ハイスクールD×D 黄金騎士を受け継ぐもの   作:相感

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ちゃんとしたデート回……ヒロイン昇格ッ!! ヒロイン昇格ッ!! あぁもう(匙×ソーナ派からの追求から)逃れられないッ!!


番外編 双葉とソーナの買い物

「せ、先輩買いすぎじゃ」

「次はあっちです」

 

 そんな泣き言も聞かずにソーナ先輩は次の買い物をするために歩き出した

俺はソーナ先輩と共に東京のデパートにいた。

 デート? そんな生易しいものではない。荷物持ちという地獄だ。

 

 

 

****

 

 

 

 協定が結ばれてからてんてこ舞いに忙しかった生徒会だったが、ようやく調整が落ち着いて一段落していた時、ソーナ先輩から休日に少し都内に出ませんかと言われた。

 匙先輩が立ち上がり俺に掴みかかってきたが、他のメンバーに取り押さえられていた。

 なんか視線が生易しいというか、他のメンバーがしきりにソーナ先輩を応援していたがどうしたんだろうか?

 俺の方もリアス先輩が「ソーナとデートね! 任せて!」と言って、服屋に引っ張って服を買ってくれた。ちなみに涙目になって着いて来たアーシアが申し訳なかったので、俺も金を出してアーシアに白いワンピースと麦わら帽子を買ってあげた。

 似合いすぎて、学校から帰るとすぐに着替えて着てくれるので、買った側としても嬉しい限りだ。

 そんなこんなで気合入れたコーディネートで、待ち合わせの駅に行くとソーナ先輩は既に待っていた。

 おかしいな、待ち合わせの三十分前なんだが……。

 しょうがないので俺は手を上げながら、ソーナ先輩に声をかけた。

 

「すいません、先輩。早く来たつもりが先いたんですね」

「……えぇ、楽しみすぎて一時間前から待ってたとかそんなことはありません」

 

 ? と疑問符を浮かべたが納得した。

 なるほどな、買い物が好きなのかソーナ先輩は、この頃カタログを見ながら珍味してたからな。ソーナ先輩にそんな趣味があったのかと思っていると、急に先輩がモジモジしながら俺に問いかけてきた。

 

「その……変じゃありませんか?」

「えっ?」

 

 ソーナ先輩が言うが、何がだろうか?

 先輩の服は完璧だと思う。

 蒼いチェック柄スカートにトップスはシンプルでまとめたコーディネートに、日焼け予防のためか白い帽子を被っていてとても似合っている。

 薄い青のトートバッグもアクセントがついていて素晴らしいと思うんだがな。

 

「服のことなら似合ってますよ? むしろ俺のほうが……」

「双葉も似合ってますよ」

 

 臆面もなく言われて俺は赤面する。

 というかなんか本当にデート直前の会話みたいになってる!? 違うから! 今から行くのは買い物だからな! こんな甘酸っぱい会話しなくていいの!!

 

「い、行きましょうか。折角早めに集まれましたし色々見ましょう」

「そ、そうですね」

 

 お互いに恥ずかしくなったのか、急いで駅の改札口に向かう。

 

 

 

**三人称視点**

 

 

 

 ソーナと双葉がカップルのような会話をしていた時、電柱から顔を出す者たちがいた。

 ぶっちゃけるとリアス以下眷属たちだ。

 双葉がソーナと買い物に行くという話を聞き、純粋に心配する者、電柱を握りつぶさん勢いでにこやかに笑っているもの、興味深そうに観察するもの、そして紙袋被ってあたふたしてるもの、つまるところ暇人たちが集合していた。

 

「デートね」

「デートですね」

「デートじゃん」

「はぅううううう!!」

「双牙くん、私に何も言わないで……ッ」

「こういうのを日本ではなんというんだったかな……そうか、ヘタレ野郎か!」

「ゼノヴィアそれは違うから……部長、やっぱ止めませんか?」

 

 唯一の良心である木場がそう言うが、リアスとイッセーは邪悪な笑みを浮かべながら双葉の背を見ていた。

 

「こんな面白……こほん、弟の様子を見るだけよ。それにソーナに何かあれば困るし」

「そうだぜ、木場。あの鈍感野郎双葉が女子と一対一の買い物とかどうなるか見ものだしな!」

「……はぁ、こちらも似合いだよ。ごめん、双葉くん止められそうにないや」

 

