ハイスクールD×D 黄金騎士を受け継ぐもの   作:相感

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セラフォルーさんの影が薄い……。


駒王会談

「ふぅ……さすがに緊張しますね」

「えぇ、にしてもよく似合ってるわよ、双葉」

 

 皆が制服の中、俺だけ魔戒騎士の恰好になっていた。

 またもや朱乃先輩に手助けしてもらって、一瞬で着替える魔法というのを教えてもらった……がうまくいかないので手伝ってもらった。

 この間のこと思い出してお互い顔を真っ赤にしてたらアーシアが涙目になったのはなーぜー。

 

「さて、準備はいいわね? 皆、行くわよ」

 

 そう、今日は会談の日である。

 時刻は零時、場所は職員会議室で行われる。

 学園は結界でお覆われ、外では三大勢力+魔戒騎士が多数睨みを効かせている。正直、魔戒騎士たちが各勢力を抑えてなかったら小競り合いが起きかねないレベルで緊張が高まっている。

 万が一、この会談が失敗したら即開戦もありえるわけだ。

 ……勘弁してくれよ、マジで全滅もありえるぞ。

 

「部長、皆さぁあああああん!」

「ごめんなさい、ギャスパー。あなたの神器が万が一発動すれば大変なことになるわ。だから連れていけないの」

 

 あれからギャー助の特訓を続けたが、匙先輩のフォローがあれば結構制御は出来るようになったのだが、無しだと全く制御ができない。

 一応、俺が叩いて正気に戻せばすぐに解除できるようにはしたが、それでも会談中に発動すれば大事になる。

 というわけで小猫と一緒にお留守番することになった。

 

「ギャスパー、俺が持ってきたゲーム機で遊んでていいからな?」

「ギャー君、お菓子もいっぱいあるよ」

 

 小猫がダンボールいっぱいのお菓子をギャー助に見せる。

 いや、いいんだよ? でもな、それ俺の奢りで買ったやつだから大切に食べてくれよ? 一人で食いそうなんだよなぁ、小猫のやつ。

 ギャー助の頭をポンポンと叩いて俺は立ち上がる。

 一応腰には魔戒剣を差しているが、これは三大勢力の皆様方からの要望らしい。

 

「イッセーくんも双葉くんも面倒見が良いね」

「おう、なんたって後輩だぞ! 先輩の俺が助けないでどうするよ」

 

 強がりだろうが、ギャー助はその言葉に感動している。

 まっ、その強がりに何度も助けられた俺もちょっと感動してるがな。やっぱイチ兄は凄い人だよ。

 

 

 

****

 

 

 

 リアス先輩が緊張した面持ちで会議室のドアをノックする。

 

「失礼します」

 

 中を見ると既にトップの人たちは豪華な丸テーブルを囲むように座っていた。

 悪魔側はサーゼクスさんに……多分セラフォルーさん、かな? 魔女っ子衣装は流石に止めたか。そして給仕係であるであろうグレイフィアさんと壁際に、椅子に座ったソーナ先輩と副会長の真羅先輩がいた。

 堕天使側はアザゼルに……こちらを誘うような視線のヴァーリ、お前なのかよ。

 天使側はミカエルさんと白いローブを纏ったイリナだ。一瞬、ゼノヴィアが息を呑む声が聞こえるが仕方ないだろうな。まさかこんなに早く再開するとは。

 てかさっきからアザゼルがこっち見てるんだが、見るなし! てかロゼさんもいるわ! 苦笑してないで助けて下さい!

 

「私の妹にその眷属。さらには黄金騎士だ」

「報告は受けております。この度はどうもありがとうございました」

「悪かったな。ウチのコカビエルが随分と迷惑かけた」

 

 三者三様だが、アザゼルの悪びれない雰囲気のせいで空気が重い。

 だがサーゼクスさんが咳払いで、その雰囲気を打ち消しながら俺たちに指示する。

 

「そこに座りなさい」

 

 サーゼクスさんは会長たちの隣を指差す。

 会長の隣にリアス先輩、そしてイチ兄と順々に座っていく。

 最後に俺が座ったのを見てサーゼクスさんが頷くと会議が始まった。

 

「では始めるに至って、この場にいる全員が『神』の不在を認知していることを確認する」

 

 えっ? じゃあイリナとか会長や真羅先輩も?

