ハイスクールD×D 黄金騎士を受け継ぐもの   作:相感

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最近忙しいので更新が不定期に……。
あっ、双葉くんボッシュートになります(いつものBGM)


修行(無茶振り)

 拝啓、天国にいる父さん、母さん。そして現世にいる父さん、母さん、イチ兄にリアス姉さん、元気でしょうか?

 私こと兵藤双葉は――――。

 

「アバーッ!?」

「良いですか、ねじ込むように打つのです」

 

 鬼師匠にしごかれて、冥界の奥地で修行しております。

 なんでさ、と言いたい。

 俺だってそう言いたいがコレには理由がある。

 あの愛想もないマグダランとの会話の後、俺はロゼさんに軽く治療されて番犬所に入った。

 テレビで見たような古代の神殿といった風の作りに、珍しく見ているとマグダランが鼻で笑ってきた……嫌なやつだなぁ、サイラオーグさんとは大違いだな。

 ちなみにネムレスも着いて来てくれたが、先程とは打って違って優しいおじいちゃんのように俺を見守っていた。

 暫く歩くと大広間らしき場所に着くと、椅子に座った数人の男性たちがいた。

 服装がバラバラだが、引退した魔界騎士だとロゼさんから耳打ちされた。

 そっからが長かった。

 やれ、黄金騎士の自覚が足りないだとか、挨拶が遅いだとか、悪魔に喧嘩売ってんじゃねえよバーカとか、クッソワロタ4chにアップしとことか……最後のやつ、引退してるのに元気ですね!!

 まぁ、こんな感じで長い長い小言の後、俺が正式に牙狼の鎧を受け継ぐかどうか聞いてきたので俺は頷いた。

 だが、そこで微妙な顔をする引退した方々。長い歴史を見ても人間が黄金騎士であったことはあまり無いらしいし、人間の装着者は早死しやすいとも聞いた。

 確かに、今までの戦いで生き残ってきたのは奇跡に近いと自分でも思う。神話クラスの奴らとここ最近戦ってるし、そのうちマジで神と戦うかもなHAHHAHA……笑えねえ。

 引退した先輩たちの表情は、決して俺を忌避する物ではなくむしろ心配しているような雰囲気を感じた。きっと俺が人間だから心配だったのだろうな、これ以上魔戒騎士の死を見たくないんだろう。

 言うなれば過保護なのだ、この人達は。

 そこで手を上げたのは、ネムレスだった。

 

『なら死ぬことがないように鍛えあげましょう。この私が直々に』

『はい?』

 

 そんな経緯で冒頭の俺に戻る。

 よっぽどネムレスの実力を信用しているのか、それとも俺の力に期待してくれたのか、引退した先輩方は首を縦に振った……のだが、ロゼさんから肩に手を置かれて「死ぬなよ?」と割りとガチ目に言われた。

 まぁ、この時の俺は「大げさだなぁ」とかのんきに考えていた。

 だがロゼさんの言うことはマジだった。

 

「ちょっ、と、休ませろォッ!!」

「元気がある、ならば動かしなさい」

 

 はぐぅっ!? と顔面に叩きこまれた拳を受けて、俺は地面に転がった。

 このジジイ、リアス姉さんや師匠の修業なんか児戯と思えるほど厳しい。具体的に言うと容赦がない。

 まず連れてこられたのは魔力の濃度が濃い奥地、俺ですら環境に耐え切れず魔力酔いを起こす場所。

 そして問題は今来ている魔法衣だ。

 

「重りつけたまま避けれるかァ!!」

「動け」

 

 さむすっ!? 今度はキックを入れられる。

 黒い魔法衣をネムレスから渡されて着たがコレがヤバイ。何がヤバイって周囲の魔力を吸い取って、自動的に体に負荷をかけるという素敵な機能付き。防御力はあるのかダメージはある程度軽減してるが、ネムレスの動きについていけないためプラスマイナス、マイナス10くらいだ。

