データ吹っ飛んでやる気がゼロになってましたがなんとか完成したので……(なおやっつけの模様&闇落ちフラグ乱立な模様)。
まぁ、待ってる人もいないだろうしまた気ままに書きます。
「極度の疲労状態、魔力疲労、内臓機能の低下、睡眠不足……死なないのが奇跡だったな」
「笑い事かよ、アザゼルおじさん」
ゲラゲラと笑っているおじさんを睨むが、ほぼ十割方俺のせいであるので黙っておく。
俺がいるのは番犬所ではなく、ルシファードにある大型の病院だ。
番犬所でも治療はできたが、後述する機械がなかったため転院させられていた。
俺が昏睡して三日……と聞いたが数ヶ月寝てたような気がする。起きた時に口に呼吸器みたいな器具つけられて、アニメで見たことある培養液みたいな中にいたときはどうしようかと思ったよ。
ガボガボ言いながら溺れかけたのは今でもトラウマだ。
そしてさらに一日、今は病室のベッドに寝ているが、回復しきった俺は見舞いの品を食いながらアザゼルおじさんと談笑していた。
「お前が無茶してたのは分かってたが、こういう時に言っても聞かないのがお前だろう? いつかぶっ倒れると思ってたが、まさかクッキーで倒れるとはな」
「放置かよ……てことはザルバ、お前もか?」
『お前さんとは短い付き合いだが性格はわかってるからな。だが、あの状態で修行を始めたときはびっくりしたぞ』
枕に頭を投げ出すと俺はため息を付きながら自分の行動を思い起こして……悶絶した。
いや、冷静になった頭で考えると俺アホなことしてたなと思うけどさ。
倒れなかったのは普段の修行で基礎体力が付いてたからだと思う。
魔力では疲労がポンと飛ばないらしいしな、あれ一時的に疲労を体の一部に溜めて置くだけだと聞いたときは天を仰いだ。
で、それを知らずにし続けてりゃあぁなるわな。むしろいつぶっ倒れてもおかしくなかったと。
「クソジジィとかなんて言ってた?」
「『体調管理して戻ってきなさい』だとよ。双葉、お前が戻ってくる前提で話してたぞ」
「誰が戻るかバァアアアアアアアアアアカアアアアアアアアア!!」
中指を立てながら俺は叫ぶ。
アホか!! 誰が戻るかボケぇ!! あんな修行と言う名の拷問してられっかぁ!!
死ぬよ!? というか倒れた八割方、あそこで無茶してたせいだろ!?
「お前がそこまで嫌うとか……まぁ、わからなくもないがな」
「絶対に戻らないからな!! ……あぁ、そうだ。イチ兄たちの修行はどうなんだよ」
「ん? あぁ、イッセーたちなら順調だよ。俺が考案した修行をしてるよ、ちと小猫が張り切りすぎて倒れかけたそうだがな」
「大丈夫なんですか!?」
あの小猫がそんなに!? 何か考え込んでたし、あいつなりに何か考えてたんだろうな。
だがアザゼルおじさんは苦笑しながら、俺にツッコむ。
「お前ほど重傷じゃねえよ。というかお前は反省しろよ? 黄金騎士が倒れたとか冥界だとトップニュースになるからな、連日お前についてのニュースがやってるんだから」
うぐぅっと俺は痛いところを付かれて押し黙る。
実はリアス姉さんにすら伝えられず、もちろん魔王さまにも信用できるサーゼクスさん以外には伝えていないレベルだ。
ここの医師たちだって、サーゼクスさんが信用した医師やナースたちばかり、運び出すときも厳重に厳重を重ねてバレないように幻影魔術使ったからな。一応、バレた時用に脱出の転移魔法陣まで用意した徹底ぶり。
病院慰問と評してやってきたサーゼクスさんに怒られたもんだ。
しっかりと怒る姿は魔王さまでしたよ、ええ。
「うぅ、それについては申し訳ないと」
「全く、お前は基本的なところは父親譲りなのに、根っこは母親そっくりだ。アイツもよく書類作業で、皆の分を請け負ってよく倒れてたからな。それでいて誰にも辛いとは言わねえもんだからバラキエルがよく怒ってたもんだ」
そ、そうなのか? てか母さんって文官だったのかな?
