サラダ・デイズ/ありふれた世界が壊れる音   作:杉浦 渓

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第26章 ダンブルドアの武器

「シリウスおじさん?! シリウス、いないの?!」

 

ハリーが炎の中で忙しく顔を動かす。ハーマイオニーは窓の外を睨みながら、ハリーの気配にも注意を割いた。

 

「そこに誰かいるの?」

「・・・ポッター坊主の顔が暖炉にあります」

 

ハーマイオニーは溜息をついた。シリウスはいない、決まりだ。問題はクリーチャーが何をどこまで正直に話すか。

 

「クリーチャー、シリウスはどこだ?」

「アンドロメダ・ブラックとレギュラス・ブラックの思い出に誓いなさい」

 

咄嗟にハーマイオニーは言った。火格子の向こうのクリーチャーの顔が歪んだ。

 

「なに言ってるんだ、ハーマイオニー?」

「復唱して、ハリー。アンドロメダ・ブラックとレギュラス・ブラックの思い出に誓って、真実を答えなさい」

「わ、わかった。いいか、クリーチャー。アンドロメダ・ブラックとレギュラス・ブラックの思い出に誓って真実を答えろ! シリウスはどこだ!」

「穢れた血が、あの御方たちの名前を呼んだ!」

「クリーチャー、答えろ!」

 

ゼイゼイと息を荒げ、年老いたハウスエルフは答えた。

 

「ご主人様はお出かけです。ハリー・ポッター」

「どこへ出かけたんだ? クリーチャー、どこへ行ったんだ?」

「ご主人様は哀れなクリーチャーにどこに出かけるかを教えてくれません」

 

ハーマイオニーはあちこちに杖先を向けていたが、自分たちが駆け込んできたドアに杖先を向けたとき、ハッと息を呑んだ。呪文が仕掛けられている。隠密探知呪文に間違いない。

 

「ハリー! 急いで!」

「シリウスは神秘部に行ったのか?!」

「そんなことクリーチャーは知らないわ! 聞くなら・・・ベラ様に会ったかどうかを聞いて! それでおしまいよ!」

「ベラ様?! クリーチャー! ベラ様に会ったのか?!」

「ベラ様・・・ベラ様・・・恐ろしい、クリーチャーの首を刎ねる、ベラ様」

「会ったのか?! 答えろ!!」

 

ハーマイオニーは杖先をドアに向けて構えた。

クリーチャーが震える声で、ベラトリクス・レストレンジの名前を繰り返す。

 

「クリーチャー。穢れた血の質問に答えなさい。血を裏切るアンドロメダ・ブラックの思い出に誓って。ベラトリクス・レストレンジに会ったのね?」

「・・・はい、御目にかかりました」

 

バァン! とドアが開くと同時に「エクスペリアームズ!」という叫びが聞こえ、ハーマイオニーの杖は奪われた。

 

憤怒に顔を真っ赤にしたアンブリッジが、暖炉に首を突っ込んだハリーのローブを渾身の力で引き出す。

ハリーの髪を鷲掴みにして、ぐらぐらと揺すった。

 

 

 

 

 

「ネビル!」

 

スーザンはネビルの姿を見つけて駆け寄った。

 

「やあ、スーザン。試験はどうだった? 君、成績良いから羨ましいよ」

「そういうことはハーマイオニーに言うべきだわ。そんなことより、ネビル、首絞めガスにレンも関わってるの?」

 

ネビルは目を丸くして首を振る。「レンならさっき寮で見かけたばっかりだ。シェーマスに象牙のチェスセット、ディーンにクリスタルのリバーシの盤を配ってた。僕も砂漠の草を貰ったんだ。空気中の水分で育つらしい」

 

イライラとネビルの説明を聞いて「関わってないのね?」と確かめると、ネビルは「たぶんね」と苦笑した。そして声をひそめ「たぶんハリー、ロン、ハーマイオニーに何か考えがあるんじゃないかな。魔法史の試験のあと、3人を誰も見てない」と言いかけたとき、短い悲鳴が聞こえた。