 初日は容赦なく気絶したが、強引に叩き起こされその行為を数えきれないほど繰り返された。

 二日目はソウルメタルを使いながら打ち合うのだが、精神力を使いきって気絶し湖に落とされて起こされの繰り返し。

 まぁ、そんな無茶苦茶な修行と言う名の拷問を数日間で俺は何度も気絶し憔悴しきっていた。

 イチ兄たちがどんな修行してるかはわからない。だがここまでぼろくそにされているのは俺くらいなものだろう。

 そもそもね、ここ寝床とかないのよ。寝るときは魔法衣を敷いてゴツゴツした岩場で寝るし、ご飯とかは自力で獲る。

 初日は疲れて何も食えなかったため、二日目では食料を選り好みして死にかけたけど最近はもう何でも食ってる。……なんか気色悪い虫がごちそうに見えるとか俺もうだめかもわからんね。

 こんな馬鹿げた修業に何故付き合うのか? いや、できれば俺だって逃げ出したいさ。というか何度も脱走しようとした。

 寝ているネムレスの隙を見たり、修行中に泣きながら逃げ出したり、ご飯を獲ると言って逃げたり……結果? ここでぼっこぼこにされているのを察してください。

 あぁ、あと俺がなんで倒れていないのかという疑問があるだろうが、ネムレスの治療のおかげとここの温泉のおかげだったりする。

 ネムレス曰く「なんて馬鹿な修行してるんだ」とどストレートに言われた。いや、この修業も相当アホだと思うんだが。

 魔力での疲労回復は、一時的には有効だが長期間やっていると身体機能が弱って来るらしい。思えば、最近の体の不調はアレが原因だったんだろうな……気付かなかった理由? 魔力が便利すぎて人間の体を酷使しすぎたよ。

 ネムレスの治療、主にマッサージや医療術式を使った疲労抜きは最高だった。やってもらってる途中で爆睡して、かかと落としで起こされたのは嫌な思い出だ。

 そしてここに湧き出ている温泉が程よく魔力を含んでいるので、打ち身とか骨折とかもみるみる治っていく。ボッキリ折れた腕を温泉に浸けて、ネムレスの医療術式をかけたら数時間もせず治っていた時は正直、俺の体に引いた。

 まぁ、ネムレスの言葉を借りるなら、ココでなら死ぬことはないらしい。

 んなわけあるかぁあああああああああああああっ!! 見えたわ!! ミカエルさんが必死に現世に戻そうとする姿とか、いつも俺が殴ってた天使が「お、オイ、お前大丈夫かよ」とかガチで心配してる姿見えてるんだよぉおおおおおっ!! お迎えの天使が来てんだよ! 少しは手加減しろ!!

 

「この腐れジジィイイイイイイイ!!」

「そのジジィに勝てない情けない若者はこちらですかな?」

 

 突き出した腕の関節を極められ、容赦なくへし折られる。

 痛い、泣くほど痛いけどもう慣れた!!

 

「腕の一本くれたらぁあああああっ! 死ね糞ジジィ!!」

 

 関節を極めていたネムレスの服を掴み、折れた腕を強引に動かしてネムレスの顔に当てる。ここ数日で少しは打ち合えるようになったんだぜ!? くそっ!! でもめっちゃ痛いし、この後は――――。

 

「無謀なことはしない」

「舐めるなぁああああああっ!!」

 

 すぐに体勢を立てなおして蹴り!! だが俺はわかってんだよ! 伊達に百回以上やってない!!

 俺は足を曲げながら上げて、ネムレスの攻撃を受け止める。

 すごい衝撃が足に響くが折れてなきゃどうにでもなるんだよ、くそったれがぁあああああああっ!!

 

「今度こそ死ねぇええええっ!」

 

 受け止めた足を軸に、体を浮かして飛び蹴りの体勢をとるが、ネムレスはニヤリと笑って俺の蹴りを受け止めた。

 知ってた!! 知ってましたよ、くそったれ!! 当たってくれてもいいじゃん!!

