ハイスクールD×D 黄金騎士を受け継ぐもの   作:相感

52 / 54
ぽちっとぽちっとずむずむぃやーん♪


つついて見える宇宙もある

「双葉、小猫ちゃんの場所はわかるのか」

「伊達に修行はしてねえよ、ばっちし確認済みだ!!」

 

 探査魔法で小猫の場所は把握済みだ。

 今、俺達はエレベーターか降りて、小猫の後を追っている。

 あの後、リアス姉さんが俺の言葉を聞き、流石に自分では処理できないと考えたのか。リアス姉さんはサーゼクスさんに事情を話に行った。

 俺達は確認も兼ねて追跡中だ。

 これが杞憂であればいい、だが相手があのクロだとすれば禍の団によるテロが進行中かもしれない。クロのことだ、わざわざ妹を巻き込むとは思えない。

 いや、もしかしたらクロのやつは小猫のことを……考えるのは後だ、今は小猫を追うことだけを考えるんだ。

 ホテルの明かりから離れ、俺達は暗い森の中を走る。

 お互いこの程度の森なら慣れているのか、ひょいひょい木などを避けながら進んでいく。

 特訓のおかげか、ちょっとは感謝するぜ、ネムレス!

 そうして進むこと数分、俺達は手頃な木の陰に隠れて視認した小猫の様子を伺う。

 そこは森の中でも少し開けた場所だった。月明かりが小猫を照らし、幻想的な風景にする。

 

「こうして二人きりで会うのって久しぶりじゃない? ねえ、白音」

「ッ……やっぱり、姉さまだったんですね」

 

 探知魔法を切っていたせいか、突然現れたクロに反応できなかった。

 イチ兄が飛び出そうとするが、俺はその肩を掴んで無理やり抑えつける。

 

「双葉ッ! わかってるだろ、あの人がどれだけ危険かって!」

「わかってる、だが俺達の役目は偵察だ。それにここで飛び出したってクロには勝ち目がない」

 

 そう勝ち目がないんだ。

 今の俺には武器がないし、そもそもイチ兄は実力が足りない。

 二人ならクロ一人であればなんとか善戦は出来るだろうがそこまでだ。

 もう一人、いや伏兵がいないとは限らない。そうであったら、俺たちは全滅する。

 イチ兄も分かってくれたのか、また静かにクロと小猫の会話を聞き始める。

 

「健気な妹を持つお姉ちゃんは感激にゃ。一匹黒猫を紛れ込ませただけで、ここまで来てくれるなんて」

「姉さま、何が目的ですか? もしも双葉だったら、私は」

 

 小猫に猫耳と尻尾が生える。

 猫又モード、俺はネコミミモードと言ってたが正式な名称が決まったらしい。小猫が封じていた猫又の力の一部を開放することによってなるモードらしい。

 その姿を見て、クロは嬉しそうに唇を歪める。

 

「やっとその力を使う気になったのね。お姉ちゃん泣いちゃうにゃー」

「ふざけないでください」

「そう怖い顔しないで。ただ単に白音を見に来ただけ、禍の団も双葉も関係ないわ……でも、気が変わっちゃった」

 

 そこに姿を現したのは古代中国の鎧みたいなのを着た男……美猴だったな。

 マズイ、あの二人ってことはヴァーリもいる可能性が高くなってきやがった!

 

「全く女は怖いねえ。あっ、そこっちに隠れてるやつ出てきな? 俺っちたちみたいな仙術使いにはバレバレだから」

 

 バレたか……あぁ、もうやるしかねえよ、これは。

 俺達は木の陰から飛び出し、小猫の前に庇うように立つ。

 

「イ、 イッセー先輩、双葉? どうしてここに」

「話はあとだ、小猫。なんとか逃げるぞ、安心しろ。リアス姉さんが今、援軍連れてこっち向かってるから」

「……ふーん、逃げれると思ってるの」

 

 クロの目が細くなっていく。

 ……ヤバイ、あの目は危険だわ。というか獲物を狩るときの肉食獣みたいな感じがする。

 まぁいい、あの猿から話を聞き出したほうがいいか。

 

「テロが目的か? クソ猿」

「んにゃ? 黒歌も俺っちもそういう命令は受けてはいないぜぃ? 冥界で待機中で暇だったからこっちに来ただけ、にしても黄金の兄さんも苦労すんねえ、こんな女に目つけられてさ」

