サラダ・デイズ/ありふれた世界が壊れる音   作:杉浦 渓

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第14章 経済封鎖

『満月の翌々日の今日は、本当に残念なニュースがある。ヨークシャーの森で女性が遺体で発見された。性的暴行の果てに、身体中いたるところに噛み傷が残されていた。女性はマグルのようだが、噛み傷はイヌ科の大型肉食動物とのことだ。性的暴行を働いたのは体液からヒト科のオスだと断定出来る。マグルの警察は暴行犯によって襲われて気を失ったところを、イヌ科の大型肉食動物、つまり狼みたいな何かに噛みつかれて出血多量で死亡したという路線で捜査してる。この被害女性の冥福を祈ると共に、潜伏してるみんなもこういう危険を心して欲しい。エリザベス3世はこの事件に対してこう言ってる。『死喰い人の親玉は楽な商売だ。人狼病患者への偏見なんて心配せずに、満月の夜の人狼を自分や幹部から遠ざけるだけ。わたくしは被害女性の冥福を祈り、潜伏先にせっせと脱狼薬を配り、満月の人狼病患者を完璧に隔離する施設をせっせと作っているのにね。楽でいいなあ』我らが守護天使エリザベス3世のご機嫌はこの通り、非常に麗しくない。死喰い人の親玉が、満月の人狼をアジトの外に追い出すせいでこういった事件が起きると考えているからだ。死喰い人の親玉のせいで自分の仕事が増えるとご機嫌斜め。だから、まともな魔法族の人々には、円卓の騎士団からの頼みがある。アシュヴィン・ワンが円卓の騎士団における今のところの医療政策担当者だ。今日はアシュヴィン・ワンの話を聞いてくれ』

 

 

 

 

 

温室の中にある休憩スペースでアフタヌーンティーを囲みながら、蓮は説明した。

 

「リヴァプールの家でもうまるまる5ヶ月になるだろう? マルフォイからの報告では、まだ狂犬ベラの思い込みの段階のようだけれど、1箇所に長く潜伏し過ぎたことも確かだから、この機会に滞在先を変更する。これは構わない?」

 

ハーマイオニーは頷いた。もちろんハリーもロンも。

 

「ホークラックスの隠し場所を確保出来て助かったよ。こんな風に急遽河岸を変えることもこれからは増えるだろう。レン、僕らの潜伏先の手配は可能なのか? 無理はしないでくれよ。難民を保護するほうを優先してくれ」

「いや。難民については、ほとんどがコーンウォールで保護出来るようになったから、気にしなくていい。むしろ君たち、特にハーマイオニーがいる以上、野宿は厳禁だ。死喰い人側では、人狼を戦力として集めているくせに脱狼薬なんて手配してやる気がないものだから、満月であろうとなかろうと、夜はマルフォイ邸から人狼を追い出すんだ。去年からずっとヨークシャーのあちこちで女性が性的暴行を受ける事件が頻発しているのは円卓会議でも話しただろう? 原因はこれだ。今年はさらに、おそらくハーマイオニー捜索隊という大義名分を与えて、やっぱり夜は外に追い出す。こんな状況で君たちを野宿なんてさせるわけにはいかない。潜伏先は必ず手配する。野宿したがる手のかかる頑固者はテッドおじさまだけで充分だ」

 

ロンが苦笑した。

 

「テッドおじさん、まだ頑張ってるのか?」

「ああ。『おじさんのことは心配するな。あちこちの山の中で出会った逃亡中の魔法族に、君たちの保護活動を知らせて回ってるだけだ』孫が生まれるんだから安全な場所で待ってろといくら言っても聞きやしない」

「ミスタ・トンクスは恩返し中なんですって。奥さまと駆け落ちして、お嬢さまが生まれるまで、やっぱりベラトリクスに追われていらしたから。リヴァプールの家で暮らしたり、デヴォンの家に引っ越したりしたけど、全部友人・知人たちが手伝って守ってくれたんだから、今度はご自分に出来ることをしたいと思ってらっしゃるの。実際にミスタ・トンクスの助言のおかげで助かった難民はたくさんいるわ。魔法使いとマグル両方のサバイバル術のインストラクターよ」

「もうそろそろ恩返しを切り上げて、孫の顔を見るために自分のことを考えろって僕からの伝言を伝えといてくれ、レン」

「いつも言っている。とにかく! 新しい潜伏先はワイト島にする予定だ。うちの別荘だけれど・・・ハーマイオニー、頼むから騒ぐなよ?」

 

ハーマイオニーは「失礼ね。TPOは心得ているわ」と澄まし顔で言った。

 

「オズボーン・ハウスの中にある」

「何ですって?! ああ、そうね。ウィンストン家は王室護衛官だから。ヴィクトリア女王の静養時には近くに住まなきゃいけなかったからよね! それって大丈夫なの? オズボーン・ハウスをまるごと結界にするなら、わたしも観光していいかしら?」