 

「こちらの足も折りましょうか」

「やめろぉ!! てかホントやめて、慣れたからといって痛いもんはい――――ギブギブギブギブ!! 離せこのくそジジィいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

 俺の罵倒も虚しく、ボキリと言う鈍い音と共に叫び声が上がった。

 

 

 

****

 

 

 

『にしても良くめげないなぁ、お前さんは』

「めげないんじゃない、めげてもあの腐れジジィは殴ってくるからな」

 

 最早おなじみとなった風呂に浸かりながら、俺はネムレスから盗んだ医療術式を折れた箇所に展開する。

 アイツにされるのも腹が立つので、必死に見て覚えた。

 今は休憩時間だが、飯の時間と治療も合わせて四時間ってところか。

 夜はネムレスが出す基礎トレーニングをするので、気絶するように寝るのがここ数日の寝方だ。人間って凄いよ? 限界超えると糸が切れた人形のように倒れこむもん。

 

『ほう、随分修復速度が早くなってきたな』

「なんども折られて体が修復速度早めてくれたんだろ」

 

 首と頭、あとは胴体の骨以外は全部折れたと思う。

 おかげで自分の体の構造が手に取るように分かるよくそったれ。

 あのジジィにオーバーワークって言葉はないのか? つうかまともに修業させろや、容赦なく折るんじゃねえよ。

 凄い騎士だ、って尊敬した気持ち? とっくに無くなってるわ馬鹿野郎、あんな奴師匠でも何でもない、ただのクソジジィで十分だ。

 

『ふむ……ん? お客さんみたいだぞ?』

「よぉ、双葉――――って、大丈夫かお前?」

「あ、アザゼルおじさん」

 

 見知った顔で体が動くが、激痛と疲労で動けない。

 アザゼルおじさんも苦笑というかドン引きしながら俺の体をマジマジと見ていた。

 

「……お前さ、どんな修行してんだよ」

「地獄じゃね?」

 

 目に光がない俺の表情にドン引きするおじさん。

 いや、地獄だろ。あっ、一応ここ冥界だから地獄みたいなもんかHAHAHAHA……首吊ったら悪魔にならないかな、ガチであの身体機能がほしい。

 そういえば、おじさんが手に持ってるものはなんでしょうか?

 

「ん? あぁ、これか。これはな、お前への差し入れだ」

「差し入れ?」

「そうそう、朱乃たちからの弁当だ」

 

 そう言われた瞬間、俺は全裸や骨が折れていることを忘れ、風呂から飛び上がってアザゼルおじさんに襲いかかった。

 

 

 

****

 

 

 

「はぐぅっ!! はむはむはむはむはむはむ、うみゃい、うみゃすぎりゅううううううううう!!」

「はしたない……と言いませんよ、ここ数日はまともなものを食べていませんでしたからね」

 

 糞ジジィが何か言っているが俺は泣きながら、アーシアの弁当をかき込む。

 アザゼルおじさんが持ってきてくれたのは、リアス姉さん、アーシア、朱乃ちゃん、小猫、師匠といった面々が作ってくれたお弁当やおにぎりだ。

 かきこめえええええええ!! 次いつ、まともな飯食えるかわからねえぞ!! てかうますぎィ!! お米一粒一粒が愛おしい。

 草とか虫しか食ってこなかったからな、あぁ、バンザイ日本食、バンザイリアス姉さん、ただしネムレスは死ね。

 

「一応、イッセーの方にも届けたんだがな……来るのに苦労したぜ、まさかこんな辺境の地にいるとはな。イッセーだって山なのに、お前悲惨すぎないか?」

「わかるッ!? そうなんだよ、このジジィは容赦なく折ってくるし、岩は堅いし、雑草は苦いし、虫は結構美味しかったけど気持ち悪いし!! あぁうめえええ!! あっ、ジジィは食うなよ、俺のだ!!」

 

 涙しか出てこない。

 というか、涙も枯れ果てそうだよ。

 アザゼルおじさんが顔を引きつらせている。

 

「相当参ってたんだな、お前が泣くってことは」

「未熟なだけです。全く、これで生き残っていたのが奇跡ですね……あなたはここで食べていなさい。私はアザゼルと少し話があります」

「行って来い、そして二度と帰ってくんな!!」

 

 歯をイーッとさせながら、ネムレスに嫌悪の表情を見せる。

 その様子に苦笑しながら、アザゼルおじさんとネムレスが歩いて行く。

 話か……気になるが、朱乃ちゃんたちのご飯を食べるんだ。

 にしても皆、おにぎりに特徴あるな……小猫、いくらお菓子好きだからってご飯に入れることはないと思うよ? 今の俺なら何でも美味いと思うからいいけどさ。

 ……あれ? なんか手紙が……誰からだ?

