ハイスクールD×D 黄金騎士を受け継ぐもの   作:相感

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ジャスティイイイイン!!


冥界にレッツゴー

 冥界に行く日がやってきた。

 馬鹿でかい荷物を栞に押し込んで、皆が制服の中俺だけが魔戒騎士の恰好をしていた。

 なんでも皆は制服のほうが良いらしいが、俺はこの恰好のほうが身分がわかりやすくていいらしい。白いロングコートは黄金騎士の証だしな、まぁわからんでもない。

 そしてリアス……姉さんに着いてきたのはウチの近くにある駅だ。

 皆が制服姿なせいで俺がすげー目立つ、さっきから訝しげに見られるがそりゃそうだ、今は真夏なのにロングコートだぜ? でもこの服、俺が冷気の魔法かけているので普通の服よりも涼しかったりする。

 リアス姉さんは慣れたふうに駅のエレベーターにたどり着くとカードキーらしきものを取り出す。あぁ、そういえばソーナ先輩が言ってたっけ、駅の地下に悪魔専用の駅があるって。

 

「まずはイッセーとアーシア、ゼノヴィア……そうね、朱乃も一緒も来てちょうだい。祐斗、アザゼルたちをお願いね」

「双葉くん、あとでね」

 

 ウィンクしながら入っていく皆を見送り、俺は背中に隠れているギャー助を前に出す。

 

「ふ、双葉さんんんんんん、壁になっててくださいぃいいいっ!」

「俺にくっつくなっての……まぁ、紙袋ありでも出てこれただけマシか」

「にしても双葉くん、地下の駅のことを知ってたのかい?」

 

 頷くとアザゼルおじさんが手に持ったお茶を飲み干しながらゴミ箱に投げた。

 

「この町はリアス・グレモリーにソーナ・シトリーがいるからな。悪魔専用の施設が多くて驚くぜ」

「その分問題も多いですがね……ありゃ?」

 

 エレベーターを待っていると見慣れた顔が見えた。

 ソーナ先輩や匙先輩たち、生徒会の先輩方だ。

 

「奇遇ですね、双葉」

「ええ、ソーナ先輩も今から?」

「双葉が行くって言うから予定を繰り上げて……むごぉっ!?」

 

 匙先輩が何か言いかけたが他の眷属たちに取り押さえられる。

 一体なんだってんだ? ちらりと匙先輩を一瞥したソーナ先輩がこちらに話しかける。

 

「ええ、少々予定が繰り上がったので……良ければ先にシトリーへ一緒に行きますか?」

「双葉くんは人気者だねぇ」

「師匠ちょっと黙っててください……ごめんなさい、まずはリアス姉さんの家に挨拶をしますので」

 

 ペコリと頭を下げるが、苦笑する先輩の顔を見ると本気で誘ってたりはしていなかったらしい。

 というか匙先輩大丈夫か? 由良先輩に首絞められて青くなってるが……ま、まぁアレはスキンシップなんだろう。あっ、匙先輩が落ちた。

 

「冗談です。では双葉、また向こうで」

 

 エレベーターが来た音がしたので、俺は再び生徒会の皆さんに頭を下げるとエレベーターに乗る。

 師匠がカードキーを懐から出して電子パネルにタッチさせる。

 すると通常上に上がるはずのエレベーターが下がり始める。

 

「にしても双葉、シトリーと仲がいいみたいだな」

「ええとソーナ先輩は黄金騎士に憧れてるみたいで、あと前コカビエルで向こうの『兵士』、あぁ匙先輩って言うんだけどその人に迷惑かけてね」

「……そういう意味じゃないんだが……はぁ、おい猫魈。コイツは相当鈍いぞ」

「言われなくても分かっています」

「はぅううう、双葉さんはモテモテですね!」

「やっぱり僕を馬鹿にできないんじゃないかな?」

 

 なんかアザゼルおじさんの目が優しくなる。えぇい! ギャー助は俺に抱きつくな!! あと師匠は黙ってて!!

 そんなふうに弄られているとエレベーターが停止し、扉から一番近かった俺が最初に出る。

 

「……はぇー、すっごい」

 

 目の前にあったのは人工的な空間、大空洞というべきだろうか?

