談話室の片隅でジョージは頭を抱え、ハリーとロンはコソコソと女子生徒を見回している。
「みんな浮つき過ぎ」
蓮は冷淡に評価し、女子寮への階段を上っていった。厨房でジョージと喧嘩して以来、蓮の機嫌は直らない。
ハーマイオニーは溜息をついてジョージの隣に座った。「ね、ジョージ」
「ハーマイオニーか、なんだい?」
「あなた、レンに自分の気持ちをきちんと打ち明けて、交際を申し込んだの?」
ジョージは髪をくしゃくしゃっと掻き毟り「そんなことしなくたってわかるだろ。かっこ悪くて出来るかよ」と唸るように言った。
「レンの中では、あなたと親しくしてるのは友達付き合いの延長よ。デートしてるという自覚はあるけれど、あなたがそれほど真剣だとまでは思っていないわ」
「デートしたのにか?」
「デートしたかどうかじゃないの。あの人、きちんと申し込まれない限りわからないのよ。最初が最初だったから」
最初? とジョージが顔を上げた。
「マートルよ」
「女の子のゴーストだろ?」
「マートルはね、わたしやパーバティがいても構わずにレンとお風呂に入って、レンの顔が好きとか、優しいから好きとか、すっごくストレートに好意を伝えるの。だからレンは、自分はマートル以外から恋をされてるとは微塵も思っていないわ」
ジョージが絶句した。
「恋愛関係には割と堅い性格よ。それにはお家の事情もあると思う。ただでさえ、日本とイギリス両方の国籍を持っていて、18歳までに国籍をどちらかに決めなきゃいけない立場だし。日本の家にはどうしても後継者が必要らしいから、将来設計は割と日本寄りなの。だから、ホグワーツでジョージとデートする関係は好きだし、長く続けばいいとは思ってるけど、卒業後のことまでは考えられないの。それにフラーは、ハリーに伝わることがわかった上で、第2の課題のヒントをくれたのよ。だから、フラーを断ることはいずれにせよ出来なかったと思うわ」
「・・・そもそもあの女、なんでレンを誘うんだ!」
吐き捨てるようにジョージが言った。
「第2の課題に関係があるんでしょうね。卵の謎はクリスマス・パーティ前に解いたほうがいいって言ってたそうだから。だからそれを聞いた以上は拒否出来ない」ハーマイオニーは肩を竦めた。「ヴィーラの魔法を使ったのはほんの一瞬だけ。レンは納得してる」
「俺が誘うのが遅かったって言うのか?」
パーティなんかどうだっていい、とハーマイオニーが呟いた。「あなた、また同じ間違いをしてるわ。去年のホグズミードと。レンはもともと、そういう約束事には疎い人なの。ちゃんと言わなきゃ伝わらないし」言葉を切って、少し考えた。「たぶん自分からあなたを好きだとは言わないわ。彼女、卒業したら日本に帰るつもりだから。あなたが真剣なら、レンに今はまだ話せない背景があることまで考えた上で、丸ごと受け止める心の広さを見せてあげて」
『今日は赤毛の彼はついて来ないのね』
フラーに言われ、蓮は苦笑した。『寒いからじゃない? もともと約束してるわけじゃないもの』
走り出して、フラーが『あなた、ダンスはどの程度出来るの?』と尋ねた。
『機会があればグランパとふざけて踊る程度には』
『練習しておいてね。代表選手とそのパートナーは、ダンスパーティの1番最初にパーティの参加者全員の前で踊るんだから』
『・・・本格的ね』
蓮は溜息をついた。
『そういうパートナーなら、わたくしより』
『オグワーツにもボーバトンにも、もちろんダームストラングにも、わたしに匹敵するほど強くて美しい男子は見当たらないわ』
『わたくしも大して・・・』
何を言ってるの、とフラーは笑い出した。『あなたは自分の力を自覚していないわ。はっきり言って、このオグワーツで本当に代表選手にふさわしいのは、あなたよ。ディゴリーは単なる優等生ね。能力は高くても、応用が利かない。アリー・ポッターも悪くないけど、子供。あなたは自分の力を十分に発揮していないだけ。どうしてそうなのかはわからないけどね。動物もどきになったんでしょう? 3年生で。普通の人にそんなことは出来ない』
たったっとリズム良く走りながら『変身術の教授から個人指導を受けたの。だから出来たことだわ』と答えた。
『その教授はあなたに言わなかった? 自分を過小評価してるって。自分の力を発揮しようとしていない』
『・・・言われたかも』
『あなたのそういうところがすごく目につくのよ』
冬枯れた木立の中で立ち止まってストレッチをした。
『どうしてみんなわたくしに力を発揮しろというのかしら』
『どうして?』
