サラダ・デイズ/ありふれた世界が壊れる音   作:杉浦 渓

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第10章 パーティへの招き

スラグホーンの部屋を訪ねて、ひいじいの論文を渡すと、ずいぶん喜ばれた。

 

「さあさあ入りたまえ。オーク樽熟成の秘蔵の蜂蜜酒があるのだよ」

 

ソファに座らされた蓮は苦笑して右手を軽く挙げた。

 

「祖父から先生の蜂蜜酒のコレクションが素晴らしいとは聞いています。いずれ体調の良い日に改めてご相伴にあずかりたいものですが、最近少し体調を崩しておりますので」

「なに? それはいかん、どんな症状かな?」

「いえ、単なる慢性的な睡眠不足です」

 

スラグホーンはパタパタと部屋を歩き回って、蓮の前に温かい蜂蜜入りのチャイと、魔法薬の小瓶を出してくれた。

 

「魔法睡眠薬ほどではないが、安らかに熟睡出来る。寝る前には難しいことを考えずに、リラックスが大事だ、ミス・ウィンストン。甘いホットミルクを飲みながら、リラックスしてきたところにこの薬を飲む。そういう日もたまには必要だと思うよ」

「お気遣いありがとうございます」

「そのチャイをゆっくり飲みながら聞いて欲しいのだが・・・ミス・ボーンズと君は、寮は違うが親しいとか?」

 

蓮はひと口飲んで頷いた。

 

「大切な友人のひとりです」

「彼女は、こう・・・伯母上のことを聞いてパニックになるような時期はもう過ぎただろうか」

「内容によるとは思いますが、古い友人としてマダム・ボーンズにお悔やみをという程度ならば、取り乱すことはないと思います」

 

むうん、と膨らんだ腹の上でスラグホーンが唸った。

 

「スラグホーン先生?」

「アメリアによく似ている・・・ハッフルパフ生らしい寛大な、柔和な生徒だった。アメリア・ボーンズ。成績が非常に優秀でね。穏和で内向的だが、その分、落ち着いて勉学に励むことを習慣にしていたのだろう。魔法省を志望していると聞いたから、アメリアをスラグ・クラブに招くことにした。ボーンズ家は古い名家だが、極めて穏やかな家柄でね。政治的な影響力とは無縁だ。アメリアのような優しい子が地位を得るには、コツコツと努力するだけでなく、少々人付き合いに慣れたほうが良いと思った。余計なお世話だと思うかね?」

 

いいえ、と蓮は微笑んだ。「ただ少し意外に思います。華やかな大舞台向きの生徒がスラグ・クラブには多いようですから。あとはスリザリンの学生」

 

スラグホーンはパタパタと手を振った。

 

「私も現状には満足しておらんよ、君。昔のスラグ・クラブのことは聞いているだろう。あのような集まりにしたいものだが、儂が退職して以来、寮と寮とが勉学やスポーツで競い合うばかりでなく、社交の場でも対立を顕にするようになってしまったようだ。主義主張の対立を、ひとまず胸に収めて楽しい時間を過ごす努力、これはこれで必要だと思わないかね」

「思います。祖父からも重々言い聞かされてきました。紳士たるもの、他寮の学生に対しても寛大であれと」

「おお、ウィリアムは紳士だった。ウィンストンの嫡男がハッフルパフというのは意外だったが、そういう側面はたしかにハッフルパフ的気質だ。だがウィリアムは特殊だね。ウィンストン家の躾によって紳士に育ったのだ。家柄を考えれば当然だが。それ以外のケースでは、こういう寄宿学校の中で紳士が出来上がっていくのが英国的な教育だと私は思っているよ」

 

蓮は頷いた。

 

「そうでしょうね。友人のミス・グレンジャーのご両親はマグルですが、あのお2人の学生時代のお話を伺っていると、そう思わせられます。いずれも名門のパブリックスクール、インディペンデントスクールですから、英国紳士淑女を輩出する教育は細かいところまで行き届いていたようです」