「同情するなら止めてくれねえかな?」

 

 ハッハッハ、無理無理と言う風に肩をすくめる猿に殺意が湧いてくるが、あの野郎全く隙がないんだけど。いや、あるっちゃあるけどあからさま過ぎて、どうぞ打ってきて下さいと手招きしてるように見える。

 クロは俺から目を離し、後ろの小猫に目を向ける。

 

「ねえ、白音。こっちに来ない? 悪魔なんて信用ならないのは知ってるでしょう? あなたはきっと後悔する。なら後悔する前にお姉ちゃんのところに来る方が得策にゃ。昔みたいに姉妹二匹で暮らしましょう? あと双葉も入れて」

 

 その表情は本気だった。

 言葉はふざけている部分があったが、クロが小猫を想う気持ちは本当なんだろう。姉としての感情は消えちゃいない。

 俺はちらりと後ろを振り向くと、小猫は頭を抱えて震えていた。

 恐らくは置いて行かれたときを思い出しているんだろうし、仲良かった頃を思い出しているんだろう。

 だけど、震えてるんだ。小猫は……なら、守らねえといけねえだろ!!

 俺とイチ兄はさらに一歩、踏み出し拳を構える。

 

「……」

「おやまぁ、勇ましいことで。だけどいっくら赤龍帝と黄金騎士だからって、俺っちと黒歌に――――」

「なら、俺が加勢しよう」

 

 上空から声がし、火の玉が美猴とクロめがけて飛んでくる。

 二人は驚きつつも、冷静に回避しながらお互いの武器を構える。

 俺達は火の玉が飛んできた方向を見て、顔を明るくする。

 そこにいたのは大きな翼を広げ、威嚇するタンニーンさんだったからだ。

 

「イッセー!! 小猫!! 双葉!!」

「部長!? どうしてここに!」

 

 上空で静止するタンニーンさんの背からリアス姉さんが飛び降りてくる。

 俺達は驚くが、リアス姉さんは笑みを浮かべて俺たちに言う。

 

「お兄さまが念のためと言ってタンニーンを付けてくれたのよ。結果だけ言うなら正解ね、大丈夫? 小猫」

「部長……私は」

「謝罪は後にしろ、どうやら閉じ込められたようだぞ」

 

 ビリッとした感覚が肌をさす。

 周囲に結界を張られたんだろう……恐らくはクロだ。

 

「これ以上呼ばれるとめんどいから、空間を閉じさせてもらったにゃん」

「黒歌、あなたいつの間に空間を操る術を覚えたの?」

 

 リアス姉さんの言葉に、クロは笑顔で答える。

 

「わりかし簡単だったりしたけどにゃ。時間はまだしも、空間は結界術の応用でなんとか。これで邪魔なやつは入ってこれないし、あなた達をころころすればオールオッケイにゃ。あっ、双葉と白音は連れ帰ってにゃんにゃんしよ?」

「……美猴、そうなったら首をかき切って殺してくれや」

「安心しろ、黄金の。俺っちだって男さ、情けくらいはある」

 

 良いやつだわ、敵だけどな。

 一色触発の空気の中、まず最初に動いたのは美猴だった。

 素早い動きで木のてっぺんまで登って、タンニーンさんを睨む。

 

「まっさか元龍王と戦える日が来るなんてな。まいったね、こりゃ、大問題だわ!」

「でも、龍王の首と赤龍帝の首を持っていったらこんなミスなんてちょちょいのにゃんで帳消しにゃ。オーフィスも黙るわ」

「貴様らがいることは既にバレている。援軍が来る前に逃げたほうが得策だと思うが?」

 

 タンニーンさんがそう警告するが、二人はますます笑みを深めてこちらに体を構える。

 あぁ、そうだよな。ヴァーリの仲間何だから根っこの部分は戦闘狂の素養があるんだもんな。

 

「その前に終わらせるさ……筋斗雲ッ!!」

 

 そのまま美猴は黄色い雲に乗ってタンニーンさんと戦闘を初めた。

 上空から激しい戦闘音が響く……ブレスとかこっちに来ないよな?