 ドギマギしながらソーナと列車を待つ双葉に謝る木場だったが、その顔には好奇心の色が見えていたため、イッセーと同類らしい。

 朱乃はにこやかに笑っているがその隣りにいるギャスパーが涙目になっているほど怖い。

 アーシアも涙目だが、これは休日に買ってもらったワンピースを着て一緒に遊んでくれなかった双葉への恨みからだったりする。

 小猫も少しいらっとしているが、双葉の鈍感さなら何も起きないと高をくくっているし、最悪こちらも偶然来たと言って一緒に行動する腹づもりもある。猫は計算高い、これ豆知識。

 

「私の使い魔で列車内は監視できるから私たちは転移して先回りしましょう!」

 

 無駄に行動力溢れるお嬢様のリアスに同調するオカルト研究部の面々。だが恰好が不審者そのものなので警察に通報しようか近所のお母さん方が相談していてたりする。

 

 

 

**双葉視点**

 

 

 

「うわー、人でいっぱいだ」

「はぐれないように気をつけないといけませんね」

 

 列車を乗り継いでやってきたのは東京の某所、列車内から思っていたが沢山の人が歩いている。ウチの町とは大違いだ、コレが都会か……社会人になったらこういう場所に来るんだろうか?

 ソーナ先輩は慣れているようでカツカツとヒールで器用に歩いているが、俺正直旅行とかそんなに言ってないから、歩くのも一苦労だ。凄いな、現代人、ここに毎日住めば回避の練習とか出来そうだ。

 

「なにしてるんですか、時間は有限なんですよ」

「ちょっと慣れてなくて……あぁ、もう面倒くさい」

 

 魔力を体に回して、器用に人の合間を縫うように歩く。

 魔力さまさまやな、ホント両親に感謝するわ。

 

「すません、行きましょうか」

「えぇ……あの、その……手を……いや、やっぱり何でもないです」

 

 顔を真っ赤にして俯くソーナ先輩が妙に可愛い。

 なんていうか、ギャップ萌えってやつなのかな? というかソーナ先輩、大丈夫だろうか? もしかして体調が悪かったりするのかな?

 しょうがない、離れると危ないし俺は意を決してソーナ先輩の手を握った。

 

「ひゃっ!?」

「あっ、嫌でしたか?」

 

 ソーナ先輩から可愛らしい悲鳴が聞こえてびっくりしたが、顔を真っ赤にしたソーナ先輩が空いている手をバタバタさせながら言う。

 

「い、いえ……男の人に手を握られるなんて父以外にいませんでしたから」

「あー、やっぱ止めますか? ソーナ先輩が体調悪そうだったんで」

「嫌じゃありません!! あっ、うぅっその……い、行きましょうか!」

 

 ソーナ先輩らしからぬ大声で周りの人たちの視線がコチラに集まる。

 顔をタコのように真っ赤になったソーナ先輩は俺を引っ張りながら歩き出す。

 なんだろうか? ソーナ先輩どうしたんだろ?

 

 

 

**三人称視点**

 

 

 

「そ、双牙、双牙くんと手を、手をッ!!」

「朱乃さん落ち着いて! あの鈍感が女の子をそんな扱いできないの知ってるはず!!」

 

 全身からどす黒いオーラを放つ朱乃を取り押さえるイッセーは、弟の大胆な行動に驚いていたが、リアスは見抜いていた。

 

「大方、恥ずかしがってるソーナを体調悪いとか言って勘違いしてるだけでしょ?」

「双葉にあんな甲斐甲斐しさあったら私達、こんな苦労してません」

「いいなぁ、私も双葉さんにあぁやって手を握られたいです」

 

 アーシアだけ少女漫画のように目をキラキラさせているが、木場はそれを苦笑しながら見ている。アレだけのアクションを見せられたら普通気づくだろうと思うが、そこは弟子と恩人というダブルフィルターにかけられ、あぁいう双葉もまたいいという都合のいい解釈になる。

 ゼノヴィアはメモを取りながら頷いていた。コイツもコイツで双葉のことを慕っているので、最近ようやく貞操観念が出来てきたがしょっちゅうイッセーを狙うのはやめてはいない。

 

「行っちゃうわね、皆行くわよ!」

「すぐにでも引き裂きたいッ!」

「朱乃さんが壊れたぁ!?」

 

 ギャーギャーと叫ぶ一行を周りは微笑ましそうに見ていた。

 

 

 

**双葉視点**

 

 

 

 ソーナ先輩に連れられて来たのはショッピングモールというやつだった。

 そこからの買い物様子を一部抜粋しよう……ソーナ先輩がお嬢様だと理解したからな。

 