「その通り! ホグワーツは魔法学校としては優れているが、まあ、優れているもへったくれもない、英国唯一の魔法学校なわけだ。そこで紳士たれという教育を怠ると、魔法界全体の質が低下するような危惧が否めない」

「そこは、校長先生よりもむしろスラグホーン先生の得意分野でしょう」

 

蓮の言葉にスラグホーンは腹を揺すって笑った。

 

「まったく。アルバスも同じことを言いおった。こう言ってやったのだ『おいおいアルバス。今時の若者ばかりとはいえ、テーブルマナーも知らん学生が90%を占める大広間の食事風景など、ホグワーツで見ることになるとは思わなかったぞ!』とね。アルバスは『そこじゃよ、ホラス。君がおらねば、ホグワーツで紳士を育てることは非常に困難じゃ』」

「では、校長先生はスラグ・クラブの再開を歓迎していらっしゃるのでしょう」

 

それは問題なくね、とスラグホーンがウィンクした。「アルバスが特に望んでいるのは、寮を超えた友情だ。確かに、スラグ・クラブの常連たちは寮の垣根を超えた友人関係を持つことが特徴だった。それで君とミス・ボーンズの話を聞いたわけだ」

 

身を乗り出して、スラグホーンは蓮の顔を覗き込んだ。

 

「アメリア・ボーンズのことは非常に残念だった。まだあの子が作った完璧なフェリックス・フェリシスの豊潤な輝きを思い出す。優しさ、寛大さ、同時に才能と知識に溢れていた。魔法省で出世していくのは意外ではあったが、アメリアが生来持っていた美点ばかりでなく武器を手に入れれば、それも頷ける話だ。私がミス・ボーンズとそうした話をすることに、君は賛同するだろうか」

 

もちろんです、と蓮は頷いた。

 

「ああいうおとなしげな子だから、アメリアのことを急に持ち出すのは不躾な気がして、なかなか踏み出せずにいたが、君が私とミス・ボーンズの間にいてくれるなら、私も気兼ねなく伯母上の若い頃の話を聞かせてあげられると思うのだが?」

「お許しがいただけるのなら、必ず連れて参ります」

 

それからスラグホーンは招待を考えているグリフィンドールの生徒の名を挙げた。ハーマイオニーとパーバティの名前が挙がったことに内心胸を撫で下ろす。

 

「それでだね、君がミス・ボーンズを連れてきてくれるなら、他の子たちにもパートナーを同伴してくるように設定しようと思うのだよ。いつものスラグ・クラブより、少し正式なディナーを考えている。聞くと君は男性用のドレスローブを着てのエスコートが得意のようだ。ドレスローブ着用の正式なパーティ。どうかね?」

「6年生以上はドレスローブを持っていることは確かですから、少し時間に余裕のある招待なら対応できると思います、が・・・わたくしが男装することは決定なのですか?」

「うむ、見てみたいではないか。柊子と怜の娘が、ウィリアムやコンラッドのような紳士として振る舞うのだからね」

 

 

 

 

 

クァッフルを抱えて遅くに帰って来たロンに、ハリーは「練習するなら言えよ、付き合うから。ひとりじゃ基礎トレーニングしか出来ないだろう」と言ってクァッフルを受け取った。

 

「いや、大丈夫だ、ありがと。ハーマイオニーがいくつか呪文を教えてくれたから、それをクァッフルに使って、クァッフルが自動的にゴールを狙うようにしたんだ。あいつ、そういうところに気が回るからさ」

「ハーマイオニー推薦の魔法なら安心だな。円卓会議で大変だろうに、よく君のことを見てくれてる」

 

ネビルがミンビュラス・ミンブルトニアの針を抜きながら呟く。

 

「ロン、君はハーマイオニーときちんと付き合うことは考えないのかい?」

「はあ?」

 

考えもしなかったという顔でロンは起き上がった。

 

「い、いきなり何言い出すんだ、ネビル。君、自分がハンナ・アボットと付き合ってるからって、見境なく周りの人間をくっつけるのはやめろよ」

「いや。僕もネビルに同感だ」

 

