ハイスクールD×D 黄金騎士を受け継ぐもの   作:相感

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( ゚д゚)←書き終えた作者の顔

……いや、ちゃうねん。当初の予定だと……あっ、かなり巻いてます。次の次辺りで牙狼剣当たりだしたい。タイトル詐欺やんこれ。


アーシア・アルジェント

 イチ兄が悪魔になったと聞いてから一週間ほど経った。

 まぁ、受け入れる時間が欲しいと言っときながら時間が経つとこれはこれで素直になれないものだった。あれから一度もオカルト研究部どころかリアス先輩に挨拶にも言っていない。

 そこ、ヘタレ言わない。こういう時の思い切りの良さはイチ兄の専売特許だ。

 悪魔になったと聞いても嘆くどころか喜んでいたと教室で子猫に聞いた時は天を仰いだ。古今東西、堕天使に殺されて半強制的に悪魔になったのに喜んでいるのはイチ兄くらいなものだろう。

 理由は小猫がジト目で言ったことで納得がいった。

 

「ハーレム王に俺はなる」

 

 もちろん、昼食の時イチ兄のクラスに行き、頭を叩いた。

 女と聞けば火の中水の中、どこへでも行きそうなウチの兄を女で釣るとはリアス先輩はイチ兄の扱いが上手いなぁと思う。

 なんでも悪魔の仕事をやり続けると魔王から評価されて爵位をもらえたりするらしい。

 何年かかるの? と思ったが聞くのはやめておいた。せめて息子(意味深)が元気なうちにハーレム作ってくれと願うだけだ。

 最初の数日はチラシ配りを日夜続けていたらしい。じつはこのチラシ、俺が持っているチラシの簡易版なそうで欲望が強い人間が願うとハクショ◯大魔王よろしく、リアス先輩たちが召喚されるらしい。

 ちなみに、イチ兄もあのデート前にチラシをもらっていたから助かったそうだ。……運がいいのか悪いのか、そこんところは俺もわからない。

 そしてようやく悪魔の仕事、本格スタート……と行きたかったが問題が発生した。

 

「俺さ、魔力滅茶苦茶低いらしい」

「まぁ、平々凡々の家庭だもんなぁウチは」

 

 なんでもチラシを通して転移魔法陣でその契約者のもとにひとっ飛びできるはずなのだが、イチ兄の魔力が低すぎて転移できず、チャリで突撃! 隣の契約者をするはめになったらしい。

 なお前代未聞のそうだ。転生悪魔は元来才能ある人物を選ぶらしいので当たり前っちゃ当たり前かぁと思う。ウチ、普通の一般家庭やし。

 まぁ、そこでくじけないのがイチ兄の良い点だと思う。足りない魔力は足で補え、契約ぶんどれないのなら相手と親密に、と呼ばれると面白い悪魔ということで一部の人達から人気が高いらしい……ハーレム王になれんの? 芸人目指したほうが似合いそうだが。

 だが正直安心した。悪魔になって上手くいかないよりもいつものイチ兄が頑張っていると思うとホッコリする。

 そんなこんなでそろそろ菓子折りでも持って行くかぁと思っていたある日の事だった。

 

 

 

****

 

 

 

「大丈夫かなぁ……」

 

 表向きはオカルト研究部をしているはずのイチ兄を心配する。

 最近は悪魔の体になれたのか、朝の目覚めもバッチリになってきたそうだ。正直連日、徹夜してあの元気さは少し嫉妬する。悪魔と人間は根本からスペックが違うんだなぁとしみじみ感じてしまう。

 何もないので今日は少し寄り道しようかと思っていた時、不意に曲がり角から出てきた人がいた。

 えっ、ちょ!? と思っている間に激突してしまう。

 

「はうわ!?」

「あぶねえ!!」

 

 なんとかその人の手を掴み、掴んだ手と逆の方で腰を掴みしっかりと足を踏ん張る。

 荷物は地面に転がってしまったがぶつかった人が倒れなくてほっとする。

 

「大丈夫です……」

 

 か、と最後まで言えなかった。

 そこに金髪の超絶美少女シスターがいた。

 驚きで目を何度もぱちぱちしているが逆にその仕草が可愛い。

 彼女のグリーンの瞳があんまりにも綺麗で暫くじっと見つめる。

 

「ッ~~~~!!」

 