 視線を送るが三人とも慌てた様子はない。

 イリナなんか大丈夫なのか? とも思ったがあの様子は大丈夫そうだ。

 

「では話を始めようか。ではまず――――」

 

 そして会談が始まったが、難しい専門用語やら戦力の話でよくわからん。

 サーゼクスさんとミカエルさんは表面上順調に話すんだが、アザゼルの一言で場が凍ったりする。意外にも、セラフォルーさんがすげー真面目だったがプライベートが緩いだけで、公務はこんなもんなのかな?

 そして会議が始まり一時間ほどしてから、サーゼクスさんがリアス先輩に話を振った。

 

「さて、リアス。先日の事件の話をしてもらおうじゃないか」

「はい」

 

 サーゼクスに促され、今までイチ兄の手を握っていたリアス先輩が立ち上がる。

 会長や朱乃先輩もそうだが、俺も当事者ということで話すことはリハーサルで知っていたので立ち上がる。

 三人の話が終わり、いよいよ俺の番というところでアザゼルが手を上げた。

 

「黄金騎士の報告だが、ぶっちゃけ四人も必要ないだろうし、堕天使側としてもコイツと話があるんでな。予定変更してもいいか?」

「アザゼル、あなたは本当に……しかし、話とは?」

「コカビエルの処遇だよ」

 

 全員に衝撃が走る。

 なっ!? まさか堕天使側が俺に話ってコカビエルの処遇のことについて!?

 待ってくれよ!? 俺的には暗黒騎士とかそういう話かと思ってたよ! カンペある暗記した俺の苦労返せや!!

 俺の恨みの視線を軽くスルーしたアザゼルは手元にある資料を指した。

 

「資料にも書いてあるとおり、今回の事件はコカビエル単独で起こした事件であり、我々『神の子を見張る者』は一切関与してはいない。しかし、奴の行動目的は前大戦中に死亡したアルトリア・ペンドラゴンを喪った悲しみから始まり、そこにいる黄金騎士が先代の尻拭いをした結果となった。現在、奴の力を剥奪し牢屋にぶち込んでいるが……アイツが見たこともねえ顔で償いたいと言っていた。転送した資料にも全て書いてあっただろう?」

「甘いですし、説明不足ですね。本来ならば即座に『地獄の最下層』で永久冷凍をするはずですが?」

「そこだよ。ヤツはな、「俺の処遇は黄金騎士に決めさせろ。あいつに償う」って言って聞かないもんでな。……ところでだ、黄金騎士、お前はなんでコカビエルを殺さなかった? 丸く収まったとはいえ、報告じゃお前は死にかけたはずだ」

 

 ……なんで、か。俺はアザゼルから目を離し、ミカエルさんに目を向ける。

 

「ミカエルさん、バルパーの処遇はどうなりましたか?」

「……彼はあなたの言葉通り、その罪を理解させるため永久に牢屋へ閉じ込めましたが、それが何か?」

 

 そうか、良かった。

 これで処刑されてたらどうしようかと思ってたよ。

 俺はアザゼルに向き直り、答える。

 

「俺は罪は償うべきだと思っています。先代がしてしまったこととはいえ、コカビエルはその過程で大勢の人を巻き込みました。バルパーも同じです、私利私欲で人の命を弄んだ。切るのは簡単でしたよ、でも俺は切りませんでした」

「なんでだ?」

 

 アザゼルは面白そうに口を歪めながら俺を見る。

 

「死んだらそれまでです。死んだ後どうなるのかは知りませんが、死んでしまったらそいつはそこで終わってしまいます。俺はどんなことをしてしまったにせよ、罪は生きて償うべきだと思っています……それじゃ、駄目ですか?」

 