 

『タンニーンは本気を出さんだろう。本気なら結界の内部がすべて炎に包まれるからな』

「俺って、そんな人に修行付けてもらってたのか……」

「にゃんにゃん、余所見してて平気かしら?」

 

 呆然とするイチ兄だったが、クロの言葉で表情を変える。

 畜生、こちとら三人だってのに勝てる気が全くしない。幾らか魔術や素手でも戦えるが、向こうのほうが戦闘経験も上だし、仙術となら直接拳を交えるのは厳禁だ。

 そんな時だ、今まで後ろにいた小猫が前に出てきた。

 

「姉さま、私は行きますから三人を見逃して下さい」

「バカ言ってんじゃねえ! 小猫ッ!! お前を見捨てるわけが――――」

「このままだと皆死んじゃうッ!!」

 

 カタカタと体を震わせる小猫はそう叫んだ。

 だが、小猫の言葉を否定しきれず、俺は口をつぐんでしまう。

 ……くそっ、情けない。武器がなきゃ俺は何も出来ないのかよ。

 

「小猫、馬鹿な事は言わないで。あなたは私の下僕で眷属なのよ! 勝手は許さないわ!」

「駄目ですッ! 姉さまの力は私が一番よく知ってます。いいえ、仙術を学び始めてから改めて知りました。幾ら、黄金騎士と赤龍帝であっても、幻術と仙術に長ける姉さまを捉えきれるとは思えません」

「そう言うこと……双葉もほしいけど、白音に免じてこの場なら見逃すわ」

 

 リアス姉さんは必死に小猫を抱きしめながら、クロを睨みつけ怒りを露わにする。

 

「ふざけないで!! あなたに置いて行かれた小猫がどんな目にあったか、知らないわけがないでしょう!? そんな奴に私の眷属を渡すもんですか!」

「にゃはははは……冗談も大概にしてくれないかしらね。悪魔なんて欲深い生き物。白音を手放さないのはその潜在能力があってこそ、違うかしら? グレモリー」

「違う、リアス姉さんはそんな悪魔じゃないッ!!」

 

 クロの言葉が許せなくて、俺はその場で叫ぶ。

 そうさ、普通の悪魔ならそうなんだろうよ、でもリアス姉さんは絶対に違うと俺は確信出来るッ!

 

「リアス姉さんの情愛は本物だ! お前に捨てられて、一人ぼっちだった小猫を支えてくれた。それを否定することは俺が許さないッ!」

「双葉……そう、そうよ。私は誓ったのよ! この子に楽しいものを沢山見せるって! この子はあなたが捨てた『白音』じゃない。私の大切な眷属悪魔ッ! リアス・グレモリーの戦車『塔城小猫』よ!」

 

 その言葉を聞いて、イチ兄や小猫は泣いていた。

 正直、俺も歯を食いしばってるけどポロポロと涙が止まんねえよ……畜生、やっぱ良い人だよ、俺の未来の義姉さんは。

 

「行きたくない。行きたくないッ! 私は、黒歌姉さまと一緒に行かないっ! 私は塔城小猫。リアス部長や双葉と一緒に生きていく!」

 

 実質的な絶縁とも取れる発言だっただろうか。

 それを聞いたクロは、すぅっと表情から笑顔を振り払い、一言だけ発した。

 

「じゃあ、死ね」

 

 すーっと薄いモヤのようなものが発生する。

 それは辺り一面どころか森全体を覆うように発生していくが……ッ!?

 

「ぐっ、うぅっ……」

 

 体から力が抜け、膝を付き俺は荒く息をする。

 喉の奥からこみ上げてくるものを耐えきれず、そのまま口から吐き出すとそれは血であった。

 忘れてた、クロには毒霧っていう技があったわ!

 

「双葉!! 部長たちも!?」

 

 よく見ればリアス姉さんと小猫も膝を付き、口元を抑えていた。

 ま、マズイ……指先1つで俺たちを行動不能にしやがった。

 

『双葉、動けそうか!?』

「たりめえだよ、この程度で動かないワケがないだろ」

 

 ザルバの言葉に強がってみせるが、五分も持ちそうにない。

 無理やり体に魔力を流して、体を支えている状態だ。長くは持たないし、このままでは皆死ぬ。

 

「流石、双葉。これ人間、悪魔、妖怪に対してしか効かない毒で、結構薄めたとはいえ動けるなんてさすが未来の旦那様。赤龍帝は……ドラゴンだからかしら?」

「だ、誰が旦那様だこの野郎……う、ごふっ」

「双葉、無茶すんなって!」

 

