「行かせてください!!」
「馬鹿言ってんじゃねえ! 死にかけただろうが!」
「だからってアーシアをあのままにしてたらろくな事にならないだろ!?」
何年ぶりだろうか、俺とイチ兄は言い争いをしていた。
殴り合いの喧嘩は何度もしたがそれもじゃれあう程度、つばを飛ばしながら本気で怒ることなんてそうはなかった。
だけど我慢できなかった。言葉は通じなくても、あんないい子が、恐ろしさは身にしみているだろうに身内の
あの娘には借りがある。返さなきゃ気がすまないし、今どんな酷い目にあってるかわかったもんじゃない。
そんな俺とイチ兄の口喧嘩を見かねたのだろうリアス先輩が止めに入った。
「やめなさい。言い争いしたって解決しないでしょう?」
「でも!」
「あなたは弱いのよ、ここにいる誰よりも」
――――一番言われたくない一言を言われて、俺は押し黙る。
確かにあの時も俺が逃げるのを遅れたせいでイチ兄も危険に晒した。もしも先輩たちがいなかったら、あのまま壁のオブジェとして新聞の一面を飾っていただろう。
「そんなあなたに何が出来るの? それに彼女は堕天使側、本格的に事を構えるなら……戦争になるわ。あなたはそうなった時、責任が取れる?」
「そ、それは……」
それでも助けたい、というのは俺のエゴだ。
でもそのエゴを押し付けたら迷惑がかかるのはリアス先輩たちだ。一方的に迷惑かけて、それで力を貸せなんておこがましいにも程がある。
そう結論つけ、俺は床にへたり込んだ。
「双葉、俺は……」
「今はやめてくれや、みっともなく泣いちまうよ」
実際、もう目からこぼれているんだがな。
今、優しい言葉かけられたら決壊する。
もしも俺が悪魔だったらと考えない時はない。それでもイチ兄やリアス先輩に止められるんだろうが。
結局、その日は家に帰る気にもなれず部室に泊まることになった。
みんなが気を効かせて一人にしてくれたが、一人ぼっちになると嫌な考えが浮かんで消えなかった。
結局、眠れたのは明け方過ぎての頃だった。
****
「……はぁ」
学校が終わり、俺は荷物をまとめてさっさと帰った。
小猫が心配そうに見るが反応してやれなかった。一言でも昨日助けてくれたことへの感謝の言葉を言うべきなのに、最低な奴だと自分でも思う。
でも自分のことで一杯一杯でどうにもならなかった。
ほんと、最近はどうしたんだろうか。
イチ兄の行動を呆れて、友人たちと遊ぶっていう俺の日常は崩れた。今更全部忘れて、あの金髪の少女を忘れろと言われても無理だ。
休み時間のとき、心配になってきたイチ兄に言われたセリフが合った。
「お前、アーシアって娘が好きなの?」
何故か、隣の小猫が動揺していたがそこはスルーしよう。
正直、わからないというのが本音だ。好きって言えば好きと答えるが男女の仲ではないと断言できる。
言うなれば記憶失って初めて会った俺とイチ兄みたいな感じと答えると、イチ兄は納得してくれた。
唐突だが俺は幼少期の記憶が無い。もう綺麗サッパリだ。
親には事故だと聞いてるが相当ひどかったのか、気づいたら病院のベッドだった。
荒れに荒れた。親の顔すら忘れているのだ、今ですら申し訳ないと思ってるが当時はなんでか恐怖のあまり親や大人と会うのすら拒絶してたことがあった。
そんな時、イチ兄が来んだ。そんでもって開口一番がこれだ。
『大丈夫か! おっぱいあるぞ!』
服にボールでも入れていたのだろう。ブルンブルン震わせながらセクシーポーズ決めて病室に入ってきた子供がそんなことを言ったら正直頭の病院を紹介したくなる。
記憶が無いのに、飛び蹴りしたのは何故なのか今ですらわからない。
この通り、俺がイチ兄に抱いた最初の印象は最悪だった。なのに関わらず、イチ兄は何度も、何度も何度も俺のところに足を運んでくれた。記憶失う前から仲良しだったからか、それとも元来の優しさなのか。
鬱陶しくなって、イチ兄の悪口を散々言って二度と来る気にさせないようにした。
なのに……なんて言ったと思う?