 

ハリーとロンは口をぽかんと開けた。スーザンは微苦笑を浮かべたままだ。

 

「・・・これがこの人の《TPOの心得》だから、あまり使いたくない場所なんだ・・・ハリー、ロン、ヴィクトリア女王の夏の離宮として整備されたのがオズボーン・ハウスで、ヴィクトリア女王の死後は国の所有。海軍幼年学校とか病院に使われた建物もある。そのオズボーン・ハウスの広大な敷地の中に、うちの別荘がある。今ハーマイオニーが言ったように、女王が夏の数ヶ月を暮らしていた離宮だから、うちの先祖も同行することが多くてね。リヴァプールの家程度には整っているから、暮らしには今まで同様の注意を払ってくれればいい。厄介なのはハーマイオニーの興奮状態だけだ」

「立地が立地だから・・・追手の死喰い人が王室の財産に粗相でも働こうものなら、それこそレンはウェンディから皮を剥がれかねないわ。国有財産になったと言っても、まだ王室所有のものも多少は残ってるし。最初からあなたたちにしか貸さないつもりだったから、他の難民支援には影響しないわ。ただその・・・ハーマイオニーの知識欲を刺激し過ぎるから、レンが今まで躊躇っていたの。ハリーとロンの負担になりそうで。ワイト島にはそもそも他にもたくさんの名所があるし」

「平和な時期ならハーマイオニーを黙らせるにはワイト島に監禁すればいいと言うところだけれど、しばらくはワイト島観光は我慢させてくれ。ハーマイオニー! ここからが本題だぞ!」

 

倉庫をひっくり返すような音を立てて自分のパースの中の蔵書をオズボーン・ハウスの参考資料として探していたハーマイオニーの襟首を掴んで、テーブルにつかせた。

 

「こちらがホークラックスを探しているように、あちらはウィンストンの剣を探している可能性が高くなった。ロスの当主にもウィンストンの当主と同等の魔法的権限があることまでは確実に知られていると考えていい。ここまでは大丈夫?」

「グレンジャーの血でホグワーツ城をどうのこうのって奴だな。理解してる」

「そういう狙いなら、わたくしの血よりもハーマイオニーの血を渡さないことが最優先だ」

 

ハリーが眉をひそめた。

 

「なんでだい? どっちもダメだろ」

「わたくしの血を奪っても、ハーマイオニーの血が無ければ役に立たないからだ」

 

鞘だな、とロンが肩を竦めた。「ハリー、君が出席しなかった円卓会議の内容だ。ロスのレガリアはウィンストンの剣の鞘なんだよ。ウィンストンとロスが揃っていなきゃ強権発動は出来ないけど、一番の隠された鍵は剣と鞘の関係にある。鞘の承認が無ければ、剣は光らない。レンが言ってるのは、ハーマイオニーの血がウィンストンの剣の発動まで絶対に隠されているべき鍵だということさ」

 

「な、なるほど」

「ハーマイオニーを含めて君たちは、ホークラックスの問題に集中していて構わない。わたくしがハーマイオニーに変身して行動し、マルフォイに手土産を持たせることにする」

「マルフォイは、君のことも狙ってると言ってただろう。ハーマイオニーに変身しなくてもいいんじゃないか?」

 

ロンの疑問に今度はハリーが首を振った。

 

「レンだとわかったら、別の危険が生じるからさ。ホムンクルスを作る時には『敵の血』が必要になる。この『敵の血』に付加価値があれば尚良いと考える。それが僕の血を奪って復活しようとした理由だ。日記帳の時のことを思い出しても、あいつはレンの肉体を器にしようとしただろう? 今度ホムンクルスを作るなら、レンの血を使いたがる。ハーマイオニーの血は、使いたがらないはずだ。マグル生まれだからな。でも、レン、僕もグリーングラスの報告を聞いた時には、ホムンクルスのことが思い浮かんだけど・・・よく考えたら、もうホムンクルスは作れないだろう? 『父の骨』がない。あ、いや、あるにはあるけど、あの村の墓場で赤の他人の墓石の下に殆どが移されたんだから」

「『父の骨』は、言葉そのままの意味じゃないかもしれない。『父祖の骨』という解釈なら・・・ゴーントの小屋の下に山のように材料が残されていることになる。言っただろう。ラテン語やルーン語で記述されたレシピだ。パパの骨と記述してあるわけじゃない。誰を示すかは曖昧で解釈の余地が残るものだ。そして実際に、赤の他人の骨が主体でもホムンクルスは出来た。不完全な身体ではあっても、魔力を振るうのに支障ない程度には復活出来たんだ。赤の他人ということはアレは知らないけれど、マグルの父親の骨で可能なことなら、母方のゴーント家の骨でも出来ると考える可能性は低くない。アレはまたホムンクルスを作ることを考えていると、わたくしは判断する。容貌が異質なだけならまだしも、不完全さは許し難い欠陥だろうから」