俺はそう聞くとアザゼルおじさんはソファに寝っ転がりながら言った。
「アイツはバリバリの戦闘要員だよ。ぶっちゃけるとウチで最強だった」
「嘘ぉ!? 俺の記憶だとそこまでの人だとは覚えてないんですけど!?」
「そりゃ、基本的な力以外は全部封印してたからな。だからお前の両親は人間界に隠れ住めたんだぜ?」
あぁ、それもそうか。
そりゃ力をそのままなら隠しててもバレるときはバレるからな。俺の魔力みたいに、奥底に眠ってるとバレないらしいが。
「文武両道って言えるかもな。ぶっちゃけるとアイツが抜けた時どうしようか迷ったもんだ」
「……母さんは後悔しなかったんですか? 組織を抜けて、追撃されるとか」
「後悔はあったさ。実際、あの時アイツを慕ってた連中は皆、裏切られたと敵意を剥き出しにしたからな。そして俺がその足で探し回ったんだがな」
組織のトップがなにしてんじゃぁ!! と言いたいが、アザゼルおじさんじゃなきゃ、即戦闘待ったなしだからだろうしな。
てか人間界は大丈夫なのだろうか、堕天使のトップが気軽に出歩いてて……いや、今のほうがヤバイか。ウチの学校とか魔境の一言で片付かないほどカオスだし、将来的に有名な妖怪や人外の見本市みたいになるんじゃないかな? 笑えねえよ。
「あいつと再開した時、苦労したもんだ。あいつらろくに力ねえのに立ち向かってきてなぁ」
「……いつの話ですか、それ」
「ちょうどあれから数百年経ったときだっけな」
途方のない時間に思えるが、それこそ世界の創生の時から生きてるアザゼルおじさんにとっちゃ短い時間なんじゃないかなと思うな。
にしても数百年逃げ続けられたウチの両親すげえな。
「まぁ、そっからちょくちょく遊びに行くようになったんだがな……なぁ、双葉、正直に言ってくれ。―――――俺を憎んでるか?」
「――――」
悲しそうで、それでいて全てを受け入れるように笑うアザゼルおじさんの顔に口を閉じる。
俺は息を吐きながら、天井を見つめて目を閉じる。
思い出すのは、あの日。
俺と朱乃ちゃんが別れて、朱璃さんが死んでしまった日でもあり、俺を庇ったせいで両親が死んでしまった日。
あの時、魔戒剣に突き刺される両親を思い出して、俺ははっきりと言う。
「恨んでないよ。恨むって言えば、あの時何も出来ずに泣きじゃくってってた俺を恨むよ」
「…………言葉で言っても信じられねえよな。でも言わせてくれ、すまなかった」
俺はその言葉に顔を歪めてしまう。
違うんだよ、おじさん。おじさんは悪くないんだ……むしろ、あの日両親が死んでしまったのは俺のせいなんだから。
父さんも母さんも弱くはない。だけど一方的に殺されたのは
呀は確かに憎い、殺したいほど俺は恨んでいる。
でも一番、憎いのは俺なんだ。憎くて汚らしくて殺してやりたいのは紛れもない自分自身なんだよ、おじさん。
だから、俺は――――。
「双葉、お前がどう思おうと俺にはなんにも言えない。だがな、命を粗末にすんじゃねえ」
いつの間にか近寄っていたアザゼルおじさんは俺の肩を力強く握りしめる。
「お前の命を救ったのは両親だ。お前に死んでほしくないから、お前に生きていてほしいかったからお前を命がけで助けたんだ。お前の命には二人の命が宿ってんだよ、だから生き続けろ。どんなに倒れても、どんなに傷ついても生き続けろ、お前にはそうしなきゃいけない
「
『アザゼルの言うとおりだな、金輪際あぁいう無茶な修行はやめろ……俺の魔力補給源が無くなる』
ザルバの一言に噴き出してしまう。
そこは嘘でもお前が相棒だからとか言えよ。
『お前はまず精神を安定させることを第一に考えろ。牙狼の鎧を完全なものにしてから悩め、長生きするんだろう?』
「まっ、双葉も反省してるから良いだろ……あっ、そうだ双葉。お前、明日退院していいってさ」
「本当?」
「ホントのホントだ。全く、病院の医者が本気でお前の体調べたがってたよ、どんな回復速度だってな」
アザゼルおじさんがため息混じりに言うが、自分でも不安になるほどの回復速度だよな、ホント。魔力の恩恵つっても限度があるし、やっぱ親から受け継いだ体質なのかもな。
「さてと、退院したら行ってほしい場所がある。あぁ、魔戒騎士とかレーティングゲーム関連のことじゃない」