 

「離しなさいよ! 離しなさいったら!」

「ジニー!」

 

ネビルが人込みを掻き分けて騒ぎのもとへ向かおうとする。スーザンも後を追った。

 

「ジニーを離せ!」

 

スリザリンの大柄な女子生徒がジニーの襟首を掴んでいる。ネビルはその手首を掴んで「ジニーを離せ!」と丸く人の良さそうな顔を紅潮させて断固として叫んだ。

 

「邪魔するな、こいつ! こいつもどうせポッターの仲間だ!」

「悪いか、ワリントン!」

「逆らうな、ロングボトム!」

 

スーザンは大きく息を吸うと、踵を返して駆け出した。

 

グリフィンドール塔に向かって。

 

 

 

 

 

肖像画の入り口を挟んでスーザンの話を聞いたパーバティは額を押さえた。

 

「パーバティ。このままじゃいけないわ」

「でもスーザン、レンに知らせるのは・・・知ったらアンブリッジを。ね、わかるでしょ?」

「そうならないようにわたしたちがついていればいいわ。ハーマイオニーたちのピンチを知らせないなんてこと・・・しかもそのまま学校を辞めるつもりなのよ?」

 

白いシャツにジーンズ姿の蓮は、暖炉の前で腹這いになって、ディーンに魔女のリバーシの使い方を教えている。マス目を杖先で叩くと石が出現して、目当ての石がいっせいに色を変える優れものだ。

 

「にしし。ディーン、リバーシを甘く見るなよ?」

「君、マジでゲームの類にめちゃめちゃ強いな。ほんとに貰っていいのか?」

「構わないよ。家にはもっとある」

 

パーバティはその様子を眺めて目を閉じた。蓮を止めるのは骨が折れる大仕事だ。

 

「スーザン、かなり大変だけど、手伝ってくれると期待していい?」

「もちろんよ」

「あなたが近くにいれば、そうめちゃくちゃな真似はしないと思うの。わたしはマダム・ポンフリーのところに行くわ。もし大丈夫ならマクゴナガル先生を呼べるし、マクゴナガル先生がダメでも、今この学校でレンが本気で暴れ回るのを止める何かを知ってるとしたらマダムだと思う」

 

 

 

 

 

ミリセント・ブルストロードの馬鹿力で壁に押しつけられながら、ハーマイオニーはアンブリッジを睨んだ。

 

「言うわけないでしょ! 自分の暖炉もミセス・エッジコムに見張らせてればわかったはずよ!」

「あなたのプライバシーより、あたくしのプライバシーのほうが価値があるのよ、お嬢さん」

 

プライバシーが聞いて呆れるぜ! とロンがローブの襟首を引っ張られながら喚いた。「話相手がボーイフレンドじゃないことは確実だ! 愛しのファッジ坊やかい?!」

 

ハリーの顔を机に押しつける、悪趣味な指輪を嵌めた手に力がこもった。

 

「その生意気な口を塞ぎなさい!」

 

クラッブがロンに猿轡を噛ませた。

 

「ニフラーのことだって自業自得だわ! そんな悪趣味な光り物だらけの指、ニフラーに食い千切られても当たり前じゃない!」

 

喚きながらハーマイオニーは壁に押しつけられたまま、ジリジリとルーナとの距離を縮めようとしていた。無抵抗で後ろ手に縛られたまま退屈そうに突っ立っているルーナは、耳に杖を挟んでいる。ルーナを捕らえたスリザリン生が誰だか知らないが、ルーナの癖を知らないらしい。

 

ざらついた壁に擦れて額から血が出ているのかもしれない。ヒリヒリする痛みがズキズキと疼き始めた。

 

「何がなんでも喋らないつもりのようね。ドラコ。スネイプ先生を呼んでいらっしゃい。口の滑りを良くするお薬が必要なようだわ」

 

 

 

 

 

パーバティとスーザンに押さえつけられて、太腿に杖ホルダーを巻かれた。

 