「それでは……ここにあるもの全部」

「全部!?」

 

 高級菓子を全部まとめ買い。

 

「この漬物美味しいですね、それではこれとこれをあるだけ」

「塩分過多ッ!?」

 

 何故か漬物を爆買いしていたが、理由はソーナ先輩やご両親が好きらしいからだ。

 まぁこんな感じで買うわ買うわ、何をそんなに買うのかわからなくなるくらいまで買った。そして全て俺が持つが、バランス感覚の修業に丁度いいと思って嫌な顔せずにやっていた。

 

「……まだ買いますから、この分は家に送ってもらいましょうか」

「まだ買うんですか!? ……こ、この量を宅急便で?」

「いえ、悪魔便で」

 

 は? と思っていた俺だったがソーナ先輩に連れられてモールの人気のない通路まで連れられる。

 てかここ従業員通路なんじゃ? と疑問に思っていたが、ソーナ先輩が突然通路で止まり手に魔力を這わせるとガコンと壁が変形していく。

 え、ええええええええええ!? 何このギミック!? というかここ普通のショッピングモールだよね!? 

 

「見るのは初めてですか? ここの経営はとある悪魔がしているのでこういった悪魔用の施設が何箇所かあるんですよ」

「人間界侵食されてませんかね、大丈夫なんですかミカエルさん」

 

 ――――ちなみに欧米だと天使が商いすることもありますよ。

 

 天から聞こえてきた声に、俺は白目をむきそうになる。

 三大勢力ってさ、意外に俺たちの生活に直結してたんだな……はぁとため息つくが中に入るとおどろおどろしい装飾がされた、如何にも悪魔の空間と言った場所に繋がっていた。

 ソーナ先輩に着いて行くとカウンターがポツンと置かれている場所にたどり着く。

 

「そこに買ったものを置いてください」

「えっ? アッハイ」

 

 言われたとおりに荷物を置くとポコーンと言う電子音と共に、立体映像が映しだされる。

 現れたのは髭が似合うダンディな太めの男性だった。

 

『ホッホッホッ、おやソーナさまではないですか』

「お久しぶりですね、コルネコ。悪いのですが何時も通り自宅に送ってください」

『毎度どうもです。いやぁ、ソーナさまとリアスさまはいつもウチをご利用いただいて……おや? そちらの彼はどちらで?』

 

 いや、俺の方こそどちら様で? と言いたいがソーナ先輩が紹介してくれた。

 

「彼は兵藤双葉、黄金騎士ですよ」

『おぉっ!! あなたさまが! お噂は聞いております』

 

 目を輝かせてコチラに頭を下げるコルネコさんに、俺はあたふたしながら話す。

 

「い、いや俺はソーナ先輩……ソーナさまの付き添いで」

『ほう! ソーナさまのボーイフレンドですかな? シトリー家の将来は明るい!』

 

 ブッ!? と先輩ともども噴き出す。

 こ、このおっさん早とちり過ぎないか!? ほら! ソーナ先輩だって困ってるしさ!!

 

「俺は違いますよ、あくまでも学校の後輩。いつもお世話になっているので今日は付き合ったまでです」

『おやこれは失礼しました。ソーナさまとは小さな頃から見知った仲ですので、いやこれは失敬』

「……えぇ、彼とはまだそういう関係ではないです」

 

 なんでか不貞腐れているソーナ先輩は素っ気なく言う。

 ありゃりゃ、やっぱ俺と恋人と見られたのが嫌だったのか、当たり前だけど少し傷つくがいいことだ。

 ソーナ先輩には匙先輩みたいな人が似合うからな。

 今日だって本当は匙先輩も誘ったのに、直前で体調を悪くしたとかで来れなくなったんだよな。

 

『ソーナさまはまだ買い物を?』

「えぇ、そのつもりです」

『ではこちらは預からせていただきます。それではごゆっくりお買い物をお楽しみにくださいませ』

 

 それだけ言うと映像が消え、同時に荷物も消えてしまう。

 全く嵐のようなオッサンだったなと思っていると、ソーナ先輩がツカツカと歩き出してしまう。

 

「ちょ、ちょっと先輩!?」

「ご飯を食べましょうか」

 

 と言うが、なんか歩くの早いし怒ってる!?