 ミカエルさんたちは目を閉じて思案していた。

 俺は動悸がする胸を抑えながら、ただ返事を待った。

 最初に口を開いたのはサーゼクスさんだった。

 

「償う、か。では双葉くん、キミはコカビエルにどんな償い方をさせようと思っているんだ?」

「……その、孤児院経営とか?」

 

 トップの人達どころか、この場にいる全員が目を見開いて俺を見る。

 いや、そうだろうね。自分でも何言ってるのかわからねえよ、うん。

 

「こ、孤児院ですか?」

「えぇ。だって今力を剥奪しているんでしょう? なら『地獄の最下層』だがそんなところで封じるよりも、監視と首輪をつけて少しでも誰かの役に立ったらどうかなって」

「ぷっ、ハッハッハッハッハ! なんだそりゃ、孤児院やるコカビエルとか想像できねえ!」

 

 腹を抱えて笑うアザゼルに皆度肝を抜かれているが、アザゼルは目に涙を浮かべながら他のトップ人に話す。

 

「だとよ。どうだい? こっちも黄金騎士の提案は悪かねえと思うぞ? 堕天使の力は奪ったし能力だって人間の成人レベルまで低下している」

「うーむ、信用出来ないが三大勢力全員で封印をかければ問題ないか?」

「ふふっ、いいですね。孤児院はどうしましょうか?」

 

 あ、あれ? 皆さん結構乗り気? セラフォルーさんも発言はしないけど俺にウィンクしてるし、えっ? マジで? ウソン。

 

「いいな、そりゃ……ついでに本日集まった最大の議題に移るか。お前ら、ごたごた言ってないで和平を結ぼうぜ、最初っからその腹づもりなんだろう?」

 

 再び全員が息を呑む。

 わ、和平!? というか堕天使の大ボスが言うのかよ。てっきりミカエルさんあたりが言うかと思ってたが、やっぱ皆その気だったんだな。

 アザゼルの言葉に少し疑いは持ってたが瞳の色が明らかに変わった。

 そもそも、さっきの段階で自分たちの組織の元戦力とかそこら辺話してるし、腹を割ったってことだろうか?

 

「驚きましたね、アザゼルからそんな言葉が出るとは」

「全くだ、一番信用ならない人からこんな言葉が出るなんて」

「お前ら、俺に信用度なさすぎじゃねえの? まぁ、ごもっともな反応だが……お前らもわかってるんだろう? 次、戦争したら俺達はまとめて共倒れだ」

 

 今まで以上に真剣な表情のアザゼルに、他のトップ陣も頷く。

 

「そうですね……私が言うのも何ですが戦いの元凶であった神と魔王たちはもういません。争う必要も最早ないのですから」

「ハッ! 堅物ミカエルが見ないうちに柔らかくなったもんだ。神神神だった、お前さんがよくもなぁ。けれど堕ちるぜ? 神がいたらだけどな」

 

 ミカエルさんは悲しそうに目を落とし、そして前を向いた。

 

「我々の失ったものは大きい。けれども人間たちを導くというのが神から受けた勅命です。いつまでもいないものを追い求めては、人の子を導けませんしね」

「我々もそうだ。魔王がいなくとも種を存続させなければいけない。だが戦争はもうゴメンだ、あの戦争で何を得た? 何も得なかった、ただ悲しみだけが残ってしまった」

 

 サーゼクスさんが悲しそうに目を俯かせる。

 当時は最上級悪魔だったサーゼクスさんは戦友を大分失ったと聞く。グレイフィアさんも思うところがあるのか、給仕の手を止めて天を見上げる。

 アザゼルは俺の方を向き、口を開いた。

 

「黄金騎士が言ってたな。『救いなんか無くても俺たちは生きてきた』……だったか? その通りだ。確かに神はもういねえよ、だがこの世界は衰退したか? 荒廃したか? そうじゃない。神がいなくても世界は回るのさ」

 