 

『修業頑張ってください ソーナより』

『おー、お前さんも将来が明るいな』

「何がだ……まぁ、ソーナ先輩みたいな人と仲良くしてたら就職とか安泰そうだがな」

 

 ザルバと喋りながら俺はソーナ先輩が作った弁当をかき込む。

 う、美味い……あぁ、早く皆のもとに帰りたいよ。

 モグモグと食べていると後ろから誰かが歩いてきていた。

 俺はステーキを加えながら振り返る。そこにいたのはマグダランだった。

 

「……食事中でしたか、失礼しました」

「敬語やめてくれよ、あんたと俺は歳が近いだろ。それに魔戒騎士としちゃあんたの方が先輩だ」

「気にしないでください、これは教育の癖のようなものです」

 

 じっと俺を観察するように見つめるマグダランに、少し気まずさを覚えてしまう。

 そういえば歳の近い騎士とまともに話すのは初めてかもな。

 ライザーとは殴り合いながら出し、フリードのやつは殺し合いをしながらだしな……そういえばアイツはどこいったんだろうか? ヴァーリが回収して以来行方不明とか聞いたが。

 とりあえず立っているのもなんだから、魔力の刃で適当な岩場を切り裂いて簡易の椅子を作る。

 

「とりあえず座れば?」

「……お気遣い感謝します」

 

 なんか目を丸くしてるが、このくらい誰でも出来るだろ。特にバアル家の人なら。

 マグダランが岩場に腰掛けると、再びこちらをじっと見てきた。

 無視してご飯食べようとするが視線が気になって食えん。

 

「あの、なんか用があるんだったら早めに言ってくれ。これ食い終わったら休まないとやってらんないんでな」

「……何故、黄金騎士になったのですか? 貴公は人間だ。これから先もその名前はずっと付いて回る。それこそ呪いのように」

「んなもん分かってるよ」

 

 呪い、たしかにそうかもしれない。

 この鎧は今までもこれからも大勢の人たちを救うだろうが、その手は真っ赤に汚れている。

 黄金騎士にいい思いを持っていない人もいるし、呀だっている。そしてこれからもイチ兄たちと付き合っていくのなら強敵と戦うだろう。

 にしても何故か……答えてもいいけど、マグダランがなんで魔戒騎士になったのか聞いてみたいな。

 

「質問を質問で返すけど、なんでマグダランは魔戒騎士になったんだ?」

「なれたからなった、ですかね。私はサイラオーグに負けて、次期当主の座を追われた身ですから、逆に言えばこうなるしかなかった」

 

 ……えっ? マグダラン、ちょっと待って下さいな? 次期当主の座を追われた? てかサイラオーグに負けた?

 元次期当主さま?

 

「え、えぇっと失礼なこと聞くけど元次期当主さま?」

「まぁ、そうですね。滅びの力を持たないサイラオーグに負けたため、見捨てられた情けない者が私です」

「……なんか、ごめん」

 

 気まずい雰囲気になって俺は謝る。

 うげぇ、サイラオーグさんも複雑な状況なもんだ。実の弟ぶっ倒して当主になったのか。

 あの人のことだから、マジで自分の拳一つで勝ったんだろうが凄まじいな。イチ兄のブーステッド・ギアのような神器とかなしに純粋に修行した拳だろ? あの人、悪魔じゃなくて仙人とかじゃないのか?

 マグダランが咳払いして「気にしないでください」っていうが、絶対に気にしてるよあの瞳。うわぁ、地雷踏んだなぁ、これ。

 

「今度は貴公の番です」

「……なれたからなった、お前とおんなじだよ」

 

 そう言うとマグダランの瞳に失望の色が見えた。

 嫌だってさ、俺が牙狼になった経緯を言えばそうなるんだよ。

 ただ偶然見つけて、偶然召還して、偶然俺が選ばれた。

 魔戒騎士になれた理由もよくわからねえ。今の俺は鍛えているが、あのときの俺は一般人から毛が生えた程度の人間だったはずだ。

 今だから思うが、なんで俺は持てたんだろうか? 魔戒騎士になるためには英霊、つまりはご先祖様たちに認められるのと血の滲むような訓練の果て、ソウルメタルが十全に扱えるようになってから。

 偶然、見つけた俺が抜けるほど牙狼は安くないはずだ。

 ……あれ? なんで俺牙狼になれたんだろ?