『わたくしは確かに魔女だから、魔法学校に入学したわ。落第するような成績でもない。安心出来るだけの成績は取ってるし、クィディッチでも役目は果たしているつもり。それ以上の何をしろと言うの? このまま順調に卒業したら、日本でマグルの大学に行くのよ。別に魔法史に名を残すような魔女を目指す必要はないわ』
わかってないのね、とフラーが腰を伸ばした。
『何をわかればいいのかさえわからないわ』
肩の筋肉を伸ばしながら蓮は苦笑した。
『力ある者には、その力に相応しい務めがある。アリー・ポッターだってそうでしょう? 彼はヴォードゥモールが関係するトラブルからは逃げられない』
『まあ、ハリーはね。有名過ぎるから仕方ないわ』
『あなたにも同じことが起きるのよ』
突拍子もない台詞に蓮は失笑してしまった。
『わたしは、成人したデラクール家の一員だから、たぶんあなたよりいろいろなことを知っているわよ』
『例えば?』
『あなたが家族から聞いていないのなら、わたしから言うわけにはいかないの。でもわたしはボーバトンをもうすぐ卒業して、イギリスに住むことにしているわ』
蓮は眉を寄せた。
『クロエおばさまのように呪い破りになりたかったけど、イギリス勤務を希望するから、たぶん事務職ね』
『グリンゴッツに就職するの?』
『そうよ。わたしの家族は、闇の魔法使いがヨーロッパで勢力を伸ばすことは許さない。ヴォードゥモールが復活するなら、戦うことを決めている』
蓮はしばらく黙ってストレッチを続けた。
『復活は・・・するかもしれないけれど、いつになるかわからないわよ。少なくとも復活の手段のひとつは完全に砕いたのだし』
『あと2年以内に復活するわ』
澄まして言うフラーに、蓮は目を見開いた。
『そのことは予言されているわ。あまり広まってはいないけどね』
予言なんて、と蓮は呟いた。
『信じない?』
『本当の予見者はごく稀にしかいないと聞いているわ。わたくし、占い学は履修しないの。未来は常に変わるものだし、予言は単なる心構えに便利なだけ。災害に備えて避難リュックを用意するのと同じことよ』
『そうね。だからわたしは、心正しく才能ある魔女として、避難リュックになるの。あなたにもそれを期待するわ。あなたの才能に気付いている人はみんなそうでしょうね』
ハーマイオニーは困り果てていた。
「ミスタ・クラム、あの」
「どうかビクトールと、呼んで、ください」
「いえそれはさすがに」
ハーマイオニーは急いで「偏見に満ちた、選択的ホグワーツの歴史ーーいやな部分を塗りつぶした歴史」を閉じて羊皮紙の下に隠した。
「ずっと、あなたに、声をかける、機会を、待って、いました。ミス・ディミトロフ」
「ウィンストン」
「ミス・ウィンストンが、あなたに、声をかける、ならゔぁ、図書館で、他の女の子が、いないとき、にと言うので」
それは助かります、とハーマイオニーは溜息をついた。蓮の奴、知っていたなら先に教えてくれるべきだわ、と憤慨しながら。
「どうか、ゔぉくと、クリスマス・パーティに、出てくれません、か?」
「ミスタ・クラム、その・・・こんなこと言いたくはないのですけど、わたしはマグル生まれです。確か、ダームストラングではマグル生まれの入学を認めないお考えでしょう? わたしをパートナーにするのは、学校の方針に反するのではありません?」
「ゔぉくは、気にしません」
わたしがするのよ、と胸の中でハーマイオニーは毒づいた。
「お誘いは嬉しいのですけど、わたしはあなたのことをほとんど知りませんので」
「パーティを、機に、知り合いたいと、思います」
おもむろにクラムが跪いた。
「ちょ!」
「どうか、ゔぉくと、パーティに出て、ください」
ハーマイオニーは慌てて周りを見回した。
「ミスタ・クラム!」
「良い、お返事を、いただくまで、動きません」
「わ、わかりました! 行きます! 行きますから、立って!」
クラムはハーマイオニーの右手を取り、手の甲に軽くキスをすると「よかった」と言って立ち上がった。
「あ、あの、ミス・デラクール!」
蓮とフラーが玄関ホールに戻ってくると、ロンがよろめきながら現れた。
「ロン?」
『レンのお友達?』
首を傾げる蓮がまったく視界に入っていない様子のロンは、わななく声で「よかったら僕とダンスパーティに行かないか?」と言い出した。
あー、と蓮はほりほりと頬を掻いた。フラーは明らかにナマコか何かを見るような目でロンを見ている。親しく言葉を交わしたわけでもないのに、不躾過ぎる誘い文句だ。
その視線に気づいたロンは耳まで真っ赤になって、その場を逃げ出した。
「レン」