 俺はアザゼルに釣られて笑う。

 あぁ、そうさ。神様いなくたって俺たちは生きてきた、確かに苦難の時代が続くだろうがそれでも俺達には進む足があるんだ。

 次へ、そのまた次へバトンを渡していけばいつか出来ることだってあるはずだ。

 アザゼルたちはまた話し込む。

 俺は息を吐き、椅子に座り込む……すげー緊張したわ。

 俺を気遣うように、隣りに座るアーシアがそっと微笑んでくれた。

 

「さて、こんなところだろうか?」

 

 サーゼクスさんの言葉でこの場にいる全員が息を吐く。

 そりゃそうだ、極度の緊張状態が解消されたんだ……さすがに疲れるわな。

 グレイフィアさんが全員にお茶を配る中、ミカエルさんが俺に視線を向ける……あぁ、そうだ、聞きたいことあったんだったわ。

 

「すいません、会議も一段落したところで黄金騎士の話を聞いてもよろしいでしょうか?」

 

 もう何度目かわからない全員の視線が俺に突き刺さる。

 くそっ、ロゼさんとアザゼルにサーゼクスさん、めっちゃ笑ってるよ! 畜生、こんな会議に普通の人間が話して良いのか? いやいいんだろうな、もうやってやらぁ!!

 

「……アーシアとゼノヴィアをなんで異端にしたんですか?」

 

 ずっと聞きたかったことだ。

 確かにアーシアもゼノヴィアも知ってはならないこと、やってはいけないことをしたが彼女たちの力は多くの信者を守っただろう。なのに切り捨てた、場合によっては俺は教会と完全に敵対する気でもある。

 だが、予想に反してミカエルさんは悲しそうな顔をしながら話しだした。

 

「……全ては私達セラフの力不足が原因です。神が消滅した後、奇跡を起こす『システム』が残りましたが、我々はそれを十全に扱えきれなかった」

「つまり、救える人たちが少なくなったってことですね?」

 

 俺は奥歯を噛み締めながら、ミカエルさんの言葉を聞く。

 怒るな、この人の表情を見ろ。精一杯やった人の顔だ、確かに十全に使いこなせないが神がいなくなったあと踏ん張ったのはこの人達がいたからこそだろう。

 

「怒るのも無理もありません。アーシア・アルジェントの顛末は聞いています……いえ、私は救えなかった方々の顔は全て覚えています。我々の力不足はそれだけではありません。異端、もしくは神の不在を知った人物が教会に関する場所に近づくと『システム』に影響を及ぼします」

「ッ!!」

 

 握った拳から魔力が少し漏れだす。

 トップとして大を活かす判断は正しい、けれどその後のアーシアやゼノヴィアへのフォローがないのは何故だ。

 いや、分かっている。大天使が異端と定めた者を救済すればそれこそ、『システム』が破綻する。どうしようもなかったんだろうし、俺の怒りを一身に受けるミカエルさんは片手でイリナを制している。

 

「私を殴りますか? 黄金騎士」

「……殴ったって、アーシアが死んだ事実は変わらない。ゼノヴィアが悪魔になったのも変わらない。それに、あなたはずっと頑張ってた。そんな人を殴れるほど、俺は厚顔無恥じゃありません」

 

 ミカエルさんはそれを聞くと、席を立ちアーシアとゼノヴィアの前まで歩くと深々と頭を下げて謝罪した。

 

「あなた達を救えずに申し訳がない……君達は長く教会に尽くしてくれたというのに、救えなかった私を許して欲しい」

「か、顔を上げてくださいミカエル様。確かに私は悪魔になりましたが、今の生活は悪くありません。それに理由があるなら、私は構いません」

「しかし、悪魔にしてしまったのは――――」

「いいんです。私は教会にいた頃には知らなかった事を今知っています。私を知っている信徒が聞けば怒るでしょうが、私は今が幸せです」

 

 アーシアも目を閉じ、ニコリと笑いながらミカエルさんに話す。

 

「私もです。確かに辛かったし、私は一度死にました。でも悪魔になってから私はとても大切な人たちと出会えました。……死ぬまで共にいてくれる方もいます」

 

 チラリと俺の方を向くアーシアは、再度ミカエルさんに笑いかける。

 

