ハイスクールD×D 黄金騎士を受け継ぐもの   作:相感

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かいだんへんって変換すると怪談編になるうちのIMEェ……。


四章 因縁過去のトゥルースネーム
魔王来襲


 早いものでもう夏だ。

 春先からここまでのイベントは目白押しだった。

 イチ兄が死んだり、堕天使に喧嘩売ったり、魔戒騎士になったり、上級悪魔に喧嘩売ったり、堕天使に喧嘩売ったり……はぁ、喧嘩売りすぎぃ!!

 朝五時起きが普通になって、キツかった朝練を普通にこなすようになって随分変わったと思う。

 あっ、そうそう。コカビエルでリアス先輩がおっぱい吸われるとか吸われないとかそんな話があったが、イチ兄がヘタレて一日買い物で妥協していた。

 そこはやれよと思うが精一杯考えたデートコースを回るリアス先輩は本当に幸せそうだった。俺はサングラスにコート姿で探偵服で後ろについていったが。

 そして生徒会での雑務で毎日が忙しかった。予想以上に酷使されていたが、生徒会の仕事が意外に面白いというかこういうことやってたんだなぁと……あと、この学校異能関係の人が多く通っているらしく、色々と裏で問題が起きてたりする。

 さすがに魔戒騎士はいないらしいが、起こす規模がやばかったりと大変だったわ。

 まぁ、学校生活、それに夜でははぐれ悪魔や邪悪な悪霊をぶった切ったりとしていたら、そろそろ授業参観が始まろうとしている時期に差し掛かった。

 

 

 

****

 

 

 

「む、むむむっ」

「……」

 

 久しぶりに生徒会の仕事もなく、俺はオカルト研究室でババ抜きをしていた。

 残ったのは俺とイチ兄。

 ジョーカーを持っているのはイチ兄で、今すごい顔をしながら手札を見ている。

 ……昔から表情出やすいんだよなぁ、イチ兄は。そんなんじゃ将来、『王』としてレーティングゲーム出るときに苦労するぞー。

 ため息を付きながら、俺は左のカードを取る。ジョーカーではなく残った組み合わせ。

 

「だああああ、負けた!!」

「じゃあイッセー、ジュース買ってきてね」

 

 ニッコリ笑うリアス先輩は全員分の小銭をイチ兄に渡す。

 朱乃先輩が入れるお茶もいいが、どうせならたまにはジュースを飲もうという話になった。でただ買うのも面白く無いからババ抜きで決めてたわけだ。

 全員が苦笑しながら、走り去るイチ兄を見送る。

 ……平和だなー、あとちょいで会談が始まるとは思えないわ。

 

「あっ、そうだ。リアス先輩、堕天使の件は」

「会談と同じタイミングだそうよ……アザゼルとか接触してきてないでしょうね」

 

 してきてないですよ、どんだけ俺は信用度無いんだ。

 さすがに敵陣営? あれ? 俺って所属は悪魔で良いのか? というか魔戒騎士をまとめ上げる場所もあるって聞いたが、接触ないしな。

 

「アザゼルは神器に造形が深いと聞くし、かつては魔戒騎士とも接触を図ったとも聞くしね……でも安心してくれ、もしもアザゼルが仕掛けてきたら、僕が守るさ」

 

 嬉しいんだが微妙な感じだ。

 というかこの前の一戦から、師匠がウチに普通に遊びに来るようになったし、修行の時も今まで以上に張り切っている。

 あっ、師匠も料理うまくて、お菓子作り出来てそこは嬉しかったなぁ。俺達のクッキー食べたソーナ先輩が今度一緒に作りますかと言ってきた。嬉しいなぁ、こうやってお菓子作りの仲間が増えるのは。

 

「私もさ。命救われた恩は返すぞ、双葉」

 

 そう言うゼノヴィアも朝練に参加し始めてくれたが、打ち合って分かった。

 こいつがなんで破壊の聖剣を任されたのか……直線的に打ち込んでくるんだわ。愚直なまでに一直線だからすげーやりやすい。

 だけど師匠が破壊に特化させた聖剣を渡すと段違いに強くなるんだよなぁ。

 あぁ、師匠なんだけど因子の影響か新しい神器、『聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)』を得ていた。多分聖魔剣という禁手に目覚めた影響とも言われている。

 というか皆が俺に多少過保護なんだよなぁ……いや、わかる。戦うたびにぶっ倒れてるもんな、そりゃ心配するよ。最近、一緒に寝るアーシアがさらにひっついてくるんで困る。

 出るところ出てるから嫌でも意識しちまうんだよぉ。小猫みたいなスタイルなら……あっぶな!?

