サラダ・デイズ/ありふれた世界が壊れる音   作:杉浦 渓

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第7章 ホッグズ・ヘッドにて

羊皮紙になにやら呪文をかけて頭を捻っているハーマイオニーを横目に見て、蓮はOWLの過去問題集を仕舞うとマグルの高校の教科書を取り出した。

 

「微分積分学っと」

 

ねえレン、とハーマイオニーが焦れたように声をかけてくる。蓮はパッと両耳を手で塞いだ。

 

「なによ! 聞きなさい!」

「聞かないわよ! 騎士団ジュニアチームの名簿に魔法をかける計画でしょう!」

「わかってるなら手伝ってよ!」

「危ない話題は知らない方がいい。わかるでしょ、ハーマイオニー。レジスタンスを危険に晒すわけにはいかないの!」

 

あなたたち、とパーバティが溜息をついて立ち上がり、蓮の両手を耳から引き剥がした。「名簿の魔法の前にハーマイオニー、ハリーは説得できたの?」

 

「そうよそうよ」

 

蓮がパーバティの陰から小声で冷やかす。

 

「まだだけど、揺れてるのは間違いない。ロンのことは説得したわ。ネビルも。あと」

 

バッと蓮はまた耳を塞いだ。

 

「名前は聞きたくない!」

「そうね、ハーマイオニー、この人の危うい立場を踏まえて話題と名前には気をつけて」

 

面倒ね、と憤然と椅子に足を組んで、腕組みもしてハーマイオニーは「わかったわよ」と蓮の顔に向かって大きく口を動かした。

 

「ロンと2人で秘密裏に、信用出来る人に話は持ち掛けてある。でも、だからって、その信用とやらを鵜呑みには出来ないわ。レンのことはメンバーから外したとは言え、ハリー含めわたしたちだってレジスタンスのメンバーだということになったら高等尋問官様が何をするかわかったものじゃないから」

 

おそるおそる耳を傾けていた蓮は、やっと安心して頷いた。

 

「だからまず、名簿を作成するという案を持ち出そうと思うの。そこで引き下がる人はスパイよ。スパイとまではいかなくても単なる好奇心。アンブリッジに脅されたらペラペラ喋り出すわ。そんな人に詳細は聞かせられない。問題は、レンがたまに言う司法取引ね。司法取引じみたことをアンブリッジが持ち出してきたときの対策を羊皮紙に仕掛けることが出来ないか考えてるの」

「それは良い考えね。仕掛けの詳細は知りたくないけれど」

「わかってるわよ。それから、練習場所と時間。毎回毎回同じ場所と時間に一定数以上のメンバーが集まるのは無理。みんな他にも課題やクラブがあるし、そんなことアンブリッジに必ず知られてしまうでしょうし・・・」

「アンブリッジの罰則の被害者が増えてきたから全員が集まることの出来る時間は少なくなるでしょうね」

「そうなのよ。少なくとも、ハリー、ロン、わたし、パーバティが罰則を受けているときは避けなきゃいけないわ」

 

不吉なこと言わないでよハーマイオニー、とパーバティが呻いた。

 

「指定されたページを飛ばして先のほうを読んでたせいで皮肉を言われたでしょ。そろそろ目をつけられるわ。とにかくね、不定期に開催することになるから、それを知らせる手段が必要だということ」

 

しばらく考えて蓮はボソッと「闇の印」と呟いた。ハーマイオニーとパーバティが顔をしかめる。

 

「そんな顔しないで。単なる思いつきよ。リトル・ハングルトンでは、トムくんがペティグリューの闇の印を指で押さえたの。そうしたら数分も経たないうちに死喰い人がその場に姿現ししてきたわ。それと同じように、ハリーが合図をすると一斉送信する魔法が何かあるのではないかと」

「・・・身体に刻印するのはやり過ぎだし、必要以上にドン引きされそうだけど、発想は悪くないわ。何か別のものを利用できないかしら」

「そこから先は自分たちで考えてね。わたくしは聞きたくない」

 

ハーマイオニーは溜息をついて蓮のほうに身を乗り出した。パーバティはサッと避ける。

 

「パーバティ!」

「わたしはハーマイオニー避けじゃないのよ、レン。ハーマイオニーにはあなたとのイチャイチャが足りないの。そろそろまともに相手してあげなさい」

「う・・・」

「ジョージが荒れてたわよ、レン。何があったの?」

 

ちょっと、と蓮は目を逸らした。

 

「ちょっと、何よ?」

「ちょっと最近、マルフォイが」

「マルフォイ?!」

 

ああそうだ、と蓮は声を上げた。「2人とも聞いて。マルフォイが調べたのだけれど、アンブリッジは混血だそうよ」

 

「嘘でしょ?!」

 

ハーマイオニーが過剰反応する。

 