アザゼルおじさんは何故か、悪戯が成功した子供のように笑いながら俺を見る。
そして口を開いて、こう言った。
「ちょっと孤児院行くぞ」
****
そして翌日、退院した俺はアザゼルおじさんに連れられてルシファードを歩いた。
ちなみに、俺とアザゼルおじさんは顔と服装を変えている。
理由はアザゼルおじさんと俺が有名すぎるのと、さすがに和平をしたとしてもアザゼルおじさんは堕天使の総督様、そんなのが都市部を普通に歩けるわけがないし何よりもサーゼクスさんたちがブチ切れるだろう。
さてルシファードの町並みは正直に言うと、以前ソーナ先輩と行った東京とそう大差がない。
人々が歩き、派手な広告と高いビル。違う点を挙げれば、電気ではなく魔力を使っている点とか悪魔たちが羽を使って自由に飛んでいる点だろうか。
それ以外はほとんど大都会と差異はない。
「どうだ、双葉? ルシファードは」
「思ってたよりも普通かなぁって」
俺の一言にアザゼルおじさんは苦笑する。
あぁ、そうそうザルバは先に番犬所に送っておいた。さすがにザルバは隠しきれないし、そこから俺が黄金騎士だとバレる可能性もある。さすがに魔戒剣は持ってるがな。
「普通、まぁそれもそうか。ここ最近、ルシファードは人間界を参考にしてどんどん発展してるからな」
「あぁ、サーゼ……魔王さまが視察したのもそういう」
危なくサーゼクスさんと言いかけた。
周囲は俺達のことを田舎から出てきた甥っ子を案内する叔父さんと見てくれているが、流石にこんな場所で魔王の名前を呼んだら注目されるだろう。
なるべく目立たないように、と事前に連絡したサーゼクスさんに言われているんだ。
本当なら目的の孤児院まで転移していくつもりだったが、アザゼルおじさんが「どうせなら歩いていこうぜ」とか言ってサーゼクスさんが苦虫潰したような顔をしていた。
下手に護衛も付けられないらしいからな。幾ら、堕天使と悪魔、そして天使が和解したと言っても昔から戦い続けていた奴らをそう簡単に信用できるか! と言う人達はいるらしい。
サーゼクスさんは最後まで反対したが、「双葉に冥界を見せてやりたいんだよ」と言うと渋々了承してくれた。一応、姿は見えないがサーゼクスさんの眷属さんが気づかれないように張り付いているらしいが……うん、全然わからねえや。
「にしても、こんな都市部にあいつの孤児院建てちゃっていいんですか?」
「ここは旧ルシファーがいたとされる冥界の旧首都だ。防衛設備もそうだが、魔王のお膝元ってのが一番の決めてだっただろうな。まぁ、ここじゃなくてもうちょい先の森の中なんだが」
なるほどなーと俺は感心しながら、ルシファードの町並みに目を移したが……羽とか色々生えてないとホント人間そっくりで見分けがつかないな。前に来たときは列車からの風景だったから細部まで見えなかったが、携帯みたいなので通話してたりしてる。
こうしてみると悪魔と人間の違いってなんだろうなぁとふと考えてしまう。
そうして考え事をしながら歩いていると、人々の喧騒から離れて町外れまで歩いていた。
さっきまでの近代風の景観は無くなり、緑が生い茂る森のような場所まで来ていた。
「……つ、疲れた」
「おいおい、情けないぞ若いの」
こちとらぶっ倒れて本調子じゃないんだよ!! とおじさんに講義しようとしたが、やめた。
森の入口付近、そこに一軒の家が立っていた。
表札には「アルトリア」と書いており、家の中からは複数の子供達と怒っている大人の声が聞こえた。
「……あいつ、隠す気あるんですか?」
「いや、この名前じゃなきゃ嫌だって言ってなぁ。あいつもどんだけゾッコンなんだよって話だ」
揃ってため息を付きながら、俺達は表札の横に設置されているインターホンを鳴らした。
****
「……笑いたければ笑え」
「……」
「クックックック……アッハッハッハ!! 無理だ! もう耐えきれねえ!」
我慢できなかったのか、腹を抱えながらゲラゲラと笑うおじさんを見て、対面に座っている人物の機嫌がさらに下がっていく。
かくいう俺も顔がひきつっているのだがしょうがないだろう。
だって、あのコカビエルが顔をラクガキされて髪の毛ボサボサになってれば笑うしかない。