 少女が顔を真赤にして暴れだす。

 どうしたと思ったが今の状況を思い出すと当たり前だった。

 バカップルがキスしそうな状況なのだ。助けたとはいえ、腰に手を回して、腕を引いている。顔なんて少し近づけばキスするレベル。

 それに気づいて俺も顔の温度が急激に上がるのを感じる。

 

「うぉわぁああ!? す、すいません!」

 

 すぐに離れてペコペコと頭を下げる。

 

「! (バタバタ)」

 

 手をバタバタさせながら気にしていないというジェスチャーだろうか? それをしているのでとりあえず謝るのをやめる。

 

「えーと……旅行者?」

 

 シスターの格好した旅行者とかいるはずねえだろと自分で突っ込んだが、肩にかけている旅行鞄で判断した。この町に教会なんてなかったような記憶があったからだ。

 しかし少女からは「?」と疑問符を浮かべて、コテンと首を横にしていた。……おおう、使い古されたネタだが、美少女がやると絵になるな、とほんわかする。

 しかしなぁ、この反応に少女の姿から察するに、多分日本語が通じてない。

 んー、とりあえず話してみるか? えーと、確かこういう時は……。

 

「アイドントノウジャパニーズ?」

「!! (ブンブン)」

 

 滅茶苦茶な発音だったが通じたっぽい。

 やったぜ! と思うが困ったもんだ、興奮した少女がこっちにすげー言葉を話しかけてくるがさすが本場、早すぎて聞き取れないぜ。あっ、でも声がすごい綺麗。

 とりあえずもうちょい遅く話してと言うと、顔を少し赤くしてエヘヘと笑った。

 ……可愛いなぁ。

 

 

 

****

 

 

 

「ふーん、わざわざ外国からねえ」

 

 歩きながら彼女、アーシア(多分発音的に合ってると思う)が言った言葉を整理する。

 リスニングは結構出来るのだ、話せないけどな。

 なんでも外国からこの町の放置された教会をよみがえらせるためにはるばる来たんだそうだ。

 言われてみれば数年前から放置されて建て壊しされるっていう教会あったのを思い出したので、現在案内しているところだ。

 ちなみにアーシアは子犬のように俺に話しかけてくる。まぁ、ここまで来るのに苦労しただろうしなぁ、俺だって聞くので精一杯だもん。普通の人なら、いくら可愛くても……あー、でも悪いやつに引っかからなくて本当に良かった。

 

「?」

「いや、こっちの話だ」

 

 考えていたことが顔に出たのか、こちらの顔色を除いてくる。

 ジェスチャーと軽い英単語でなんとか「なんでもないと」と伝える。

 英語なんて基本ボディランゲージだ。身振り手振りしてりゃ大体は通じるというのが俺のモットー。そりゃビジネスなら英語出来たほうがいい。

 通じてるというか話すのが出来て嬉しいのだろうがアーシアは笑みを崩さない……こんな子がいる教会は毎日神じゃなくて、この子に目当てに来る人が多くなるだろうな。

 そんなことを考えつつ、近道である公園を横切ると泣き声が聞こえた。

 

「うわぁあああん」

「あちゃー……悪いアーシアちょい待ってて……あっ、違う違うプリーズウェイト」

 

 転んで擦りむいたのだろうか、子供がうつ伏せのまま泣いていた。

 割と痛いもんなぁ……うぉ!? 結構擦りむいちゃってるな。

 

「やっちまったなぁ、ちょい待ってろ確か絆創膏……ってアーシア!?」

 

 いつの間にか隣にいたアーシアがいた。

 そして多分、日本語に変換するとこう言ってたと思う。

 

「大丈夫? 男の子ならこのくらいで泣いてはダメですよ」

 

 そうするとアーシアの掌から淡い緑色の光が発せられ、光に照らされた膝の傷があっという間に消えていった。

 

「なぁっ!?」

 

 驚いて口をあんぐりさせる。それは子供も隣りにいる母親も同じだった。

 アーシアだけはニコニコ笑いながら、子供の頭を優しく撫でていた。

 ……つい一週間前なら思考が停止するような出来事だが、おおよその予想はつく。

 多分、 神器(セイクリッド・ギア)の力だろう。こういう奇跡起こせるのはそういうのか、それとも悪魔か堕天使とかそこら辺だと思う。

 にしてもこういうのもあるんだなぁ。そういえばキリストも手で人の傷癒したとか言ってたが……まさかなぁ。

 

