ハイスクールD×D 黄金騎士を受け継ぐもの   作:相感

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多分、こいつら血がつながってなくても兄弟だと思うんですけど(名推理)


金色、そしておっぱいと尻

**一誠視点**

 

 

 

「来ないでッ!! 来ないでよう!!」

 

 扉から聞こえる声は、俺の『弟』になった奴の声だ。

 鮮明に思い出せる。あの日は確か、両親が急用が入って病院に一人俺が残ることになった。

 誘拐の危険あるんじゃないのというが、あの頃の両親は色々とごたついていた。多分双葉の養子縁組で手間取っていたんだろう。

 でも今日まで俺は双葉と会ったことがなかった。

 誰も拒否するアイツと何故か話したくなって、俺は手に持った二つの野球ボールを胸に入れて、病室に入った。

 

「大丈夫か! おっぱいあるぞ!」

「……イヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 一瞬だけ固まった双葉は、次の瞬間俺の顔面に飛び蹴りを食らわせていた。

 あの時泣きながら俺を揺すっていた姿は時々ネタにする。

 それから俺は時間があれば両親にねだり双葉と会いに行ってた。

 散々拒否されたよ、そしてあの日が来たんだ。

 確かいつもどおり、双葉の病室に遊びに行ってた時だ。突然、双葉が立ち上がり、俺の胸ぐらを掴んできた。

 そして機関銃のように俺の悪口をこれでもかと浴びせてきた。

 だけど、俺は双葉の瞳を見てガキながら理解した。あぁ、こいつは寂しいんだって、俺が馬鹿だからアイツのあの時の気持ちなんてさっぱり理解できない。

 けれど寂しいって叫んでいる奴をなんか放っておけなかった。

 俺は持ってきていたサッカーボールを持って、アイツにこういったんだ。

 

「そんだけ元気ならもう退院出来るよな! サッカーしようぜ!」

 

 一瞬だけきょとんとした顔をした双葉だったけど、目から涙を流して俺の胸に飛び込んできていた。

 多分、あの日からなんだろうな。俺の中で双葉は守らなきゃいけない奴って! 思ったのは。

 普段のアイツはしっかりしてるけど、肝心な時に心が弱くなる。

 俺が守るんだ。アイツはもう赤の他人じゃない、あの日、あの病室で俺は決意したんだ。

 おっぱいの次に大事な弟は守るって!

 

 

 

**双葉視点**

 

 

 

 誰もが手を止めて、黄金の輝きを放つ牙狼を見ていた。

 一歩ずつ歩く牙狼の鎧の黒く錆びついたような部分が剥がれ落ち、その下からまばゆい光を放つ黄金の鎧が現れる。

 そして鎧の一部が変化し、腰の部分に三角の形で中が赤く塗られているエンブレムが形成される。

 誰かが言葉を漏らした。

 

「黄金騎士……」

 

 俺はそれを聞いてようやく黄金を取り戻せたことを確信する。

 そして戦っているロゼさんとイチ……一誠さんの元へ歩き続ける。

 ロゼさんは肩で息をし、その体からは鎧が既に離れていた。

 暗黒騎士も似たようなものだったが、俺の姿を見ると狂気の笑い声を上げる。

 

「取り戻したかッ! 金色を! そして忌むべき自身の記憶をッ!!」

「……あぁ」

 

 間違いない、コイツはあの時のアイツだ。

 父さんをその手で殺した奴だッ!! 頭が一瞬で沸騰しそうになるが抑える。

 ……まともに戦えば疲弊した今のコイツですら俺は勝てない。

 

「双牙ッ! くそっ、なんでこういう時にいつも動かないんだよ!」

『烈火炎装も使ったからでしょう! 今はあの子に任せるしか無いわ!』

 

 ロゼさんが無理やり立とうとしているが、鎧召還と戦闘、さらには烈火炎装の使用でほぼ動けなくなっている。

 大丈夫です、ロゼさん、後は任せて下さい。

 俺は剣を構えながら、突っ込んできた呀を冷静に対処する。

 

「ぐぅっ!!」

 

 思った以上の衝撃に俺は驚くが、以前のような鋭さはない。

 それだけロゼさんがコイツを追い詰めていたかよく分かるというものだ。

 カチカチと音を立てながら、打ち合う魔戒剣が火花を散らす。

 

