を弄くっただけだ」
ゆっくりと双葉くんが歩いてくる。
金色に光る鎧がこの空間で圧倒的な存在感を僕達に与える……凄い、これが金色を取り戻した牙狼なのか!
「お前もだ、黄金騎士! その力を解明できれば我々は牙狼の金色で世界すら取れる!! 聖剣使いを量産し、鎧は牙狼! ハハハハハ! 完璧ではないか!」
「はぁ……何言っても無駄みたいだな。師匠、あの子たちが言ってました。『不器用な家族をよろしく』って。だから、一緒に戦いましょう」
「感動話ってわけか? そうは行かねえ、おい、エクスカリバー!! てめえ最高の聖剣なんだろ!! だったらあんな奴らぶった切ろよぉおおおおおお!!」
ゴウッ!! とエクスカリバーから出されるオーラが凄まじいことになっている。
それだけ彼に注入された因子が多いのか、それとも五本合わさったエクスカリバーが凄いのか……全く、同志の力を何だと思っているんだ。
「木場ぁああああ! やっちまえ!! そんなゲテモノ剣よりお前のその新しい剣の方がカッコいいぜ!」
イッセーくん、君の一言はいつも安心できるよ
「祐斗! やりなさい! その剣で、あなたのその想いに終止符を打つの! あなたはもう私の眷属! ならばエクスカリバー程度へし折って見せなさい!」
部長、あなたには救われてばかりでした。
あの雪の中、そして師匠と出会わせくれたこと、双葉くんと巡り会えたこと、本当に救われました。
「祐斗くん! 信じてるわ!」
朱乃さん、いつも心配してくれてましたよね
自分だって辛いのに、僕の境遇に同情しいつも優しくしてくれた。
「祐斗先輩、ファイトです!」
小猫ちゃん、君も静かだけど僕を慕ってくれた。
君の毒舌、最初の頃、結構効いてたんだよ?
「木場さん!」
アーシアちゃん、君にもお礼を言わなきゃね。
君はいつだって傷を治してくれていた。さっきだって懸命にさ。
「なんだそりゃ、こっちが悪者みたいじゃねえかよぉおおおおっ! ふざけんな、テメエら悪魔だろうが! 人に危害を加え! 人を魔道に誘う! 王道なんて歩めない日陰の存在だろうがッ!!」
「違うさ。少なくとも、自分から転落していったお前なんかより、この人達は立派に生きている!!」
「黙れええええええ!!」
剣が伸びてくる。変化のエクスカリバーの力か、それに早いッ!!
僕たちは剣で受け流す。どうやら五つに分かれているみたいだね、まさしくゲテモノな剣だ。創造でもあんな剣は作らないさ。
「な、なんでだ! なんで砕けねえ! 『破壊の聖剣』の力も使ってんだぞ!? 因子だって戦った時の十倍くらいは流してる、なんで死んでねえんだよぉおおっ!!」
「当たり前だ、その剣の本来の持ち主と比べたらお前のエクスカリバーなんてそこら辺の棒きれだ」
双葉くんが飛んできたエクスカリバーの刃をつかみとり、そのまま力技でへし折った!?