「ありがとう! お姉ちゃん!」

 

 傷が治って痛みもなくなったおかげか、満面の笑みでまた駆け出す子供に苦笑しながら母親は軽く会釈をする。

 アーシアはというとキョトンとしていたので、軽くありがとうと言ってたよと言うと笑みを浮かべる。ただ、その笑みに少し影があったのは気のせいだろうか。

 まぁ、詮索はなしだな。誰にだって理由はあるし、 神器(セイクリッド・ギア)持ってるなら苦労してきたに決まってる。いくら優しい力持っていようが、寄ってくる連中がみんな仲良しこよしでやろうとは思っていないだろうしな。

 そしてまた暫く歩くと古びた教会に着く。

 放置されていたはずだが明かりが灯っていたのであそこであっているのだろう。

 アーシアも見た途端ぱぁっと顔を明るくしてるし。

 

「――――――!!!」

 

 ぴょんぴょん跳ねながら全身で喜びを表すアーシアを見ると、妹ができたらこういう感じなのかとふと思う。

 俺、弟だから兄って立場に結構憧れている。

 アーシアみたいな妹ができたら滅茶苦茶甘やかしちゃうかも……あっ、でも駄目だ、イチ兄がいやらしい目で見るからな。

 目的は達成したし、手を上げてサヨナラを表して踵を返し帰ろうとすると制服の端っこを掴まれる。

 何事かと思って振り向くとアーシアが目をキラキラさせながら掴んでいた。

 

「いや、アーシア、あそこだからあとは……」

「(ブンブン!!)」

 

 首を大きく振りながら、引っ張ろうとする。

 多分お茶くらい淹れますよと言っているんだろうが、気遣いはノーサンキューというか身内に悪魔いるんで、教会に近づくのは結構ヤバイんじゃないのか? と今更ながら思う。

 いや、これでなんか神の使徒的な奴らが出てきたらどうしよう。特に二刀流でエェエエイメンとか言いながら突っ込んでくる 神父(バーサーカー)来たら泡吹いて倒れる自信がある。

 数分くらいかな、格闘してるとアーシアは残念そうに制服から手を離してくれる。

 ふぇー、なんとかなった。

 残念そうにうつむくアーシアを見ると胸が痛む。

 

「んー、またな? ここにいるんだろ?」

「(コクコク)」

 

 なんとか英語で伝えると首を縦に振ってくれる。

 まぁ、来る気はサラサラないがアーシアのうるうるした目を見ると罪悪感が半端ない……ついでに神様に懺悔してこようかな。

 馬鹿なこと考えてないで帰るか。ちょっと遅くなっちまったし。

 

「じゃーなー」

 

 手を振りながらアーシアと別れる。

 そんなアーシアは俺が見えなくなるまで手を振り返してくれた。

 めちゃくちゃいい子だけどイチ兄に教えるのは止めよう。絶対ここに来るよ、で悪魔でも懺悔させてくださぁいとか言って入り浸る、確実にだ。

 

 まぁ、結果的にアーシアとは近いうちに再開することになる。

 考えうる限り最悪の形でな

 

 

 

 ****

 

 

 

「もう絶対行かないように」

「いや、でも……」

「行かないで」

「アッハイ」

 

 次の日、意を決して菓子折りを持って部室に行ってから、その話をしたら滅茶苦茶怒られた。

 特に姫島先輩なんていつものニコニコ顔じゃなくて、マジ顔で『行かないように」って言うもんでビビる。

 小猫なんてえっ? 正気か? みたいな顔してたんで結構やばかったらしい。

 

「あなたは人間でも、身内に悪魔いるのよ? 万が一バレたらあなたまで殺されるかもしれないわ」

「うぐっ、や、やっぱり?」

 

 どうやら昨日考えていたとおり、教会にも子飼いの 悪魔祓(エクソシスト)いにぬっ殺されるか、見守る(という名目の監視)をしている天使に光の槍をドタマにぶち込まれるらしい。近づいただけで槍ぶっぱとかおっかねえな、オイ。

 

「でも 神器(セイクリッド・ギア)持ちのシスターですか……聖女が護衛無しに一人旅なんてネギを背負ったカモよりもよっぽど狙われやすいはずなんですけどね」

「聖女?」

「教会内でも崇められる……良く言えば 偶像(アイドル)、悪く言えば体のいい捨て駒ね」

 