 一見すると駅のホームだが、やはり悪魔がデザインしているのか細部が違うのが面白い。

 先に来ていたリアス姉さんたちと合流すると、朱乃先輩が俺に駆け寄って右腕に抱きつく。

 小猫からの視線が一気に厳しい物になるが、俺は慣れたもんだ……家だといつもコレだよ? あとアーシアの涙目、もう俺の精神力はボロボロよ!!

 

「うぅ、双葉さん……」

「朱乃先輩……いや、朱乃ちゃん離れて」

「残念、その呼び方してくれたから今回は我慢しましょ」

 

 こういう時はいつもこれでなんとか離れてもらう。

 するとアーシアが俺を守るように抱きつき、涙目で朱乃先輩と火花を散らしていた。

 小猫? あぁ、俺の体によじ登って肩車してるよ……結婚もしてないのに子供出来たみたいだ。

 その様子をイチ兄が悔しがっていたがしっかりとリアス姉さんと手をつないでいるんだな。まぁ、その反対側にゼノヴィアがちらちら視線を見ながら手つなごうとしてるが。

 

「さぁ、行きましょうか。列車は三番ホームにあるわ」

 

 そしてリアス姉さんに着いて行くと再び開けた場所に出た。

 そこにあったのは真っ赤な列車だ。鋭角なフォルムに車体に悪魔の模様が幾つも描かれており、グレモリーの紋様やサーゼクスさんのものまである。

 

「どうかしら? これがグレモリー家の所有している列車よ」

「男のロマンが刺激されますッ!!」

 

 あぁ、なるほどサーゼクスさんがメールで『ウチの列車はいいぞ』と言ってたのはこの事か。

 俺は目を輝きさせながら列車を見るが、イチ兄やアザゼルおじさんも同じような感じだ。

 なんか変形しそう! いや、他の列車と合体しないかな!

 

「はいはい、じゃあ入るわよ」

 

 興奮する俺たちに微笑みながら、自動ドアから列車の中に入るリアス姉さんの後ろについて俺達も中に入った。

 

 

 

****

 

 

 

 列車の汽笛が鳴り、ゆっくりと列車が動き出す。

 俺達が乗っているのは列車の中央部分、先頭にはリアス姉さんが乗っているが基本的に先頭部分には行ってはいけないらしい。

 しきたりと言うが、形式のものと乗る時に言われたが中央部分であるここでも十分広い。ていうか、高級ホテルのような感じでむしろ座って良いのかと思ったもんだ。

 アザゼルおじさんなんか座った途端眠り始めた。いや、少し前まで敵だった悪魔の列車で爆睡決め込んで大丈夫だろうか? まぁ、大丈夫だろう、こう見てアザゼルおじさん強いもんな。

 俺もふかふかとした座席が気持ちよくてうっつらうっつらとしている。

 眠い、最近寝る間も惜しんで魔法の訓練してたから……ねむ、い。

 

 

 

**三人称視点**

 

 

 

 ( ˘ω˘)スヤァと顔文字が出るほど、双葉はすぐに寝入ってしまった。

 アザゼルもそうだが、双葉も相当に肝が座っている。ちなみにザルバは自宅から出発する前から寝ている。

 座席にもたれかかった双葉の頭がコテンと落ち、アーシアの膝に意図せず膝枕の形になる。

 アーシアはあたふたするとものだと皆が思っていたが、意外にも微笑みながら双葉の体を寝やすいように変えると頭を撫でながら膝枕を継続した。

 

「最近、ベッドから抜けだしていたのは知ってます……私は、この人を待つことしか出来ませんから」

 

 悲しそうに目を細めるアーシアを見て、イッセーと木場は溜息をつく。

 最近の双葉の様子が気にならない二人ではないが、手が出ないという歯がゆい状況を二人はもどかしく思っていた。

 いや、正直リアス・グレモリーを含めて眷属全員が双葉の力になりたいと思っているが、御存知の通り双葉の頑固さは筋金入りだ。そのくせ落ち込むのが分かりやすいというのが面倒くさい。

 今まで暮らしてきたイッセーですら、本気で落ち込んだ双葉というのは経験したことがないのでどうしようもないのだ。

 