「怖いか? 苦しいか? 父を殺した俺が再びお前の前に現れたのだ。さぁ、牙狼を渡せ……そうすればお前の前には二度と姿を現さん」

「ふざけるなよっ!!」

 

 魔力が体から溢れだし、牙狼剣が金色の光を放ちながら徐々に呀の剣を押し戻していく。

 呀はフードの下からわかるほど狼狽していた。

 

「馬鹿な、俺の剣が押し戻される!? 未熟な騎士ごときに!!」

「未熟な騎士だろうよ、けどな俺はただの未熟な騎士じゃないッ!!」

 

 力の限り牙狼剣を握りしめ、呀の剣を天高く弾き飛ばす。

 唖然とする呀に、俺は空いていた左腕を突き出し、奴の顔面へと一撃加える。

 それだけだったが、今までの疲労もあったのだろうか。呀の体は大きく後ろへと下がる。

 そして膝を付き、血を吐き出した……それを見て、俺の中にあった黒い炎が弱まるのを感じる。

 俺は剣を地面に突き刺す、この場にいる全員に聞こえるように叫ぶ。

 

「我が名は牙狼ッ! 兵藤双葉だ!!」

「ッ、冴島の名前を捨てるのか」

 

 膝を付きながら呀を喉の奥で笑いながら俺に問う。

 捨てる、あぁ俺は一度その名を捨てている。そして兵藤双葉という人間となった。

 だけど、後悔はない。むしろこの名前は俺の半生を共にした名前だ。

 冴島双牙、あぁそれも俺の名前だ。大好きだった父さんと母さんが長い時を経て生まれて、俺につけてくれた最高の名前だ。

 でも、今の俺は冴島双牙に戻る訳にはいかない。

 すべてが終わって、自分が納得できるまで俺はこの名前を名乗ることを自分自身で許さない。

 だって、父さんが死んだのも母さんが死んだのも俺のせいだ。

 記憶がぐるぐると頭を駆け巡って吐き気がする。

 胸にある黒い炎が燻りだす……だけどそれを押し込んで、俺は歯を食いしばりながら呀に言う。

 

「お前は俺が倒す。それがけじめであり、俺の運命(さだめ)だ! それまで、俺は俺であり続ける」

「ク、ククク……哀れだな、どうせお前には出来まい。なにせ、お前は本物ではない」

 

 不気味に笑う呀は立ち上がり、魔法陣を展開する。

 その背中から堕天使と悪魔、さらには天使の羽が現れた。

 な、なんだ!? 神器!? いいや、違う神器の波動じゃない。本物の翼だ、堕天使、悪魔、天使の翼なんだ!

 

「なんだと!? 馬鹿な、お前は一体何者だ!!」

「兵藤双葉よ……いや、黄金騎士。今暫く、その鎧はお前に預けておこう。だが覚えておけ、それは俺のものだ。偽物がどれだけ足掻こうと、その鎧は真の姿にはならないのだからな!」

 

 そう言って呀は姿を消す。

 なんなんだ……まぁいいさ、考えるのは後でも出来る。

 俺は視線を未だに押し合いをしている一誠さんたちに向ける。

 均衡が崩れ、一誠さんの顔面がヴァーリに殴られコチラに飛んできていた。だが、一誠さんも負けてはいない、行き掛けの駄賃でヴァーリの右腕を破壊し、宝玉をその手に納めていた。

 俺はこちらに滑ってきたイチ……一誠さんを受け止める。

 無言で見つめ合った俺達はどちらかともなく、頭部の鎧を解除していた。

 気まずい沈黙が訪れるが、俺がまず口を開いた。

 

「今は協力しよう、一誠さ――――」

「イチ兄、だろう?」

 

 その一言に、俺は頭をハンマーで殴られたような衝撃を受ける。

 ……まだ、俺を弟だと思ってくれるのか? この人は。

 

「でも、俺は……」

「記憶が戻ったから他人行儀か? お前っていっつも思ってたけど他人の領域にズカズカと入るけど、自分の領域には入らせないよな」

 

 うっ、そう言われると否定できねえ。

 てか、そうじゃなくて!!