 俺はなんとか平謝りするがソーナ先輩が指定する店につくまで機嫌を直してくれなかった。

 

 

 

****

 

 

 

 俺と先輩が入ったのはショッピングモール内にある洋食屋さんだ。

 洒落た雰囲気の店内ではカップルが多い。けっ、昼間っから乳繰り合いやがって! 悔しくないもん、家に帰ったらアーシア抱きしめるもん。

 

「さっ、選んでください。奢りますよ」

「いや、俺が奢ります……理由はわかりませんけど先輩を怒らせちゃったし」

「あれは……いえ、あれは私が大人気なかっただけです。だから奢らせてください」

「後輩として先輩に奢らせるのはやっぱ抵抗がありますし、男として奢らせてください」

 

 延々ループだった。

 中々引かない先輩と俺の口調は段々と激しい物になるが、最終的には互いの料金は別払いということで納得してもらった。

 メニューを取ってみると中々お手頃の値段で、洋食がズラッと並んでいた。

 

「へぇ、こういう店って高いイメージあったんですけど中々安いですね」

「大声で言えませんが、ここのマスターは悪魔なんですよ? 転移の術式を使って文字通り産地直送なので安いんです」

 

 ……おぉう、すげーこと聞いちゃったがまぁ、ソーナ先輩が案内してくれたんだし味は保証付きだろう。ただしお菓子は少し警戒する。

 この人、お菓子づくりが趣味でいつだったか師匠と作ったら見た目だけ完璧のナニカを作ったからな。師匠と俺が一日ダウンするレベルとか最早生物兵器の域だよ。

 そんなことを考えていると先輩がウェイターを呼んで注文をした。

 先輩はパスタのランチ、俺はミートソースにパエリア、オムライスにハンバーグなどなどコレでもかと頼んでいく。

 気取っても仕方なし、こういう場所にはあまり来ないから存分に食べるんやなって。

 

「食べますね、家でも?」

「さすがにこんなに食べませんよ。珍しいから腹いっぱい食べようかなって、あっソーナ先輩も食べますか?」

「ふふっ、見てるだけでお腹いっぱいになりそうですね」

 

 そう微笑ましそうに笑うソーナ先輩の顔は、道行く人がつい足を止めるほど綺麗だった。というか店内の男たちが、相手の女性無視して見とれてるよ、ったく前の彼女見ろっての。

 そして少し談笑していると料理が運ばれてくるが、さすがに俺の料理全てを置くのは無理だったのか台車のようなものに料理が運ばれてくる。

 

「美味そう」

「美味しいですよ、ここのシェフは元ウチの料理人だったんです」

 

 へぇと相槌をうちながら俺は熱々の料理を勢い良く食べ始める。

 美味い、素材の味もさることながら調味料の味もしっかりとしているし焼き加減も絶妙だ。

 無言でご飯を食べているとコチラをジーっと見ているソーナ先輩がいたが、俺はそれを無視して料理を口に運ぶ。

 

「美味しい……美味しいですよ!」

「ふふっ、ほっぺたにソースが付いてますよ」

 

 そう微笑んだソーナ先輩が人差し指で俺のほっぺたに付いたソースを取ると、自分の口に運び舐めた。

 ……俺の頬が熱を帯びるのが分かる。

 うーわぁああああああ、なにこのカップルみたいなイベントは!? てか途端に恥ずかしくなってきちゃったよ、先輩の前でなんつう量食ってんだ俺は!!

 

「気にしませんよ、私は……うん、あの時のままですね、味は」

「うぅ、恨みますよソーナ先輩」

 

 やけになり残りの食事をかき込む。

 その様子をまるでお母さんのように見守る先輩が悔しくて、なんか負けた気分になる。

 そしてそんな感じで食事を食べ、時折談笑しているとコックの帽を被った女性がこちらに歩いてきた。その手にはアイスが……はて? 注文したかな?

 

「こちらはサービスとなっております。いつもご利用ありがとうございます、ソーナさま」

「いえ、こちらこそいつも美味しい料理をありがとう、リリーナ」

 

 リリーナと呼ばれた女性はテーブルにアイスを置くとソーナ先輩に頭を下げる。

 なるほど元料理人ってのはこの人だったか。

 

「あなたがいなくなって父や料理長が寂しがってたわ」

「申し訳ありません、どうしても自分の店を一度持ってみたかったので」

「むぐむぐ……んー、美味しい」

 