「……マスターはいつもこうなのかい?」

「いつもだね、少なくとも僕らと一緒に行動して無傷だったことはないよ」

 

 木場がため息を付きながら双葉の体を見る。

 アーシアの神器で外見上は傷一つないが、体の奥底にはここ数ヶ月の戦いの傷が残っている。

 大きな戦いを経る度に、双葉は倒れる。

 イッセーたちもそうだが、そもそもにして双葉の身体機能は基本的に人間だ。

 最近は魔王や天使長の加護のおかげで普通の人間よりも頑丈になっているとはいえ、それは悪魔と比べたら貧弱そのもの。

 いつか取り返しの付かないことになるのではないかと眷属内で思っている。

 

「双葉さん……僕も強くならなきゃ」

 

 そう言うギャスパーを皆が微笑ましく見る。

 ギャスパーがダンボールから出始めたのはイッセーの影響もあるが一番は双葉という存在だ。何があっても立ち上がり、自分に親身になってくれる双葉という存在を守りたい、いつしかギャスパーの心にあったその想いがギャスパーを奮い立たせた。

 そのおかげか、大分神器の暴発も少なくなってきた。

 

「……でも、この人は言っても聞かないんでしょうね。いつもみたいに申し訳無さそうな顔して誰かのために剣を振るう。昔からそうなんです、泣くのを堪えて私のために色々してくれた」

「朱乃さん……そういえば昔の双葉、いや双牙ってどんな奴だったんですか?」

 

 イッセーがそう言うが、本人の前で双牙の名前を出すのはダメということにしている。

 朱乃なんかはたまに呼んでしまうが、その時一瞬だけ嫌そうな顔をするのを皆が知っていた。

 双葉の中で触れられたくないタブーなのか、それとも兵藤双葉という名前を気に入っているのか。イッセーたちは知る由もない。

 朱乃はにこやかに笑うと話し始めた。

 

「やんちゃでした。そして無茶してたわ、記憶を失っても双牙くんだとわかったのは本質が変わってなかったからなのかもしれないわ」

「昔からなのかよ……」

「えぇ、一日中山を駆けずり回ったり魚を釣ったり不倫ごっこしたり……楽しかったわ」

 

 んー? ちょっと待て? と全員が思ったが口にはしない。

 むしろイッセーなんかは朱乃のお姉さまとしての顔はそこでできたのかと推測していたが当たりだ。

 そして朱乃が身振り手振りを加えながら話していると、列車の扉が開きリアスと初老の男性が歩いてきた。

 

「忘れてたわ、イッセーたちは……って、双葉寝てるの?」

「はい、もうぐっすりです」

 

 アーシアがにこやかに言うと双葉が寝返りをうつ。

 その様子を見たリアスは、苦笑しつつイッセーの隣に座るとイッセーの頭を自分の膝に置いた。

 

「ぶ、部長!?」

「羨ましそうにしてたからしたんだけど、どうかしら?」

 

 最高です!! と叫ぼうとしたイッセーは途中で口を塞いだ。

 双葉を起こすのは忍びないと思ったからだが、それに気づいたリアスは胸をキュンとさせながらイッセーの頭を撫でようとするが、イッセーの頭が強引に取られゼノヴィアが自分の胸にぎゅぅううううっと抱きしめる。

 

「部長はスキンシップのしすぎだ」

「ゼノヴィア、あなたはイッセーの遺伝子が目的なんでしょ? 一回なら貸してあげるわ、それでいいでしょ?」

「さ、最初はそうだったが私だって……私だって!!」

 

 顔を赤くしながら、大事なぬいぐるみを取られないような仕草をするゼノヴィア。

 確かに遺伝子が欲しかっただけだが、ゼノヴィアは本気でイッセーに惚れていた。それこそ、イッセーが将来的に独立するなら着いて行くと思うほどだ。

 だが、年頃の娘としての知識が全く無いゼノヴィアは悶々とイッセーとリアスのスキンシップを見ていたのだが、時々こうして我慢できなくなりイッセーと強引にスキンシップを図ろうとする。

 なお、イッセーはゼノヴィアの胸の感触を全力で記憶すべく顔全体で感触を確かめていた。

 