 あ、アカン、いつもの軽口言ようにも動く度に激痛が走る。

 俺は膝を付きながら、魔力弾をクロに向けて発射する。

 しかしながら、着弾した魔力弾と共にクロの体が霧散すると、霧にまぎれて無数のクロが森の中に現れる。

 

「げ、幻覚か……なら、探査魔法で……ごほっ!」

「無駄無駄、今のあなたじゃ見分けがつかないし、本当に死んじゃうわよ?」

 

 体に毒が回り始めたのか、俺は四つん這いになり自分が吐き出した血の中に倒れ込む。

 ヤバイ、これは本気でヤバイ。

 周りの音がだんだんと聞こえづらくなって……き、た……。

 

 

 

**三人称視点**

 

 

 

「双葉、双葉ッ!!」

 

 血の中に倒れ込み、ピクリとも動かなくなった双葉の体をイッセーは必死に揺さぶる。

 しかし、反応はなく荒い息を吐くだけだ。

 

『マズイぞ、相棒。いくらアイツが強くなったとはいえ、人間の双葉じゃそもそもの耐久度の違いがある。このままでは死ぬぞ!』

「ならどうにかするしかねえよな!! ブーステッド・ギア!!」

 

 左腕にブーステッド・ギアを出現させたイッセーだったが、いつもなら緑色の光を放つ宝玉が薄黒い色になっていた。

 

「な、何があったんだ!? ドライグ!!」

『このタイミングで神器の方が曖昧な状態になっているッ!!』

 

 イッセーは頭に疑問符を覚えたが、一向に神器の能力が使えないことに気づく。

 

「ど、どうして?」

『ブーステッド・ギアがお前の成長に対して変わろうとしているんだが、選択肢が選べずに神器の機能が混乱している。通常のパワーアップならば気合でどうにかなるが、万が一禁手化なら何か劇的な変化がなければ至らないぞ!』

 

 劇的な変化!? とイッセーは頭を抱える。

 しかし今は一刻を争う事態だ、このままでは双葉が取り返しの付かないことになるかもしれない。

 

「ドライグ、パワーアップは見送る事はできないのか!?」

『出来るならとうにしている!! しかし、この変化が次訪れるのかわからんのだ! 数ヶ月、下手すれば数年ということもあり得る』

 

 なんでこんなタイミングなんだよー!! と内心で叫ぶイッセーだったが、クロはそんなイッセーのことなど気にせず手のひらに魔力を貯める。

 

「なんだか知らないけど、あなたとグレモリーは邪魔なのにゃー」

「させるかぁっ!!」

 

 黒歌が無関心そうな表情で放った魔力弾はリアスに向けられ、発射されたが飛び込んできたイッセーが庇うことによって直撃は免れた。

 だが、直撃したイッセーはその衝撃で体正面の制服が破け、地面を転がる。

 

「イッセー!! ッッ!! 動きなさいよ、私の体!!」

 

 吹き飛ばされるイッセーを見て、体に喝を入れるリアスだったが遅効性の毒が体を蝕み、体に力が入らない。

 無力感で唇を噛み締めていたが、驚いたように目を丸くさせる。

 隣でうずくまっていた小猫が、ふらつきながらも立っていたのだ。

 

「はー……はー……姉さま、このままでは双葉が死んじゃいます」

「その前に回収するわよ。それにこの程度で死ぬほど、双葉は弱くはないわ」

 

 そう過大評価する黒歌だったが、彼女の言い分は通常なら正しい。

 だが双葉はネムレスに毒耐性をつけるため体の動きを阻害しない程度の毒を体内に入れられていた。

 しかしそれがいけなかった。ネムレスが耐性のためと埋め込んだ毒が、黒歌の毒と混ざり合い、黒歌が想定しているよりも遥かに強力な毒へと変貌していたのだ。

 黒歌もあれー? こんな強力だっけ? と内心思っているがそれはそれ、想い人が血を吐き出す姿もそれはそれで乙なものと、結構狂気的なことを考えていた。

 

「過大評価しすぎです! 彼は人間なんですよ!!」

「違うわ、白音。彼ならきっと克服してくれる、ヴァーリすら退けた実力ならきっと」

 

 恍惚な表情で双葉を見る黒歌に、小猫は両手を握りしめ激高する。

 