「どうして?」

「だってネビルが言ってたの。アンブリッジは半人嫌いの純血主義者だって。マルフォイの根拠は?」

「スリザリン生に擦り寄ってるらしいわね。スリザリン出身だからそれは当然だけれど、スリザリン生の純血、いわゆる聖28一族の奴らは意外と冷笑的みたい。理由は、ほら、彼らの得意な『父上や母上に聞いてみようそうしよう』の手法でね。アンブリッジの家系を調べてみたそうよ」

「それで?」

「アンブリッジ自身は、清廉潔白で高名だったウィゼンガモットの魔法戦士アンブリッジの子孫だと吹聴しているらしいわ。でも、魔法戦士アンブリッジは生涯独身で子供もいなかった。少なくとも家名を継ぐ正式な子供はね。だからスリザリン生は特に冷笑的なの。あの人たちのことだから顔には出さないわよ。アンブリッジ先生アンブリッジ先生って擦り寄っているわ、お上手に。でも裏では、嫡子のいない魔法戦士アンブリッジの名前を持ち出すなんて愚かしいという見方が一般的なようね。嫡子がいないのに魔法戦士アンブリッジの名を子孫が名乗るはずがないもの。仮に純血だとしても、大したことない別のアンブリッジ家だろうと言われているわ。アンブリッジの年齢から逆算すると、60年ほど前にハッフルパフにいたアンブリッジが父親らしいとはわかったけれど、母親の名前がわからない。マグルだからわからないのだろうって」

 

ハーマイオニーとパーバティが顔を見合わせた。

 

「ねえ、レン」

「なに?」

「敵を知ることは大事だけどね、まさかまたヴィーラの魔法を使ったの?」

「それ、マルフォイから聞き出したんでしょ?」

 

蓮は笑って「違うわよ、マルフォイが報告してくれるの」と軽く片付けた。

 

「マルフォイが?!」

「どうしてよ?!」

 

わたくしの命が懸かっているから、と蓮は苦笑した。

 

「あ・・・」

「一応、マルフォイにはマルフォイなりの義憤があって。友人の命が懸かっているというときにアンブリッジに反抗するのは、一種の裏切りではないかと。こういう時には長いものに巻かれることも必要だというね、彼なりの主張」

 

ハーマイオニーがどこか痛そうな顔をした。

 

「その主張が100%ではないとは思っているわ。ウィンストンを抱き込むことは、トムくんに対するマルフォイ家の貢献になるでしょうから、お父上の指示もあるはず」

「長いものには巻かれろ、か。スリザリン流の処世術のひとつではあるんでしょうね」

「巻かれ過ぎもいかがなものかとは思うけど、一概に否定は出来ないところね」

 

パーバティが肩を竦めて言った。

 

 

 

 

 

ハーマイオニーは黙々と変身術のレポートを書いている蓮の横顔を見て、聞こえないように小さく溜息をついた。

 

パーバティの寝息を確かめてハーマイオニーは小声で囁いた。

 

「本当はマルフォイの気持ち、わかってるんでしょう」

 

蓮は小さく頷いた。

 

「でしょうね。マルフォイはスリザリン生らしい嫌な奴だけど、あなたへの態度は一貫してるもの。入学当初の男の子みたいなあなたならまだしも、ジョージと付き合うようになったあなたがわからないはずない」

 

悔しいわ、とハーマイオニーが呟くと、蓮がやっと顔を上げた。

 

「ハーマイオニー?」

「アンブリッジなんかがホグワーツに来なければ、あなたがそんなことしなくて済んだ」

 

蓮はふっと笑って「いずれこうなる人間だったのよ」と言う。

 

「気は進まないでしょう。ジョージがいるのに、マルフォイの好意を利用して情報を提供させるなんて」

「嫌な奴だけどマルフォイに悪いとは思っているわ。ジョージは・・・一応、理解はしてくれる。そういう手段があるなら利用した方がいいって。事が事だから。ハリーやロンの大冒険のためなら認めないけどな、ですって」

「嫌な奴だけど、あなたに対する気持ちはそれほど嘘じゃないと思うし・・・長いものに巻かれる処世術も、それそのものは邪悪なものではないわよね。アンブリッジほど露骨じゃなければ、わたしだってそういう考え方をしたかもしれない」

「ん・・・マルフォイ家はね、おじいさまの代からトムくんに巻き込まれてきたの。命の水を所有していたばかりに」

 

ああ、とハーマイオニーは息を吐いた。

 

「だからわたくしとしては・・・マルフォイ家を命の水の悪因縁から解放するためにも『長いもの』をどうにかするべきだとは思っているわ」

「・・・人の手の届く範囲には限界があるのよ、レン。あまりいろいろ背負い過ぎないで」

 

ハリーが言ってたわ、とハーマイオニーは続けた。「どうしてレンや君はヴォルデモートって呼ばないんだ、本名じゃなくヴォルデモートって呼べよ、って」

 