「でも君は、公式設定では女の子だ。『敵の血』は性別を決定するから、公式設定を基礎にすると、ヴォル坊やじゃなくてヴォル子ちゃんになっちまうぜ? ベラトリクス・ハニーはそれでもいいのかい?」

 

狂犬ベラの好みなんかどうでもいい、と蓮は頭を振った。「アレは、この手の禁術を1回限り、1個限りと抑制しない。皮剥ぎエリックでさえ持っているブレーキの持ち合わせがないんだ。禁術、禁忌を蹂躙することが自分を強くすると考える傾向がある。ホムンクルスならなおさらだと思う。ハリーの血に流れる『護りの血』を自分に取り入れた。次はホグワーツ城を奪るための『ウィンストンの血』だ。新たな『敵の血』を取り込むたびに強くなるイメージが湧かないか?」

 

しばらく黙っていたハーマイオニーが溜息をついた。

 

「そちらの問題はレンに任せましょう。わたしの感想はひとつだけ」

「なんだよ?」

「レンの血で出来たホムンクルスの身体で生きていくのは、ものすごく苦労すると思う。ホムンクルスを作るなら、わたしの血のほうがまだマシよ、実際のところ」

 

スーザンも口元を隠して笑い出した。

 

「ウィンストンの血しか頭にないなら、とんでもないことになるわね。当然ながら、菊池一族の闇の魔術アレルギーも引き継ぐことになるし・・・で、デラクールの血も流れて・・・ダメ、笑ってしまうわ」

「『姫さま』のつもりで暮らしていたら、ある日突然『うわぁ! 何か生えてる! スーザン、ハーマイオニー! ちょっと来て!』3本目の脚が突然生えて、目覚めたら朝から超元気よ。わたしとスーザンは予想してたから、なんとか切り抜けたけど。ヴォル子ちゃんに同じことが起きたらもう大変ね・・・純血混血どころの騒ぎじゃなくなるわ。『ウィンストンめ! 俺様を人外の生物にしおって!』」

 

ハリーとロンは、唖然として蓮に視線を向けた。

 

「・・・ついに生えちまったのか?」

「1週間に1度ぐらいは生えている日があるというだけだ。いったんブランカに変身して、また人間に戻ればちゃんと消えているから、問題ない」

 

ぱんぱん、とハーマイオニーは手を叩いた。

 

「まあそのことはアレは知らないから、わたしとレンのどちらかの身柄を求める場合、わたしを捕獲してもホムンクルスには使わないだろうという推測は的外れじゃないと思う。ロスのレガリア問題を考えたら、わたしの身柄を確保されるのは、確かにレン以上に危険ね。だから、レンがわたしに変身して、マルフォイの手土産を用意することには賛成するわ。わたしたちは、ホークラックス以外のことも考えましょう、ハリー、ロン」

「・・・ホークラックス以外のこと?」

「ホークラックスとレガリア、両方ともグリンゴッツにあるのよ。わたしたちはホークラックス、あちらはレガリア、目的は違うけどグリンゴッツを狙っているのは同じこと。レガリアを守ることもわたしたちが担当するべきだわ。そのためにも、国連の経済制裁ニュースを流して、グリンゴッツ内で資産を動かす行為を促すことは必要ね。出来ることならワイト島でおとなしく歴史的建造物を堪能するバカンスを楽しみたいけど」

「・・・バカンスを楽しめる時期になったらまた貸し出してやるよ。ヴィクトリア女王の離宮だ。ヴィクトリア2世ごっこも再開してくれ」

 

 

 

 

 