 

「俺は……俺はずっとあなたに甘えてた。いや依存してたんだ」

「別にいいだろ。それに弟に頼られて嫌がる兄貴は……いるだろうが、俺は嫌じゃねえよ」

 

 ゴツゴツとした禁手化した鎧の手が俺の頭を撫でる。

 痛かったが何故か安心した。……長く忘れてたけど、そういえばイチ兄はこうやって俺の頭を撫でてくれたっけ。

 俺が安心したような顔をしたのを見たのだろう、イチ兄は決意したかのように手に持ったヴァーリの鎧から取った宝玉を握りしめる。

 

「悪い、双葉。お前の無茶、俺にも移ったわ」

『相棒、行くぞ!!』

「えっ?」

 

 勢い良く、イチ兄は自分の右腕に嵌めこまれた宝玉を叩き割り、そこにヴァーリの宝玉を埋め込んだ……まさか、イチ兄がやろうとしていることは無茶なんてもんじゃないッ!!

 

「やめろ!! イチ兄!! 死ぬ気かッ!」

「まぁ、見てろって、お前の兄貴はこんなんじゃ死なねえから!!」

 

 右腕から白銀のオーラが発生する。

 思った通りだ、イチ兄がやろうとしていることは師匠の聖魔剣と同じようなことだ。

 異なる力、この場合はヴァーリの半減の力を自分の中へ取り入れることだ。

 だが、それは危険過ぎる。師匠の場合は特殊だった、あれは普通にやっても誰にでも出来ることじゃない。あの場で吹き荒れた力と師匠へ力を貸したあの子たちの想いが形になった奇跡だ。

 イチ兄がやろうとしていることは水と油を混ぜあわせるような行為だ。

 

「う、うぐぁああああああああああああああああああああああああっ!!」

 

 言わんこっちゃないっ!! 俺は痛みに悶えるイチ兄の体を支える。

 

「ぐああああああああああああああっ!! 負けるもんかぁっ、俺は、俺は双葉の兄貴なんだ。このぐらいの無茶やってやらぁああああああああああああああああっ!!」

「無謀……無謀すぎるよ、兵藤一誠、だがそのくらいの無茶をしてくれなきゃ困る!」

『ヴァーリ、残念だが奴は死ぬ。ドライグ、お前はそこまで考えなしだったか?』

『ぐぉおおおおおおっ!!』

 

 アルビオンの冷たい声に、ドライグは苦悶の声を絞り出しながら答えた。

 

『アルビオン、お前はいつも頭が堅いな。俺もかつてはそうだった。だが俺は変わった! この宿主、兵藤一誠とその弟双葉と出会ってな!!』

『馬鹿な、変えるというのか? 我らは同じことの繰り返しだった。お前が倍加し、私が奪う。我らをうまく使えたほうが勝ってきた。これまでも、これからもだ』

『ハッハッハッハ……たしかにそうだったな! だがな、俺はこいつらと出会って学んだことがある。――――馬鹿を通せばそれも可能になるとなッ!!』

「馬鹿で結構ッ! 俺は部長の処女をもらってないんだ。どうせ才能じゃお前に勝てない、なら俺は馬鹿を貫き通すッ!! 俺は馬鹿でお前を超えてやるよヴァァアアアアアアアアアアアリィイイイイイイイイイッッ!!」

 

 イチ兄が叫びながら右腕を天に掲げると白銀のオーラが形となる。

 白銀の篭手がイチ兄の右腕をついていた。

 ハ、ハハハ、馬鹿だ、馬鹿すぎる……だけどこれがイチ兄なんだ! 俺の最高で、最強の馬鹿兄貴、兵藤一誠なんだ!!

 

『Vanishing Dragon Power is taken!!』

「ッ! ハハハッハハハッ!! やりやがった! 見ろアルビオン、俺は最高のライバルに出会えた!!」

『ありえん、いくら神器が神の創りだしたものとはいえ我らの力が混ざり合うなどッ!』

「いいやありえるさ! だって、システムを作り上げた神様がいないんだろ? 整備する奴がいなけりゃそりゃエラーも出るさ!」

 

 そう、神様がいない。

 裏ワザどころかバグ技の一種だ、だけど実現できたのはイチ兄の土壇場の底力だろう。

 