『そんだけ元気ならもう退院出来るよな! サッカーしようぜ!』
……馬鹿だ、馬鹿すぎて脳天気でそれでいて優しすぎる。
この時から俺はイチ兄の弟になった。なんでこんな話したかというと、俺がアーシアという少女に固執するのは当時のイチ兄のこの言葉が原因だと思う。
『なんか放っておけなかった』
まぁ、つまるところこれだけの理由だ。
くだらないと言われたらそこまでだし、ただそれだけの理由で堕天使に喧嘩売ろうとしている俺は、フリードの事を笑えないだろう。
頭のネジが一本どころかほとんど抜けてんじゃねえかなと思う時もある。
「んっ? ……あれ? いつの間に」
だいぶ考えていたのか、商店街まで来ていた。
……そういえば何も食ってなかったことを思い出す。現金なもので腹減りだけは逃れないらしい。腹減ったー、ハラ減ったわーと腹の虫が鳴り出す。
どっかで飯入るかと曲がり角を曲がる。
なんかデジャブを感じる。そういえば昨日、曲がり角を曲がったらアーシアと会ったんだよなぁと思っていたら、目の前にアーシアがいた。
「は?」
「えっ?」
目をパチクリする俺たちは、きっかり十秒後同じタイミングで叫び声を上げた。
****
「美味しい! 美味しいです!」
「そりゃ良かった」
モグモグと天使のような顔で食べているアーシアを見ると自然と顔がほころぶ。
……まぁ、それが油ギッシュなハンバーガーじゃなければ更に良かっただろう。
てか店内の視線がこっち向いててきついッシュ。嬉しかったけど、よく考えれば家に戻ればよかった。シスター+美少女のアーシアと一緒にいればこうなるわな。
とりあえずめし食うかと話になり、近くのハンバーガー屋さんに入った。
初めて入るのか、物珍しそうに店内を見渡すアーシアと物珍しそうにアーシアを見る店内の客と店員さんに俺は苦笑するしか無かった。
そして俺とアーシアは同じものを頼んで今食べている。
「こんなに美味しい物があるなんて……あぁ、主よ感謝します」
いや、それハンバーガーだし多分、
あー、でも戒律で禁じられてたりするんだっけ? そこら辺宗教って面倒くさいと思う。好きなもんを好きなだけ食える日本人というのは恵まれてるんだなぁと思う。
「このポテトもおいしいです!」
「まぁ、ゆっくり食えよ」
さて、なんで俺とアーシアが普通に話しているのかには理由がある。
今朝のことだ。心配になって部室に戻ってきてくれたのか、姫島先輩が来た。
その時、ポツリと俺も翻訳魔法的な奴欲しいなーと言うと、なんかすごいい笑顔で付箋を渡してくれた。なんでも翻訳魔法的なものが篭められているらしく持ってるだけで言語がわかるという、翻訳こん◯ゃく真っ青のものだった。
何に使うんですの? と言われてアーシアともっと話したいと答えた時の姫島先輩のあの形相は暫く忘れそうにない。
女と話すときは基本的に別の女の話は厳禁だとボク思い知った。
そのおかげもあって、アーシアと話せるようになったが、本当に子犬みたいな娘でものっそい癒される。というか俺のあの悩みはなんだったんだろうな。
恥ずかしいわ、今朝に時間が戻るならさっさと寝とけと言いたい。
「にしても、よく逃げてこれたな」
「……隙を見てなんとか。何か準備してたみたいで警備の目が緩かったんです」
さっきまでの笑顔が消えて、暗い顔をする。
だいぶ急いでたからな、まぁ予想通りだ……ちらりと時計を見る。
丁度五時、今から行けば多分オカルト研究部はやっている。やっていなくても旧校舎に隠れていれば時間は多少は稼げるはずだ。
悪魔の総本山的あの学校なら迂闊に手を出せないはずだ。
リアス先輩に心のなかで謝る、結局迷惑かけてしまうが人間である俺が暴走して一人のシスターを連れ去ったという話なら問題はないだろう、多分。
あー、この歳で逃亡者かー、せめて高卒しときたかった。
「あ、あの?」
「大丈夫、見捨てたりしねえから」
そう言って、頭を撫でるとアーシアの目からぽろりと涙が落ちる。
いや、ぽろりどころじゃない。滝になってる、号泣だよ!?