「それに憧れたミカエルさまに出会えました! 私は今、幸せなんです」

「――――寛大な心に感謝します」

 

 一瞬だけ、ミカエルさんの目から一筋の雫が流れたが誰も指摘しなかった。

 本当に人のためを想って泣く人に悪い人はいないさ……この人もずっと苦しかったんだな。

 アザゼルが頭を掻きながら、俺ではなくイチ兄を見る。

 

「俺も謝らんと駄目だろうな。赤龍帝、済まなかったな。ウチの部下が勝手にお前さんを殺しちまって」

「……俺はいいんです。けど、俺のせいで双葉は牙狼なんてもんになってしまった」

 

 い、イチ兄!? リアス先輩が驚いて、イチ兄を止めようとするが、イチ兄は立ち上がってアザゼルに詰め寄る。

 

「俺はいくら傷ついたっていい!! でも俺が悪魔になったせいで双葉はさらに無茶するようになった!! コイツには、こいつだけは俺よりもいい人生を送って欲しかったのに!」

「……お前、自分が死んでよかったと思ってるのか?」

「そうじゃないですけど! でも、双葉が何かに巻き込まれて傷つく姿を見るのは嫌だ!」

 

 ッ!! イチ兄、そんなことを思ってたのか?

 俺は目柱が熱くなるのを必死に堪えながら、イチ兄の背中を見る。

 大きい背中が、いっつも俺が憧れてた兄の姿が見える。

 

「何言っても謝罪合戦になる。だから俺は分かりやすい形でお前に謝罪しよう……オイ、ヴァーリ、お前は世界をどうしたい」

 

 今までつまらなそうに会議を見ていたヴァーリは、アザゼルに話を振られて笑う。

 

「俺は強い奴と戦えればいい」

「そうだよな。じゃあ赤龍帝、お前はどうだ?」

「お、俺!? 俺なんて、下級悪魔ですし」

 

 イチ兄はうろたえてながら濁すが、アザゼルは鋭い眼光でイチ兄を見つめる。

 

「お前がなんであれ、お前は世界を動かす天龍の片割れを身に宿しちまってる。否応なしにお前の選択は世界を動かす。弟の方も大概だがな、全くお前ら兄弟とんでもねえな」

 

 言われて俺たちは顔を合わせながら頬を掻く。

 まぁ、とんでもねえよな。伝説の黄金騎士に伝説の赤龍帝だ……これが兄弟になるってのが普通無いだろうな。

 ったく死んでる神様を恨みたくなるぜ。

 悩むイチ兄にアザゼルは手をポンと合わせて、下卑た顔をする。うわっ、イチ兄そっくりのスケベ顔。

 

「お前、確かリアス・グレモリーに相当可愛がられてるんだっけ? じゃあ言ってやろう。和平結べば、毎日リアス・グレモリーのおっぱいだろうがどこだろうと揉みたい放題やりたい放題だ」

「和平! 和平で行きましょう!! ラブ&おっぱい! ぼごっ!?」

「少しかっこいいと思った俺の気持ち返せ、バカ兄貴ぃいいいいいい!!」

 

 耐え切れずイチ兄の頭を叩く。

 ほら、皆苦笑しちゃってるじゃないか!! アザゼルなんて腹抱えて大爆笑だし!! なんだラブ&おっぱいって! んな平和あるかぁ!!

 

「でも双葉、戦争になるとお尻愛でられないぞ」

「あっ、俺も和平で。ラブ&ヒップ!! ……あっ」

 

 やっちまったぁあああああああああああああああああああ!!

 皆微妙な顔してるし、なんか会長の視線が冷たいッ!! あぁあああああ、何言ってんだ俺はああああ。

 

「ハッハッハッハ! 今代の赤龍帝と黄金騎士はスケベ野郎だな!」

『次の世代は期待できそうだがな』

 

 ザルバァアアア!! 