『ッ!? だが寿命は縮んだぞ、それでもいいのか!』

『だとよ、相棒』

「元々一万年生きるつもりはねえよ。やりたいことはあるけど、今は出来たってことでそれでいいじゃねえか!」

「アルビオン、彼らに常識を言っても無駄さ。なにせ、あの二人は常識の向こう側まで突っ切る者たちだ。クククッ、俺は運がいい。こんな素晴らしい兄弟を相手できるのだからな!」

 

 あの戦闘狂を誰か止めろ、あっ、止めるのは俺達か。

 ヴァーリは翼を羽ばたかせると上空で右腕を突き出す。

 

「いいだろう! 俺の本気を見せよう。かかってこい、二人共が俺に負けたら君たちの全ても、君たちの周りにあるものを全て半減させよう!」

 

 な、何を言ってるんだ? 半減? アイツの力は触れたものの力を半減にして糧にするだけじゃないのか?

 ヴァーリは高笑いをしながら、近くにあった体育館に視線を合わせる。

 

『Half Dimension』

 

 すると体育館が半分になる。

 まさか……空間を捻じ曲げてやってるのか!? でたらめすぎないか白龍皇! 赤龍帝の倍加と譲渡も十分やばいけどこっちのほうが凄まじすぎるわ!! というかこの二人が組んだら向かうところ敵なしじゃねえの?

 

「空間を歪んでいますね。今代の白龍皇はここまでなっていましたか」

「ミカエルさん!? それにサーゼクスさんたちも」

 

 ミカエルさんたちがいつの間にかリアス先輩たちの傍に立っていた。

 多分、魔術師たちをどうにかしたのかな? そういえばあれだけいたあいつらどうしたんだろうか? 見守っていたところをやられたかな、同情はしないつもりだったが、アホだろ。

 そう思っている内に体育館がさらに半分になる。

 

「兵藤一誠、兵藤双葉、お前らにわかりやすくアイツの脅威を教えてやるよ」

「いや、見てるだけでヤバイのはわかるからいいよ」

 

 解説役のように言っているアザゼルおじさんを拒否するが、昔のように少し困った顔をしながらおじさんはさらに喋る。

 

「そう言うなっての。お前らは女性の体に興味津々だからな……簡単に言うぞ、アイツをほっといたらリアス・グレモリーや姫島朱乃のおっぱいやケツが半分になる」

 

 …………はい?

 俺とイチ兄は揃って頭に疑問符で埋め尽くした。

 いや、意味がわからない。おっぱいとケツが半分になる? 何を言っているんだアザゼルおじさん、それは世界の損失だよ。

 

「あの能力は周囲のもの全てを半分にするからな。ヴァーリのことだ、やろうと思えばピンポイントでやるかもしれないぞ?」

 

 あぁ、なるほどなるほど、よくわかった。

 イチ兄はリアス先輩、俺は朱乃先輩に視線を送る。

 二人が俺たちの視線に怯えるのがわかるが、ちょっと待っててくださいね。

 完璧なプロポーションに出るところは出るわがままボディ、そして柔らかい唇の感触……あと小さい頃日が暮れるまで遊んだあの頃の記憶が全部蘇る。

 あの体が半分に? アーシアも? 小猫も? 皆が半分になる?

 ふ、ふざ――――

 

「「ふざけるなよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!!!」」

『Boost!!』

 

 俺達の体から爆発的にオーラが出る。

 イチ兄の鎧の各部に装着された宝玉から音声が重なり、俺の鎧は金色が周囲を埋め尽くし牙狼剣の刀身は今まで見たことないくらいに金色に光り輝いている。

 

「お前だけは! お前だけはここで潰す!!」

「切り開いてやるよ、おっぱいとお尻を半分にする悪魔は俺が倒す!!」

『Boost!!』

 

 俺たちの怒りがオーラに乗り、赤と金色のオーラが周囲を破砕していく。

 俺の記憶だとか! 暗黒騎士とか色々あった!! 正直、色々ありすぎてパンクしそうだったが、お前は俺達の逆鱗に触れたぞ、ヴァァアアアアアアアアリィイイイイイイイイイイイッ!!!

 

「許さないぞ、ヴァーリィッ!!!!!」

「行くぞ、イチ兄! 俺たち兄弟の力を見せつけてやるんだ!!」

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!』

 

 俺達の姿に全員がドン引きしてるが、わからないのかッ!!