僕も驚嘆しているが、この場にいる全員が驚いている。
「ふ、普通に折るかい!? これ聖剣様だぜ? 最強無敵の聖剣様なんだよぉおおおおおっ!!」
突っ込んでくるエクスカリバーの刃が消える。
これは……『
僕は剣で見えない刃を受け流していく。
双葉くんは剣すら使ってない、拳と足で向かってくるエクスカリバーを全て壊している……君、強くなり過ぎだよ。
「何故そこまで強くなる!? 黄金を取り戻したにしては急激すぎるぞ!?」
「……簡単な事だ。今の俺の鎧にはあの子達の想いがつまっている。ソウルメタルは使用者の想いに反応する神器みたいなもんだ。つまり、今の牙狼は数十人で動かしているのと同じようなもんなんだよっ!!」
ついに、拳を振るのを止め胸でエクスカリバーを受け止めると触れたエクスカリバーが自壊していった。
……そうか、双葉くんにも力を貸してくれているんだね。
「ふざけんなぁあああああああああああああっ!! 想いだけで強くなる? 想いだけで強くなったら修行とかいらねえんだよ!! なら魔戒剣だ! 俺の想いがテメエに負けるわけがねえ!!」
エクスカリバーを投げ捨てたフリードは、全身から赤い炎を吹き出させる。
地獄の業火だね、アレは。
「師匠、魔戒剣士同士の戦いだ、ちょっと待っててくれ」
「なめやがって、しねえええええ!!」
フリードが火の弧を描きながら、双葉くんに飛びかかる。
だが双葉くんは鞘に収めた牙狼剣を頭上に上げて、それをなんなく受け止める。
衝撃波が起き、双葉くんとフリードを中心にクレーターが出来る。
「なんで抜かねえ! ていうかなんで受け止められるんだよ」
「……お前の心のどっかに負けるかもと思ってるからだろ。あと抜くまでもない、今のお前はイチ兄にすら負けるよ」
そのまま鞘を押し上げ、フリードの剣を弾き飛ばした双葉くんは飛び上がりフリードの腹部を蹴る。
勢い良く吹き飛んだフリードは、まるでボールのようにバウンドすると鎧を解除しながら先ほど捨てたエクスカリバーの前までゴロゴロと転がる。
「あとは師匠の出番です」
……ッ!! ありがとう、双葉くん。
僕は剣を握り締め、高らかに宣言する。
「僕は誓おう! あの聖剣を超えてみせると!」
今度は恨みではなく、純粋に挑戦するような気持ちで言う。
「部長、仲間たち、そして弟子の剣となる。これが僕の
「かかってこいよ!! そんなシロクロの剣なんぞ、役に立たねえってことを教えてやるよ。いいよ! 来いよ!!」
僕は走る。
今までの恨みや辛さや後悔を捨て去るように走る。
この一撃で終わらすんだ、僕の復讐を。
そして始めるんだ、僕の生活を!!
だから!!
「たあああああああっ!!」
「うぉおおおおおおっ!!」
僕の聖魔剣とエクスカリバーがぶつかり合い、激しい閃光を放つ。
さすが聖剣だ……だけど、一度折れ、使用者もままならないただの聖剣モドキが!!
ピシ。
「嘘だろ、オイオイオイオイオイオイ! 待ってくれよ! こいつは何かの冗談だろう!」
「僕の……いや、僕達の想いの結晶を砕ける訳がないだろうッ!!」
ピシ、バキャン!!
砕け散る音と共に根本から粉砕されたエクスカリバーを、フリードは泣きそうな目で見ていた。
そして僕は砕いた勢いで彼の体を斬りつけた。
「あぁ……なんで、お前らなんだ……なんで――――僕じゃないんだ」
倒れたフリードを一瞥すると、僕は天に見せつけるように剣を掲げる。
「やったよ、皆。僕らは……聖剣に勝ったんだ」
僕の目から一筋の涙が流れた。
◯アルトリア・ペンドラゴン
ご存知通りのアホ毛王、通称青王。コハエースだと赤をよく煽りながら息子(娘)のお年玉貯金で飯を食う奴。この世界では普通に結婚してモーさん産んでいるので大層可愛がった模様。コカビエルの親友で、先代の黄金騎士を鍛え上げたのもこの子。エクスカリバーが折れたのもエクスカリバー・モルガンになったため。遺体はコカビエルが大事に保管してたりする。
◯黄金騎士・牙狼(先代or先祖)
死に瀕した双葉を鼓舞するためにやってきた英霊。ちなみに先代が眼の色が黒、先祖が紫である。牙狼、もしくは魔戒騎士は繋いでいく力こそが真の力なので多分、他の騎士でもやろうと思えば出来るはず。
◯
原作で統合したエクスカリバーの名称なかったがあえて付けるならと安直な名前をつけた模様。原作では四本だったが、今作では五本になり強さは上がっているが、フリードの同様と原作以上のイケイケムードのせいで噛ませ犬に。双葉があまりにもバッキンバッキン折っているためゼノヴィアが泡吹いて倒れる寸前だった模様。
◯黄金騎士・
本来の黄金騎士ではなく、あくまでも木場祐斗の同志たちが思い描いた理想の牙狼であり系統的にはメシアを倒した
多分、過去最長の長さ。好きな巻だと展開がぼんぼこ考えつくね。ただ、フリードはこうなる予定じゃなかったけどあんまりにも邪悪すぎて生存キャラにさせられんかったぁ。