 ちょっとその言い方にカチンと来たが口には出さない。

 あんないい子を捨て駒とかホモか腐った野郎どもだろうが、教会内でも腐敗がすすんでいるらしい。……ほんと人間ってのは恐ろしいもんだ。

 

「まぁ、あなたは死んでも人間だから転生できるわ」

「えぇっと悪魔は?」

「消滅、ちなみに転生せずに無に還ることになるわね」

 

 衝撃の事実に思わず息を呑むが、リアス先輩たちがいる世界ってのはそういうところなんだろうな。

 全く、こんな美少女が消滅したら世界の損失ってのに、神様も中々酷いなぁと思う。

 

「んじゃ、そろそろ帰ります」

「あら、もう帰るの?」

「ええ、部外者の俺がいるとやりにくいでしょうし……それに楽しそうにやっているイチ兄見てますから安心してますよ」

 

 今、部室におらずチラシ配りをしに行ってる兄を見てると安心する。

 本当に楽しそうだ。朝、色々と活動について話されるが俺もやってみたいと思うほどだ。まぁ、戦闘だけはノーサンキューだが。

 

 その日はそのまま帰ったが、後で聞くとなんとイチ兄が初めて実戦に行ったらしい。

 なんでもはぐれ悪魔? というものを狩るためにたまにリアス先輩たちが出動するそうな。

 今回は見てるだけで、 悪魔(イーヴィル・) の駒(ピース)という物の役割を教えてもらったらしい。なんでもチェスを参考にして……なんだっけな、レーティングゲームというものをしてるらしいが、俺には直接関係ないので話半分に聞いていた。

 ちなみにイチ兄が 兵士(下っ端)だと聞いた時、大笑いしたら殴り合いの喧嘩に発展した。

 

 

 

****

 

 

 

「今日はイッセーの仕事を見学してみない?」

 

 きっかけはそんなリアス先輩の気遣いだった。

 顔を出すようになった俺だが、ときおり不安な顔をしているらしいと小猫や姫島先輩に報告されていたらしい。

 そんでもって今回は安心させるために、イチ兄の仕事を見学しにいくことになった。

 まぁ、移動手段が自転車ってのも理由なんだろうな……チャリで来る悪魔とか、漫画だけかと思ってたよ。あと自転車には魔法がかけられているらしく疾走している俺達の姿は普通の人には見えないんだとか。

 しかし夜のイチ兄は凄まじかった、俺ですら追いつけず途中何度も待ってもらい、到着したのがだいたい三十分後。

 

「ぜー、ぜー……あ、悪魔って便利なんだな」

「おう、夜はビンビンだぜ!」

 

 腹が立つがツッコむ気力すらない。

 いつの間にかイチ兄の方が強くなっていると思うと胸のあたりに少し痛みが走った……なんだ?

 

「で、どうするの?」

「お宅訪問するんだが、家族とか大丈夫かな」

 

 息を整えて、見ると着いた場所は一軒家だった。

 あー、なるほど家族にバレて、悪魔でーすなんて言えば確実に国家権力がすっ飛んでくる。

 まぁ、なんとかなるだろうとイチ兄の楽天思考でブザーを押そうとして、気づいた。

 

「イチ兄、扉が」

「……開いてるな」

 

 深夜になんとまぁ……とこの時、気付くべきだったんだろうがズブの素人と初心者悪魔である俺達がこの異常事態に気づけるわけがなかった。

 足を踏み入れて、感じたのは寒気と匂いだ。

 

「イチ兄、この匂い」

「あぁ、お前もわかんのか」

 

 嫌な予感がしたがとりあえず入っていく。

 人の気配はない。廊下も明かりが消えているが寝てるってことはないだろう、イチ兄が呼び出されたんだから。まぁ飽きて寝ているんだろうとこの時は思ってた。

 廊下を歩き、リビングに向かっていくにつれて匂いが強くなる。

 なんだろう、この匂いは……まるで鉄のような、それでいて生臭い匂い。

 

「ちわーっす、グレモリーさまからの使いの悪魔ですが……ッ!!」

 

 唯一明かりがついていたリビングに足を踏み入れた時、匂いの正体がわかった。

 リビングの壁、そこに死体が張り付けてあった。

 上下逆さまな上、そこから切り刻んだのだろう。内蔵やその他の色々なものがこぼれていた。

 

「うっ……」

 

 イチ兄があまりの光景に耐え切れなかったのだろうか、口から胃の中の物をぶちまける。

 仕方ないと思う反面、あまりにも落ち着いている俺に自分自身が戸惑っていた。

 イチ兄のときはあんなにも同様してたのに今は不思議と落ち着いてる。

 むせ返るような血の匂いも、こんな異常な死体もまるで何度も見た映像のように何も感じない。

 いや、感じるには感じるのだが感情の起伏が小さい、慣れているってのか?