「パーバティ? これはスーザンにあげるつもりで」

「ハーマイオニーかと思ったわ。レン、じっとして」

「ハーマイオニーは脚のホルダーなら自分で持ってるんだ。ショルダーホルスターをハーマイオニーにはあげるよ。ああ、ごめんね、スーザン。せっかく来てくれたのに、パーバティが変なことして」

 

太腿を杖ホルダーで締め付けようと苦心するパーバティをよそに、スーザンは蓮の頭を膝の上に置いている。

 

「レン、約束して欲しいの。わたしを守ってくれる?」

「学校にいる間ならもちろん」

「悪いこともしないで、わたしを守って欲しいの」

「わかった。バレないようにするよ」

 

よし出来た、と呟いたパーバティがそのまま蓮にのしかかってきた。

 

「ぱ、パーバティ? いくらなんでもこの体勢には風紀上の致命的な問題が」

「馬鹿なこと言ってる場合じゃないのよ、王子さま。いい? あなたは王子さまよ。スーザンを連れて、お姫さまを助けに行って」

「わかった」

「この説明でわかるの?!」

「どうせハーマイオニーがしくじったんだ。違う?」

 

しくじったかどうかわからないけどピンチよ、とパーバティが蓮の杖をホルダーに差した。

 

「わたしは誰かアンブリッジを止められる先生がいないか手当たり次第に頼んでみるわ。あなたはハーマイオニーたちを助けに行くの。ただし、スーザンを連れてね」

「・・・危ないよ、スーザン」

「レン、わたしだってDAのメンバーよ。あなたを案内して、あなたについて行くことぐらい出来るわ」

 

スーザンが背中を押し、パーバティが手を引いて、蓮は立ち上がった。軽く頭を振り、2人を見て「無茶なプランを立てるね」と唇を片方だけ上げた。

 

「レン、信じてるわ」

「うん。ハーマイオニーたちを助けてくる」

「そっちじゃないのよ、スーザンが言ってるのは」

「ええ。お願いだから、アンブリッジに手を出さないで。あ、少しぐらいはいいけど」

 

みんなそう言うんだ、と蓮は苦笑した。

 

 

 

 

 

「校長、お呼びですか?」

 

スネイプは部屋の様子をまったくの無表情で見回しながら言った。

 

「ああ、スネイプ先生」アンブリッジが感じの良い、と自分では信じているであろう笑顔を浮かべてスネイプを振り仰ぐ。「ええ。真実薬をまたひと瓶欲しいのですが。なるべく早くお願いしたいの」

 

「ウィンストンの尋問のためにと、3本お渡しいたしましたが。まさかあれを1ヶ月で使ってしまったということはないでしょうな? 1日に1滴しか投与すべきでないと申し上げたはずですが」

 

アンブリッジが赤くなった。

 

「もう少し調合していただけるわよね?」

 

甘ったるい声でアンブリッジがねだる。おえ、とジニーが吐く素振りをしたが、幸いアンブリッジには見えていないようだ。ブルストロードの手が緩む。ハーマイオニーはまたルーナとの距離を数ミリ縮めた。

 

「もちろん」スネイプがフフンと唇を歪める。「通常の真実薬ならば成熟までに満月から満月を要します。今は新月。よって約1ヶ月半で準備出来ますな。ウィンストンに大量に投与した例の真実薬は濃縮に5回の満月を必要としますので、何をするにせよ、半年はお待ちいただきませんと」

 

この回答にアンブリッジが顔を真っ赤に染めて地団駄を踏んで癇癪を起こした。

 

「今欲しいのよ! こいつを尋問したいのっ! 今すぐ!」

 

いい年をした『校長』の癇癪にも表情を変えず、無責任にも毒薬をお勧めしてスネイプが踵を返したとき、ハリーが叫んだ。

 

「あの人がパッドフットを捕まえた! あれが隠されている場所で、あの人がパッドフットを捕まえた!」

 

 

 

 

 

「よっ、と」

 

パーバティが放った失神呪文の赤い光線が、尋問官親衛隊のバッジをつけたスリザリン生の胸に命中して、医務室の前にずるりと倒れた。

 