「姉さまだって双葉好きなんでしょう! なら止めて下さい!!」

「……死なないわ、だって彼は強いんだもの」

 

 その言葉を聞いた瞬間、小猫の体から猫耳と尻尾が生え、小猫は拳を握りしめた。

 拳には薄い白色のオーラが発生していた。

 

「……やっぱり私は姉さまと一緒には行けません。双葉を傷つけるならッ!!」

 

 小猫は勢い良く拳を地面に叩きつける。

 すると白いオーラが、毒霧を塗りつぶすように広がっていく。

 叩きつけた拳をゆっくりと引き戻し、姉を睨みつける小猫は静かに言い放つ。

 

「あなたを叩き潰します、黒歌」

「……へぇ、面白いじゃない」

「俺も混ぜてくれよ、小猫ちゃん」

 

 二人が向き直ったその時、イッセーが二人の間に入るように立ち塞がった。

 だがその様子を黒歌はあざ笑う。

 

「どいててよ、赤龍帝。今のあなたなんかこれっぽちも興味はないの。ヴァーリのライバルらしいけど、結局のところあなたは双葉がいなければ何も出来ないんでしょ?」

「あぁ、そうだな」

 

 自重するような笑みを浮かべながら、イッセーは黒歌の言葉に同意した。

 ずっと彼にのしかかっていた不満でもあった。

 アーシアやリアス、木場を救えたのは双葉の協力があったからこそ、そんな負い目が確かにイッセーにはあった。

 

「俺は双葉がいなかったら、ただのドスケベで弱っちい奴だよ」

 

 イッセーは震える膝を叩きながら叫ぶ。

 

「こんなダメな赤龍帝に期待してくれる人がいる! 必要としてくれる人がいる! 双葉が倒れてんなら、俺は立ち上がるよ。俺はアイツの兄貴なんだよ!!」

「そう、威勢はるならもうちょっと強くなって頂戴な」

 

 再びイッセーの体に魔力弾が直撃する。

 だが、今度は吹き飛ばずに両腕をクロスした状態で踏みとどまった。

 その様子に黒歌も、リアスたちも驚いた。

 

「な、なに!?」

「……イッセー先輩は強い人です。歴代の赤龍帝はその力に溺れ、皆自滅していきました。確かにイッセー先輩は弱い、けれどもあなたと違って力を手に入れて、それに溺れることはない心の強さとやさしさをもった『赤い龍(ウェルシュ)帝王(・ドラゴン)』なんです!」

 

 小猫の言葉に、黒歌は衝撃を受けたようによろめきながら表情を強張らせた。

 

「心? そんなもの必要ない、弱かったら虐げられ踏みにじられる、それが世界の真理よ」

「……黒歌、あなたは寂しい人です。いえ、私のせいでもあるんでしょうね、あなたがそうなったのは」

 

 勢い良く飛び出した小猫は、黒歌の懐に飛び込み、拳を突き出す。

 その速さが予想外だったのか、黒歌は苦しそうにガードしながら後方に勢い良く下がる。

 

「くっ……いつの間に!?」

「黒歌、あなたがどうして私を見捨てたのかわかりません。でも、もういいです……それを聞くのはあなたを倒してからにします」

「ッ!? ……怯えるだけだった小猫が、生意気な口を聞くなっ!!」

 

 黒歌が激高しながら放った魔力弾を、小猫は正面から受け止め片手で弾き飛ばした。

 元々が防御と攻撃に特化した『戦車』の駒を持っていた小猫は見た目に反してのパワータイプだ。

 今までは単純な『戦車』の力だけで戦っていたが、今は違う。猫又モードの小猫には仙術という特殊な術が扱える。小猫は特訓の際、仙術でも特に肉体強化の術を重点的に高めるようにした。

 そうして小猫はこの特訓中で、グレモリー眷属たちの中でもトップクラスの防御力と攻撃力を手に入れることができたのだ。

 

「う、嘘、今のは割りと本気で撃ったのに」

「今のなら何発でも耐えられます……いつまでも毛布の中で震える小猫だと思わないでください」

 

 黒歌は一瞬だけ驚いた表情を作ったが、すぐに表情を戻す。

 小猫の成長には驚いたが、未熟な主と赤龍帝が束になってきても黒歌なら負けることはない、そう高をくくっていた。

 だが、兵藤一誠という男はいつだって予想の斜め上を突き抜ける。

 