「う、うぇええん…」
「オィイイイイ!? あっ、ちがっ!? あぁ、もう泣き止んでくれよ!」
周りからのテメーなにしてやがんだオーラがヤバイ。
とりあえずハンバーガーのゴミを片付けて未だにグズっているアーシアの手を掴んで店から逃げるように出る。
一体どうしたってんだよ!?
****
ある時、一人の女の子がいました。
少女は親に捨てられた以外は普通の少女でした。
預けられた孤児院が教会を兼任してたことから少女は自然と信仰深い信徒となりました。
ある時、少女に手に癒やしの力が宿りました。
その力を子犬の怪我を治したことを大人に見つかった時、少女は聖女として祭り上げられました。
しかし少女は、もてはやされても決して奢ることはなくただ懸命に使命を全うしていました。
人を癒やしたり、祈ったり、少女は休む暇も無かったのですが神様が与えてくれた力に感謝しました。ただ一つだけ不満があるとするなら友人がいなかったこと。
少女は幸せでした。
あの時までは。
一人の悪魔が怪我をしていたのです。
少女は優しかった、いや優しすぎたのです。
悪魔を見捨てられなかった彼女は、癒やしの力を使い彼を治しました。
そこからでした、彼女の幸せが崩れ去ったのは。
悪魔を治した者として魔女という烙印を押され、理不尽に教会を追い出されました。
聖女ともてはやしていた者たちも彼女に石を投げつけるように魔女と罵りました。誰も助けてはくれませんでした。
寄辺のなかった彼女は堕天使の加護を受けるしか無かったのです。
けれども彼女はそれでも主に対しての祈りをやめることはなかったのです。
だってこれは試練だからです。頑張りが足りなかった彼女への、主からの試練。
そう言って、少女は今も頑張っています。
その少女の名前はアーシア・アルジェント、誰よりも優しく、誰よりも裏切ることも知らない。まるでお伽話に出てくる聖女のような少女のお話。
****
閑散とした公園で俺はアーシアの身の上話を聞いていた。
「……祈りが足りなかったんです。だから主は試練を与えるんです。でも大丈夫です。きっと、きっといつかはって思えれば平気へっちゃらです」
あまりの告白に、言葉を失った。
怒りを爆発させなかったのは、目の前のアーシアの気丈さに心を打たれたからだろうか。
オイ、オイ神様。見てるなら救えってんだよ、お前からの贈り物を本気で信じて、裏切り続けられてもそれでもてめえ信じて頑張ってる子を……。
この子にあげた
「夢だってあるんです。友達をいっぱい作って、本とか、お花とか、パンとか、一緒に――――あうぅ」
もう聞いてられなかった。
涙をこらえて吐き出す彼女の言葉をコレ以上聞いたら俺の方が怒りでどうにかなってしまいそうだった。
ぎゅうっと抱きしめる。優しく、安心できるように。
突然抱きしめられてテンパるアーシアを深くにも可愛いと思ってしまった。
「ふ、双葉さん!?」
「もういいよ、もういいんだよ」
きっと俺なんかよりも言うべき人がいたはずなんだ。
でも誰も言わなくて、誰も純粋だったこの子はずっと、ずぅううっと頑張ってしまった。
だから、開放しなきゃならない。
「――――よく、頑張ったね」
「あっ、あぁああ……」
何かが決壊していくように、アーシアの顔が歪み俺にしがみつき、今まで溜まっているものを吐き出すように泣いた。
なぁ、神様……てめえがどこにいるのかとか、救いはどうかはもう知らねえよ。
この子は俺が救う。神様が救えないってのなら俺が救ってやる。
そのためだったら何でもする、何でもだ。
「ご、ごめんなさい、服が……」
「もう大丈夫か?」
数分後、まだグズっているが落ち着いたらしく、俺の胸から離れる。
……んーと服はダメだこりゃ、一回クリーニング出さなきゃなぁ、これ。うわぉう、鼻水とかでぐちゃぐちゃだわ。まぁ、美少女のものなら……やっぱ無理っす、さすがに許容できん。
「ごめんなさい、私。迷惑でしたよね?」
こちらの顔色を伺う彼女を見るとどう生きてきたのか分かってしまう。
それだけ信頼出来ない人たちと過ごしてきたということだ。
「迷惑なもんか。迷惑なら、言葉通じない時にわざわざ助けないって」