 ソーナ先輩とリリーナさんが談笑しているので、俺はアイスを口に運ぶ。

 程よく溶けたアイスは口の中で溶けてしまうが、まろやかで実にいい。隠し味にレモンかな? 柑橘系の汁でもかけているんだろうか、後味がすっきりしていて爽やかだ。

 変にチョコとか入ってないからアイスそのもので勝負してきている感じがして気に入った。

 

「リリーナ、これは」

「ええ、ソーナさまが好きだったあのアイスです……小さい頃約束しましたね、もしもお嬢さまに意中の人が――――」

「リリーナ!! その話はダメ!」

 

 そう叫ぶソーナ先輩をからかうように笑うリリーナさんを見ながら、俺はアイスを完食する。

 リリーナさんが何か言ってたが、なんだろうか? アレかな? 友達には出すんだろうか。良かったなぁ、今日来てこんなサービスまでされるなんてな。ソーナ先輩さまさまやな。

 

「うん、美味しい」

「それは良かったです。ところであなたは?」

「あぁ、すいません。ソーナ先輩の後輩の兵藤双葉って言います」

 

 そういえば自己紹介してなかったなと思っていたので頭を下げると驚いたように目を丸くする。

 

「黄金、騎士?」

「えっ? あぁはい、とりあえずはそんなもんです」

 

 一瞬だけだがリリーナさんの表情が強張るが、ほんの一瞬だったのでソーナ先輩は気づいていないが俺も気のせいだったと思い始めた。

 リリーナさんは笑顔を絶やさず、俺に挨拶してくれたからだ。

 

「初めまして、元シトリー家料理人のリリーナ・モラクスと言います」

「彼女は優秀な料理人で長年仕えててくれたんですが、五年ほど前ですか。自分の店を持ちたいと独立したのです」

「優秀だなんて、私はまだまだです」

「いいえ、料理を食べましたがまた腕を上げましたね。ふふふっ、いつかコチラに戻ってきてほしいものです」

 

 ソーナ先輩が本当に嬉しそうに言うとリリーナさんは、あたふたしながら手を振る。

 

「い、いえ、いまさらどうやって戻れば……あんなに目をかけてくださった料理長や旦那様に申し訳が」

「何度も言っているでしょう。気にしてはいないと」

 

 ……なんか複雑そうな話題だな。

 話し込んでいたリリーナさんだったが厨房から呼ばれて、苦笑しながらソーナ先輩に挨拶した。

 

「すみません、戻ります。ソーナ先輩、双葉さん、また来てください」

「ええ、必ず」

「はい、今度はリアス先輩たちを連れてきますよ」

 

 そう言って厨房に戻っていくリリーナさんを見送り、ソーナ先輩はアイスを口に含み笑顔を見せた。

 

「……子供の頃のままです」

「へえ、いいですね。昔馴染みの味っていうのは」

 

 俺で言うところの母さんの料理のようなものだろうか?

 勘定をして、店から出て行く時ふとこちらをじっと見るリリーナさんが見えた。

 

 

 

**三人称視点**

 

 

 

「……リアス、呪いの人形あるかしら」

「私の幼馴染を呪わないで頂戴。あっ、イッセー、ナゲットを取って」

 

 虚ろな瞳の朱乃を華麗にスルーしたリアスは優雅にファストフード店でご飯を食べていた。

 栄養に悪く無いか? と思うが気にせずモグモグ食べるリアスを見るからに大丈夫そうだ。この日兵藤家の体重計が滅ぼされるのは完全に余談だ。

 

「にしても双葉くん食べますね」

「あいつのせいでウチのエンゲル係数が急上昇してるからな」

 

 イッセーは夜中、必死に両親が双葉の食費をどうしようか悩んでいるのを知っており遠い目をする。実は、優しい堕天使のおじさんが食費を振り込んでいるのだがこれも余談である。

 

「やっぱり美味しいです……双葉さんともう一度食べたいなぁ」

「アーシアさん、僕にも一口ください」

「ギャー君にはガーリックマシマシのこのガーリックバーガーを」

 

 その昔、と言っても数ヶ月前双葉と食べたファストフードの味を思い出しながらトリップしているアーシアの横で、小猫はギャスパーを虐めて楽しんでいた。

 木場はのんきに「なんかもう双葉くんを観察するという名目で集まって遊んでるだけだなぁ」とか思いつつ、ハンバーガーを食べた。

 

 

 

****

 

 

 