『わたくしども、国際魔法戦士連盟としましては、一連の政治不穏に関して、イギリス側から何ら公式の回答がなされない現状を踏まえ、グリンゴッツ国際魔法銀行にイギリス魔法族の資産凍結を命じました。現金の持ち出しを含む金庫の整理に2ヶ月の猶予を与えますが、それ以降は銀行の窓口を閉鎖し、家名ごとに金庫は5庫までしか所有を認めません。現時点でイギリス国外に金庫を持つ場合は、国外の金庫に移管・送金を推奨します。しかしながら、グリンゴッツ国際魔法銀行アメリカ本社によれば、イギリス支社が管理する金庫はその中に極めて非常識な財宝も確認されていることから、新たに金庫を開設するまでに必ずイギリス国外に出て、イギリス以外のグリンゴッツ国際魔法銀行窓口を通じた正式な申請と審査を求める、とのことです。率直な表現をしますと、グリンゴッツにとってもイギリス支社の杜撰な経営は迷惑この上ないので、このまま切り捨てたい意向だという意味ですね。他国の支社での審査を通過出来る紳士淑女の皆さまには、素直に他国に金庫をお持ちいただいたほうが望ましいと思われます。現に、様々な魔法使い・魔女がイギリスを出国し、彼らを難民として国連が保護しておりますが、彼らは順次国外金庫を開設し、イギリスの金庫からの移管を進めているところです。ごく常識的な経済知識をお持ちのお客様を拒みはしないとグリンゴッツ側も請け合っております。ごく常識的な経済知識とは、イギリス以外の国ではガリオンが通貨単位でないこと、他家の財宝に悪影響を及ぼす危険性のある財宝は金庫に預けられないこと、他国から見てこれほどイギリス魔法界が好ましからざる政治状況にある以上はガリオン金貨には紙くず並みの価値しかないこと、などなど。こうしたことを説明されて憤慨せずに受け入れる能力の持ち主ならば、顧客として審査に通過出来ます。幸いなことにこのたびの政治難民の皆さまは、非魔法族出身であることを非難されて難民となった方々です。いくらイギリスと言っても、非魔法族は先進国ですので、こうした事柄については難なくご理解いただくことが出来ております』

 

 

 

 

 

父と一緒にグリンゴッツにやってきたスーザンは、約半日待たされてやっとボーンズ家の金庫の半分を片付けることが出来た。

 

「やれやれだ。おまえが姉さんのマグルの口座を相続しておいてくれて助かったよ。イギリス国内での換金ならば、大損はしないらしいからね」

「現金を全部ポンドにしてしまって大丈夫? ダイアゴン横丁やホグズミードでは買い物出来なくなるわ」

「この際だ、マグルの店で食料を買うことを習慣にしよう。魔法薬も、こうしておまえが大きくなってしまったから、どうしても急いで家で調合しなければならないこともない。それに、店の経営者にしても、ガリオンでの取引にこだわっていては困るだろうから、そのうちヤミだろうが何だろうが、ポンドで取引してくれるようになると父さんは思うよ」

「・・・父さん、国外に出ることは考えないの?」

「考えたことはない。今まさに危難の中に立たされていれば母さんとおまえを連れて逃げなければならないだろうが、今はまだ我々の番ではない。国外に出た人々がどうやらきちんと保護されているとラジオを聴く限りでわかっているからひと安心してはいる。おまえも、勉強もいいが、たまにはラジオを楽しみなさい。楽しいラジオだが、重要なことはきちんと伝わってくる。姉さんの名前を偽名に使っているヒーローがいるのだ」

 

久しぶりに帰った実家の食卓で、スーザンは居心地悪く、椅子の上で身体の向きを変えた。

 

「そう珍しい名前でもないでしょう、アメリアなんて」

「単体でならね。《アメリアとレイ》の組み合わせとなると、魔法省に対する痛烈な皮肉じゃないか。なにしろ大臣様の元上司の名前だ。とにかく、そのアメリアというヒーローがどうやら可愛らしい女の子らしくてね。DJやキャンプの若者たちの言葉の端々に人気の程が感じられる。プロデューサーのジェイという若者ときたら、調子に乗ってくると必ずアメリアのことを褒め称えるものだから、いつもロムさんとレムさんから黙らされてしまうのだ」

「・・・そ、そうですか」

「明日は放送日だが、銀行にはまだ行かなきゃならないから、母さんにちゃんとキーワードを聴いておくように頼まねばならん」

「そんなに楽しみ?」

「楽しみというのももちろんだがね、必要なことでもあると父さんは思っている。日刊予言者新聞に書いてあることが全てではどうやらなさそうだ。新聞には新聞の都合、ラジオにはラジオの都合があるだろうから、両方とも大事だと思うよ。特にこのような時期には。昨日は何と、国連議長がラジオに登場した」

「本物かどうかわからないじゃない」

「ああ、世間一般の人にとってはね。だがね、スーザン、国連議長はレイの母上だ。レイそっくりの声だよ。ラジオ放送は国連のキャンプの真ん中で行われるから、国連議長が訪問することも不思議ではない。総合的に考えて、父さんはこの件に関してラジオを信用することにした。しかし、議長は国外の金庫を推奨していたが、同時にガリオン金貨は紙くず同然ともおっしゃるのだ。国外に金庫を作って、そこに送金したら、紙くずになってしまうじゃないか。だから、まずはマグルの金に換金することにしたのだよ。父さんもこう見えて、あれこれと考えてはいる」

 

スーザンはテーブルに頬杖をついた。

 