「ゼノヴィア、あなたとは話さなきゃいけないと思ったのよね」

「私もだ」

「ホッホッホ、リアス姫。下僕とのコミュニケーションもいいですが手続きがありますので」

 

 睨み合っていた二人に割って入ったのは、先程リアスと共に来た初老の男性だ。

 恰好から車掌だとわかるが、服の下からもわかるほど鍛え上げられた体は車掌と思えない。

 話を遮られて不快になるかとおもいきや、リアスは叱られた子供のように縮こまる。

 

「ご、ごめんなさい」

「いいのですよ。あの小さかった姫が男女の喧嘩をする、長生きはするものです……そして黄金騎士とも会えるとは」

 

 にこやかに笑う男性の瞳に、一瞬だけ何かの感情が見えたが誰も気づかなかった。

 男性はもう一度声を出して笑うと、帽子を取り丁寧に頭を下げる。

 

「初めましてになりますな、姫の新たな眷属の皆さん。私は車掌のレオナルドと申します」

 

 そう挨拶するとイッセーを皮切りにアーシア、ゼノヴィアが頭を下げながら自己紹介をする。

 そして自己紹介が終わるとレオナルドは一言断りを入れて、モニターを取り出すとイッセーたち新人悪魔たちを映す。

 

「申し訳ございません、これはあなた方が本物であるかどうか確認する機械でございます。ご無礼ではありますが、今の御時世何かと物騒でございまして」

 

 ピコーンと軽快な音が鳴るが、どうやら本物であるという証らしい。

 ニッコリと笑ったレオナルドが全員を調べ終えると、会釈をする。

 

「ご協力ありがとうございます。黄金騎士様と堕天使の総督様は」

「寝てるけどお願い出来る? データは送ってあるはずよね?」

「ええ、送られておりますとも」

 

 レオナルドは双葉とアザゼルを再びモニターに映した。

 するとピコーンと音がなる。

 ちなみにこの機械、ハイテクなもので実は顔認証と入国管理も同時に行える優れものだ。

 

「まさかあの黄金騎士さまと堕天使の総督さまの入国管理が出来るとは、今日は運がいい」

 

 ホッホッホと穏やかに笑うレオナルドも中々だが、やはりこの場で眠れる二人も中々大胆不敵で豪胆でもある。

 

 

 

**双葉視点**

 

 

 

 あれから四十分が経った。

 俺は三十分ほど寝ていたらしいが、魔力を体に流して疲労回復をしていたので大分体が楽になった。

 なんでもアーシアが膝枕してくれたと言うが、申し訳ないので向こうで何か聞こうかと言ったら朱乃先輩もすごい食いついてきた。

 ……ただ、気になったのはこういう時、静かに参戦してくるはずの小猫が窓の外をじっと見ているのが気になった。

 俺は席から立って、小猫の隣りに座る。

 

「……なんですか?」

「いや、なんか気になったから、大丈夫か?」

 

 しかし小猫はぷいっとソッポを向くと再び窓の外をじっと見る。

 するとピンポンパンポーンという音と共にアナウンスが流れる。

 

『もうすぐ次元の壁を突破します。もうすぐ次元の壁を突破します』

 

 確かレオナルドさんと言ったか? 爆睡してたもんで挨拶もしてない。

 失礼だったな、後で挨拶しないと……って、うぉおおおおおおっ!? あんじゃこりゃあああああああああ!?

 

「見ろよ、双葉! 森だよ! 山だよ! 大自然だよ!」

「すごいです! 町もありますよ!」

「ほぅ、これが冥界か、想像してたよりも普通だな」

 

 冥界を見たことがないイチ兄たちが興奮してるが、俺は微妙に懐かしい気分になる。

 ……んー? 確か来たことなかったはずだが、父さんの故郷だからか? 

 窓を開けてもいいということで開けると、人間界とは違った風が入り込んでくる。なるほど、魔力が人間界よりも多く含まれているから、普通の人間なら魔力酔いしちまうな、これ。

 

「ここはもうグレモリー領なのよ」

「じゃあここの線路も山とかも全部部長の家のものなんですか!?」

 

 イチ兄が羨望の眼差しを送るとリアス姉さんは胸を張りながらドヤ顔する。

 すごいな、さすがグレモリー家だわ。シトリーもそんな感じなのだろうか?