 

「それを牙狼になりたかったものに聞いたら殺されますね」

「だろうな、むしろ今だってなんでなれたんだろうって自問自答してた」

「……それは私もです」

 

 マグダランが魔法衣の中に手を入れて、魔戒剣を引き抜く。

 紫の鞘と柄が鮮やかでいいな。俺なんか白だよ? 白。なんか黒い紐みたいのが巻きついてるけどさ。

 マグダランは魔戒剣の刀身を見つめながらこう言った。

 

「私は何故魔戒騎士になれたかわからない。偶然、バアル家の宝物庫でこれを見つけ引き抜けた。一時期は親は喜んでくれましたよ……だけれども、私には人々を守る気も、使命に燃えることもなかった。出来たからやっただけ、ネムレス殿には何年も修行をつけてもらってますが、それでもサイラオーグに負けた。誰もが私から離れていきました、親からもどこへとも行けともね」

「……酷いな、本当に両親か? それは」

 

 俺がそう言うと寂しそうな表情をしたマグダランは諦めたような口調で言う。

 

「表向きは武者修行、裏を返せば魔戒騎士への丸投げですよ。家族ですら容赦がない、それが悪魔という生き物です」

「よくわからねえな。俺が人間だからかな」

 

 まぁ、本当の親は悪魔と堕天使なんだが、記憶の中ではかなり優しかった記憶が……いや? よく父さんが母さんに殴られて星になったり壁のオブジェになってた記憶が? い、いや、そんなはずはない……ないんだ、多分。

 でも普通の悪魔はそんなもんだよなぁ。幸いにしてそういう普通の悪魔には全く会わないから俺の基準が甘いんだよなぁ。

 

「でしょうね。でも貴公にも分かるはずだ、魔戒騎士というのは真に強い心がある者がなるべきだ。私のような負け犬ではなく、貴公のように何度倒れ伏しても立ち上がる者がね」

「……マグダラン、お前もしかして自分は魔戒騎士の資格が無いと思っているのか?」

「端的に言えばそうなりますね」

 

 心底冷えた目で俺を見つめてくるコイツを見て、俺はため息をつく。

 そういうのは俺に聞くな、ネムレスとかロゼさんに言えばいいだろ? 俺は未熟な騎士なんだよ、黄金騎士だからってなんでも答えられるわけねえだろ。

 

「俺に言うなよ、てか鎧が召還出来ないのか?」

「いいえ、出来ます。だからこそわからないのです。こんな奴が鎧を召喚できるのか。魔戒騎士になりたいものは毎年大勢いますが、それでも数十年、下手をすれば数百年に一人です」

「えっ!? 魔戒騎士ってそんななるのが厳しいのか!?」

「魔戒剣を動かすだけならいるのですが、鎧の召還まで行き着くものが少ないのです。そして悪魔は努力を嫌う。鎧に認められるものは少ない」

 

 なるほどなー、後進の育成したくても悪魔の特性で無理だったわけか。

 世知辛いな、オイ。

 

「でも、魔戒剣は言い方悪いが余ってるんだろ?」

「……ロゼ殿は先の大戦の原因は力にあると言っていました。恐らく、ロゼ殿は魔戒騎士が力を付け、現在の三大勢力の均衡を崩すのを恐れたのでしょう。実際、戦後魔戒騎士の処遇は問題視されましたから、現在の四大魔王さま方が説得がなければ全滅もあり得たでしょう。そして魔戒剣の多くが先の戦争で破損しましたので」

 

 魔戒剣って破損するの!? てかそういえば俺って魔戒剣の整備とかあんまりしてないんだが折れたりしないのか!?