「父さんみたいにあれこれ考える人が増えるといいのにね」

「考えるだろうよ。こんな時局に魔法省の言葉を鵜呑みにしていられるわけがないじゃないか。あちこちの海岸沿いの魔法族の集落に向けて、煙幕の砲弾が撃ち込まれている。この辺りにもだ。国連から派遣されてきたという魔法使いが事前に知らせてくれていなかったら、どうなったことか。あの砲弾に対しては、無抵抗無反応でいなければならない。わかったね、スーザン。あれに抵抗しようとする魔法族は、イギリスの立場をよりいっそう悪くすることになる。魔法省や一部の闇の魔法使いの暴走ですと、国連に理解してもらうには、無抵抗が一番いいらしい。そう聞かされて父さんは飛び上がって家に駆け戻ったよ。よその国がイギリスを攻撃することを考えているということじゃないか。ひと晩中母さんと話し合って、姉さんならどうするだろうと考えた。とにかく落ち着いて周りをよく観察しなければならんと結論した。すると、今まで目に見えなかったことがいろいろ見えてくるものだ。父さんは今、人生で一番あれこれ考えている」

「・・・そ、そう、です、か」

 

さて、と父が立ち上がった。「今夜は泊まっていくのだろう? 母さんが張り切っているよ。夕飯は楽しみにしていなさい。最近母さんが覚えた新しいメニューがあるのだ。マグルのスーパーには目移りするほどたくさんの食料があって、小さなカードにレシピが載っているサービスも無料で受けられる。母さんがそれをコレクションしているから、我が家では毎日新しいメニューが目白押しだ」

 

 

 

 

 

ハーマイオニーはワイト島の別荘を訪ねてきてくれた柊子に、出来るだけ丁寧にお茶を煎れた。

 

「ありがとう。ティータイムだけは、わたくしの中でイギリスと日本が1・2を争うわ。それ以外のイギリスは話にならないけれど。それで? グリンゴッツの件はあんなもので良かったかしら?」

「はい。ありがとうございます。大胆な嘘をつかせてしまって」

「嘘ではないわよ、もちろん。宣戦布告の前の経済制裁は常識。手順として既に考慮されていたことを、情報源からの依頼により前倒ししただけだもの。実際に、グリンゴッツのアメリカ本社はイギリス支社に手を焼いているの。魔力認証、指紋認証、網膜認証・・・認証手段だけでも様々なセキュリティがあるというのに、最深部金庫付近をドラゴンで警備するという、とんでもないシステムを変えようとしないから。ロンドンのど真ん中でドラゴンを飼育する責任を問われる事態を嫌って、イギリス支社の切り捨てを真剣に考えているわ」

「その・・・ウィンストン家や菊池家の資産にも影響が出ませんか?」

 

出ないわね、と柊子はあっさりと答えた。「イギリスのグリンゴッツに預けているのは端金よ。ウィンストン家も菊池家もフラメル家も怜が管理しているから、いずれも同じ意味になるわ。マグルの銀行口座や、世界各国のグリンゴッツ金庫に分散して預けているの。特に現金に関しては、マグルマネーにしてマグル社会のシステムで運用益を得ることにしているから、グリンゴッツイギリス支社の倒産ぐらいで痛痒は感じない。個人的にはね。もちろんイギリスのグリンゴッツに依存している善良な市民のためにも、倒産は回避させたいと思っているから、これでいったんギュッと締めつけた後にアメリカ本社からの改善命令に尻尾を振るように躾け直すつもりよ。確かミネルヴァも似たような資産管理に変えたはずだけれど、あなたはミネルヴァから何も聞いていないの?」

 

「ロス家の金庫を整理して、財宝だけ残した他の現金はマグルの親戚に分与したことは聞きました」

「そうそう。その時よ。マクゴナガル資産、ウルクァート資産、ロス資産のうち、ロス資産の現金は親戚に分与したの。マクゴナガル資産とウルクァート資産は、殆どをマグルマネーにして運用中。年に1回マクゴナガル金庫に年俸が投入されるだけね。ロス資産で本当に厄介なのは、財宝関係なの。変身術の名家だから、歴史的にも価値のあるものが多くて。ミネルヴァ本人が、どれだけ面倒に思っても、変身術の教授としては焼き払うわけにいかないことは理解しているから」

「それだけでも12庫分あるんです。7庫分は放棄することになりますね・・・」

「凍結から、資産の完全没収までにはそれなりに時間がかかるわ。その間にイギリス支社がお利口になればいいの。イギリス支社というよりイギリス魔法界がね。こういうことは、一種の我慢比べやチキンレースよ。あなたがたのアイディアは、そのゲームの間に出来るだけ多くの人々の視線を国外やマグル社会に誘導することでしょう? わたくしは上出来だと思っていてよ。あらゆる国にこういう内部勢力がいるならわたくしの仕事はずいぶん楽になるわ」

 

ハーマイオニーも向かいの椅子に座って尋ねた。

 

「やっぱりイギリス以外にも厄介な国はあるんですね」

「たくさんね。中東情勢は長いこと一進一退だし、ソ連崩壊してからは共産圏の小国のトラブルはうんざりするほどだったわ。イギリスだけではない。でもイギリスは極めて異質ね」