ハリーはロンのポケットから落ちた羊皮紙を取り出して開いた。

 

「こういう形で君の力になってくれる人は、大切にするべきだよ、ロン」

「だからって・・・飛躍し過ぎだろう?」

「ハーマイオニーがクラムとキスしたことが気になるのか? 何年前の話だよ。仮に交際してたとしても短期間だ。それを追い越すぐらいキスすれば解決する問題だ」

「・・・やっぱり、したのか?」

 

ハリーとネビルは顔を見合わせて溜息をついた。

 

「ハーマイオニーもレンも、そのへんのことを僕たちに報告するような女の子じゃない。レンはもはや女の子かどうかも怪しい。むしろ人間かどうかさえ怪しくなってきた。でも・・・僕はクラムのハーマイオニーに対する態度を見てるから、したんだとしても不思議じゃないよ」

「僕もそう思う。ハンナと僕は、まあ、お互いに初めてだったけど、それはそれでタイミングとかいろいろ、難しいもんなんだ。ハーマイオニーが経験済みなら、君の肩の荷は少し軽くなるだろう」

 

ネビルの言にハリーは軽く首を傾げた。

 

「いや、それは余計にプレッシャーだろ? 例えば、例えばの話だけど、何人ものボーイフレンドがいた女の子にキスをすると考えると、僕は・・・」

「ハリーだってチョウとキスしたじゃないか」

「いや、チョウじゃなくて・・・いやチョウだ、チョウの話だ。チョウからされたけど、多少は複雑な気分だったよ。ディゴリーがこういうタイミングでキスする野郎だったんだなってわかっちゃうじゃないか」

 

ベッドの上に胡座をかいて、ロンは膝に頬杖をついた。

 

「・・・自慢してるのか? そうさ。僕は女の子とキスしたこともないチキン野郎だよ、悪かったな」

 

 

 

 

 

「・・・それで?」

 

談話室に蓮を呼び出すと、枕を抱えて据わった目をして降りてきた。

 

「君は経験ある・・・のか?」

「ジョージと? してたよ。あと、ハーマイオニーやパーバティ。スーザンにもしたし、ママにもね。キスなんか簡単じゃないか。さっさとすればいいだろ。あ、マートルとのキスには成功したことがない。通り抜けるから。ゴースト相手のキスは困難極まりないが、人間相手なら簡単だ」

「ハーマイオニー、とも?」

「うん。ハーマイオニーは、ノリが悪くて下手くそだけど、押し倒して押さえ込めば一時停止するから、その隙を狙え」

 

ハリーは痛み始めた頭を振った。

 

「それは君がアルジャーノンになっていた間に必要だったスキンシップだよな」

「うん、そういう感じだね。ハーマイオニーやパーバティが絡みついておでことかほっぺたにキスするから仕返しをしたんだ」

「・・・ロン、やるか? 練習だ」

 

やめろ、とロンが後ずさりした。

 

「あー。まあ、練習は悪くないんじゃないか? ハリーだって経験不足は否めないから、2人で練習すればいい。ただし、自分たちの部屋でな。見てると気持ち悪い」

 

ぱたん、と枕を抱いてソファに横になった。

 

「おい、レン、ここで寝る気か?」

「少し。数分熟睡すれば、1時間は稼動可能になる」

 

すやあ、と眠りに落ちた蓮を見て、ハリーとロンは向かいのソファで監視することにした。人間なのか女の子なのか定かではないが、一応の見た目は、中性的な美貌のレディである。無防備に寝ているのを放置は出来ない。

 

「今の言い方、レン、睡眠時間を削って何かやってるってことだよな」

「ああ。数分寝て、1時間頑張って、また限界が来たら数分寝てってのを繰り返してるんだろ。無理してるんだ」

 

ハーマイオニーもだよな、とロンが呟いた。

 