蓮は吹き出しかけて、急いで口を拳で押さえた。

 

「それって、リドルくんに対する慈悲、でしょう?」

 

ハーマイオニーが言うと、蓮は切れ長の瞳を見開いた。

 

「レン、名前の魔法で助かった経験があればわかるわ。リドルくんの中に流れる母親の愛情は、名前だけがそのよすがだものね。でもあなた、リドルくんまで背負うつもり?」

 

まさか、と蓮は笑う。「でも・・・アンブリッジとリドルは似ている。自分を偽って権威付けして生き延びようとするところが。わたくしとしては・・・もちろん人はわたくしが恵まれた生まれだからだと言うでしょうけれど、そのやり方が嫌いよ。父親や母親が気に入らないのなら、ひとりになるべきだわ。嘘や脅しで自分を権威付けして手に負えなくなってしまうぐらいなら」

 

ハーマイオニーは黙って頷いた。

 

 

 

 

 

ハーマイオニーたちは今頃、ホグズミードのどこかの店で秘密の防衛術訓練プランのプレゼンテーションをしているはずだ。

そのせいばかりでもないだろうが、寮の中に人が少ない。

 

窓の外にワシミミズクが見えた。コツコツと嘴でノックしている。

 

窓を開けて手紙を受け取るとワシミミズクはすぐに飛び立った。

 

「地下牢教室に10時」

 

時計を見ると9時45分を指している。蓮は溜息をついて立ち上がった。

 

人の少ない校内を歩いて地下牢教室の扉を開けた。

 

「来たか。ホグズミードに行っているとばかり」

「そう思うのなら、呼び出すのやめなさいよ。スネイプ先生は?」

「ロンドンだ。ダイアゴン横丁に魔法薬の材料を買いに行かれた。先生は個人的な研究にも熱心だからな」

 

ふうん、と蓮は手近な椅子に腰掛け、カチャカチャと器具を用意するマルフォイの手慣れた指先を眺めた。

 

「スネイプ先生がいないのに調合?」

「先生御自身の研究の手伝いは任せてくださらないが、脱狼薬の調合は良い訓練になるとおっしゃって教えてくださった。昨今の魔法薬の中で最も難易度の高い魔法薬なんだぞ」

「でしょうね。それで? 何か話があったのではないの?」

「なんでジョージ・ウィーズリーとホグズミードに行かなかった」

 

あのねマルフォイ、と蓮はこめかみを押さえた。「ジョージはフレッドたちとゾンコの店。わたくしはOWLに向けた勉強。付き合っていても、休日にすることが違う日ぐらいあるわよ。あなたこそ、パーキンソンとマダム・パディフットの店にでも行けばいいでしょう。せいぜいギネス記録に挑戦しなさい」

 

「つまらない」

「ああそうですか」

「付き合えよ、ああ誤解するな、調合にだ。君は僕ほどではないが、魔法薬学のセンスがある。こいつは難物なんだ」

 

楽しげに材料を計り始めたマルフォイの向かいの椅子に腰掛けて、テーブルの上の材料を切り刻んでいく。

 

「なあ、ウィンストン。龍痘や人狼病の根絶には何が必要かわかるか? 君は純血だが、マグルの中で育ったんだろう。マグルは感染症対策をどうしてる? 我々魔法族は病が発病してから薬を投与するだろ。でも龍痘や人狼病は発病してからでは手遅れだ。マグルにはどうせ大した薬はないだろうが、なぜか絶滅していない。何か対処があるのか?」

「・・・ワクチン」

「何だ、それは」

 

ワクチンや予防接種について説明すると、マルフォイは顔をしかめた。

 

「まあ、魔法族にとっては想像を絶する話よね。忘れちゃいなさい。マグルの絶滅はたぶんないと思うけれど」

「いや・・・君の説明によると、弱毒化した病原体を素にしたワクチンというやつの製造に成功すれば、龍痘や人狼病を根絶できる。そうだな? 僕は感染する病が好きじゃないんだ。感染する病がなくなるならそれに越したことはないと思う。そもそも病原体というやつを探すことから始めなければならないが、その理屈が魔法族の病に適用できるなら大きな進歩だ」

「・・・人狼はあなたがたの側にとって、忌まわしいけれど有力な戦力だったのでは?」

「ただの戦力がいつまでも必要か?」

 

マルフォイが真顔で言った。

 

ーーこういう奴よね

 

「僕のおじいさまは、龍痘で亡くなった。龍痘が猛威を奮った年があって。僕は龍痘の、そのワクチンというやつをまず作りたいな。そうしたら人狼だ」

「だから・・・どうしてあなたみたいな人が人狼に思いやりなんて」

 

思わず苛立った声になった。マルフォイは「別に人狼に思いやりなんて持ってない」と澄ました顔で言う。「病なんかで魔法族が減るのは損失だろ。根絶できる病は根絶すべきだ」

 

蓮は困惑を飲み込んだ。

 