「マグル社会と連動しないところ、ですよね」

「ええ。率直に言うと、国連はダンブルドアの顔を立てて、これまで長い間、イギリスを見逃してきたの。これでもね。機密保持法は国連が定めたものよ。当然ながら、定期的な監視はしてきたけれど、イギリスの魔法族には機密保持法を守る気があるようには見えないわ」

 

家を隠せばそれでいいというものではない、と柊子がお茶をひと口口に含んだ。

 

「そうですよね・・・難民キャンプの話をパーバティたちから聞きました。あちらに向かった人たちは、マグル生まれやその係累なので、イギリス魔法族の中でもマグル社会に近い人たちなんですけど、それでもやっぱり違和感が否めないみたいですね」

「ええ。今のところ想定の範囲内だから対応は可能よ。でも、いくら善良な市民であっても純血のイギリス魔法族をあれだけの人数受け入れる国はないでしょうね。わたくしもさすがにそれには頷けないわ。非魔法族とのトラブルが予測不可能だもの。他国に流出させる前にイギリス国内で教育が必要よ」

「教育、ですか。それだけでも大仕事ですよね。今のイギリス魔法族と非魔法族の乖離を考えると気が遠くなります」

「そうね。とても気長な事業になるでしょう。アメリカに移住するイギリス魔法族は、まず最初にマクーザの指導でテレビや衛星放送を見るよう推奨されるわ。いちいち説明していられないから。魔法族専用のチャンネルがいくつかあって、魔法族のニュースチャンネル、非魔法族のニュースを解説するチャンネル、生活知識を教育し続けるチャンネルと、いろいろ使い分けられているの。これがあると教育は効率的なものに出来るのだけれど、まだやっとラジオが普及し始めたところですものね」

 

ハーマイオニーはつい長い溜息をついてしまい、柊子に笑われた。

 

「失礼。あまりに切なげな溜息だからつい」

「いえ、溜息をついているだけではダメなんですけど、ホークラックスのことよりさらに先が長いと思ってしまって」

「そうね。そういえば、ホークラックスのことでも質問があるとか?」

「質問というか、わたしたちの推理を聞いていただきたくて。わたしたち、ヘルガ・ハッフルパフの末裔を、刑事事件記録の中から見つけたんです」

 

順を追って説明すると、柊子は破顔した。

 

「たいへんよく出来ました。筋書きはおそらくそれで間違いないわ。尤も、わたくしの場合、当時はホークラックスという認識はなかったけれど」

「そうなんですか?!」

「ええ。知らなかったから。わたくしがスミス事件でハッフルパフのカップにこだわったのは、まったく別の理由よ。あるはずなのになかったから、気になった。それだけのこと。ヘルガ・ハッフルパフの子孫は、こう広がってから、徐々に尻すぼみになっていくの。ひし形にね。ヘプジバ・スミスの元には、大量のハッフルパフ一族の財宝が集まっていたわ。売っ払ってあったけれど。それを見る限り財産の管理にはかなり緻密な一族だという印象を受けた。その中でヘルガ・ハッフルパフの持ち物と推定される食器やティーポットまで来歴を記した文書と共に相続されているのに、肝心のカップだけが散逸したというのは不自然でしょう? ヘルガ・ハッフルパフの持ち物がまったくないなら散逸したということで構わないわよ? 不肖の子や孫がどうにかしてしまったんでしょうから。でも、ヘルガ・ハッフルパフの持ち物は、細かく管理されている。ならばカップも必ずあるはず。ただそれだけのことね」

「じゃ、じゃあボージン・アンド・バークスにこだわったのは?」

「ヘルガ・ハッフルパフの時代から当時までの間に、闇の魔術の定義は二転三転しているわ。当時は闇の魔術とされる魔法道具も、はるか昔には護身用として当たり前に用いられていたりもする。ボージン・アンド・バークスはそういう品を扱うのよ。その手の店を毛嫌いしていたのなら、それはそれで構わないけれど、毛嫌いしていたかどうかは確認しなければならないわね? もちろんここだけの話、リドルがボージン・アンド・バークスの店員だったから、ざわざわとイヤーな感じはしていたわ。でもさすがにそんな直感だけで突き進める問題ではないから。せめてホキーから、ボージン・アンド・バークスからも査定に来ただとか、あるいはまったく逆にヘプジバはあの手の店を毛嫌いしていたから取引は最初からまったくなかっただとか、いずれかの証言が欲しかった」