「ふふっ、ですよね。あの時の英語本当に頑張ってるのが分かって」
あーあーあーきーこーえーなーいー、ヘッタクソで悪かったな。
クスクスと笑うアーシアを見るともう大丈夫だと確信できる……逃げようと思ったが計画変更だ。
「リアス先輩……悪魔の人たちに保護してもらおう」
「だ、大丈夫ですか?」
「あの腐れ神父のとこよりも一千億倍マシだから」
無下にはしないだろうが、頭は抱えるのは間違いない。
……そんでもって俺は正式にオカルト研究部に入部して雑用でもしよう、うん。てか学校辞めて働きに出ようかな、アーシアを学校に入れてあげないと。
「で、でも」
「でももかかしもない。もうちょい人頼ってもいいんだよ、アーシアは」
まぁ、頼り過ぎもよくないが今回は相手が相手だ。
いつぞや言ってたとおり、命を対価にされても俺は喜んで差し出す。
「じゃあ行くか……ん?」
いざ行こうと思って、俺は今更ながら気づいた。
静かだ、いや静かすぎる。
いくら平日でここが町外れの公園だとしても先っから誰も通らないのはおかしい。
「しまった……アーシアすぐに逃げる――――ッ!!!」
次の瞬間、俺の肩に光の槍が突き刺さった。
「双葉さん!!」
吹っ飛んだ、と思った瞬間には地面に転がっていた。
もしも偶然体を傾けていなかったら今頃顔面にクリーンヒットしていたと思う。
まぁ、肩でもヤバイんだが……アカン、血がドバドバ出てる。
「治療します!!」
アーシアの癒やしの力が流れ込み、傷を癒やしてくれるがいかんせん普通に致命傷だ、昨日みたいにすぐには治らない。
意識が持ってかれなかったのは偶然と言っても良い。
「しぶといわね、人間」
「おう、鳥野郎か」
そこにいたのはイチ兄の元彼女、では無く堕天使だった。
そういえばフリードが名前みたいのを言ってた気がするが……なんだっけな。
「レイナーレ様っ!」
「あぁ、そうそうそんな名前」
「黙っててくれるかしら、低俗な人間風情が」
言われんでも止めたいが、意外と俺は口がゆるいらしい。
スラスラと出てくる煽りの言葉は、俺って早死するだろうなぁと予感させる。というかそなった結果がコレだけどさ。
というか元天使だろうに低俗とか言って……あぁ、だから堕天したのか。
「戻りなさい、アーシア。あなたが必要なの」
「い、嫌です! もう嫌なんです! あなた達のもとに戻るのは」
「フラれたな、アガッ!!」
いつの間にか接近していたレイナーレに首を捕まれ、片手で持ち上げられる。
あっべーわ、苦しくて意識が……。
「黙りなさいと言っている。……そうね、アーシア。あなたが戻るならコイツを見逃してあげていいわ」
せこい手だ。だが優しいアーシアには効果てきめんだろうなクソッタレが。
震えながら、何かを決める目をしたアーシアは一歩前に出る。
「そう、それでいいわ。でもコイツは許すわけにはいかないわ」
「ゴガッ……グッ」
「は、離してください!! お願いします!! もう逃げません! 逆らいません! だから、だからその人だけは助けて下さい!!」
そんな必死のアーシアの懇願を聞いているレイナーレは、体を震わせている。
……堕天した理由がすげーわかる、コイツ滅茶苦茶性格が悪い。
「いい表情よ、アーシア。コイツを縊り殺せばもっといい表情になるのかしら」
「いやぁ! いやぁあああああああああ!!」
ホント、吐き気がするほど、の、いい趣味、してやがる。
あっ、ヤバイ……ホント、息が……アーシ、ア……イ、チ兄……。
「その手を離しなさい、堕天使」
「ッ!?」
誰かの声が聞こえ、一気に首絞めから開放される。何かに怯えたのかレイナーレに投げ出された俺は地面スレスレのところで誰かにキャッチされる。
ボーとした頭だと誰だか、分からない……が何度か咳をして息が落ち着いてくると見えてきた。ホント、いつもタイミングがいいな。
「イチ、兄……」
**一誠視点**
「あら、イッセーくん生きてたのね」
「……あぁ」
腸が煮えくり返るってのはこういうことを言うんだろうな。
あの娘が彼女だったとか、俺を殺したとかどうでもいい。