 

「悪趣味だな。んでもって、文字か。なになに?」

 

 惨殺死体の直ぐ側に血で書かれた文字があった。

 意訳するなら『悪い子とした奴はお仕置き☆』ってところだろう。悪趣味通り越してサイコパスだな、ドミネーター持って来い。

 

「おやおや、人間と……悪魔くんではーありませんかー」

 

 いつからいたのか。俺達の後ろに神父姿の少年が笑いながら立っていた。

 いい笑顔だ、まるで獲物を前にした肉食獣みたいな顔だ。

 

「お前かこれやったの。とんだ腐れ神父もいたもんだ、神様が泣いてそうだ」

「いやいや? 神様も聖書で言ってるでしょ? 汝、隣人を愛せよ、ただし悪魔やそれに関係する奴はぶっころがせってね」

 

 あぁ、一発でわかる。コイツはイッちまった人間だと。

 

「にしても魔法陣で待機しても煮ても焼いても来やしない。飽き飽きしたところで君たちが来てよかった~♪」

「頭のネジ交換してもらったらどうだ?」

「お、オイ、双葉あんま刺激すんな。こいつ教会関連だとすると」

 

 まぁ、十中八九どころか十割 悪魔祓(エクソシスト)いってやつだろう。

 運が悪すぎだろ、動物園を見学しにいったらライオンの檻にぶち込まれたようなもんだろこれ。

 あぁ、どうするリアス先輩にもらったあれ使う時か? あぁ、でもヘタしたらリアス先輩が怪我しちまうかも。

 そんな葛藤を無視して神父姿の少年が再び口を開く。

 

「俺の名前はフリード・セルゼン。とある 悪魔払(エクソシスト)い組織に所属する末端にございますですよ。あぁ、別に名乗らなくていいよ。野郎の名前とか即忘れるしクソ悪魔とそれの関係者とかマッハで忘れるから」

「こっちも聞いちゃいねえよ……イチ兄、逃げるぞ」

 

 勝ち目はない。

 というか戦うのが目的じゃないし、さすがのコイツも人目のつくところでは……自重しねえや、多分人混みだろうがなんだろうがバッタバッタなぎ倒して進むタイプだろ。

 

「お利口さんには花丸あげたいが、悪いがあんたたちにやるのは鉛球とレーザーブレードだよん☆」

 

 あっ、飛び道具持ってんのかと思った瞬間、リビングの扉を蹴り飛ばして逃げ出す。

 こういう時に目で合図できる兄弟ってのは便利……だぁっ!?

 

「あっ……がぁっ……」

「双葉!」

「あれま、人間のほうにあたっちった。でもおいしいだるるぉ? 悪魔祓(エクソシスト)い特製の祓魔弾は。あっ、音しなかったのは火薬とか使ってないの。これ光の弾丸。種も仕掛けもございませーん☆」

 

 ヤバイ、ヤバイヤバイヤバイ。

 ブワッと汗が出るがどうしようもない。左腿に着弾した弾は貫通したんだと思うが激痛で一歩も動けない。

 

「いま行く!」

「来るなっ!! 早く逃げてこのことをあの人たちに伝えろ!!」

「あっ? なになに? お涙頂戴の演技? アーナキソとでも言えばいい? 安心しなって、そこの悪魔もあんたを殺した直後に送ってやるよん。ただしもう二度と会えないけどな、ギャハハハハ!!」

 

 頼むから逃げろってイチ兄……あー、もう戻ってきやがった。

 フリードはいつの間にか持っていたレーザーブレードみたいな光の剣を振りかぶっていた。

 イチ兄の位置と俺がバターのように切り裂かれるまでの時間を考えて、俺の人生はここで終わるらしい。

 こんなことならリアス先輩のチラシ使っとくべきだったわ。

 全部を諦め、目を閉じかけた時……聞き覚えがある声が響いた。

 

「――――!!」

「なん、で、ここに?」

 