 そんな時、ひょっこり師匠が顔を出すと俺達に話してくれた。

 

「実はグレモリー領は日本で言うと本州くらいの規模があるんだ」

「本州……本州!?」

 

 あまりの規模に口を開けるしか無い。

 どんな規模だ、どんな。

 リアス姉さんは謙遜するように手を振るが、これ謙遜できる規模じゃないですから!!

 

「手付かずの所も多いのよ? あぁ、そうだったわ、イッセーたち少しいいかしら?」

 

 パチンと指を鳴らすとテーブルに地図が現れた。

 白と赤で塗りつぶされた地図はグレモリーの領地なんだろう、冥界語で書かれているのであんま読めない。

 

「イッセー、アーシア、ゼノヴィアは自分の領地を選んで頂戴」

「え、選んで良いんですか!?」

「次期当主の眷属なのよ、あなた達は。将来的にはここで暮らすことが許されるわ。朱乃たちだってもう自分の領地はもっているのよ……ごめんなさい、双葉には上げられないわ」

 

 申し訳無さそうにリアス姉さんが言うが、俺は手を降って気にしてないと言う。

 別に貰っても何も出来なさそうでな……あー、でも手付かずの場所で修行できるかも、ここなら音とか気にせず轟剣の練習とか鎧を使って全力の戦闘ができる。

 イチ兄たちがあーだこーだ言ってる間、俺はずっと修業のことで頭がいっぱいだった。

 

 だが後に俺は後悔することになる。どれだけ強くなっても、俺の体は人間だってことをすっかり忘れていたからだ。

 

 

 

****

 

 

 

 さらに十分ほど列車が走るとアナウンスが流れた。

 

『まもなくグレモリー本邸前。まもなくグレモリー本邸前。皆様、ご乗車ありがとうございました』

 

 俺たちは窓や荷物をまとめて降りる準備をするが、何故かおじさんだけは席に座ったままだった。

 俺の視線に気づいたのか、おじさんは苦笑しながら説明する。

 

「俺はこのまま魔王領、サーゼクスの元に向かう。これでも一組織のトップだからな。終わったらすぐに合流するから先に挨拶してこい」

「忘れてたよ」

 

 率直に言うとアザゼルおじさんが崩れ落ちるが、仕方ないじゃん? シェムハザさんとかに俺経由で苦情メール殺到するんだよ? やれ酒代だわ、風呂代だわ、研究費だわ……せっかく悪魔の奥さんと普通に暮らせると思ったのに、アザゼルおじさんが自由すぎて奥さんより先に病院行きそうだとか言われた時は同情したよ。

 まぁ、冗談はさておき。おじさんは忙しいもんな……まっ、俺もだが。

 

「じゃあ、おじさんまた後で」

「おう、お前らも気をつけてな」

 

 ニカッと笑うおじさんに皆が手を振る。

 最初は堕天使の総督だからと警戒してた人もいるが、おじさん個人はすごい良い人だからな今じゃ、皆それなりに対応するようになった。

 おじさんを置いて、停車した列車から駅のホームから降りた途端、空砲とラッパの音が鳴り響き、怒号のような声が聞こえた。

 

『リアスお嬢さま! おかえりなさいませっ!』

 

 おぉ、すげーお出迎え。

 テレビで見たことある首相とかの歓迎パレードみたいだ。

 空には花火が上がり、楽器隊だろうか? その人達が音楽を奏でる。そして大量のメイドさんたちが息があったお辞儀を披露していた。

 漬物とか食ってると忘れそうだが、リアス姉さんはお嬢さまでしたわ。それもスケールが違いすぎて笑えるくらいの。

 リアス姉さんは満面の笑みで執事やメイドさんたちに挨拶をする。

 

「ありがとう、皆」

「おかえりなさいませ、お嬢さま、そして眷属の皆さま。そして黄金騎士さま、ようこそおいでくださいました」

 

 メイドさんたちを率いるように立っていたのはグレイフィアさんだった。

 グレイフィアさんと挨拶をし、誘導されるとなんともまぁ豪華絢爛な馬車が用意されていた。だがその馬車を引いているのは普通の馬ではなく、魔物と言うべき大きな巨体にギラギラした目をしていた。

 おー、なんだろ? と思って近づくと馬の一頭がこちらに頭を下げてくるので撫でさせてもらった。

 よしよし、今日はよろしく頼んだぞー?