「きっとそうだな。ハーマイオニーがレンにだけ無理させるとは思えないし」

「だったら僕のことどころじゃないだろ」

「ロン」

「ハーマイオニーのそういうところは、良いところだと思うよ。大事な役割があるんだし、そのために責任感じて頑張ってる。そんな時に、余計なちょっかいを出すのは、どう考えてもダメだろ、ハリー」

「余計なちょっかいなら、ダメだと思う。でも、きちんとした支えになるのなら、今それが必要な気がする」

 

要らないよ、とロンは無理して笑った。「僕と違ってさ。そんなプレッシャーに負けるようなタマじゃないんだ、ハーマイオニーは」

 

「何言い出すんだよ、ロン」

「僕はさ、パパとママのこと、誇りに思う。ああいう夫婦になりたい。あんまり出世するタイプじゃないけど、2人でたくさんの子供を育ててきた。それが僕たち兄妹の幸せだ。僕はさ、パパとママみたいになりたいんだ。君たちは僕の親友だ。レンとハーマイオニーがこの国の魔法界を背負って、君はその鍵を握ってる。君たちのことが大事だから、もちろん僕も戦う。でも、その後にはなあ。ヒラでもいいから闇祓いとしてきちんと仕事して、家庭をママみたいに守ってくれる女の子と結婚して子供が増えて。そういう感じが僕の理想的な将来だ」

「君んちみたいな家庭は僕も理想的だと思うよ。でも、形にこだわるのは良くない。おじさんやおばさんみたいな夫婦って、別に奥さんが仕事してちゃダメなわけじゃないだろ」

「・・・ママのことで、一番偉いなと思うのは、パパを最優先するとこなんだ。『お父さまがお帰りになったわ、みんなおかえりなさいと言いに降りてきなさい!』ってやつ。イラつくけど。現実にはウチは貧乏なんだけどさ、ママはその現実には愚痴を言うけど、パパのこと責めるような言い方は絶対にしない。100%パパの味方なんだ。ハリー、それが僕の理想的な奥さんなんだよ」

 

10分経ったな、と呟いてロンはレンが寝ているソファの傍らに跪いた。

 

「おい、レン、起きろ。10分寝たぜ? とにかくいったん起きろよ」

 

ジニーが談話室に降りてきて、ハリーの隣に座った。

 

「レンったら、こんなところでよく眠れるわね」

「疲れてるんだよ」

「それはわかるけど・・・クィディッチを辞めたりなんかしないわよね?」

「しないよ。選抜テストもちゃんと受ける。いろいろ大変なのは確かだけど、クィディッチが好きなのも本当なんだからね」

「わたしがもっとアンジェリーナからテクニックについて学んでおくべきだったのよね」

 

ハリーは驚いてジニーを見た。

 

「あなたは優秀なシーカーよ、ハリー。でもピッチの中のことには詳しくない」

「あ、ああ、そうなんだ。作戦を考えようにも、オリバーやアンジェリーナみたいにはいかないって痛感してるところだ」

「それはレンが補うことができるわ。グリフィンドールのチェイサーのテクニックは、レンが一番理解してる。わたしがそれに追いつければいいのにって思うの。あなたやレンの負担をシェアできるのに」

「ジニー・・・」

 

ハリーはジニーの横顔を見つめて言葉を失った。

 

 

 

 

 

ジニーが担いで引きずってきた蓮を引き取って、ハーマイオニーは溜息をついた。

 

「そろそろ限界ね。しばらく休ませましょう」

「さっき唸って考えてたのは、ダンブルドアの話についてだったわね。それを棚上げにして休むかしら」

「今考えても答えは出ないわ。データ不足よ。ハリーの意思も確かめなきゃいけないことだし。でも・・・そんな予言があったなんて」

「あなたたち、占い学を冷ややかな目で見てるくせに、その予言を気にするの?」

 

蓮の頬を指で押して唇を薄く開けさせたパーバティが、スラグホーン謹製の安定剤を僅かに流し込んだ。

 