 食事を済んでから数時間、買い物が終わり、コルネコさんに全て送ってもらってから俺たちはショッピングモールを散策していた。

 帰ってもいいのだが折角の機会ということで色々な店を見まわっていた。

 見るだけだが中々に面白いし、俺も気になったものを買っていた。

 イチ兄たちに日頃の感謝も兼ねてプレゼントでもしようと考えていたから丁度いいな。

 どうせならと、女性の目線も欲しかったのでソーナ先輩に意見を聞いていた。

 

「これなんてどうでしょうか?」

「そうですね、いいと思いますがこちらのほうが色合いがいいかと」

 

 的確なソーナ先輩の判断力はありがたい。

 色々な小物から皆に似合うものをチョイスしてくれる。

 ……バレないようにソーナ先輩用にも買ってあるんだが隠しておこう。サプライズだしな。

 

「でも関心しますね、お世話になってるから買うなんて」

「まぁ……色々と心配かけてますし」

 

 リアス先輩とか大分迷惑かけているしな。

 こんな安物で悪いけど皆に喜んでもらえたら嬉しいなぁと思う。

 そして買い物が終わり、時刻は午後五時半頃だ。帰りの列車の時間も考えたらそろそろ帰らないとマズイ。

 

「先輩、そろそろ帰りましょう」

「もうそんな時間ですか……そうですね、すいません、その前に御手洗に行ってもいいでしょうか?」

 

 恥ずかしそうに言う先輩に、俺は無言で頷きながら見送る。

 ……さて、そろそろ探偵ごっこしている人たちに釘刺しておきますか。

 俺は一瞬だけ体に魔力を回して跳躍し、柱の陰に隠れていたイチ兄の目の前に降り立ち、ニコリと笑顔を向ける。

 

「よっ、イチ兄」

「き、気づいてたのか?」

「そりゃ……朱乃ちゃんのその気配を見ればな」

 

 体育座りをしながら虚ろな瞳をしている朱乃先輩の気配は、言われなくてもわかるしそりゃ眷属総出で来てるなら気づかないほうがおかしい。

 師匠が苦笑しながら手で謝罪するが、別に怒ってるわけじゃないので不問とする。

 

「マスター、今日学んだことは活かすよ」

「何にだよ……全く、皆総出で監視とかどうしたんですか」

「面白そうだったから、つい、ね」

 

 テヘッと言いそうな顔で舌を出すリアス先輩にため息を付くが、十中八九そうだろうなとは思っていた。

 アーシアが申し訳無さそうにしているが、俺は頭を撫でて気にしていないと言ってあげる。小猫も頭を出したのでついでで撫でるが……うーむ、アーシアと違ってなんかこうふわふわしてるというかなんというか、猫を撫でてるような気がするよ。

 

「あっ、そうだ。先に渡しておくか、はいこれお土産」

「ココで渡すのかよ……あー、さっきからソーナ会長と探してたのは俺達のプレゼントってわけか」

「うん、普段お世話になっているから家帰ったら開けてくれ」

 

 さぁてと、まだ落ち込んでいる朱乃先輩を励ますか。

 俺っていう後輩をソーナ先輩に取られたと思ったのかね? そういえば朱乃ちゃんって結構嫉妬深かったような記憶がある。朱璃さんと話していても頬を膨らませてた気がするな。

 

「えっと朱乃先輩」

「……ふん」

 

 ちょっと可愛いと思ってしまったが、へそ曲げてるなぁ。珍しいというかこの頃、素の朱乃先輩が皆の前で出て来たのでいい傾向だと俺は思っている。

 

「えっと……朱乃ちゃん、ただの買い物だから」

「それにしては仲が良かったわね。そうよね、双牙くんはあぁいう人が好みなんでしょ」

 

 どうして俺の好みの話になるんだ? 俺の好みは朱乃ちゃんみたいな人……じゃなくて!! あー、もう! 朱乃先輩がなんでこんなに不機嫌なのか全くわからないけど俺が悪いのは分かる!

 朱乃先輩の手を握って、目をしっかりと見る。

 

「いつか買い物に付き合うじゃ、ダメ?」

「……そんな顔しないでくださいな。私が悪者みたいじゃない、双牙くんはいっつもそうなんだから」

 

 ため息をついて微笑しながらコチラを見る朱乃先輩の言葉に、少し傷つく。

 今の俺は兵藤双葉なのに、この人は双牙って呼ぶ……この人が見ているのは昔の俺なんだ、今の俺じゃない。

 覚悟していたことなのに、胸が苦しいし、過去の自分に嫉妬している自分が嫌になる。

 今、この人と話せるのも触れ合えるのも俺なんだ。双牙じゃない……双葉なのに……やっぱり朱乃先輩は俺なんて……。

 