「・・・聖マンゴの癒師や薬師にでもなるつもり?」

 

そう言うとマルフォイは顔を曇らせた。

 

「いや・・・働くことは父上がお許しにならないだろうな。たぶん、邸に研究室を作って、研究はするけど」

「わたくしの曽祖父もそうだったわ・・・家に研究室があったの。ソ連を捨てて日本に来た魔法薬学者だったから」

「知ってる。脱狼薬の理論を打ち立てた偉人だ」

「・・・ね、マルフォイ、お父さまのお考えだけが全てじゃないのよ。独学で研究するより、きちんとした組織の中で研鑽を積むことが必要なこともある。わたくしの曽祖父は日本の魔法省立病院の嘱託癒師でもあって、臨床試験を重ねることが出来たから成果をあげることが出来たの。癒学方面の魔法薬には臨床試験は必ず必要になるわ」

 

マルフォイはしばらく無言で作業を進めた。

 

「・・・わかってるさ。だが、僕や父上は、我が君の要請に応じることでマルフォイ家を存続させ繁栄させなければならない。純血の魔法族が減った今では、特に重要な務めを任されている。だいいちマルフォイ家の息子に診察されたがる患者なんかいない」

「将来、あなたの息子にも同じことを? あなたがたのご主人様に仕えさせるの?」

「いや・・・我が君の御代が安定すれば」

「安定すればマルフォイ家は重鎮として安泰だから、好きなことをさせる?」

「・・・そうできればいいとは、思う」

 

安心したわ、と材料を刻み終えた蓮は包丁をテーブルに置いた。

 

「ウィンストン?」

「あなたが意外とまともな人間で良かった」

 

地下牢教室を後にしても、マルフォイの縋るような視線が追いかけてくるようで、蓮は足早にグリフィンドール塔に戻った。

 

 

 

 

 

フリットウィック先生を信じても良かったのだろうか。

 

店内を見回してハーマイオニーは至極疑問に思った。

妥当で穏当、模範的な回答を求めるならフリットウィック先生だとハーマイオニーは信じている。マクゴナガル先生はきっと眼鏡の奥からじろりと見て「何を企んでいるのか知りませんが、ろくなことにはなりませんよ。それでもいいというのなら止めはしませんが、ルビウス・ハグリッドが厄介ごとを拾ってくるのはたいていあの店であり、あなたがた、特にポッターの厄介ごと拾得率の高さを考えるとまたぞろ厄介ごとが列を成してやってくるだけだと思いますがね」などと、ぐうの音も出ないようなことをまくし立てるに違いない。

 

しかし、自前のコップを持ち込む以外にも、何か予防接種だとか虫除けスプレーだとかが必要だったのではないだろうか。

 

「ほんとにここで良かったのかなあ、ハーマイオニー」

 

自前のコップを持ってカウンターに向かいながらハリーが呟いた。

 

「・・・わたし、校則を2回も3回も調べたけど、ここは立ち入り禁止じゃないわ。生徒がホッグズ・ヘッドに入ってもいいかって、フリットウィック先生にもわざわざ確かめたの」

 

とくとくとボトルからバタービールを自分のグラスに注いでハーマイオニーは答えた。

 

「レンはなんで来なかったんだい? レンなら僕の教える防衛術ぐらい軽くマスターしてる。僕としては僕なんかよりレンが教えるべきだと今でも思ってるよ。むしろ僕が教わりたいぐらいだ」カウンターの奥に並んだファイア・ウィスキーのボトルを見つめているロンを引っ張りながらハリーが尋ねる。

 

「ロン、あなたは《監督生》です! それはね、ハリー、レンはこのレジスタンス活動には関与しないほうが、レンにとってもレジスタンスにとっても安全だからよ。お互いに知らぬ存ぜぬでいれば、アンブリッジがそれこそ真実薬を使って聞き出そうとしても、大した事実が出てこないでしょ? 特にレンの安全ね。あの人には真実薬も磔の呪いも効かないから、秘密を喋る気遣いはないもの。まあ、わたし、パーバティ、ハリー、ロン、ネビルはどうしても知ってしまうこともあるから、こうして」

 

ハーマイオニーはゴブリン製の銀のスプーンをバタービールに突っ込んで掻き回した。

 

「よし、安全ね。安全確認しながら暮らしたほうがいいの。それにね、レンはハリー、あなたを信じてるの。闇の魔術と戦うのに一番必要なのは意志の力で、その意志ならあなたに勝る人はいない。だからハリーが教えるのがベストだって」

 

そこまで話したところで、ざわざわとホッグズ・ヘッド始まって以来の店内の大混雑が始まり、バーテンは不機嫌そうに25本ものバタービールを用意する羽目になった。

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁ、疲れたわ」

 