パーバティはその身体を跨いで医務室に飛び込むと、後ろ手に扉を閉めた。

 

「マダム・ポンフリー」

「パチル、今度は何ですか? またウィンストンが幼児化したとか?」

「いいえ、マダム。マクゴナガル先生のお加減を伺いに来ました」

 

マダム・ポンフリーは腰に手を当て「ポッターにも言ったはずですがね」と溜息をついた。

 

「ミネルヴァ・マクゴナガルの治療には、ここに持ち込むわけにはいかない薬が必要ですから、別の場所に送りました。ここにはいません」

「い、いない?!」

 

いませんよ、とマダムが眉間を険しくした。「あの愚かな『校長』が存在する限り、わたしはこの校内で高度な治療はいっさいいたしません。長い入院加療を要する、もしくは高度な治癒魔法を集中して使用する必要があるなどの生徒は、速やかに自宅に帰し、聖マンゴに行かせます。抗議の辞任はしませんが、抗議のために生徒たちを自宅に帰す工作ならいくらでもしますので、ウィーズリーのなんとかボックスの患者をどんどん寄越しなさい。早めのホリディを楽しませてあげましょう」

 

「いえいえいえ! ズル休みスナックボックスどころじゃないんです! マクゴナガル先生の意識は? 戻ったんですよね?」

「戻りましたが、パチル・・・わたしやミネルヴァをいったい幾つだと思っているのですか。4本の失神呪文をまともに喰らった翌日に、すたすたといつも通り歩き回れるほど若くはないのですよ?」

 

それはそうだろう。

 

「マダム、レンが暴れるのを止める自信は?」

 

絶対に無理です、と断言されてしまった。

 

「誰でも構わないのですが、お心当たりはありませんか?」

「ウィンストンの祖母ならなんとか。あとはミネルヴァですね。ダンブルドアは行方不明だし。なぜそんなことを?」

 

パーバティは腕組みをして頭を振った。

 

「OWLが終わったので、ちょっと浮かれています。万が一の時にどなたに知らせるべきかと」

 

マダム・ポンフリーはじっとパーバティの目を見つめた。

 

 

 

 

 

ハーマイオニーは必死で首を捻って「それは違法です!」と叫んだ。

 

ハリーに杖を向け、いやらしく意地汚く興奮した表情のアンブリッジがペロリと自分の唇を舐める。

 

「アンブリッジ先生、大臣は先生に法律を破って欲しくないはずです!」

「知らなければコーネリウスは痛くも痒くもないでしょう」

 

アンブリッジは言い放った。

呼吸が荒い。杖先をハリーの身体のあちらこちらに向け、どこに磔の呪文を当てれば一番苦しめることが出来るかを考えて興奮しているのだ。

 

変態だ。

 

「この夏、ディメンターにポッターを追えと命令したのがこのあたくしだと、コーネリウスは知らなかったわ。それでも、ポッターを退校にするきっかけが出来て大喜びしたことに変わりはない」

 

やっぱりだ! とハリーが叫んだ。「レンのママの言った通りだったんだな?!」

 

「お黙りなさい! レイ・ウィンストン、邪魔な女だわ。いつもいつもあたくしの邪魔ばかり。今度はそうはいかない。あたくしの学校で起きることに手出しはできないからね!」

 

アンブリッジが杖を振り上げた。

 

「クルー」

「やめてーーー!!」

 

ハーマイオニーは渾身の力で叫んだ。

 

「やめてハリー! 白状しないといけないわ!」

「絶対ダメだ!」

「白状しないと、ハリー、どうせこの人はあなたから無理やり聞き出すじゃない。なんで・・・なんで頑張るの?」

 

ミリセント・ブルストロードの巨体の影で、ハーマイオニーはルーナから腕一本ぶんの距離まで近づいていた。

 

「ほう、ほう、ほう!」アンブリッジが勝ち誇った顔になる。「ミスなんでも質問のお嬢ちゃんが答えをくださるのね! さあ、どうぞ、嬢ちゃん、どうぞ!」

 