 

「失礼なことを考えてましたね」

「考えてねえよ!! というか割りとスプーンとか投げるなや!!」

 

 モンブランを食べるために使っていたプラスチックのスプーンを投げつけてきやがった! 全く、銃弾より遅いから掴めるけど危ないだろうが!

 

「しかし、どうしましょうかね。堕天使を信用する訳にはいかないわ、悪魔以上に欲望に率直な堕天使だから対策を考えないと、万が一双葉の身に何かがあったら」

「それはないよ、リアス」

 

 突然、皆が慌てて跪く。

 聞き慣れない男性の声に不思議に思っている振り向くと紅髪、リアス先輩の髪の色と瓜二つの色をした男性とえーと、前にあった銀髪メイドさん。確かグレイフィアさんがそこにいた。

 あと人数分のジュースを抱えているイチ兄もいる。

 

「お、お、お兄さま?」

「お兄さん……お兄さんんんんんんんんん!?」

 

 魔王さまじゃないですかやだもー!! この間、校舎治してくれてたそうだがその時俺は気絶してたからなぁ。初めて会うのか……あー、確かにリアス先輩のお兄さんだわ、特徴がよく出てる。

 

「くつろいでくれて構わない。今日は魔王としてではなく、リアスの兄として来てるからね。初めましてになるね、黄金騎士牙狼、兵藤双葉くん」

「あ、はい、初めまして、サーゼクス・ルシファーさま。リアス先輩……じゃなくて、リアス様にお世話になっております」

 

 ペコリと頭を下げると苦笑しながら、顔を上げるように言ってくる。

 

「黄金騎士に頭下げられるとは長生きはするものだね」

「その、お兄さまはなんでここに?」

「グレイフィアが教えてくれてね。これを見に来たのさ」

 

 そう言ってグレイフィアさんが取り出したのは一枚のプリントだ。

 ……って、授業参観? 嘘だろ? 魔王さまが授業参観に来るのか!?

 

「グレイフィア!」

「スケジュール管理をしているのは私ですし、私はサーゼクスさまの『女王』。当然報告する義務がありますゆえ」

 

 リアス先輩が苦虫を噛み潰したような顔をしているが、あー授業参観に親とか身内が来るのが嫌な人なのか。

 父さんも確か有給取ってくるとか言ってるが多分、アーシアの方に行くだろうしな。俺は気が楽だ。

 

「あぁ、そうだった。実はもう一人来ていてね、ロゼ入ってきてくれ」

 

 サーゼクスさんがそう言うと、グレイフィアさんの後ろから黒いロングコートを着た男性が入ってきた。

 ん? 誰だ? リアス先輩を見るがはてな顔をしているし……いや、待て、その手に持っているのは。

 

「魔導輪?」

「いいや、これは魔道具って奴さ。ザルバは牙狼専用のパートナーだからね、聞いてない?」

『……懐かしい顔がきたもんだ。久々だな、銀牙騎士・~絶狼《ゼロ》』

 

 ま、魔戒騎士!? またろくでもねえだろうな!!

 俺が構えを取ると口に手を当てながら、ロゼと言われた男性は笑い出す。

 

「プッ、ハハハハ! 戦う気はないさ、やるならとっくにやっている。初めましてだな、リアス・グレモリーにその眷属、そして黄金騎士牙狼を継ぐ者よ。俺の名前はロゼ、一応魔戒騎士の長をやってるものだ」

「……なんでここに?」

 

 油断なく栞に手が伸びる。

 悪いが魔戒騎士にはろくなのがいないってのが俺の人生経験でな!

 

「ここまで警戒されるって傷つくなぁ。まぁ仕方ねえか、これまでの戦いを聞いたがロクな騎士にあってないそうだしな」

「双葉くん構えを解いていい。彼は私の護衛と会談のために来てもらっている」

 

 サーゼクスさんに言われて、俺は構えを解くとニカッと人懐っこい笑顔を浮かべながら、ロゼさんは俺の肩に手を絡ませる。

 うぅ、髭が当たってジョリジョリする。

 

「そういうこと。よろしくな、先代とは戦友だったんだよ……にしても、人間なのに頑張ってんなぁ」

「えっと、ロゼさんは?」

「俺は悪魔だよ。ザルバ、全く教えてないな?」

『フン、お前がさっさと来ればよかったんだ』

「悪いなぁ、俺は冥界から中々出れないんで。それに人間界って最近は魔戒騎士いなかったし」

 

 へえ、そうなのか……というか黒いロングコート、これが魔法衣ってやつなのかな?