脱力するハーマイオニーの肩を手で揉んでパーバティが「レンの予想通りね。『たぶんジニーがボーイフレンドを連れてくる。今誰かわからないけど』なんて言ってたの思い出して笑っちゃった」と言うと、ごふ、とバタービールに噎せたロンが「なんだって? おい、ハリー、ジニーはどんなやつと来てた?」と勢い込んだ。

 

「ああ、えーっと、確か、マイケル・コーナーだ」

「感じの悪い野郎だった」

 

ロンが間髪入れずに言うと、ハーマイオニーとパーバティは呆れ顔で「これだからジニーはあなたに言わなかったのよ、ロン。誰とデートしようがジニーの問題でしょ?」といなした。

 

「でもジニーは! ジニーはハリーが好きだったはずだ!」

「そうね。好きだった。だけどずいぶん前に諦めたの。もちろんハリー、ジニーは今はまた違う形で、あなたのことはあなたのことで好きだと思うわよ」

「ああ・・・ジニーは、だから僕に話しかけるようになったんだね? 以前はまともに顔も合わせてくれなかったのに」

 

ハーマイオニーは頷いた。

 

「赤くなって話しかけることもできないジニーより今のほうが良いと思わない?」

「ああ、もちろんそうさ。おいロン、そうカッカするなよ。ハーマイオニーたちの言う通りだ。ジニーの問題だろ?」

 

 

 

 

 

ロンのことを話題にすると、浮かない顔でぼんやり窓の外を眺めていた蓮も反応して笑い出した。

 

「妹にボーイフレンドが出来るのがそんなに一大事かしら? ジョージは何か言ってる?」

「何も。確かに気づいてもいないと思うけれど・・・ロンほどの反応はしないと思うわ。ロンの場合は、自分がガールフレンドのガの字も見当たらないから特に、じゃないかしら」

 

パーバティが笑い出し「ロンには当分無理よ」と身も蓋もないことを言う。

 

「あなたは?」

 

ハーマイオニーに尋ねられ「マルフォイの脱狼薬の調合を手伝っていたわ」と答えた。

 

パーバティとハーマイオニーは「脱狼薬?!」と驚愕の声を上げる。蓮は肩を竦め「たぶんまだ無理でしょうけれど。訓練の一環としてスネイプから教わったそうよ」と答えた。

 

ハーマイオニーは愕然とした顔だが、パーバティは「わからないでもないわ」と訳知り顔だ。「マクゴナガル先生がレンを動物もどきにしたように、才能のある生徒に難易度の高い課題を与えて鍛えるのは先生たちの喜びのひとつでしょう? スプラウト先生だって、もうたいていの温室の世話はネビルに手伝わせているもの。NEWTクラスの温室にだって入れるのよ。例の合言葉のサボテン、あれはNEWTクラスでさらっと流して教わる薬草らしいの。でも35年前に1度だけNEWTの試験に出たらしいわ。パドマもルーナも知ってた。レイブンクローって『過去の試験に出た』が魔法の言葉なのよ。ハーマイオニー顔負けね。ハーマイオニーの場合は、 試験に出たか、出ないかじゃなく、読んだ本の何ページの何段目に書いてあるって、視覚的記憶力が抜群」

 

蓮がまた考え深げに窓の外に視線を投げた。

 

「レン?」

「ん? なに?」

「まさかあなた、マルフォイに絆されたりしないでしょうね? ジョージとどうなるにしても、次がマルフォイだなんて」

 

ぽかんとした蓮がハーマイオニーの額を指先で弾いた。

 

「たっ! なによ?」

「全然的外れよ、ハーマイオニー。わたくしが今考えていたのはスネイプのこと」

「スネイプ?」

「信用できる人かどうかは別にして・・・死ぬ覚悟があるのかもしれないわね」

 

だから脱狼薬を作るレベルまで伸びる可能性のある生徒を育てている、と蓮は苦笑した。「単なる思いつきよ。それに人狼のためかどうかもわからないわ。あちらの陣営の一角がグレイバック率いるならず者の人狼なのは確かだから、満月時にはあちらの陣営の人狼の無害化は必須でしょうから」

 

パーバティが「聖マンゴの癒師や薬師がいるでしょう」と言うと、ハーマイオニーは首を振った。

 

「なによ、ダメなの?」

「反人狼法のおかげで、まともに病院で治療出来る患者はいなくなったわ。病院は逮捕する義務がある。隔離病棟で治療するんじゃなく、逮捕して突き出す義務がね」

 

最悪、とパーバティが顔をしかめた。

 

「そう。だから、スネイプがルーピン先生に調合していたみたいに、魔法薬学者が個人的に脱狼薬を提供するしかないのが現実ね」

「アンブリッジって、ほんと嫌な奴」

「ハーマイオニー、そういえばこの前、半人嫌いだって言わなかった?」

「ええ。ネビルがね。反人狼法を起草したのはアンブリッジで、半人嫌いだって教えてくれたの。それで調べてみたんだけど、反人狼法は2年前。去年は水中人撲滅キャンペーンを張ったらしいわ」