俺の弟を殺しかけた、それだけでぶん殴るには十分な理由だ。
「やれるか、ドライグ」
『あぁ、相棒、相当キテるな』
昨日出会った相棒にそして指摘されるが……キテはいない、ただぶちまけるだけだ。
俺は天に向かって、叫ぶ。
「
俺の左腕に籠手が装着される。
俺の
当たり前か、ドライグの言う通りなら神や魔王すら屠れる一品らしいしな。
「……
ほとんど反射だったのか、光の槍が投げられる。
けれどもほとんど力が入ってないそれを強引に弾き飛ばす。
それを見たレイナーレは驚愕する姿を見て……少しすっきりする。
『なんだこの程度か、まだまだ倍加の途中だったってのに』
ドライグ、この程度に殺された俺への嫌味かよ。
『いいや……まぁ、これから強くなっていけばいいさ。なぁ、相棒』
あぁ、俺はレイナーレを睨みながら構える。
レイナーレの懐にはアーシアちゃんがいる。下手なことはされないだろうが今の俺じゃ巻き込んじまう。
『優しいな、相棒は。いつもの奴らならもろとも吹き飛ばしてたぞ』
「弟が守るってもんを兄貴が手出しちゃそりゃ駄目だろ」
「低級悪魔がここまでになるとは……」
「レイナーレ、何度目かしらね、あなたと会うのは」
部長が呆れたようにつぶやくが、こっちは二度と見たくない気持ちでいっぱいだ。
「グレモリー、何度邪魔をすればッ!!」
「元々あなた達が蒔いた種でしょうに。よかったわ、朱乃とか連れてこなくて……あなた一欠片も残さず消滅させられてたわよ」
……確かに、姫島先輩と子猫ちゃんの苛立ちようは凄かったもんなぁ。あの後、二人して眠ったかどうか見に行ってたし。弟の春を喜んでいいのやら泣いて良いのやら。
てか羨ましい!! 特に姫島先輩なんてあのおっぱいが、おっぱいが!!
『はぁ、今代の相棒は一際性欲が強いな』
ドライグ! 男としておっぱいに興味持つのは当たり前のことだ! 双葉も目覚めるはずだったが、あいつは尻派に回ったがな!
『どうでもいいわ。それよりも相手さん逃げるようだぞ』
「逃がす……部長!?」
部長に止められる。
なんでだよ!! 今やればあのくらいなら……。
「今は見逃すわ。そちらのほうがあなたもいいでしょう?」
「……後悔するわよ、私を見逃したことを!」
そんな捨て台詞をはいて、レイナーレは空へ飛んでいった。
「……まだ確証がないの。あいつらが勝手に動いたっていう確証さえあればすぐにでも潰せるわ」
そうか、今は正当防衛でまかり通るがあいつらを叩きのめすっていうには大義名分が必要なのか。
『面倒だな』
「でもそれがルールよ。まぁどこかのドラゴンはそれを無視したために封印されちゃったけど」
ドライグが舌打ちするが一体何やったんだよ、お前ホント。
『後で話す……それよりも弟は大丈夫か?』
「そうだ、双葉!!」
地面に寝かせたまんまでろくな処置してないが大丈夫だろうか?
「無事よ……とりあえず部室に戻りましょうか」
部長はそういうと魔法陣を展開する。
けれど、双葉になんて言えばいいんだろうか。
アーシアちゃんのことも、ドライグのことも。
****
「一人でも行く……」
「そんなボロボロの体でどうするっていうのよ!」
姫島先輩に最低限の治療はしてもらった。
体は動くし、頭は回る。あとは度胸だけだ。
「……自殺させるために治療したわけじゃないんですよ?」
「分かってますよ。でも行かなきゃ、アーシアが泣いてる」
グラっと体がふらつき、机に激突しながら床にうずくまる。
か、肩打った……アカン、糞痛い。
姫島先輩が起こしてくれるが、離してくれない。
「双葉、頭冷やせよ。別に助けに行かないってわけじゃない」
「……イチ兄、『今』、アーシアは泣いてるんだよ。だったら行くしかねえだろ」
最悪、腕一本置いてっても行くしか無い。
それにアーシアが言ってたことが気になる。近日中に何かが起きる、その何が起こってからじゃ遅い。アーシアのためでもあり、リアス先輩たちのためにもなると思う。
「ふぅ……朱乃、縛って」
「はぁい、うふふふ」
えっ? と思った時には椅子に縛り付けられていた。
いや、ポルナレフもびっくりだよ、何この早業……てか!!