 実物を初めて見るからわからないけど、すげえなぁ。

 

「……本当、似てるな」

「ん?」

 

 何でもないと言ってロゼさんが手を降っているが……なんだろうか?

 首を傾げているとサーゼクスさんがわざとらしく咳をしながら話しだした。

 

「リアス、確かに授業参観に来たかったのも事実だが、三大勢力の会談をこの学園でとり行うことになってね」

「本当ですか?」

 

 サーゼクスさんの言葉に全員がぽかんと口を開ける。

 いやぁ、この学園いつか全壊するんじゃねえかな……。

 

「あぁ、この学園には不思議な縁があると思ってね。今まで起こった出来事は異常の一言だ。その中心には赤龍帝と黄金騎士、この二人がいると私は睨んでいる。なら二人がいるこの学園こそ会談の場にはふさわしいと思ったのだよ」

 

 イチ兄と顔を見合わせるが、反応に困るよなぁ。

 俺たちは降りかかった火の粉を払ってきただけだしな。その相手が問題なんだろうけどさ。

 

「さて、難しい話はここまでにして……申し訳ないが宿場施設は空いてるかな? 勇んで来たのはいいんだが、宿をとるのを忘れていてね」

「……あぁ、それなら」

 

 イチ兄が手を上げて、自分の意見を言った。

 

 

 

****

 

 

 

「妹がお世話になっています。あぁ、これは実家からの粗品です」

「これはどうも……なるほど、さすがリアスさんのお兄さんだ。若いのにしっかりしていらっしゃる」

「全くです。私達の子どもたちは逆にリアスさんのお世話になっています」

 

 魔王さまとうちの両親が顔を合わせていた。

 イチ兄が提案したのは単純明快、宿がないならウチに来ればいいじゃないというものだったが、サーゼクスさんはそれを喜んで承諾した。

 しかしリアス先輩が猛反対し、抗議したがサーゼクスさんとグレイフィアさんが強引に推し進め、こうなったわけだ。

 両親には、リアス先輩のお兄さんで若くして業績を上げているエリートだという設定で話している。メイド服のグレイフィアさんや季節を無視してロングコートを着ているロゼさんもメイドとSPということで納得してもらった。

 リアス先輩が真っ赤でうつむいている姿が新鮮だが、身内には歳相応の対応するのかと微笑ましく見ていた。

 

「今回は授業参観の見学に?」

「ええ、仕事の合間にと。当日は父も来る予定ですね、何分妹と会う機会など早々無いですから張り切っていて」

「大変ですなぁ……ウチのイッセーに爪の垢を煎じて飲ませてやりたい!」

 

 父さんが冗談交じりに言うが、半ば本気だろアレは。

 にしても賑やかだなぁ、倉庫からテーブルとか引っ張りだしてようやく入るよ、これは。

 さてはて、俺は料理を作りますかね。母さんがサーゼクスさんに対応してるし、台所事情に詳しいのは俺かアーシアだ。

 人数も多いし、簡単に出来るコロッケを出そうかな。冷蔵庫見たがそれ以外、この人数をさばくのは無理だわ。

 

「双葉さん、手伝いましょうか?」

「ん? あぁ、じゃあいつもどおり汁物頼むよ。おーいイチ兄、野菜くらい切れるだろ。キャベツをせん切りしといて」

「私もお手伝いをしましょう」

 

 グレイフィアさんがこちらにやってくるが……うーん、さすがに客人にやらせるのはなぁ。いくらメイドとは言ってもそれをやらせるのは心苦しい。

 するとグレイフィアさんが顔を近づけ、耳打ちをしてきた。

 

「先日は大変なご無礼を……ライザー戦、見事な戦いぶりでした」

「……えーと?」

 

 唐突な謝罪に頬を掻くがなんのこっちゃ? と記憶を掘り返すと……あー、確かにライザー戦前に結構キツイこと言われたようなそうでないような?