 リアス先輩や朱乃先輩のおっぱいやお尻が半分になったら、イチ兄の力を譲渡しても元に戻るだけだ!! いくら譲渡してもそのままだとか残酷すぎるッ!!

 シリアス? 過去の出来事? 知るか、今の俺は兵藤双葉だ! 俺は、俺の正しいと思ったことをしているだけだ!!!

 

「なんだそりゃ! おっぱいとケツでブチ切れて兄はドラゴンの力を倍増させて、弟は溜め込んでいた魔力を全てコントロールしてやがる」

「笑い事かぁ!! 双牙が、双牙がぁっ!!」

『お、落ち着くのよロゼ!! 気をしっかりと持って! あの子は若いからあぁなってるだけよ!』

 

 なんか一部が笑ってたり、後悔してるが笑ってる場合かぁあああああああっ!!

 

「女性の胸と尻でここまで力を爆発させるだと!?」

 

 ヴァーリが驚いているが、俺は地面を蹴り砕いてヴァーリの頭を掴むと勢い良く地面に叩きつける。

 どんどん魔力が湧き出てくる。なのにいつもみたいに暴走や体を焼き焦がすことはない。俺の体、いや全細胞が叫んでいるんだろう。奴は消滅させるレベルの敵だって。

 

「がぁっ!? だが、俺に触れればお前の力を半減して――――」

「させるかよぉっ!! まずは部長のおっぱいの分!!」

『Divaide!!』

 

 イチ兄が俺からヴァーリを引き剥がすと天高く飛び上がりながら膝蹴りを腹部に叩き込む。

 新しく移植した力を使ったのか、ヴァーリのオーラが半減した。

 

「イチ兄ィイイイイイ!! パァアアアアアス!!」

「あい……よっ!!」

 

 俺の声に反応したイチ兄は、吐瀉物を吐き出したヴァーリの頭を掴むと頭突きをしながらコチラに吹き飛ばす。

 俺は足に力込め、背中から魔力を噴射させて空へと飛び上がるッ!!

 

「これは朱乃ちゃんの分!!」

 

 右ストレートが決まり、ヴァーリの体が横に吹き飛ぶが俺はそれ以上の速度でヴァーリを追い抜かし、後ろに回ると拳を振り上げたッ!!

 上に吹き飛ぶイチ兄がヴァーリをキャッチするとそのまま連打を始める。

 

「こいつは双葉のために豊満マッサージとかしているアーシアの分ッ!!」

 

 連打の最期に、イチ兄はヴァーリの体に両腕を振り下ろし再び俺の前にヴァーリがやってくる。最早、余裕が無いのか防御をするので精一杯らしい……だが止めるかよッ!!

 

「これはゼノヴィアとあとついでにイリナの分!!!」

 

 意外にアイツ色っぽんだよぉおおおおおっ!! あの戦闘服もぴっちりしてるから嫌でもスタイル見えるしよぉおおおおおっ!!

 俺はヴァーリの顎に蹴りを何度も、何度も何度も打ち続ける!! 半減していく俺がいたか知るもんか、蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴り続ける!!

 

『なんだ!? 半減し続けても勝手にパワーが上がっていく!? 馬鹿なこれではまるでドライグの――――』

「ごちゃごちゃ言ってんじゃねえぞ、半分こマニアがぁああああああああああッ!!」

 

 トドメの一撃と言わんばかりに、俺はヴァーリのふらつく頭を掴むと頭突きを食らわせ地面にヴァーリをめり込ませる。

 俺は上昇し、空中に飛んでいたイチ兄の隣に行く。

 俺たちはアイコンタクトでお互いの考えを察する。

 イチ兄は俺の体に触れ、倍加した力を俺に譲渡する。

 とてつもないパワーが俺に充満し、黄金のオーラに赤が混ざる。

 イチ兄も再び倍加し、力を元に戻す。

 

「行くぞ、イチ兄ッ!!」

「遅れんなよ、双葉!!」

 

 お互いの背中からとんでもない量の魔力を噴出させ、足にオーラを溜める。

 地上を見るとヴァーリが起き上がりこちらに魔力弾を放っていた。だがもうおせえっ!!