「アー、ミー、ニー! ダミー!」

 

猿轡を咬まされたまま、ロンが叫ぶ。

 

「絶対言うなハーマイオニー!」

「ダミー! アーミーニー!」

「この女がそれを利用しないとでも思ってるのか?! 意地汚い権力ババアだぞ! 見てみろよ、この顔! 変態だ!」

 

アンブリッジがハリーを睨み、尋問官親衛隊がぽかんとハリーを眺め、ブルストロードの手が緩んだ。ハーマイオニーは素早くルーナの杖を拝借した。ルーナがきょとんとした顔を向けたが、すぐに窓の外に視線を戻した。

ハーマイオニーはローブの袖に杖を隠し、また壁に自発的に顔を押し当てた。

 

「言ってしまえばいいじゃない! わたしたちが見つけ出せないんだもの! この人たちにダンブルドアは探し出せっこないわ!」

 

 

 

 

 

闇の魔術に対する防衛術の教授の部屋の前には尋問官親衛隊が3人立っている。

 

ふうむ、と蓮はスーザンに向かって言った。「あいつらをぶっ飛ばしてドアを蹴破るのと、リーがニフラーを入れたみたいに窓から飛び込むのと、どっちがカッコいいかな?」

 

「どっちもカッコいいわよ、あなたなら。でもハーマイオニーたちを逃がさなきゃいけないわ」

「じゃあ窓からだね」

 

にしし、と笑う蓮を見て、合わせて微笑みながら、スーザンは、もしかしたら自分はとんでもない最終兵器のスイッチを押したのではないかという不安に襲われた。

 

蓮に手を引かれて外に回り、アンブリッジの部屋の窓に近づくと、中の様子がそれとなく見て取れる。

 

「ルーナがいるわ」

 

蓮に囁くと、蓮も頷いた。

 

「あの癖はやめたほうが良いよね。耳に杖を挟むやつ。可愛いのに事故が起きたら顔をやられる」

 

確かに、とスーザンが頷いてルーナの耳の杖を視界に入れたとき、それが誰かによって抜き取られた。

 

「レン! ルーナの杖が奪われたわ!」

 

むう、と蓮が唇を尖らせた。

 

 

 

 

 

「わたしたち、わたしたち、知らせたかったんです。あれが、で、出来たって!」

 

ハーマイオニーが言うと、ロンがまだ顔を真っ赤にして「アー! ミー! ニー!」と喚いている。おかしい。ハーマイオニーに考えがあることはいくらなんでももう伝わったはずなのに。

 

「うるさい!」

 

アンブリッジがロンに杖を向けた隙にルーナが「来た」と小さな小さな声で囁いた。

 

「え?」

「マートルのボーイフレンド浮気中」

 

歌うように「ルーニー」らしく言う。ハーマイオニーはくらくらと目眩を覚えた。おとなしくしていて欲しかったのに。しかも浮気中ということは誰かを連れてきたということで・・・。

 

「グレンジャー、早くおっしゃい!」

「あの・・・ぶ、武器、です」

 

ハーマイオニーの計画と狂ってしまったが、もうこの芝居を続けるしかない。

 

「武器? 武器! ダンブルドアの命令なのね? もちろん魔法省を攻撃するためのものね?! どうなの?!」

「は、は、はい。そうです。いいえ、本当のところはわかりません・・・言われた通りに作っただけで」

「どんな武器なの?!」

 

もはやアンブリッジはミリセント・ブルストロードを押し退けて、ハーマイオニーの両肩を掴んでガクガクと揺さぶっていた。意地汚い顔が、涎を垂らさんばかりに欲望を剥き出しにしている。ダンブルドアを栄光から追い落とし、ファッジ、そしていずれ自分があらゆる権力を掌握出来ると思っているのだ。

 

ガシャーン! と窓が割れた。

 

タン、とハーマイオニーの隣に誰かが降り立った。誰かを確かめるまでもない。

 

「こんな武器だよ」

 

蓮がアンブリッジの眉間に杖を突きつけた。


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