「ッ! 双葉、問題発生よ」

 

 リアス先輩の言葉に俺はハッとして、視線の先を見ると数人の男に囲まれたソーナ先輩が見えた。

 ……よくあるよね、ナンパ男とのイベントってさ。実際に見るとすげー滑稽というか女一人ものにするのに複数人で行動ってわけわからんな。

 

「また古典的な手だね、どうしますか部長?」

「皆が行くことないです、俺が行きますよ」

 

 朱乃先輩から手を離し、俺は立ち上がりソーナ先輩の元へ歩く。

 

「双葉、やばかったらギャスパー使うからな!!」

「ま、任せて下さい!!」

 

 それはヤバイだろと苦笑しながら、俺はイラつく気持ちを抑えてソーナ先輩の元へ急いだ。

 万が一ってことはないだろうが、知り合いがあぁいう手合いに絡まれるのは気分がよろしくない。特に今の俺は凄い機嫌が悪いんだよ。

 近づくと男たちの声が聞こえる。

 

「だからさ、今から行こうよ」

「……申し訳ありませんが別の人を当たってください」

「またまたー、お姉さん綺麗だねー。いい店知ってるから夜まで――――」

「オイ」

 

 身近にいた奴の肩を強引に掴んでコチラに向ける。

 掴まれた男は不機嫌そうな顔をするが、何故か怯えたような表情に変わった。

 よく見れば他の奴らもそうだし、何故か膝をカクカクと揺らしながら涙目になっている……なんだ?

 

「な、なんだよ」

「その人は俺の連れなんだよ、悪いがナンパな適当なやつを引っ掛けて楽しんでくれ」

「ッ!! うるせえよ、てめえ舐めた口を聞いてるとケガじゃ済まさないぜ?」

 

 肩を掴んでた男が懐からナイフを取り出した。

 ……はぁ、これで警察呼んだら一発御用ってわからんのかね。都会は怖い場所だと聞くがここまであからさまな馬鹿はそうはいないだろうな。

 しょうがないので少し警告も兼ねて、ナイフを男の手から取り上げる。

 そして手に魔力を回して、壊さないように慎重に力を込めながらゆっくりとナイフの刃部分を折り曲げた。

 その様子をぽかんと見ている男の手にナイフを返すとできるだけにこやかに俺は笑いながら言った。

 

「これ以上付き纏うなら、こうなるけどいいか?」

「――――す、すいませんでしたぁああああああああ!!」

 

 お決まりのセリフを叫びながら逃げ去る男たちの背中を俺は見送りながら俺は少しお仕置きも兼ねて術式をかけた。

 まぁ、悪質なもんじゃない。一ヶ月ほど異臭がするって言う嫌がらせの術式をやっただけだ。こえで懲りてくれたらいいんだがな。

 男たちの背が見えなくなったところで、俺はソーナ先輩に頭を下げる。

 

「すいませんソーナ先輩。何もされませんでしたか?」

「得には……しかし双葉、あれは感心しません。魔力を使って脅すのはダメです」

 

 はて? 俺、魔力を使ったかな? と考えるが怒りで少し漏れたのかな、こりゃマズイな。

 声に魔力が付加して威圧してたのかもしれない……あー、大人気ねえなぁ俺も。

 頭を抱えていたが、ソーナ先輩は続けてこう言った。

 

「けれどもカッコ良かったですよ? どうです、私と夜まで一緒にいますか?」

「さっきの奴らの言葉じゃないですか……冗談はそこまでにして帰りますよ」

 

 俺とソーナ先輩は苦笑しあうと自然と手を繋ぎながら駅へと向かった。

 後日、朱乃先輩に折檻されたのはこのせいであると思う。

 

 

 

****

 

 

 

「お疲れ様でした」

「こちらこそ、今日は色々体験させてもらいました」

 

 地元の駅まで帰ってきた俺達はここで解散ということになり挨拶をしていた。

 一日じゅう歩きっぱなしで疲れていたが、充実した疲れなので今日は家に帰ってこのまま寝たい気分だ。

 あぁ、そうだ忘れかけてた!! 俺はポケットにしまっておいた紙袋を取り出すとソーナ先輩に手渡す。

 

「すいません、完全に忘れてました。これいつもお世話になっている礼です」

「いつの間に……開けても?」

 