 軽く撫でて振り向くと、グレイフィアさんや後ろのメイドさんたちどころか、兵隊さんたちもびっくりしていた。えっ? 何?

 

「……確か使い魔に懐かれるとは聞いておりましたが、実際に見ると凄いですね」

「いや向こうから来たんですけど」

「それでも凄いわよ、その子たち赤の他人に触られると蹴り殺すんだから」

 

 ……マジかよ!? あっぶな!! あっぶなすぎるわ!!

 そんなこともありながら、俺達は二組に分かれて馬車に乗る。

 乗り込むと何も言わずに馬たちは蹄を鳴らして歩き出した。

 本とかで呼んだ限りだと、腰にかなりクるとの話でドキドキしてたが全くそんなこともなく快適だ。

 舗装されているおかげでもあるが馬車がしっかり作られている証拠なんだろう。

 景色を楽しんでいると何やら大きな城が……えっ? 城?

 

「あ、アレは?」

「アレは部長さんの本邸ですぅ」

 

 ギャー助の言葉で少し頭がふらつく。

 どこまでスケールデカイんだよぉおおおおおおおお! 俺の未来の義理の姉はぁあああああああああああ!! というかイチ兄が不安すぎる!! こんな場所に嫁いだら日夜メイドさんにあんなことやこんなことを……そんなことしたらとっちめっちゃる!

 将来的にはアーシアとかの世話だって頼みたいし、誰から構わずスケベになるのは矯正しないとな!

 そして馬車が綺麗な花畑や噴水を通り過ぎ、大きな城門の前で停止する。

 どうやら降りるということで、俺は降りると体を伸ばす……どーも最近疲れが取れない。今だって魔力で体の疲労を抜いてるはずなのになぁ。くそ、頭がふらつく。

 俺は頭を振り、気付けに頬をパンと叩く。

 

「大丈夫かい?」

「えぇ、ちょっと寝すぎちゃったみたいで」

 

 師匠が心配そうに見てくるが大丈夫だ、このくらい平気だ。

 グレイフィアさんに促されて、俺たちはレッドカーペットの上を歩き出そうとした時が、整列しているメイドさんや執事の間から小さな人影が飛び出し、リアス姉さんに飛びつく。

 

「おかえりなさい! リアスお姉さま!」

 

 紅髪の可愛らしい少年がリアス姉さんに抱きついていた。

 あれ? リアス姉さんに弟なんていたっけ?

 

「ダメじゃないミリキャス……でも大分大きくなったわね」

「ご、ごめんなさい。お姉さまが帰ってくるって聞いたから」

 

 しょんぼりする姿が何故かサーゼクスさんと被る。

 いや、まさかな? そんなはずないがなんだかこう……あれ? グレイフィアさんとも似てるような? んー?

 俺が首を傾げているとリアス姉さんが、抱き上げながら紹介してくれた。

 

「この子はミリキャス・グレモリー。お兄さま、サーゼクス・ルシファーさまの子供。つまりは私の甥ってなるわね」

「あっ、やっぱり」

 

 どうやら考えが当たっていたようで納得するとミリキャス……さまといったほうが良いか? ミリキャスさまがリアス姉さんの腕から飛び降りて、俺に駆け寄る。

 えっ!? なんですか!?

 俺の目の前まで来るとミリキャスさまはぴょんぴょんと跳ねながら、俺の魔法衣をつかむ。

 

「凄い! 凄いよ!! 本物の黄金騎士だ! あの、えっと……僕、ミリキャス・グレモリーって言います!」

「えっと……初めましてミリキャス・グレモリーさま。俺の名前は兵藤双葉、今代の黄金騎士です」

 

 とりあえず膝を付いて、頭を下げるとミリキャスさまは慌てて俺に頭をあげるように言った。

 困った顔が父親そっくりだわこの子。

 

「や、やめてください。ミリキャスでいいです、敬語もいりませんから」

「でも……まぁいいか、ミリキャス、でいいのか?」

「はい!!」

 