「何のために?」

 

知るもんですか、とハーマイオニーは肩を竦める。「まったく賛成は出来ないけど、人狼嫌いはわからないでもない。でも水中人を撲滅して何がしたいのかは謎よ」

 

「自分が両生類みたいな顔してるくせに」

「それ、水中人に言ったら水中人が気を悪くするわよ」

 

笑っていられたのは月曜の朝、ハリーとロンが女子寮の階段を駆け上がろうとして、突然滑り台に変わった階段から一番下まで落とされたときまでだった。

 

「魔法省令第24号が出たっていうのになんだこのクソ階段は!」

「ハーマイオニーやレンは男子寮に来られるのに不公平だ!」

 

何の騒ぎなの、と蓮がパジャマ代わりのTシャツ姿で顔を出したとき、ちょうどハーマイオニーは「『ホグワーツの歴史』の243ページに書いてあるわ。創立者たちは、男の子はいくぶん信用できない、こういうことに関してはね。そう考えたそうなの。中世以前の古臭い規則だけど。そういうわけだからどの女子寮にもそれぞれの仕掛け階段があるわ」と講義をしていた。

 

「・・・ハーマイオニー、その2人、『ホグワーツの歴史』の講義を受けたい気分じゃなさそうよ」

 

呆れて蓮が割って入るとハリーが「君の言った通りだった。魔法省令第24号が出たんだ。校内のあらゆる学生の自主組織が解体される!」と叫んだ。「つまり僕たちの」

 

「《クィディッチチームの一大事》よね、ハリー?」

 

蓮はハリーの頬を捻り上げながら、被せるようにそう言った。

 

「は、はひ、ほうれす」

 

 

 

 

 

「あんな店で相談したことが漏れても不思議じゃないし、あの時点では教育令に違反していない。それに万が一メンバーの中にスパイがいたとしても、誰の仕業かはすぐにわかるわ」

 

ハーマイオニーは冷静だった。蓮はその様子に軽く眉を上げた。よほど自信のある魔法をかけてあるのだろう。違う意味で詳細は知りたくない。

 

魔法薬学の地下牢教室に向かうと、なぜか騒然としている。

 

「やめろ、ネビル!」

 

ハリーの声が聞こえた。蓮とハーマイオニーは人垣を掻き分けて騒ぎの中心に駆けつけた。

 

「なにするんだ、ロングボトム!」

「やめろ、ネビル。な、落ち着け」

 

羽交い締めにするハリーは必死だ。ネビルはハリーより上背もあるし、痩せ型のハリーとは逆に健康的な肉付きをしている。

蓮はすぐにハリーに加勢して、ネビルを引き離した。

 

「聖マンゴが・・・なんだ・・・おかしくなんか」

「おまえが入ってしまえ、ロングボトム! イカれた奴の病棟だ!」

 

ネビルのパンチがヒットしたのか、マルフォイの頬が赤く腫れている。

 

蓮は眉を寄せて、ネビルの耳に「落ち着いて、ネビル。あいつはなにもわかってないのよ。落ち着いて」と繰り返し言い聞かせた。

 

「おっどろきー」と目を丸くするロンの横で、ハーマイオニーが口を押さえている。

 

「ハーマイオニー?」

「な、なんでもないわ。さ、ネビル、こっちにいらっしゃい」

 

マルフォイ、と蓮は横目で睨んだ。

 

「なんだ」

「あなたはやっぱり癒師にも薬師にもなれないし、魔法薬学者を目指す資格もない。ご主人様にせいぜい尻尾を振っていなさい」

「な・・・ウィンストン!」

 

マルフォイを無視して、蓮はネビルの腕を引き、地下牢教室から連れ出した。

 

「レン、教室に・・・戻って、いいよ。僕なら、平気」

「サボりたい気分なの」

「ハーマイオニーから、聞いたのかい?」

「何を?」

「ぼ、僕の、パパと、ママの、こと」

「何のことかわからないけれど、ネビル、あなたのプライバシーだと思ったらハーマイオニーは誰にも話さないわよ。わたくしは何も聞いていない」

 

ネビルが、はーっと、深い息を吐いた。

 

「あいつが言ってたろ、イカれた奴の病棟があるって。そこ、そこに、僕のパパとママはいる」

「・・・そう」

「そこに入ることになったのは、あいつの伯母さんのせいだ。なのに、あいつが、あんな」

 

蓮は黙ったまま、ネビルが語るのに任せた。

 

「ばあちゃんに言われなくても、僕は、パパとママのこと、誇りに思ってるよ。でもさ、でも、僕に笑いかけてくれるママは、いなかったんだよ。ベラトリクス・レストレンジのせいで! 僕にセストラルが見えるのは、そのせいさ。パパとママは、ずっと死んでた。死んでるのと同じだった。2年前のサマーホリディに意識を取り戻すまでね」