 

『魔戒剣が折れることはない。だが鎧を完全に破壊されるとその魔戒剣が砕けるんだ』

「ザルバ殿、説明をありがとうございます……もしや知らなかったのですか?」

「恥ずかしながら、ぶっちゃけ騎士歴数ヶ月の素人だぞ、俺は。そんなに期待されてもな」

 

 これは本音だ。

 黄金騎士がどれだけ凄いのかよく分かるし、歴代の牙狼たちも俺以上のことをしていたのならそりゃ期待されるわな。

 残念だが、俺は弱っちい人間だ。今だって骨をバキバキに折られて、毒をぶち込まれて、虫喰って……あれ? 涙が。

 

「貴公がどう思うとも、周囲はそう見てくれない。かつて私もそうだったから分かりますよ。――――他の事がしたくても、そうなるしかできなかった」

「いや、別に俺はそこまで思い詰めていねえよ」

 

 俺はちょいっとエビフライを口に含みながら言う。

 うん、美味しいな……これはアーシアのか、会ったらお礼を言わないとな。

 ん? どうした? マグダランが信じられないものを見てるような顔しているが。

 

「……何故?」

「何故って、別に黄金騎士しかなっちゃいけないとは言われてねえだろ。お前もそうだが、俺達は魔戒騎士だが別の何かになっちゃいけない理由なんて無い。そりゃ時代が時代なら俺もお前も魔戒騎士だけしなきゃいけないけどさ、今は三大勢力が手を組んでる。魔戒騎士が踏ん張って守る時代はとっくの昔に終わってるよ」

 

 矛盾してると思うが、俺の考えはこうだ。

 別に黄金騎士だけになるつもりはない、もちろん誰にでも認められる黄金騎士になるのが俺の目標だけど、別に黄金騎士だけになるつもりはない。

 イチ兄がいい例だがな。あの人は最強の『兵士』になるって目標もあるが、ハーレム王にもなるって夢がある。それでいいと思うがね、マグダランがどうしたいのかわからないけど剣を置くっていう選択肢もあると思う。

 無理して魔戒騎士をやるもんじゃないしな。それに本人が嫌なら止めていいと思う……騎士の誇り? 守るべき伝統? 黄金騎士失格? 知ったこっちゃねえ、俺は俺なりに黄金騎士となって人を救うだけだ。

 

「……貴公は怖くないのですか? 自分がしたいことをして、結果を出したのに認められず軽んじられる。誰も認めてくれない恐怖を知らないのですか?」

「マグダラン、お前がどういう人生を歩んできたか知らねえけどさ。お前はお前だろ? バアルだろうが、魔戒騎士だろうがそれは変わらない。確かに型にはまった人生も悪いってわけじゃないけどさ、俺は性に合わねえんだよ」

 

 要約すればいつものワガママと言うやつだ。

 まぁ、俺が常識知らずってこともあるんだろうな。

 マグダランは冥界でも有数の家の坊っちゃん、俺は平凡な家庭で育てられた黄金騎士の息子。マグダランが知らないような自由を知っている。

 マグダランにはマグダランの常識があると思うが、折角家から離れたわけだし少し自由に暮らしても良いかもしれないな。

 やりたいことがあるならやりゃいい。まぁ、それはコイツが決めることだろう。俺は別にコイツの友達でもないんだしな。

 

「貴公は強いな……なるほど、牙狼に選ばれる人はこういったものなのか」

「そう大層なもんじゃねえって、俺は人間だ。そしてお前は悪魔。お互い寿命の長さは違うがずっと魔戒騎士してるわけじゃないだろ? なんか見つけたほうが良いだろって話だ」

 

 そう言うとマグダランは目を細めて、俺から目線を逸らす。

 んー、いつもの癖というか俺がカウンセリングみたいな事してるよな……いっその事カウンセリングになろうかな、この経験活かせる――――はぐぅっ!!

 

「ご、ごあ……あ、あれ? 目の前が」

「黄金騎士殿!?」

 

 おかしいな、弁当とは違う箱に入ってたクッキーを食ったら口の中で色々な感触が――――つうか痛い、口の中が痛いッ!!

 この感覚前どっかで……えっと、あの箱に書かれてる紋章って確かシトリー……あっ。

 

「しっかりしてください! まさか毒物を!?」

「ち、違う、マグダラン。毒物じゃ、な、い……これソーナさんのクッ、キーだ」

 

 マグダランが驚いたようにクッキーを見つめる。

 あぁ、そうだろうよ。見た目だけは一級品、だがその実態はそれっぽい食材で作り上げる天然生物兵器OKASIなんだ。

 ゆ、油断してた……アカン、今までの疲労とか無茶した反動が全部跳ね返ってきて、ぐふっ。

 

「と、吐血!? やっぱり毒物ではないですか!」

「ゆ、ゆだんし、たわ」

 

 アカン、想像以上に……このクッキー、体に毒だ。

 以前のクッキーはココまでじゃないのに、さてはソーナ先輩張り切ったな? あっ、ダメだ、目の前が真っ暗になっていく。

 瞼堕ちたらマジで死ぬんじゃねえの? アハハハ、知り合いのクッキー食って死んだ黄金騎士とか洒落にならない、よ?