 俺に飛びついてきたミリキャスを抱き上げると肩車をする。

 ギャー助もたまにやるが、これ近所の子供達にも大人気なんよね。案の定、ミリキャスも目を輝かせてはしゃぐ。

 魔王の息子だけどサーゼクスさんの息子だけあって立派な子だわ。

 はしゃぐ俺達を微笑ましそうに見るリアス姉さんとグレイフィアさん。……あぁ、やっぱりグレイフィアさんが母親なのかな? サーゼクスさんも妻のことだと口つぐむんだよなぁ、惚気けるくせに。

 

「双葉さん、双葉さん!! 魔戒剣も見せてください!」

「こら、ミリキャス。双葉だって疲れてるんだからまた後にしなさい」

 

 リアス姉さんがたしなめるように言うと、ミリキャスがはぁいと不満そうに言う。

 にしても驚いたな、黄金騎士ってだけでここまで懐かれるなんて。

 あぁ、ソーナ先輩もそうだが絵本になってるから憧れるのかね。ミリキャスからしたら、絵本の世界の住人がそのまま現れたようなもんか、そりゃ興奮するわ。

 俺はミリキャスを肩から下ろすと頭を撫でながら約束する。

 

「ミリキャス、ここにいる間に見せてあげるからそれ待ってられるか?」

「はい! でも絶対ですよ!! 絶対に見せてください!」

 

 興奮するミリキャスに、俺は拳を突き出すがミリキャスは首を傾げていた。

 あぁ、わからねえか……てか魔王の息子にこんな事して良いのかな? まぁ、周りが何も言わないから問題なしと思うしか無い。

 

「ミリキャス、これはな。男同士の約束をする時にやるんだ、拳を打ち合わせろ」

「……はい!」

 

 素直に聞いたミリキャスはまだ小さな手で拳を作り、俺の手と打ち合わせる。

 ミリキャスと俺は揃って笑うと、ミリキャスは俺の隣りに立って手を繋ぐ。

 どうやら一緒に行きたいのか……あっ、そうそう背中に隠れてる紙袋ヴァンパイア、オメーは一人で歩け。

 リアス姉さんがこちらに視線を向けると歩き出す。

 城門が完全に開くと玄関ホールが目の前に現れる。

 おぉおおおおっ!! すげえええ!! 大きい! 広い! 超明るい!!

 

「おぉっ!」

 

 イチ兄が感嘆の声を上げるが、こりゃ見事な玄関ですわ。

 とジロジロと見ていたら、二階へ上がる階段から一人の女声が降りてきた。

 

「あら、リアス帰ってきてたのね」

「お祖母様!!」

 

 …………んん? ミリキャスくん? なんかすごい事言わなかった? お祖母様?

 女性にそういうことは言ってはならんよ? ていうかあの人誰だろうか? リアス姉さんと凄い似てるが髪の色が紅ではなく亜麻色で、目つきが少し鋭い。あとおっぱいが大きい。

 リアス姉さんはその人を見ると会釈しながらこういった。

 

「ただいま帰りました。お母さま」

「「お、お母さまぁあああああああああああああああ!?」」

 

 俺とイチ兄が揃って驚く。

 いやいやいやいやいやいや!? 若いすぎる!! むしろ姉妹って言ってくれたほうが信じますから!? うそこけええええ!? こんな若いお嬢さんがお母さまとか、人妻とかウッソだろお前!?

 驚く俺に朱乃先輩が耳打ちしてくれる。

 

「悪魔は魔力で見た目を自由に出来ますの。リアスのお母さまは、今のリアスと同じくらいの年格好で過ごされていますわ」

 

 すげえ、というか悪魔の体研究したら億万長者待ったなしなんじゃ? いや、それはそれで気持ち悪い世の中になるか。

 リアス姉さんのお母さんはこちらをニコリと笑いながら、挨拶をした。

 

「初めまして、リアスの新しい眷属の皆さん。そして黄金騎士。私はリアスの母、ヴェネラナ・グレモリーです」

 

 にこやかに笑う若奥様は人妻と思えないほど清純なものでした。

 

 

 




色々と詰め込み過ぎ&フラグ乱立……じゃあ双葉、ちょっと退場しようか(ニッコリ)
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