「魔法警察部隊の毒殺の線は、どう思われました?」

「あり得ないと思っていたわ。少なくともホキーにはあり得ない。うちのウェンディならともかく。現場に行った時、ティーカップは洗って仕舞われていて、どのティーカップを使ったかさえ明確ではなかった。ティーポットだけがこれ見よがしに残っていたの。来客時用の大ぶりなサイズのポットよ。キッチンにはもっと小さいティーポットがあったから、あれがおそらくヘプジバの普段使いでしょうね。ホキーが犯人なら、ティーカップを洗う時にティーポットも洗うでしょう? あのティーポットは犯人によるミスリーディングだと思ったわ。だから、わたくしは来客がいたのではないかと考えたの。警察部隊と闇祓い局の2部署で捜査することになり、わたくしは毒殺の線を警察部隊に任せて、自分では来客の線を追うことにした」

「ホキーが尋問中に亡くなった時にはもう?」

「リドルで間違いないと感じた。当時のリドルは、ハンサムで腰の低い青年として振る舞っていたから、ボージン・アンド・バークスで重宝されていたの。あちこちの資産家のマダムたちの『お気に入り』よ。わたくしは、それを直接尋ねようとして失敗したの。ホキーの口から『ボージン・アンド・バークスのミスタ・リドル』と引き出そうとして、ホキーを死なせてしまったわ。わたくしの重大な過失よ。でも同時に、ああいった残酷さはリドルの手口だと確信した」

「公式の捜査としては行き詰まってしまったようですが、その後、内々に追跡調査は?」

 

リドルが行方をくらましたのよ、と柊子は肩を竦めた。

 

「え?」

「当時の闇祓い局ではボージン・アンド・バークスは闇取引を推奨しているとわかっていたから、たびたび嫌がらせのように聞き込みに行って、ちょっと脅しては情報を仕入れてきたりしていたの。自分に重大な影響のない闇の物品程度の情報なら、向こうも喋るものよ。『誰々の屋敷にはかなり溜め込んであるという噂ですよ』程度ならね。だいたい取引が破綻して、逆恨みされて迷惑だったりすると、そうやって情報を流して、相手と縁を切るために闇祓い局を利用する。こちらも利用しているわよ。ボージンが喋った線を芋づる式に追っていく手がかりになるから。そうした聞き込みを装って店に行ったらもう居なくなっていたわ。ヘプジバ・スミスの殺害を最後に店には戻っていない」

「住まいは・・・」

「ボージン・アンド・バークスの屋根裏に住み込み。だから住まいにももちろん戻っていない。それから約1年後には、レイブンクローのダイアデムを持って現れた」

「その後は? どこに住んでいるかとか、仕事は?」

「そういった情報はまったく見当たらなかったわ。わたくしの推測では、リドルには学生時代から根強い取り巻きがいたし、資産家のマダムたちを虜にしていたから、活動資金や拠点は、彼らに出させていたのでしょう。今も同じことね。ボージン・アンド・バークスに就職したのは、金のためではない。魔法省やグリンゴッツに推薦しようと申し出た教授は何人もいたわ。普通に試験を受けても合格出来たでしょうし。安定していて、信用のある仕事に就こうと思えばいくらでもあった。それを蹴ってよりによってボージン・アンド・バークスを選んだのは、ひとえにコネクションの確立のためではなかったかしら。闇の物品を購入したり売却したりする顧客、曰くある物品そのもの。両方を満たせる職場はボージン・アンド・バークスしかないわ。当初の目的を達成していたかどうかはわからないけれど、一定の信奉者がすでにいたのなら、ハッフルパフのカップを手に入れた後いつまでもぐずぐず留まる必要はなかったのでしょう。ホキーに罪をなすりつけたにしても、ホキーとは別の線からの捜査の手が及んで来ないとは言い切れないわ。現にわたくしはホキーのことはまるで疑わなかったもの」

 

ハーマイオニーが理解し難いリドルの人生を脳内で再構築していると、柊子が紅茶を飲み干して微笑んだ。

 

「これで補足は充分かしら?」

「あ、は、はい。わたしたちは、今グリンゴッツを視野に入れて隠し場所を探しているところなんです。それについてはどう思われますか?」

「ああ、それで銀行に働きかける必要が出たのね?」

「・・・はい」

「方向性は悪くないと思うわ。でも、今の調子だと最終的に取り出せなくなってしまうから、持ち出させるかもしれないわよ?」

「それもあって、ハリーとロンが変身して見張りに行ってるんです。死喰い人の主だったメンバーが金庫を開けに来ないかどうか」

「なるほど・・・そういえば、ハリーは確かブラック家の指定後継者だったのでは?」

「え? ええ、そうなっています」

「ブラック家の金庫を探してみるのも同時進行で進めたらどうかしら? わたくしの見たところでは、ベラトリクス・レストレンジは、どの取り巻きとも別格よ」

「・・・それは、その、子供を産みたがるほどの関係だったからでしょうか?」

「それもあるわ。でも、リドル側からの一番の価値は、ブラック家の娘であることだったとわたくしは考えているの。ウィンストン家はあの通りの家風だから、ウィリアムやコンラッドは尊大ぶったところのない、優秀でハンサムな青年だったわ。ブラック家はそうではなかった。ことあるごとに、家格の高さをアピールするから、よほどの旧家でも無ければウィンストン家のことなんて知らないまま、ブラック家を魔法族の王室と解釈する人が多いの。リドルも一定の時期まではそうだったでしょうね。だから、ベラトリクスは別格なのよ。レストレンジ家に下げ渡した時期に、ウィンストン家の存在を知ったのではないかと思うわ。子供を産めないだけではなく、権威付けの役にも立たないとわかったから」