 もちろん大丈夫ですと頷きながら答えるとソーナ先輩は紙袋を開けて、中にあるプレゼントを取り出した。

 それは雑貨屋を巡っている時にピコンと来たペンダントだった。

 銀色のチェーンに水の雫を思わせる蒼い水晶がつけられている。

 安物だし、あれだけ高い買い物をしたソーナ先輩が気に入らないと思う。

 だが予想に反して、ソーナ先輩は感極まったように顔を赤く染めながらお礼を言ってくれた。

 

「ありがとう、双葉。男の子からのプレゼントなんて初めてです。大事にします」

「いやそこまでのものじゃないんですが……まぁ、身につけて貰えたら嬉しいです」

 

 ただのペンダントじゃないんだよなぁ、ちょいと細工をしたんだが……その細工が使われないことを祈るよ。

 ソーナ先輩は早速、ペンダントを首につけて俺に見せてくれた。

 

「似合いますか?」

「えっと……はい、すっごく」

 

 実際良く似合っていると思う。先輩は水の魔力を得意としてたという安直な発想から選んだのだが気に入ってもらえて安心した。

 ペンダントを宝石のように見ているソーナ先輩の顔に少しドキリとする。

 う、うーん意識しないようにしてたがソーナ先輩も凄い美少女だからな……生徒会長の顔くらいしか見てなかったから、こういった年頃の雰囲気を出してくるのは正直心臓に悪い。

 朱乃先輩でもそうだが、俺ってギャップ萌えに弱いのか?

 そんなことを思っていたらソーナ先輩がニコリと微笑みながら、俺の頬を撫でてくれた。

 

「……私は黄金騎士が好き、それは知ってるわね」

「えっと、はい。そりゃ絵本まで読ませてもらいましたから」

 

 ソーナ先輩から熱心に聞かされた黄金騎士への憧れ。

 それは冥界の子どもたちならば自然と持っているものだと聞かされた。

 正直、俺にそれを受け止められる自信はない……身近な誰かを守るのに精一杯な俺に子どもたちの夢を守れるのか?

 その考えが表情に出ていたのか、ソーナ先輩は優しく頬から頭に手を載せた。

 

「そしてあなたももう大事な仲間です……黄金騎士抜きに、もう私は双葉のことが大事だから、それを忘れないで。あなたの周りには沢山の人がいるわ」

「ソーナ先輩」

 

 泣きそうになるがぐっとこらえるとソーナ先輩は頭から手を離し、徐々に距離をとって手を小さく振る。

 

「じゃあ、また学園で」

「はい……ソーナ先輩、ありがとうございましたッ!!」

 

 その言葉に小さく笑った先輩は、踵を返して帰路についた。

 俺はその背中が見えなくなるまで見送った。

 

「……強くなろう、今よりも、父さんよりもずっと強く」

 

 俺はその想いを口にして家へと歩き出した。

 

 

 




◯コルネコ
 オリジナルキャラクターにして、名前の由来はトル◯コから。風貌はまんまト◯ネコであり、悪魔でありながら人間界で成功している事業者であり、ソーナの父親と昔なじみ。人間界に進出し、一時期は各勢力から睨まれていたが単純に商いをしたいだけの真っ当な商人。彼が経営するショッピングモールは海外にも進出しており、和平が結ばれた昨今、職にあぶれた者達を積極的に採用している。マジモンの善人、ちなみに出番はここだけ。

◯リリーナ・モラクス
 オリジナルキャラクターにて、元シトリー家の料理人。断絶したモラクス家の末裔であるが断絶した折、世話になっていたシトリー家の当主が保護しそのまま料理人になったという経歴。ちなみに前大戦で恋人を亡くしている。ソーナに昔から料理を作っており、小さい頃は乳母の代わりもしたことがある。現在はショッピングモールの一角で洋食屋を営んでいる。


というわけでソーナヒロイン昇格です。息抜きで書こうとしたら一万字ぶっちしてて笑いました。さぁ、五巻部分書くぞー! FGOのイベントを走るのは……キャンセルだ。
とりあえず双葉のヒロインは出尽くしました。コレ以後はよっぽどのことがない限り増えません。とりあえず確定組をピックアップ。

◯双葉のヒロイン候補
 朱乃、アーシア、小猫、黒歌、ソーナ。

あとそろそろあらすじとタグを整理してもいいかなと思ったんで結構変えました。あらすじ書いてる時点だと結構違ったんですがね(この考えなし)。おそらくこの先もその場その場で変わると思いますが、これだけは変わりません。双葉はケツが好き、はっきり分かんだね。
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