 

湖の畔の柳の下にしゃがんだまま、蓮は目を見開いた。2年前にあの病状から急に回復するとは思えない。

 

「普通の、みんなみたいなママじゃ全然ない。でも僕のママだ。僕のことちゃんとわかってくれてる。イカれてるって言えばイカれてるよ、わかってる。でも、ママは僕のことちゃんとわかってるんだ」

「ん・・・」

「パパとママをあんな風にしたのはマルフォイじゃない。それはわかってる。でもあんな風に笑い者にするのは許せない」

 

当然よ、と蓮は静かに言った。

 

「罰則かなあ」

「たとえ罰則になっても、この場合は、おばあさまは怒らないはずよ」

「うん。そうだといいけど」

「絶対に」

 

ネビルは蓮の顔をまじまじと見た。

 

「不思議だね」

「なにが?」

「君とこんな話をするなんてさ。君はハーマイオニーとどっちが監督生でもおかしくないぐらいの優等生なのに、僕なんかのことをいつも気にかけてくれる」

 

それは、と蓮が言いかけたとき「おほっほー!」と勝ち誇るような声が聞こえ、管理人のアーガス・フィルチがものすごいスピードで駆け寄ってきて蓮の腕を捻り上げた。

 

「いたっ! なんですか、ミスタ・フィルチ!」

「糞爆弾を廊下で爆発させる密談だな?! そうはさせんぞ! おまえは女のくせにウィーズリーの双子といつも密談している根性悪だ!」

「馬鹿なこと言わないでください・・・っく、ネビル! わたくしのポケットを全部裏返しに引っ張り出して!」

「レン、そんなこと! 女の子にそんなことできない!」

「いいから! わたくしをウィーズリーの双子と思って。ハーマイオニー気分で、持ち物検査よ!」

 

ネビルが顔を赤くしながら、なるべく蓮の身体に触れないようにモタモタと全部のポケットをひっくり返すと、フィルチはやっと蓮から手を離した。出てきたのはハンカチだけだ。

 

「・・・疑いは晴れましたか? ミスタ・フィルチ」

 

ネビルも、女の子のポケットだけを公開することに抵抗を感じたのか、自主的にお菓子の屑や綿埃をはたき出しながら、自分のポケットもすべて裏返して見せた。ハンカチさえ出てこなかった。

 

「僕もレンも糞爆弾なんか持ってない!」

 

愕然とした顔でフィルチは呻いた。「どういうことだ。確かにタレコミがあったのに」

 

蓮は眉を上げ「どういうタレコミかは存じませんけれど、この通りわたくしとネビル・ロングボトムには無関係です。今頃誰かが本物をどこかで爆発させているのでは? タレコミが確かなら」と淡々と言った。内心では、一番やりそうな双子の顔が浮かんでいたが仕方ない。日頃の行ないの賜物だ。

 

「クソっ! ウィーズリィィィィ!」

 

蓮の頭に浮かんだのと同じ名前を叫びながら、フィルチが猛スピードで校舎に走り去って行った。

 

「さて」と蓮はネビルに向き直り、ポケットをもとに戻した。「助かったわ、ネビル。そろそろ寮に戻らない? 本当に潔白なら、ウィーズリーの双子が寮でまた変なものを開発中のはずよ」

 

 

 

 

 

「そりゃないぜ、レン!」

 

談話室に戻ると、ゲーゲートローチの臨床成果を表にまとめていた双子とリー・ジョーダンが声を揃えた。

 

「え? 君たちじゃないの? 僕、糞爆弾の犯人か、タレコミか、どちらかが君たちだとばかり。ごめんよ、疑ったりして」

「スネイプの講義をエスケープして来た君たちには言われたくないな。特にネビル、マルフォイに天誅を下してスネイプの授業をエスケープするとは素晴らしい。グリフィンドール特別功労賞に値する」

 

フレッドがもったいぶって言う。

 

ジョージの隣に蓮が腰を下ろすと、ジョージが「気をつけろよ。フィルチ。あいつ、最近糞爆弾に夢中なんだ」と言った。

 

「ああ。ママにフクロウを出しにフクロウ小屋に行っただけで危うく退学になるところだった。ただ嘔吐草を頼むだけだったのに」

「誰からだか知らないが、糞爆弾テロの予告を受け取っているのは確かだな」

「フクロウ小屋?」

「ああ。俺らが糞爆弾をどっさり注文するに違いないと思ってやがるのさ」

「どっこいこっちはもう糞爆弾なんか卒業しちまったけどな。でもフレッド、ママに嘔吐草はヤバい。絶対にWWWだって勘付く。むしろシリウスに頼むべきだ。ロンのピッグはやかましいから、ハリーのヘドウィグを借りようぜ」

「・・・マルフォイかな」

 