 

「しっかり! 目を開けて!!」

「あ、朱乃ちゃ――――ガクリ」

 

 そうして俺の体をゆすりながら叫ぶマグダランの声を聞きながら、俺は気絶した。

 

 

 

**三人称視点**

 

 

 

 双葉が泣きながら弁当を食べている間、アザゼルとネムレスは少し離れた岩場に腰を据えていた。

 見つめ合う二人には微妙な雰囲気が流れていたが、はじめに口を開いたのはアザゼルだった。

 

「……今はネムレスって名乗っているのか? てか口調が全然違くてびっくりだ」

「あれから色々ありましたからね。あなたは変わりはないようだ」

 

 にこやかに笑う二人だが、かつては剣を交えた敵同士であった。

 だが、アザゼルは苦笑しながらネムレスに口を開く。

 

「変わったさ、暇なもんでガキを三人ほど見ててな」

「結婚はしてないのに……いや、あなたの趣味でしたかな?」

「まぁ、一人はちと入れ込み過ぎて離脱しちまったよ」

 

 アザゼルの脳裏にヴァーリの姿が思い浮かぶ。

 アレだけの才能に白龍皇という稀に見る逸材だ。アザゼルでなくても手塩をかけて育てたに違いない。

 ネムレスはそれをわかっているのか、首を横にふる。

 

「白龍皇ならば気にしない方がいい。聞いたところ、彼の気質は『覇』だ……いずれはあなたの元から去っていたと思いますよ」

「かもな、だがアイツが『禍の団』に入ったのは俺の責任だ。もしも、アイツが本気で世界に牙を向くなら、俺が殺す」

 

 拳を握りながら、アザゼルはそう決意する。

 だが、ネムレスは再び首を振りながらアザゼルの肩に手を置く。

 

「止めなさい、親が子を殺すなどろくなことにはなりませんし、しこりとして一生残りますよ」

「ネムレス……」

 

 ネムレスの目に写った悲哀の感情に、アザゼルは口をつぐむ。

 ネムレスが名前を捨てた理由、そして騎士を引退した出来事をアザゼルは知っていた。

 過ちを犯したネムレスだからこそ、アザゼルに言う言葉は厳しかった。

 アザゼルは話題を変えようと、双葉のことを聞いてみた。

 

「話は変わるけどよ、双葉の様子はどうだ?」

「……アレが本当に人間ですか?」

 

 ストレートに言うネムレスだが、その言葉は的を射ているだろう。

 ネムレスがやっている修業、アレは心を折るためにしている言わば無茶な試練だ。

 本当はきちんとした修業メニューも考えていたが、まずは心を折るべきだと思い、双葉に手心は加えたが手加減はしなかった。

 にも関わらず、双葉は何度も何度も立ち上がりネムレスに罵声を浴びせながら拳を突き出す。

 ネムレスは、内心双葉の折れぬ精神に畏怖していた。

 長い間取らずにいた弟子、そこで新しく出来た弟子、マグダランですら五分で脱落した物を続けてもう数日である。

 ちなみにマグダランも弱くはない。一時期はバアル家の次期当主だったため、実力はあったし、素質も十分備えていた。だからこそ、人間である双葉が耐え続けているという事実にネムレスは感心した。

 

「人間だよ、確かに魔力とか今までの修業で体の内部構造が人間を超えてきてるがな」

「……何故、彼は折れないんでしょうか? 無茶な修業とわかっているのにも関わらず、私についてくる」

 

 双葉がココに入れば「バーカ! てめえが逃さねえんだろうがバーか!! 馬鹿野郎俺は逃げるぞお前!!」と罵倒していただろう。

 アザゼルは笑いながら答える。

 

「魔戒騎士だからだろ。未熟であろうが、アイツは牙狼に選ばれた。そんんじょそこらの奴とは違うさ」

「冴島双牙、彼の本来の名前でしたな」

 