 覆いかぶさるように俺を庇ってくれたのは、アーシアだった。

 フリードは舌打ちしながら、レーザーブレードの刃の部分を消してアーシアを斬らないようにした。

 

「なーんで来ちゃうかなぁ……あん? 教会に送ってもらった人? あぁ、なーるほど凄い上機嫌だったのは男を知ったってことだったのね。フリードくん泣きそう。そうそう、アーシアちゃん、アレを見てご覧」

「ッ!! 見るな、アーシア!!」

 

 遅かった。

 鋭い悲鳴がアーシアの口から出る。

 打ち付けられた死体はアーシアには刺激が強すぎた。顔を青くして、フルフルと震えている。

 

「双葉、その子は!?」

「教会に送ってた美少女シスター、んなことより腐れ神父なんで日本語でアーシアと話せんだよ」

 

 とりあえず命の危機が回避されたので、疑問を投げかけるとキョトンとした顔でこちらを見る。なんだよ、その東京でクジラみたような反応は。

 

「えっ? 何? あんた素人? あぁ、道理で魔力で強化とかしてないわけだ。教えてあげよっか? 僕達、そこにいる腐れ悪魔もだけど自動翻訳できんのよ、魔力バンザイ! ただし悪魔は死ね!!」

 

 ……道理で最近は英語関連で泣きつかれないわけだ。

 便利だな、生きてたらリアス先輩あたりに聞いてみよう。

 

「にしてもアーシアたん、これはダメだねえ。聖女様ともあろう人が腐ったみかん以上に腐った奴らと一緒にいるなんて。はい、早くどいてこちとらクソネミなのよ、とっとと終わらせて帰ろうぜい!」

「――――」

「えっ? 真面目に言ってる? ウッソだろお前。見逃せ? 馬鹿じゃねえの? そこにいるのは悪魔とその関係者、良いも悪いも教えられたでしょ? 悪魔に施しはあたえてはいけませーんってさ」

 

 アーシアがなんて言ってるかわからないが、多分やめろとかそんなところだろうと思う。

 イチ兄はどうすればいいかオロオロしてる。……今のうち呼んでおくか。

 

「だーかーら……あー、めんどくさくなってきた。一発くらいいよねえ!!」

「このやろ……あぐっ!?」

「双葉」

 

 いらつきが限度を達しのか、銃の横っ腹でアーシアを殴りつけようとしたので庇う。

 激痛とともに血が頭から流れだしたのか、殴られた部分がすげえ熱い。

 アーシアが泣きながらこちらを心配するが、お前のほう心配しろっての。裏切り者と思われたらお前まで危ないのに。

 

「あーら、なんか俺のほうが悪役っぽい。ばっかじゃねえの? 騎士様のつもり? 悪魔に魂売った腐れ人間の癖して?」

「神様語って殺しを楽しむ生臭坊主と一緒にすんなよ」

「へえ、余裕そうだねえ。気に入ったわ、あと双葉だっけ。思い出したわ、レイナーレが言って人間はあんたかぁ。まぁいいや、あんたの生首持って行って悔しがる堕天使様の顔でメシウマしてやろうそうしよう」

 

 まだか、まだなのか……使い方はあってるはず。

 確か願うんだよ、来て欲しいって。

 

「どう死にたい? 全身の皮はぐ? 銃弾を隙間なく打ち込む? それとも拷・問……なんだ?」

 

 フリードの足元が光ったと思ったら、雷がフリードに目掛けて奔る。

 

「おっとっとっと!? あんだこりゃ!?」

「離れなさい、悪魔祓い……大丈夫? 双葉くん」

 

 現れたのは本気で切れている姫島先輩だった。

 なんで本気で切れてるのかというと笑顔が無いからだ。いつもニコニコ笑っているあの笑顔が消えている……あっ、フリードよ、少し同情するわ、多分お前は死んだ。

 

「ごめん、遅れちゃったね。大丈夫? 兵藤くん」

「……怪我」

「かすり傷だよ」

 

 強がりをいうがめちゃくちゃ痛い、一歩も動けないしな。

 続々と出てくるオカルト研究部の人たち見てホッとする。

 なんとか間に合ったらしい……握りしめたチラシが役目を終えたように灰になって消えた。

 

「悪魔の団体様とかくぅ~~!! まず一発!」

 

 打ち込んでくるフリードに反応したのは木場先輩だった。

 信じられないスピートで俺の前に立つと持っていた剣で受け止める。

 