ネビルが名前を出すとジョージが蓮の顔を見て「あいつはそういう手は使わない、だろ?」と尋ねる。蓮は「たぶんね」と曖昧に頷いた。

 

「彼が何をして何をしないかなんて、わたくしにわかるわけないでしょう」

「俺はマルフォイじゃないと思うな。糞爆弾なんかの罪を着せて俺らを退学させるなんて、およそマルフォイの手口じゃない。あいつに出来るのは、せいぜいうちのパパが魔法省で幅を利かせるタイプじゃないことを馬鹿にするだけさ。自分たちの優位を示すのにウィーズリーはちょうどいい。あいつの目障りな学生をみんな退学にしてみろ、残るのはトロールみたいなスリザリン生だけだ。スリザリンの馬鹿さ加減を強調することになる。嫌いだ馬鹿だ貧乏だって言いながらも、俺たち無しじゃ困るのはあいつらの方さ」

 

フレッドが言うとリーも「ネビル、チクチクいじめるのと退学させるのとじゃ、ハードルの高さがうんと違うんだぜ。マルフォイたちにそこまでは出来ないさ」と説いた。

 

「・・・ハードルの高さが違う」

 

蓮が繰り返すとジョージが蓮の肩を拳で軽く小突いた。

 

「おい。そこまでだ。探偵ごっこはやめとけ。ただでさえみんな危ない橋を渡ってるんだ。君は無関係なフリしてろ」

「ハーマイオニーやパーバティが君の意を受けてるのは予想がつく。おっと、頷くなよ? こういうときは正直者は馬鹿をみるもんだ。お互いに知らんふりが一番大事なことさ。パパだって魔法省じゃキングズリーと互いに不仲なフリしてる。騎士団本部でさんざん夕食を囲んでるくせにな。そういう芸当をみんな覚えなくちゃならないってことだ」

 

フレッドが言って、蓮にニヤっと笑いかけた。

 

 

 

 

 

た・たん、と軽やかな足音が聞こえてハーマイオニーは唇を噛んだ。

 

パーバティの操る大木の枝の乱舞は、3人の決闘を重ねるうちに蓮の野生動物じみた運動神経を呼び覚ましてしまった。襲い来る樹々を逆に足場にして、高度の優位を確保されると、ハーマイオニーの甚だ頼りない運動能力では到底太刀打ち出来ない

 

「インペディメンタ!」

 

パーバティの鋭い声と同時にハーマイオニーの眼前で呪いが射線を逸らされた。色から察するに失神呪文だろう。

 

「助かったわ、パーバティ」

 

ハーマイオニーの右斜め正面上から小さな舌打ちが聞こえ、迷わずそこに向かって開心術を放った。

 

パァン! と弾かれ、逆にハーマイオニーの記憶が引きずり出される。

 

ぐ、と堪えてハーマイオニーは、逆に記憶を流し込む。

 

パパは魔法使い、ママは魔女。

魔法省勤務のパパと専業主婦のママ。

 

「ハーマイオニー?」

 

戸惑うような蓮の声に向かって「あなたの閉心術は大したことないわ!」と声を張り上げた。

 

身軽に木から飛び降りた蓮は不愉快そうに「どういう意味? 記憶は与えていないはずよ」とハーマイオニーに近づいてくる。

 

パーバティがあっさりと「記憶を読ませまいと抵抗するだけじゃ足りないってことでしょ」と応じた。「抵抗してます、って丸わかりだもの。術者じゃないわたしにだってね。ハーマイオニーとレンの間で魔力が凄い勢いで反発するのはわかるわ。あの勢いで跳ね返すのは愚策よ」

 

蓮が途方に暮れたように「だったらどうしろって言うの?」と情けない声を出した。「ハーマイオニーの開心術に抵抗するにはあれだけの魔力が必要なのよ」

 

「だから、アレよ、レン! レンが以前言ったことがあるでしょ、『改変された記憶』を逆流させるの、今わたしがやったみたいに!」

 

ぽかんと口を開けて蓮がハーマイオニーとパーバティを見比べた。

 

「レジリメンスに気づかないフリで大事な記憶は内側に閉じ込めて、改変された記憶をアンブリッジに流し込む。悪くないわ」

「・・・パーバティ・・・他人事みたいに。そんな器用なこと出来るのはハーマイオニーぐらいよ? わたくしは基本的に武闘派なの。そろそろわかってもいい頃でしょう」

「ええ、よーくわかるわよ、レン。それがあなたの弱点なのよね? 武闘派で、精神感応系魔法の訓練が不足しているのが弱点。だからハーマイオニーに開心術の訓練を頼んだ。そうよね?」

「・・・はい」

「だからこそハーマイオニーとわたしがこうして弱点を指摘してあげてるのよね?」

「・・・はい・・・わかった、わかったわよ。で、どんな記憶を流し込めばいいの?」

 

ハーマイオニーはパーバティと顔を見合わせて溜息をついた。


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