「グギギギギ!! 外してください!!」
「頭を冷やしなさい。今自分に何が出来るか、よく考えるのよ」
そう言うとリアス先輩と姫島先輩が部室から出て行く。
……何が、出来るか、か。
とりあえずはだ。
「この紐外すんだよぉおおおおお!!」
うぉおおおおっ! と縄抜けしようとガタンガタンと揺らす。
「あ、あの双葉君、僕達いるの忘れないでね?」
「木場先輩、止めるなら押し通りますよ」
まぁ、その前に木刀とかでぶん殴られるのがオチだが。
子猫はマイペースにおかしくを食っているし、イチ兄は……なんか神器に封印されているドラゴン? とかそんなのと話している。
緊張感ないなぁもう……あれ?
「うぴゃぁ!?」
突然縄が外れて、床にヘッドスライディングする。
な、何が起きたんだ?
「……そういうことだよ」
「へっ?」
何のことかさっぱりわからないので首をかしげると、木場先輩が笑顔で答える。
うわぁ、憎たらしいほどの爽やかスマイル。
「つまり、君は行っていいってことさ。本気で部長が止めるなら監禁くらいはするよ?」
「なにそれ怖い」
ガタガタと震えるが、なんか実感こもってるなぁ……意外と木場先輩ってやっちゃう系なのかな。
そう思っているとちょいちょいっと肩を叩かれる。
「これ」
「……姫島先輩の付箋?」
自動翻訳の付箋と同じやつだが色と書かれている模様が違う。
なんじゃらほい?
「身体強化と痛み止めだって」
「えっ」
「でも身体強化も痛み止めも気休め。最後は根性って言ってた」
……あぁ、本当に悪魔なのかと思う。
実は天使ですとか言われても俺信じるよ、特にリアス先輩。姫島先輩は……まぁ、うん。いや、小悪魔って感じかなぁ。
にしても最後は根性ってのは昔のアニメみたいだなぁ。
とりあえず受け取ると、既に効果が出ているのか痛みが段々と引いていくのと体が軽くなる。
「無理に動かした分、あとが地獄とも言われてるから、気をつけて」
「……まぁ、一生分の無茶をこれからするからな」
今からやろうとすることはただの自殺だ。
どうあがいても武器もなし、体はボロボロ、気休めの身体強化ではアーシアを助けることなんて出来ないだろう。
だけど、何もしないよりなにかやって死にたいと思う。
「まっ、一人では行かせないけどな」
「ちょ、ちょっとイチ兄!?」
「……しょうがないよね、一誠くんが行くなら僕も行くしか無い。仲間だもの」
「木場先輩まで! 何言ってるんですか、これは俺のワガママで」
「双葉のそのワガママで救われた人は沢山いる」
「は?」
いつの間にか小猫まで行く気満々である。……救われた? はて? 子猫は救ったが……
ふと、小猫の髪の色を見る。白い、まるであの時の子猫のように。
いやいやいやいやいや、なんで名前から連想してんだ俺は、あり得ないっての。
「今度は、私が助ける番」
「だってよ、双葉……どうする?」
どうするって言うか……とりあえず、三人に頭を下げる。
「俺のワガママのために堕天使と戦争しに行ってください!」
**アーシア視点**
主よ、感謝します。
「もうすぐ、もうすぐよ!」
この世に私を生まれることを許してくれたことを。
「やっと手に入る」
私に癒やしの力をくださったことを。
「これでアザゼル様やシェムハザ様の役に立てる!!」
でも一つだけ、ワガママを言ってもよろしいでしょうか。
「感謝しなさい、あなたの神器は堕天使を……いえ、世界をより良い形に変えるために作られるの!」
あの人に、もう一度会わせて欲しいというのは、過ぎた願いでしょうか?
アーシアルート確定ッッ!! なわけねえだろぉい!
とりあえずこの一章のヒロインは間違いなくアーシアです。止まらねえ辞められねえ、次回は戦闘シーンモリモリでイクゾー!!(デンデンデデンカーン)