 冴島、ネムレスにとっては忌むべき名前だ。

 かつてネムレスは黄金騎士になるべく修行を積み、冴島の名前を持たないのにも関わらず牙狼剣を動かした実績を持っていた。

 だが、結局牙狼に選ばれたのは双葉の父親だ。

 恨みはとうに無いが、アレの息子を育てるというのは中々複雑な心境になったネムレスもいた。

 

「冴島だから、牙狼であり続けるのですか?」

「それもあるだろうな、だがアイツが牙狼であり続けるのはもっと単純なものだよ。誰かを守りたい、そんな純粋な想いを持ってるんだ」

 

 アザゼルはまるで父親が息子を褒めるような表情で語る。

 ネムレスは、その表情を見て苦笑する。

 魔戒騎士としての心構えはできているのだろう。

 だが、だからと言って手心を加えないのがネムレスという悪魔だ。このまま実践形式で双葉を鍛えあげるつもりだ。

 筋はいい、むしろ我流だからこそ実践形式で教えこんだほうが双葉は伸びると考えるネムレス。太刀筋もめちゃくちゃというか、複数人の剣が入り混じったような不思議な太刀筋だが悪くはない。

 アザゼルは話は終わったと判断したのか立ち上がるが、眉をひそめる。

 仄かに血の匂いが香ってくるのだ。

 

「むっ? 血の匂い?」

「まさか、双葉!?」

 

 アザゼルとネムレスが同時に走り出す。

 アザゼルの脳裏に嫌な記憶がよみがえる。双葉の両親が死んでいたあの夜、間に合わなかったあの瞬間が頭によぎる。

 

「あ、アザゼル殿! ネムレス殿! 黄金騎士殿が!!」

「双葉ッ!!」

 

 アザゼルがマグダランの手から、口から血を流しながら気絶している双葉をひったくる。

 専門外であるアザゼルでも分かるくらい、双葉の体は瀕死であった。

 顔色は悪く、四肢も痙攣している。

 

「毒ですかな? まさかアザゼル、あなたの持ってきた弁当の中に」

「馬鹿な、これは双葉を慕う奴らから善意で送られたものだぞ? 毒物がはい――――あっ」

 

 アザゼルは顔を真っ青にさせながら、急いでマグダランに聞く。

 

「おい! まさか双葉のやつ、あのクッキーを食ったんじゃないだろうな!!」

「あ、あのクッキー? もしや、あれですか?」

 

 マグダラんが指を指す方向を見ると、そこにあったのは地面に落ち散乱しているソーナのクッキーだった。

 アザゼルはそれだけで全てを察し、頭を抱える。

 ここに来る前、リアスにきつく言われていたのだ。ソーナのお菓子は外面は美味しいそうだが中身は劇物だと。しかしながらそこまで心配してなかったアザゼルはすっかり忘れていたというわけだ。

 

「……忘れてた」

「アザゼル? 後悔は後でいいですから、早く番犬所の医療室に。幸いなことにあそこには最新鋭の設備が整っています」

「いや、そこまでのことじゃないから大丈夫だ。むしろ、最近のコイツの無茶がこれで吹き出したんだろう」

 

 アザゼルは頭をポリポリと掻きながら言うと、ネムレスとマグダランは叫ぶ。

 だがアザゼルは冷静だった。

 見た目は酷いが、命に別状はないらしい。だが医者に連れて行ったほうが良いのだが。

 

「早くしないと黄金騎士殿が!!」

「そうです、アザゼル! 見殺しにする気ですか!」

「いやいや、そこまで大事じゃねえから……はぁ、さすがにコレは報告できねえわ」

 

 アザゼルは苦笑しながら、双葉の体から毒素を抜き出すため趣味で作っていた神器を取り出した。

 

 

 




( ˘q˘)←血を流しながら寝ている双葉の図。
はい、無茶とソーナの好意でぶっ倒れました。倒れた原因? ソーナの劇物を食べたせいで免疫機能に障害が発生、無意識に魔力でカバーしようとしたら溜まってた疲労が噴き出しオーバーフロー起こしてぶっ倒れました。キッカケはソーナの劇物ですが、ここまでひどくなったのは双葉の無理のせい。
次回、「双葉入院する・突撃堕天使の孤児院」の二本立てでお送りします。
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