「悪いね。彼に何かあったらこの町が吹き飛ぶんで勘弁してくれないかな?」

 

 ……えっ、なにそれ怖い。

 

「なにそれ怖いねえ! コイツ歩く起爆スイッチってわけ……あっぶな!」

 

 打ち合っていたフリードが身を捻って回避すると、一瞬までフリードがいた場所に小猫の拳が叩きこまれ……ミシリという音共に大穴を作る。

 ……今度パフェ奢るときは精一杯奢ろう。あと二度と機嫌損ねない。あんなもん食らったらミンチよりもひでえ事になる。

 

「……動くな」

「可愛い顔して怖いねえ! というかそこの人間がそんなに大事なら首輪でも付けなきゃ、ペットの世話は飼い主の役割!」

「黙りやがれですわ。彼を傷つけたあなたはここで消すわ」

「双葉、愛されてんなぁ」

 

 オイ、イチ兄、遠い目すんな。こっち見ろ。

 まぁ、なんかしらんが形勢逆転! さすがのフリードも分が悪いだろう。

 そんな時だった、イチ兄の隣から突如として人影が現れた……リアス先輩だ。

 

「ごめんなさい、イッセー、双葉くん、まさかこんなことになってるなんて」

「間に合ったからセーフですよ」

 

 しかしリアス先輩は俺の足の傷を見ると目を細める。

 

「彼は人間よ? 何故撃ったの?」

「足手まとい撃って、助けに来たところをズバッとするために決まってんじゃん。何? お前らにとってそいつそんなに大事なの? 悪魔の癖して笑っちまうねえ!」

 

 てめえよりよっぽど人間らしいがな、と言おうとした時足の痛みが引いていくのがわかる。

 いつの間にかアーシアがあのときの淡い緑色の光で傷を癒やしてくれていた。

 馬鹿!! んなことしたら本当に裏切り者になるだろう!!

 

「へえ、アーシアたん裏切るんだぁ。せっかく拾ってやった恩も忘れてまた悪魔の味方するんだ。やっぱ魔女は結局魔女ってこって」

 

 魔女、という言葉にアーシアの肩が震える。

 ……足の痛みはもう引いてるので俺はゆっくり立ち上がってアーシアを背で隠す。

 

「取り消せよ」

「何を?」

「魔女ってことだよ、くそったれの殺人ジャンキーが」

 

 フリードの目が徐々に細まる。

 何だ、コイツ煽るだけで煽るのは苦手なタイプか。

 

「へえ、足手まといさんは口だけは達者ってか。かかって来いよ、双葉くん♪」

 

 頭が沸騰したように熱い。

 力を篭め、踏み出そうとしたところ木場先輩に止められる。

 

「ダメだよ。今の君じゃ死に行くようなものだし……時間切れだ」

 

 静止させる木場先輩がそんなことを言うと、ハッとした顔で姫島先輩が叫ぶ。

 

「派手にやり過ぎましたわ。堕天使らしき反応が複数ですわ、部長」

「撤退するしかないわね、イッセー! 双葉くんも早くこっちに!」

 

 近くにいた木場先輩に抱えられて、リアス先輩が展開した魔法陣を中心に集まる。

 どうやらあの堕天使……えっ、たちって言った? 天野みたいのがまだいんの? 勘弁してくれよ。知らぬ間に命狙われてたりするんじゃねえの!?

 あ、あれ? アーシアは?

 

「ま、待ってください! アーシアも!」

「駄目、あの娘は 向こう()側の人間よ」

 

 冷たく言い放つリアス先輩の顔を睨みつけるが……止めた。

 うまく隠しているが爪が手のひらに食い込んでいるのか、血が流れていた。

 ……ホント、そこの腐れ神父に煎じて飲ましてやりてえよ。悪魔のほうが人間っぽくて人間の方が悪魔ってどういう冗談だ。

 

「どうにか出来ないんですか!?」

「……ごめんなさい」

 

 光が強まり、転移する一瞬、アーシアと目があった。

 

「アーシ――――」

 

 一瞬の口の動きだったが確かに俺には聞こえた。

 

 ――――ありがとう、って。

 




やべえフリード書くの楽しい。おかしいな、当初の目的だとアーシアはイッセーハーレムのはず……やべえよやべえよ、というか姫島先輩メインヒロイン()になっていらっしゃる。つ、次! 二巻目からは巻き返すから見とけよ見とけよー。
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