 

「「うぉおおおおおおおっ!!」」

 

 俺たちは叫び声を上げて右足を突き出し、飛び蹴りの姿勢のまま地上のヴァーリめがけて突撃する。

 俺達の膨れ上がったオーラがヴァーリの魔力弾が着弾する前に打ち消す。そして二つのオーラが形を作る、一つは赤い龍のような形、もう一つが金色に輝く狼のような形。

 

「ハ、ハハッハハ!! これが今代の赤龍帝と黄金騎士か……誰だ最弱なんて言った奴は、見方を変えれば最強になりうるぞ、こいつらはッ!!」

「こいつは小猫ちゃんの半分になれば無くなりそうなちっぱいと」

「小さなお尻の分だァアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

 ヴァーリに俺たちの蹴りがまともに当たり、血反吐を吐きながら倒壊しかかっている新校舎の壁にめり込む。

 キックの勢いが強すぎたのか、俺達は地面を削りながら強引に止まる。

 全く小猫に関しちゃ同意だよ!! 半分になったらアイツが泣いちまう!

 あれでも気にしてるんだぞ!! 最近だとアーシアと一緒に牛乳飲んだり、豊満マッサージやトレーニングとかしてるんだ!! あっ、でも尻はグッドね、小ぶりのおしりはとってもいいモノだ。

 

『ドライグ、俺は泣けば良いのか? 笑えば良いのか?』

『泣け、そして双葉は英霊たちに謝れ。なんでこいつらは予想の斜め上どころか予想の裏側を突っ切るんだ』

 

 そんなドライグとザルバの泣き声が聞こえるが、ヴァーリの野郎はまだ立とうとしてやがる。

 全身から血が噴き出しているのに、アイツは笑みを止めずに俺たち二人を見る。

 

「クッ、ハハハハ!! いいぞ! ここまで追いつめられたのは久々だ……だから見せよう、『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』の力を!!」

『やめろ!! 今、その力を使えばお前が死ぬかもしれん! 我が力に翻弄されるのがお前の最期か!』

 

 アルビオンがヴァーリの行動を止めようとするが増々笑みを大きくするヴァーリは吐血しながら唱え始めた。

 

「これが最期でもいい、俺は今最高の気分なんだ。――――『我、目覚めるは、覇の理に――――』」

「はぁい、そこまでにゃ、ヴァーリ」

 

 上空から狐の姿をした火の玉が落ちてくる。

 俺はイチ兄を庇うように立つと牙狼剣からエクスカリバーに持ち変える……チャージは不十分だろうがあのくらいなら散らせる!

 俺は振り上げる形でエクスカリバーの刀身に纏った金色を開放する。

 

「はぁああああああああッ!!」

 

 ビームのような光を射出したエクスカリバーを更に横に動かす。

 コチラに着弾しそうな火の玉を全て迎撃したところで、俺は膝を付きながら鎧を解除する。

 く、くそ……流石に無理しすぎたが、イチ兄だって似たようなものだ。

 片膝を付きながらなんとか鎧を保っているが、いつ解除されてもおかしくない。さっきの火事場の馬鹿力は長続きしないってか。

 倒れそうになる体を必死に奮い立たせ、なんとかエクスカリバーを構えるが剣先が震えている。

 

「ご挨拶ね、双葉」

「うるせえ、発情猫……ヴァーリの仲間だったのか」

 

 コチラを妖艶の笑みで誘っているのはクロだった。

 クロはヴァーリの前に立つと、後ろに手を回してヴァーリの体に回復の術式を展開していた。

 こっからもうワンラウンドとか無理だぞ!? いや、する気はないか? クロのさっきの攻撃はミカエルさんたちを狙っていた……撤退要員ってわけか。

 そしてクロの隣に、見慣れない男が降り立った。

 三国志? いや、なんか見覚えのある恰好をした男だ……どこだったかな。

 

「ヴァーリ、迎えに来たぜぃ! って、お前がそこまでボロボロになるなんてアザゼルかどっかのトップに喧嘩売ったか?」

「私の未来の旦那様にボッコボコにされてたわ……いいわ、そのまま強くなって、双葉」

 