「あ・・・な、なるほど・・・」

「だから、ベラトリクスにホークラックスのひとつを預ける可能性はとても高いし・・・その時点では彼女は、ブラック家の令嬢だったはずだわ」

「ああ!」

 

よってブラック家の金庫に保管された可能性は高い、と柊子は微笑んだ。

 

「そうですね・・・でもレストレンジに嫁ぐ際に持ち出したのでは」

「それはブラック家の慣習や、ベラトリクスの女心次第。グリンゴッツのシステム上は、婚姻により他家の姓を名乗るようになっても、ブラック家側から魔力登録を解除しない限り、金庫の利用は可能よ。だから、ブラック家側に、ベラトリクスがレストレンジに嫁いだ時点で彼女の魔力登録を解除する慣習があるとベラトリクスが認識していたら、当然持ち出したでしょう。でも、わたくしは・・・ベラトリクスには、レストレンジ家の人間になったという自覚はない気がする。ブラック家の姫君のままで闇の帝王から命同様に大事な品を預かっていたいのではないかしら。だとしたら、自分が利用できるブラック家の金庫に保管したまま、という可能性は、決して低いものではない」

「命同様に大事な品なら、最深部金庫に保管・・・」

「最深部金庫を使える立場に立ったことはない。グリンゴッツの最深部金庫には、その一族の根幹に関わるものを収納していることが多いの。本家の当主でなければ使えないのよ。ベラトリクスはブラック家分家の令嬢だから、さすがに最深部金庫の権利はないわ。レストレンジ家のほうはわからない。こちらはロドルファス次第。ああいう妻であっても、実質的なレストレンジ家の女主人として遇するというのなら、最深部金庫の使用権を認めるかもしれない。あるいは、隠したいものが闇の帝王の御命に関わるものならば、それに限っては。つまり、わたくしの推測はこうよ。分家も使えるブラック家の子金庫。今まではこの子金庫の中に隠していたカップを、この銀行締めつけによって、レストレンジ家の最深部金庫に移管することを考えるでしょうね。でも、シリウス・ブラックのことだから、当主の資格を得た時点でベラトリクスの魔力登録をさっさと解除したのではないかしら? だとしたら、ブラック家の金庫からさえ持ち出すことが出来ないわ。それに気づいた時の狂乱は見ものでしょうね?」

 

 

 

 

 

「たいへん申し訳ございませんが、マダム・レストレンジ。マダム・レストレンジにおなりの時点で、ブラック家の金庫を直接御利用いただくことは不可能となっております」

「なんだって?! シリウスの仕業かい!」

「いいえ、マダム。マダムのお父上様の申し出により、婚姻を理由に魔力登録の解除が行われていると記録されております。このような文言で。『正式な、好ましい結婚をした長女に実家の金庫は不必要だ』」

 

おったまげー、とロンが隣の椅子に座って日刊予言者新聞を広げた初老の汗っかきの魔法使いの耳に囁いた。「ばあばの推理、的中したぜ。締め出したのが従弟じゃなくて親父さんだったってだけだ」

 

それを聞いたハリーは、耳元で囁く小柄な年老いた魔女をうっとうしげに避けながら新聞を畳んだ。「今日のところはもういいだろう。それより、トンクス家に行くべきだと思う」立ち上がって「帰るよ、母さん! まったく、いまいましいゴブリンどもめ、何時間待たせる気だ!」といらだたしげに怒鳴って歩き出した。

 

「おい待て・・・お待ち! 母さんを置き去りにするような息子に育てた覚えはないよ! お待ちったら!」

 

 

 

 

 

おどき! とトンクス家に入るなり、自分の母親に突き飛ばされたロンは目を白黒させた。「突っ立ってないで暇ならお湯・・・ロン!」

 

「ああ、やあ、ママ、久しぶり」

「久しぶりに会った息子が、悪趣味なちんちくりんの女装をしてるのなんて見たくなかったわ! 確かリーマスの着替えがあるはずだからドロメダに聞いてみなさい!」

「話があるんだ。トンクス、じゃない、ドーラはどこ?」

 

この騒ぎを見てわからない?! と怒鳴られたロンは、ぽかんとしてハリーと目を見交わした。

 

「赤ちゃんが生まれてくるのよ!」


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