「部長、今の小猫ちゃんを見て、俺に足りないものがわかりました。禁手化にはきっと部長の力が必要です」

「……わかったわ! 私が出来ることならなんでもするわ!」

 

 小猫の成長ぶりに号泣していたリアスだったが、愛する男の言葉に一瞬でハンカチを取り出し、涙を拭いて満面の笑みで答える。

 だが、次の言葉は最低の一言に尽きる。

 

「――――おっぱいをつつかせてください!」

『……は?』

 

 戦場から音が消え、リアスを抜いた全員がイッセーを見る。

 だがイッセーの真剣な表情と今までの行動を思い返し、リアスは勢い良くドレスの胸元だけをはだけさせる。

 

「い、いいんですか部長!? 突っつきますよ!? 指で乳首を押しちゃうんですよ!?」

「いいからさっさとしなさい! それで禁手化出来るならお安い御用よ!」

「ここは戦場だぞ!? 何をしてる、貴様らァアアアア!!!」

 

 上空で激しい戦闘を繰り広げていたタンニーンは常軌を逸した二人の行動に絶叫していた。

 シリアスムードであった黒歌と小猫は毒気の抜かれた表情で向き合い、言葉をかわした。

 

「ね、ねえ、白音? お姉ちゃん、付き合う相手は選んだほうが良いと思うの。あと美猴、まさかだと思うけど私にこんなこと言わないわよね?」

「俺っちに振るな!! あいつは別次元だって言ってるでしょうが!!」

「……つ、強い人、うん、強い人であの人は主……バカップルっていいですよね」

 

 あたふたとする周囲のせいで、リアスの羞恥心が限界を迎えようとしていたが、イッセーはぷるんとしたきれいな乳首を前に固まっていた。

 

「タンニーンのおっさん! 質問なんだが!」

「質問したいのはこっちだがどうした兵藤一誠!!」

 

 自分との修行はなんだったのかとか、ドライグに同情するとか色々な感情がごちゃまぜになっているタンニーンだったが、真面目な性格が災いして答えるために耳を傾けた。

 

「右と左、どっちのおっぱいをつついたらいいんだ!?」

「どうでもいいからさっさとついて至れぇええええええええええ!!」

 

 タンニーンも大概に混乱しているとは言えないというか、この場にいる全員が「おっぱいをつっつけば禁手化出来る」と思ってる時点で混乱している。

 双葉が起きていれば全力のツッコミを入れていたが、幸いにして気絶していて聞いていない。

 

「ふざけんな!! こちとら人生最初のファーストブザーがかかってんだぞ!! 右と左が同じなわけあるか! 真面目に答えろォオオオオオオオオオオ!!」

「戦場で乳繰り合うやつがいるかぁあああああああああああ!!」

 

 タンニーンとイッセーがギャーギャーと言い合う中、ついに我慢しきれなくなったのか、リアスがイッセーに向かって叫ぶ。

 

「もう! そんなに大事なら両方つっつけばいいでしょ!」

 

 いやそういう問題じゃねえから!? と各々の人物がツッコむがイッセーはその手があったかと両手を構え、乳に標準を向ける。

 大きく息を吸い込み、弱くもなく強くもない神がかった塩梅で両乳首を人差し指でつついた。

 

「……ぃやん」

 

 初めての感触に思わず声を漏らすリアス。

 だがその時、鼻血を噴き出したイッセーと同時に左手のブーステッド・ギアの宝玉が光り輝く。

 それ泣いてんじゃねーのと思ってはいけない、そう今イッセーの中で新たな宇宙が生まれ、産声を上げたのだ。

 

『至った……本当に至ったぞ!!!!』

 

 もうヤケクソの近い声で叫ぶドライグに続いて、ブーステッド・ギアの音声が鳴り響く。

 

『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!!!!!!!!!!!』

 

 オーラがイッセーの体を包み始め、徐々に鎧を形成していくが小猫はため息をついて言った。

 

「やさしいじゃなくてやらしいですね」

「ごめんね、小猫ちゃん! だけどおかげでなれたぜ、俺の禁手!!」

 

 全身の鎧が形成しきって、周囲がイッセーのオーラにより陥没する。

 圧倒的なオーラを見て、黒歌は顔を引き締め、美猴は心底嬉しそうな顔をする。

 