 俺たちは頭を抱える。ち、畜生兄弟ってやっぱ考え似るのかな? おっぱいとお尻で和平結ぶって相当アホだろ、俺ら。

 だが次の瞬間だ。

 何故かギャー助の時間停止が発動した時と同じ感覚がした。

 

「ッ!?」

 

 急いで周囲を見渡すと動ける人たちは視線を厳しくしながら、部屋の周囲に結界を貼っていた。

 なんでだ!? ギャー助の暴走? んなはずがない! 念のため、この新校舎の会議室は見えないようにしておいたはずだし、ギャー助の通常の神器じゃこの範囲を止められるはずがない。

 

「な、何が起きたんだ!?」

「時間停止……サーゼクス、あの小僧に何か仕込んだ、訳ないよな? この規模、そして力、一時的な禁手にしたのか」

 

 俺の言葉に冷静に返したのはアザゼルだった。

 禁手!? んな馬鹿な、確かにギャー助の力は強いがドライグに確認してもらった時は禁手するまでまだ時間がかかるって言われてたのに。

 

「どうやらお客さんみたいだぜ? 窓を見てみろ」

 

 窓の外を見ると魔法陣から次々とローブ姿の連中がこちらへ魔力弾を打ち込んでいた。

 しかし、施設に張られた結界がその攻撃全てを弾いている。

 誰だあいつら!? 見たところ人間だが……魔術師ってやつか!?

 

「テロだな、こりゃ……くそっ、ここの結界内に警護を置かなかったのが災い、いや幸いか。下手に警護してたら時間停止で全滅してた」

「テロ!?」

 

 アホかぁああああああ!? 人間何しちゃってくれてんの!? ようやく話が纏まりそうだったのにクソッタレがぁあああああ!!

 というか動けるのは俺を含めた師匠、ゼノヴィア、リアス先輩、イチ兄、アザゼル、ミカエルさん、イリナ、サーゼクスさん、セラフォルーさんにグレイフィアさんのみか。

 ほかは停まっている。……くそっ! どうすんだよコレは。

 

「私の眷属が利用されている? どこで情報が……いえ、その前に私のかわいい眷属になんてことをっ!」

「末恐ろしいな、お前さんの眷属は。一時的な禁手とはいえ、この規模の時間停止なんて早々出来ない。学園の外で守ってる奴らも停まってやがるな」

 

 そう言うとアザゼルは羽を広げ、結界の外で多数の光の槍を出現させ、容赦なく魔術師たちに打ち込むと……うわっ、ミンチよりもひでえな。

 防御術式が最早紙だよ、紙。

 手を振った動作で全滅とか人間の儚さが見えるわ。

 

「結界内に直接転移されてるな。ほらおかわりだ」

 

 そうアザゼルが嘆息すると次々と魔法陣からまんま同じ格好の魔術師たちが出てくる。

 なるほど、こうやって物量戦仕掛けてるつもりか。

 疲弊したところでギャー助の時間停止で一網打尽、いや最初のアレで皆殺すつもりだったか? クソッタレが、わかってんのかここにいる人たちがいなくなれば俺たちの住む世界だって危ないってのにッ!

 

『マズイぞ、このままじゃこの場にいる誰かが停まる』

「……俺が行きます」

 

 俺はこの神器の影響を何故か受けない。

 それにあの程度なら突っ切ってギャー助を助けに行ける。

 

「双葉、無茶よ。外は魔術師でいっぱいよ、それに旧校舎だって襲撃を予想してるわ。待ち伏せされて――――」

「ギャー助があそこで助けを待ってるんですッ!!」

 

 壁に拳を叩きつけて、俺は叫ぶ。

 アイツは泣いてる。自分の力をどう使われてるのか聞かされているだろう……ふざけやがって、俺の仲間に手出した奴はぶん殴ってやる。

 

「落ち着きなさい。無策で突っ込めばやられるだけだ……リアス、そういえば未使用の『戦車』の駒はどうしている?」

「アレなら旧校舎に……そうか! その手があったわ!」

 

 リアス先輩が顔を輝かせる。

 な、なんだ? 俺とイチ兄だけが疑問符を浮かばせるが、リアス先輩はにやりと勝ち気に笑いながら俺たちに言う。

 

「『キャスリング』って覚えてる? イッセー」

「えーと……あぁ、そういうことですか!!」

 

 いやどういうことだよ?