 恍惚の笑みを浮かべてコチラをみるクロに、反射的に俺は一歩下がる。

 アカン、あいつに捕まったら人生の墓場どころか俺は死ぬ、間違いなく兵藤双葉どころか黄金騎士が死ぬ、そんな予感がする。

 そんなクロの様子を降り立った男はため息を付きながら見る。

 

「美猴……黒歌は黄金騎士をどうしたいんだ?」

「やめとけ、世の中力だけじゃどうしようもないこともある……敵ながら同情するぜ、黄金騎士」

「同情するならそいつ封印してくれ、今すぐに!!」

「あぁっ、怯える双葉もいい」

 

 ひぃいいいいいいっ!? と怯えていると俺の前にアザゼルおじさんとロゼさんが立ち塞がってくれた。

 ありがとう!! ありがとう!!! ……やっぱアザゼルおじさんは優しいなぁ。

 

「ヴァーリ、ここは引いたほうがいいぜぃ。さすがに堕天使のボスと魔戒騎士の長相手は分が悪いというか、カテレアが失敗したなら撤退って言われてただろ?」

「良いところだったんだがな」

「その顔、相当気に入ったな」

 

 美猴と呼ばれた男は、俺たちに手を振る。

 

「自己紹介まだだったな。俺の名は美猴。闘戦勝仏の末裔さ!」

 

 闘戦勝……なんだって? 聞いたことねえなと思っているとアザゼルおじさんが説明してくれた。

 

「闘戦勝仏、日本じゃこの名前のほうが有名だろ。孫悟空、西遊記で出てくるクソ猿さ」

「えええええええええええええええええっ!?」

 

 イチ兄が驚くが、俺どころか皆もぽかんと見ている。

 そ、孫悟空ってあの世界でも屈指の最強の猿じゃねえか!? てか西遊記って事実なの!? この世界の伝説ほとんどが本物だとしたらインド辺り人外魔境すぎねえか!? よく滅んでないな、この世界!!

 

「正確に言うなら力を受け継いだ妖怪だがな……『白い龍(バニシング・ドラゴン)』に孫悟空の末裔、さらには猫魈の生き残り。『禍の団』は本気で世界とやりあうつもりか」

「そうよ、魔戒騎士の長さん♪ これだけではなく各勢力の不穏分子や英雄たちや神器使いも集まってるにゃ」

「オイオイ、世界のバランスを保つ存在が世界ぶっ壊す存在に力貸してるのかよ……どうりで神滅具が補足できないわけだ。お前ら、隠してたな?」

「それについてはノーコメント」

 

 美猴は手に棍を呼び出すと、くるくる回して地面に突き立てる。

 その瞬間、ヴァーリたちの足元に黒い闇が広がる。

 全員が表情を変えるが再びクロが狐の火の玉を連射し、アザゼルおじさんやミカエルさんが障壁を張ってガードしてくれる。

 さっきと威力が違いすぎるぞ、クロのやつどんだけ強いんだよ!? 魔王並みじゃねぇの!?

 

「ッ、ここまで力を上げているとは」

「敵には困らなかったからね。悪魔は嫌いだけどそこだけは感謝してるわ」

 

 冷たい瞳でサーゼクスさんを睨む。

 美猴たちの体がズブズブと闇に呑まれていく時、ヴァーリはこちらを見ながら話す。

 

「いずれまた戦おう。それまで死ぬなよ、兵藤一誠、冴島……いいや兵藤双葉」

 

 それだけ言って、三人の姿が完全に闇に呑まれた。

 

 

 




◯黄金騎士・牙狼
 双葉の一部記憶が戻ったことによって黄金を取り戻した牙狼、と言いたいところであるが双葉の感情と記憶がまだ曖昧なせいで不完全な牙狼である。外見は前期のレオン牙狼のひび割れがない状態。形状が攻撃的だが、それは双葉の心から恐れが取れていないことを意味しており、黄金を失っていた頃よりも心滅獣身しやすいという危なさを持っている。しかしながら、両親を失った記憶から、手の部分にあった刃が小型の盾に変化しており全体的に防御力が上がった。


シリアスに出来ましたか?(小声) 出来ませんでした(小声) いやほんとすいません、ここだけは変えたくなかったというかおっぱいドラゴンの初陣と尻好きにしたらやっぱこうしたいなとやりたい放題した結果がコレだよ!
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