禁手(バランス・ブレイカー)、『赤龍帝(ブーステッド・ギア)(・スケイルメイル)ッ!!』 主のおっぱいをつつきここに降臨ッッ!!』」

『おめでとう相棒、だがそろそろ俺は泣くぞ? みっともなく大声あげて泣くぞ?』

 

 涙声でイッセーを祝福するドライグにザルバは静かに同情した。

 かつてはニ天龍と呼ばれた片割れが、このような惨状で純粋なパワーアップする牙狼はマシなんだなとザルバは思った。この間の尻強化は彼の中で無かったことになっているらしい。

 

「景気づけの一発!!」

「なっ!?」

 

 イッセーが突き出した手から飛び出した魔力弾を黒歌はほぼ直感で避けていた。

 その直感は正しい。黒歌に着弾するではずだった魔力弾はそのまま真っすぐ飛び、近くの山に着弾した瞬間、山の吹き飛んだ。

 その威力に黒歌と美猴も表情を変えて、イッセーを睨む。

 

「ハハハハ!! ふざけた禁手かと思ったがその力は本物らしいな!」

「お、俺、ただ普通に撃っただけなのに」

『オーラを手元に集めて放った一撃だからな。だが貯蔵していられる量が少ないから連発はできん』

「くっ! 美猴!!」

「あぁ、ちょっとこいつはマズイかもしれん」

 

 焦る二人だったがそれは当然だろう。

 付近を捜索していた悪魔たちが、今の一撃に気づき全速力で現場に急行していた。

 幾ら二人が強くても、軍と正面から戦うのは骨が折れるどころの話では済まされない。

 しかしイッセーたちも逃がすつもりはない。

 禁手しているイッセーと滅びの魔力を手のひらに集めているリアス、それに手加減をすることを止めたタンニーンが二人を睨みつけていた。

 小猫は双葉の治療に入っているが、気絶しているだけとわかりホッと息を吐いていた。

 そんな時だった、突如空間が割れそこから男が一人でてきた。

 

「そこまでです。派手に動きすぎですよ、二人共」

 

 ため息を付きながらデュランダルか、それ以上の聖なるオーラを放つ剣を構えながら、タンニーンやイッセーを威嚇する。

 

「近づくなよ、兵藤一誠!! あれは聖王剣コールブランド。地上最強の聖剣だ! まさか白龍皇の元にあるとは……」

「さすが博識ですね。あぁ、黄金騎士は気絶してるのですか、残念です。一合斬り合いたかった……同じエクスカリバーの担い手として」

 

 腰に差すもう一本の聖剣を見せつける男を、リアスは驚愕の声をあげる。

 

「エクスカリバーの最後の一本? まさか発見していたなんて」

「えぇ、『支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)』と言います。無駄話が過ぎましたね、二人共早くこちらへ」

 

 コールブランドを再び振るうと男が通ってきた裂け目がさらに広がり、人数分が通れるほど大きくなる。

 

「それでは赤龍帝殿。聖魔剣の使い手さんと聖剣デュランダルの使い手さん、そして黄金騎士殿によろしく伝えておいてください。いつか一剣士として相まみえたいと」

 

 それだけ言うと美猴とその男は裂け目の中に沈んでいく。

 黒歌は一瞬だけ小猫に目をやると軽く笑みを浮かべて、手を振りながらこう言った。

 

「バイバイ、白音。次会うときはもっと強くなりなさい、双葉は諦めないから」

「なら何度だって撃退します、黒歌」

 

 そうして全員が空間の裂け目に消えた後、悪魔たちが大慌てで現場に到着した。

 

 その後、魔王主催のパーティーは中止となり、双葉はグレモリー家領地にある病院に搬送された。

 

 

 




やっちまったぜ(投稿者変態糞作者)、間違えて修正前のを投稿とかアホかと。
そしてシリアスにしようとしたらイッセーがすべて持っていくDDの雰囲気、最高やな!!
なお、双葉の闇落ちフラグがまた1つ上がった模様。過大評価されまくって、毒にぶっ倒れる主人公がいるらしい。
次回、「レーティングゲーム直前、そろそろ朱乃のターン行っとこうぜ」。メインヒロインだからね、出番を見ろよ見ろよ(作者の力量不足ほんとひで)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。