 師匠が耳打ちしてくれる。

 

「『キャスリング』ってのは『王』と『戦車』の位置を変えられるレーティングゲームの特殊技だよ」

「あぁ、なるほど……敵のどまんなかに突っ込めると」

「グレイフィア、魔法陣の準備だ。リアスだけではキツイだろうし、ニ、三人連れて行きたいが」

「……この場ではリアス様を除いて二人が限度かと」

「「俺が行きます!!」」

 

 迷わず、俺とイチ兄が手を上げる。

 するとサーゼクスさんはにこやかに笑い、アザゼルに目線を移す。

 

「アザゼル、例のアレは?」

「……持ってきてるよ。ほれ、赤龍帝、受け取れ」

 

 アザゼルがイチ兄に向けて何かを投げる。

 それは腕にはめるタイプのリングだった……なんだこりゃ?

 

「そいつをハーフヴァンパイアの腕につけろ。神器の研究してたら出来た神器の力を抑えるものでな」

「……俺は兵藤一誠って名前があります」

「なら兵藤一誠。もう一つはお前さんのだ。聞いたところ、禁手に自由になれないそうだな。そいつを付ければ対価の代わりに禁手になれる」

 

 すごいな!! 伊達に研究してない!

 しかし、その時校舎全体が揺れた。

 

「うぉっ!?」

「オイオイ、マジかよ。ここで出てくるか暗黒騎士!!」

 

 ロゼさんが叫ぶと、結界に向かってポールアックスのような斧を振りかぶる呀がそこにいた。

 馬鹿なアイツこいつらに協力してるのか!? てか今ので結界に罅が入っただと!? サーゼクスさんの結界だぞこいつは!!

 ロゼさんは天に剣を掲げて鎧を召還する。

 

「双葉、アイツは任せろ!」

「ロゼさん!? 無茶ですよ!」

「お前には守らなきゃいけない奴がいるんだろ! ここは俺に任せろ、それにこいつは俺の仕事だ」

 

 そう言うとロゼさんは窓を開けて、呀に突っ込んでいく。

 呀とロゼさんの武器が打ち合わされると周囲にいた魔術師たちが吹き飛ぶ……ダメだ、あそこに行ったら足手まといになる。

 

「ヴァーリ、おまえも行って来い」

「囮か……まぁいいさ、体がなまっていたところだ。行くぞ、アルビオン」

『Vanishing Dragon Balance Breaker!!!』

 

 音声が流れ、ヴァーリの体に白銀の鎧が装着される。

 会議室の窓を破壊し、空に飛び立ったヴァーリは魔術師たちの攻撃を避けようともせず、全て鎧で弾き、巨大な魔力弾で次々と消滅させていく。

 だが魔術師たちは無尽蔵に魔法陣で送られてくる。くそっ! ゾンビ戦法かよ! 命をなんだと思ってやがる!!

 

「……敵ですが哀れですね。あれでは無駄死だ」

「大方、消耗させる魂胆だろうが気に食わねえ。アレをやってる連中は命を命だと思ってはいないんだろうな」

「グレイフィア、準備は?」

「既に。さぁ、お嬢様、イッセー様、双葉様、こちらに」

 

 グレイフィアさんに言われて、小型の魔法陣に立った俺達にアザゼルは叫ぶ。

 

「さっきの続きだ、兵藤一誠。そのリングは便利だが多用するな! 体力の消費までは計算しちゃいねえ!」

「わ、わかったよ」

 

 まるで先生だな、アザゼルは。

 いや、お助けキャラか? そういうのはミカエルさんのほうが似合ってるがまぁいいさ。

 待ってろよ、ギャー助、今助けに行くからな!!

 

「行くわよ、二人と!」

「「はい!!」

 

 俺たちの目の前が真っ白になる寸前、別の魔法陣が部屋に展開されるのが見えた。

 

 

 




言えない、一瞬あれ? いるよなとか思ったとか言えない。
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