「屈辱だ、どんな罰でも受けると言ったが……殺せ、いっそ殺せ」
「に、似合ってるぞお前。クハハ!!」
「おじさん笑いすぎ。にしても順調そうじゃんコカビエル」
「何処がだ!! あと今の俺はその名を捨てて、『アル』と名乗っている」
どんだけアルトリアさん好きなんだよこいつは。
俺はため息を付きながら、後ろをちらりと見ると何人かの子どもたちがこちらの様子を伺っていた。おー、結構いるんだな。
「んじゃ、アル。こっからは真面目な話をしようか、どうよ運営は」
「問題はない……はずだ。きっちり一日の記録を付け、帳簿も提出、あとは子どもたちの写真もな」
すげーこっちを睨んでいるが仕事はきっちりやってんのな、コイツ。
まぁ、愛した人間のため何百年も時間を使ってるから割りと細かいやつなのかもしれない。
俺が言い出したこととは言え、この惨状を見ると面白……申し訳ない気持ちになるな。
「兵藤双葉、思ったことを口に出してみろ」
「ナニモオモッテナイヨー」
目をそらしながら、こちらに詰め寄る元堕天使の大幹部の追求から逃れる。
数ヶ月前、コイツと命のやり取りをしてたとは信じられないと自分でも思う。
あの戦いで俺は多くのものを得たが、コイツは何もかも失った。
そのことに俺は同情もしないし、後悔はない。ただコイツ自身はどう思っているのか、それを聞いてみたいなとずっと思っていた。
「……ふぅ、俺は存分に笑ったんで外でガキどもと遊んでおいてやるよ」
「えっ、ちょ!? おじさん!」
じゃあーなー! と元気よく、扉を蹴り飛ばし様子を伺っていた子どもたちを床に転がすと全員を抱えて、外に走り去ってしまった。
俺とコカビエル……いいや、アルか。アルが唖然としながら蹴り開けられた扉を見つめた。
嫌な沈黙が続く。
ちゃうねん、話したいけど話すキッカケが無いんだよ。コイツと俺は敵同士だったし、最後は改心したけどどの面下げて会いに来たとか言われかねないしさ。
そう俺が口を開くのを躊躇していると、アルが目を伏せながら切り出してきた。
「その、どうだ……最近は」
「白龍皇とか暗黒騎士とかに襲撃されたよ」
「……グレモリーの眷属と貴様は呪われているのか?」
「襲撃してきたてめえが言っても嫌味にしか聞こえねえよ」
頭を抱えながら、俺は机に突っ伏す。
ホントなんなんだよ。神滅具とか堕天使とか上級悪魔とか暗黒騎士とか、俺やイチ兄が何したってんだ。
「ドラゴンは力を良くも悪くも集める。そして黄金騎士は生涯をかけて、世界と人々のために戦い続ける存在だ……平穏なぞ求められるものではないな」
「畜生、俺の人生設計が……」
「恨むならその運命を恨むんだな。にしてもこの俺が孤児院を経営するとはな」
天井を見上げながらアルは自嘲気味に笑う。
突っ伏しながら見たので表情は見えないが、嫌がっている様子は見られない。
「……なぁ、本当に俺を殺さないのか?」
「しつこいぞ、簡単に死なせてアルトリアさんに会わせるわけねえだろうが」
「ふっ、俺は彼女とは会えんよ。この手は罪を犯しすぎた」
再び目を伏せ、手を握るアルを見て俺は胸の奥に微かな痛みを感じた。
……元はと言えば、父さんが引き起こした因果だ。仕方ないとは言え、コイツにとっての光だったアルトリアさんを奪ったのは牙狼だ。
謝る気はない、だけど考えてしまうんだ。もしかしたら別の方法があったんじゃないかってさ。
「悩むな、黄金騎士。お前は悪である俺を倒した、ただそれだけの話だろう? 敗者にこれ以上情けをかけるな」
「だが……」
「くどいぞ」
こちらを射殺すような視線に、俺はビクリと体を震わせる。
腐っても堕天使の大幹部ってわけだ。封印が解かれて本気になったら今の俺じゃ太刀打ち出来ないんだろうな。
……もっと、強くならないとな。
「……何を焦っている」
視線を緩めて、アルは俺の心情を見透かすようにコチラを見てきた。
俺は一瞬だけ視線を外してから、目を見据えて答えた。
「強く、なりたいんだ。誰にも負けない、俺のそばにいる人達を守れるだけの強さが欲しい」
皆の顔が浮かんでは消える。
そうだ、俺は牙狼なんだ……皆が守れなかきゃ、牙狼どころか魔戒騎士失格だ。
強く、強くなるんだ。そのためなら俺の体なんて……。