「鵜呑みにするつもりはないわ。でも、予言を待つまでもなく、トムくんはハリーを殺すつもりで攻めてくる。それは確かよ。もともと想定してた。でも、そんな予言を知ってしまうと、プランを慎重に再検討する必要を感じるの。レンの言い草じゃないけど、落とし穴がないかどうか。実際にひとつ落とし穴は見つかったし」

 

パーバティがタオルで蓮の口元を拭いて、毛布をかけてやった。

 

「強化版魔力減衰薬の完成、ね。その魔法薬、いったい誰が開発したの? その人に協力を頼めないかしら」

「おばさまが、近々、その魔法薬の考案者の論文を送ってくださる予定よ。考案者本人は、こういう殺伐とした使い方は想定してないみたい。だから、強化版を作り出すには、その論文を叩き台にして、強化版の理論を構築して、実験を重ねる必要があるし・・・ひとつ大きな問題がある」

「・・・今度は何よ?」

「重要な素材のひとつの産地が放射能に汚染されたの」

 

重大な発言をしたつもりだったハーマイオニーは、パーバティのきょとんとした顔を見て、深い深い溜息をついた。

 

「レンのひいじいは天才的な発想の転換をもたらしたわ。世界中の素材を検討して魔法薬に用いること。でもそれは、世界の、イギリスから遠く離れた地域の、マグルの出来事と、密接な関わりを持つことに繋がるのよ、パーバティ。ウクライナの原子力発電所、ウクライナのマグルの生活を支える電力を生産する施設で事故が起きた。原子力発電をする時に発生する放射能という有害物質が、有害なだけじゃなくて有益な使い道もあるけど、とにかく不用意に扱ってはならない物質が漏れてしまったの。イメージしにくい?」

「全然わからないわ、ハーマイオニー」

 

ハーマイオニーは頭を抱えた。

 

「つまり・・・バジリスクの毒よ、パーバティ。バジリスクの毒に置き換えて。バジリスクの毒を使って、マダム・ポンフリーが効能の高い魔法薬を作っていた。そう考えましょう。ところが、事故が起きて、バジリスクの毒が大気中に飛散した。マダム・ポンフリーの研究所周辺は、バジリスクの毒まみれ。薬草もね。その薬草を使って、魔法薬なんて作れると思う?」

「マダムなら喜んでチャレンジすると思う」

「・・・ごめんなさい、例えが悪かったわ」

「まあ、だいたいのことは理解した。要するに、大事な素材が使えなくなったということね。代替素材は存在しないの?」

 

探している段階だそうよ、とハーマイオニーは頭を振る。

 

「探すといっても、世界中の情報が必要になる、ってわけね。ダイアゴン横丁じゃ解決しない。そういう観点から考えると、レンやあなたがイギリス魔法界は致命的に世界に遅れを取ってるって言ってる意味が実感できるわね・・・」

「そうね。もちろん優秀な人は、個人的に海外で経験を積んでいるでしょうけど、そういう人は今のイギリス魔法界に帰ってきて、こんな騒動に進んで関わりたくはないと思う」

「イギリス魔法界には、そんなに魅力がないかしら」

 

何かあると思いたいわね、とハーマイオニーは力無く微笑んだ。「でも、現状は、魔法を広く研究して発展させることができる環境ではない。闇の魔術ならトムくんを喜ばせるかもしれないけど、それだって綱渡りよ。トムくんが嫉妬するような成果を上げたら潰されるに決まってる。去年のアンブリッジの授業を思い出してよ。わたし、あれが今の魔法界で権力を握る大人の本音かもしれないと思ったことがあるわ。魔法省推薦の教科書を読むだけ。それ以上の能力を持つ人物は、権力者にとっては邪魔な存在なのよ。アンブリッジは極端過ぎたけど、ああいう体質が魔法界に蔓延してるからこそ、あの女が出世出来たんだと思う」

 

パーバティは疲れたように、首と肩のストレッチをした。

 

「とにかく、クールダウンが必要よ、ハーマイオニー。煮詰まってると良いことは何もないわ。レンだけじゃなくあなたもね。トムくんとの戦争はともかく、あなたとレンの責務はもっとずっと長く続くんだから」


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