 いや、別に気にはしてないんだけどな。今だから思うが、あの頃本当に弱かったし魔戒剣もロクに使えない奴だったしな。

 

「よく覚えていません。でも気にしないでください、黄金騎士の称号はそれだけ重いって思い知りましたから」

「ですので何かお手伝いを」

 

 と言われましても……あっ、そうだ。

 ポンと手を打って、台所の底からアレを出す。

 父さん秘蔵の日本酒、『蛇殺し』! 実はちびちびと料理酒で使ったりしてるがこういう日だ。出してもいいだろうけど、今父さんたちは談笑しているしな。

 枝豆とかあるといいんだがな、ちょうど切らしてるわ。

 

「じゃあ、これを父さんたちに出してきてください。あとグレイフィアさんは客人です、今日くらいはゆっくりしててください」

「しかし……」

「しかしもでもも無しです。ほら行った行った」

 

 強引にグレイフィアさんに日本酒を持たすと台所から押し出す。

 気持ちは嬉しいが、客人を働かせるわけにはいかんよ……さーてたったか揚げましょうかね。

 ちなみに、コロッケは好評だった。

 

 

 

****

 

 

 

「にしても、隅に置けないな双葉。まさかもう嫁さんこしらえているとは」

「アーシアはそんなんじゃないです」

 

 プチ宴会が終わり、就寝時間になったのだがサーゼクスさんがイチ兄の部屋、ロゼさんが俺の部屋で寝たいと言ってきた。

 まぁ、当然二人は抗議するし……実は最近、俺もイチ兄も二人がいないとよく眠れなくなってきてるんだわコレが。二人にしちゃ出来の良い抱枕なんだろうけど、毎日寝てると俺も慣れてしまうんだわ。

 ……小猫に睨まれながら言われたが、最近オレの体からアーシアの匂いがするそうだ。朱乃先輩にも凍りつくような笑みで手を出さないようにとか言われたわ。

 にしてもアーシア可愛かったなぁ、涙目で裾を掴んできて上目遣い……正直、鼻血出そうになったが断腸の思いで部屋に返した。

 そのせいでロゼさんにからかわれている訳だが……にしてもこの人、ひょうひょうとしてて長って感じがしないんだよなぁ。親戚のおじさん? とかそんな感じで接してしまう。ザルバは早々に寝てるしな、この野郎ホント重要な事言わねえわ。

 

「あの話ってのは?」

「……まぁ、牙狼についてだ。お前、牙狼についてどれぐらい知っている?」

 

 どのくらいって言われてもな。

 えーとザルバから言われたのは最高位の魔戒騎士の称号で、伝説の英雄、前の戦争で黄金を失い、先代がどこかに消えて次の牙狼が俺まで現れなかった……くらいだな。

 正直、世間一般で言われてることくらいしか知らない。

 そう言うとロゼさんは苦笑する。

 

「まっ、おおまかにそんなもんだ。昔はそれなりに掟もあったんだが今じゃ魔戒騎士なんて指の数で足りるくらしかいねえ……あの戦いでほとんどの騎士が死んだからな」

 

 ロゼさんの顔に寂しそうな色が見える。

 大勢の仲間を失ったんだろう。あの戦いに挑んだ魔戒騎士たちは破滅に向かう三大勢力相手に少数で戦ったらしい。いくら強い騎士といえども数の暴力には勝てなかったらしい。

 

「今回、サーゼクスに同行したのはお前を正式に牙狼として認めるかどうかのも見極めに来たんだ……過去には黄金騎士でありながら闇に堕ちて剥奪されたやつもいるからな」

 

 へえ、そんな人もいるのか。

 なるほどな、じゃあ今回の動向は都合が良かったのか。

 

「そんな顔すんな。試験とかはしない、ただお前が魔戒騎士としての自覚があるのか、そして牙狼の称号を受け継ぐに値する人物なのか、アザゼルとの会話で見極めるだけだ」

「……なるほど」

「あとは暗黒騎士についてか」

 

 暗黒騎士、心滅のその先を行った魔戒騎士の闇の部分。

 やっぱロゼさんも知っているのか、当たり前だよな。

 

「奴に関してはわからないことが多い。そもそもアイツが誰なのか俺達ですら把握してないからな。それに突発的に現れたんだよ、アイツは」

「つまり?」

「正体不明ってことさ。そもそも暗黒騎士自体、伝承レベルのお伽話だったからな。心滅獣身なんてなるヤツのほうが少ないし、大抵のやつは闇に食われて死ぬ。仮に打ち克ったとしても俺が処理するからな……だけどアイツだけは違う、まるで最初から暗黒騎士だったかのように現れてた」

 

 ロゼさんですら正体を把握してないのか。

 最初から暗黒騎士なんてありえるわけがない。牙狼と似た形の鎧、俺以外にも黄金騎士はいるんじゃないのか?