「なぁ、黄金騎士。失敗した俺からの忠告だ……そのままなら、貴様は近いうちに破滅するぞ。それにその体、人の身もボロボロだろう」
「……わかるのか」
「わかるどころか、全身の魔力の巡りが悪ければ誰でも気づく」
ため息をしながら言われると言い返せない。
やっぱわかるやつにはわかっちまうんだな。
「貴様の力は通常でも十分だろう、何故そこまで――――」
「足りないんだよッ!! こんなんじゃ、暗黒騎士に! あの化物には勝てない!!」
堰を切ったように、俺の口から大声が出る。
あぁ、そうだ。足りないんだよ、こんなんじゃ足りないもっともっともっと強くならなきゃ誰も守れない。また父さんや母さんのときのように誰も守れない。
あの日から、記憶が戻ってからずっと見る夢だ。
あの夜、二人が死んだときの夢が戒めのようにずっと見せられるんだ。
たまにそれが朱乃ちゃんだったり、イチ兄だったり他の大切な人たちに入れ替わったりする。
「あいつは俺を狙ってくるッ! その時、力が足りませんでしたじゃ話にならないんだよッ!!」
「……」
肩で息をしながら、俺は震える体を抑えつけるように抱きしめる。
怖い、怖いんだ……守りきれなかったと思うと怖くて怖くてしょうがないんだよ。
そんな俺の様子を見かねたのか、アルはため息を付きながら静かに声を出した。
「今のままでは誰も守れないだろうな」
「ッ!? ……分かってんだよ、んなもんわかってる」
「分かってはいない。黄金騎士、いや双葉、今の気持ちでは貴様は牙狼に黄金を取り戻すことは出来ないだろう」
黄金を取り戻す、か。
取り戻したってどうなるっていうんだよ、今の状態でも使いこなすのがやっとなのに……。
「気をしっかりと持て、貴様は魔戒騎士なのだろう? こんな場所で、こんな俺に弱音は吐くな」
「……だな」
自重するように笑いながら、俺は席を立った。
これ以上話をするとまたボロが出ちまいそうだ。思った以上に精神がボロボロだなぁ、俺は。
そのまま扉に手をかけた時、アルから言葉が発せられた。
「俺には言う資格がないだろうが、これだけは言わせろ。……貴様がこれからも牙狼で居続けるなら、その気持ちとケリをつけろ。出来ないとは言わせないぞ、お前は俺に勝った男だ」
「……」
その言葉に胸が疼いた気がした。
だが俺は返す言葉が出てこず、そのまま部屋から退出した。
**三人称視点**
双葉が部屋から出ていくのを見送った後、アルは何度めかわからないため息を付きながら背後に声をかけた。
「いい加減出てきたらどうだ、アザゼル」
「分かっちまうもんかね」
アルの背後の空間が、まるで本をめくったように開きその中から外で子どもたちと遊んでいるはずのアザゼルが出てきた。
実は最初から潜んでいて、双葉を驚かせようとしていたのだが双葉の必死な表情に気圧されて出てこようにも出てこれなかったのだった。
アザゼルはポリポリと頭を掻きながら話しだした。
「……あそこまで追い詰められているなんてな」
「アザゼル、警告しておくぞ。あのままだと双葉は――堕ちるぞ」
真剣な表情で呟くアルに、アザゼルは頷く。
堕ちる、つまりところ心滅しかねないとアルはそうアザゼルに警告したのだ。
前大戦中、追い詰められた何人かの魔戒騎士が心滅をしてでまで仲間を助けようとしたが……その時の惨状は酷いものであったことはアザゼルもアルも覚えている。
「させるかってんだよ。じゃないとあいつらに会わせる顔がねえ」
「……アザゼル、貴様では無理だ」
アルははっきりと口にする。
だがアザゼルはさも当然のように頷いた。
「……かもな。結局、俺は双葉を、双牙を戦いから引き離してやれなかった。あいつが悩んでいるのにもなんも出来ねえ、だけどあいつには仲間がいる。アイツを想い、アイツを信頼している仲間がよ」
「仲間、か。だが、万が一のときはどうする? アザゼル」
アルの言葉に、アザゼルは一瞬だけ言葉をつまらせ、吐き捨てるように口に出した。
「――――その時は俺がケリをつける。それが、俺のケジメだ」
ちゃうねん、もうちょい子供とキャッキャウフフさせるつもりだったのになんでこんな暗いねん。まぁ、六巻部分まで双葉が吹っ切れることはないですとここに明言しておきます。
それでは次回はまた近いうちに。