 しかし、ロゼさんはその考えを見抜いていたのか首を横に振る。

 

「黄金騎士は一人だ。様々な色があるが、金色を纏えるのは牙狼のみ……まぁ、例外として牙狼の力が他の鎧に伝わり、一時的に金色になった、なんてこともあったらしいけどな」

「……俺はどうしたらいいんでしょうか。アイツは牙狼を狙っています」

 

 ――――黄金騎士、貴様が死ねば俺が次の牙狼となる!

 この言葉を忘れた日はなかった。

 正直に言えば恐怖も感じる。いつどこでアイツが襲ってくるかわからないし、アイツの実力がどれほどか分からないが俺よりは強いはずだ。堕天使のボスであるアザゼルと対峙しても逃げようとしてなかったからな。

 ロゼさんは寝返りをうつと俺に背中を向ける。

 

「お前は未熟だ。だが暗黒騎士は待っちゃくれない……まっ、安心しろ。サーゼクスと俺が睨みを効かせておくから早々来ることはない。とりあえず寝ようぜ、明日からサーゼクスに付き合って人間界の視察という名のお遊びに付き合わなきゃいけねえ」

 

 話は終わりか……まぁ、眠くなってきたし俺も寝るか。

 ……アーシアいないと布団が広いし、微妙に寒いな。

 しかし俺は寝付きがいいため、瞼を落として数分ほどで意識を手放し夢の世界へ飛び立った。

 

 

 

**三人称視点**

 

 

 

 スヤスヤと眠る双葉の横で、ロゼはその寝顔をじっと見ていた。

 右手を伸ばし、頬に触れるか触れないかの直前で手を止め、引っ込める。

 その顔には後悔の色が見えた。

 

『ロゼ、彼に言わないの?』

 

 今まで口を開くことがなかった魔道具が喋り出す。

 ロゼは左手を顔に近づけると、双葉を起こさないように静かに口を開いた。

 

「今まで放っておいていまさらどんな顔で会えばいいんだ」

『それでもあなたはこの子の――――』

「シルヴァ……違う、今のこいつは『兵藤双葉』なんだ。顔はアイツそっくりだけどな」

 

 苦笑しながらロゼは、悲しそうな目で双葉を見る。

 シルヴァと呼ばれた魔道具はため息を付く。

 

『いいの? 確かに混乱するけどこの子なら受け入れるはずよ。聞いた限りじゃ、先代に負けず劣らずのお人好しみたいだけど』

「いいんだよ。本当なら牙狼なんて継がせずに、普通の人間として生きていて欲しかったけどな……運命には逆らえないらしい」

 

 そんな二人を尻目に、双葉は寝返りをうちながらムニャムニャと口を動かす。

 その様子にロゼとシルヴァは揃って笑い出す。

 

『本当にいいのね?』

「あぁ、いつか知るだろうけど今じゃない……暗黒騎士と戦えば、いやでも思い出すだろうからな」

 

 ロゼはじっと双葉を見つめ、優しく手を伸ばしてその頭を撫でた。

 さらさらとした黒髪がロゼの指の間を通って行く。一部女子から反感を買っていることなんて知らない双葉である。

 ロゼは名残惜しそうに手を戻すと布団に入った。

 

『不器用ね、あなたも』

「……うるさい」

 

 そう言ってロゼも目を閉じた。

 

 

 




◯ロゼ
 ぶっちゃけ牙狼本編キャラ、涼邑零をそっくりそのまま丸パ……オマージュしたキャラ。原作同様『絶狼(ゼロ)』を纏う二刀流の騎士。かつては先代とともに戦った最強の騎士と名高い人物。魔戒騎士の長をやっているが、実力がもっとも高いという理由でやっているだけであり、現在生存している騎士のほとんどは勝手気ままに誰かを救ったりしている。
 双葉に特別な感情を抱いているらしく、彼に対しては甘いそうだ。


 会談編開始! サブタイトルでくっそネタバレしてるけどそれはそれこれはこれ!
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