『あー、フラー。ヴィーラの血に免疫がないの、彼。ワールドカップの時も観客席から落ちかけていたわ』
『あなたから断っておいてちょうだい』
完全に気分を害したフラーを見送り、蓮はグリフィンドール塔に戻った。
談話室では、ハリーとロンが頭を抱えている。
「あー、ロン。フラーだけど」
「言わなくてもわかってるさ! お断りだろ?」
「まあ、そうね。それで、ハリーまでどうしたの?」
ハリーは掠れた声で「チョウに断られた」と呟いた。「噛んだんだ! 『ぼくダンパティいたい?』なんてわけわかんないこと言った・・・まあどうせセドリックと約束してたらしいけど」
ハリー、と蓮は呟いた。「プレッシャーをかけるつもりはないけれど、代表選手はパーティの参加者全員の前でダンスしなきゃいけないのよ。あまり思い悩む暇はないわ」
「・・・でも、僕・・・」
バン! と乱暴に肖像画の扉を開けてハーマイオニーが飛び込んできた。
「レン、ちょっと話があるわ!」
「え? ハーマイオニー、今、この人たちに重大な問題が」
「わたしの重大な問題を引き起こしたのはあなたよ!」
引きずられるように、女子寮の部屋に連れて行かれた。
「わたしに声をかけるなら図書館でってクラムをそそのかしたわね!」
「ちょっと待ってハーマイオニー。話がよくわからないわ」
クラムよ! とハーマイオニーは顔を真っ赤にして怒鳴った。
「あ、あー。でも、わたくしはそそのかしたりしてないわ。むしろ釘を刺したの。ハーマイオニーは図書館によくいるから、確実に会えるのは図書館だけれど、取り巻きの女の子を引き連れていると迷惑だって言ったのよ?」
「その取り巻きがいない隙に、跪いてパーティのパートナーにって申し込まれたわ!」
蓮は唖然と口を開けた。
「跪いたまま、オーケーするまで動かないって言われたら、オーケーするしかないじゃない!」
「・・・じゃ、クラムと行くの? わたくし、グラニーに殺されるかも」
「あなたがフラーに捕まるからよ!」
「ハーマイオニーを1番に誘ったでしょう、忘れたの? それになんとなく、あなたはロンと行くんじゃないかと思ってたし」
「ロンはヴィーラに夢中よ!」
ハーマイオニーはベッドに腰掛けて頭を抱えた。
「ハーマイオニー、ごめんなさい。まさかこんなことになるとは」
「・・・言い過ぎたわね。ごめんなさい、気にしないで。オーケーしたのはわたしだもの」
「クラムでいいの?」
ハーマイオニーは顔を上げて、微かに微笑んだ。「跪いて申し込まれるなんて経験、滅多にあることじゃないから、心が揺れたのは確かね」
ハーマイオニーが落ち着くのを待って夕食に行こうと談話室に下りたところで、ネビルが真っ赤な顔でハーマイオニーに「ハーマイオニー、よかったら僕とダンスパーティに行ってくれないかな?」と声をかけた。蓮は感心してネビルの横顔を眺めた。ハリーやロンより、こういうところは思い切りが良い。
しかし、もちろんハーマイオニーは「ごめんなさい、ネビル。誘ってくれたのは嬉しいけど、もうお約束があるの」と断った。
「そ、そうか。気にしないで、うん。楽しんでね」
「ええ、ありがとう」
ハーマイオニーと連れ立って大広間に向かいながら、蓮は「ネビル、ちょっと変わったわね」と呟いた。
「わたしもそう思うわ。前みたいにおどおどしなくなったでしょう? ムーディ先生が、薬草学が優秀だって褒めてくださったことがきっかけみたい。薬草学の本を貸してくださったそうよ」
ふうん、と蓮は頷いた。「ムーディ先生がね」
「磔の呪文を見せた授業のあと、ネビルの様子がおかしかったでしょう? そのときよ。薬草学が優秀だとスプラウト先生が褒めてらしたって言って、本を貸してくださったそうなの。ネビルは自信が持てることが少ないから、少なからず救いになったんだと思うわ。見た目はアレだけど繊細な気遣いをなさる先生よね」
大広間のテーブルにハリーとロンの姿はない。
「あの2人、夕食も食べずに」
「きっと2人で、お鼻が顔の真ん中にある美女をリストアップしてるのよ」
ツンと顔を上げ、ハーマイオニーがまったく見下げ果てた輩だと言いたげな口調で応じた。
「鼻?」
ナプキンを膝に広げながら「2人して誰が美人だとか、そんな話ばっかりよ。女性を顔だけで選ぶなんて失礼極まりないわ」と鼻息を荒くした。
「今の今まで、ダンスパーティに女の子を誘うなんて考えてもみなかったんだもの。そんなものじゃない?」
「クリスマス・パーティの料理は、あの2人だけキッズ・ランチでいいと思うわ」
確かに、と笑ったが、談話室に戻った蓮とハーマイオニーからは笑顔が消えた。
「僕ら、気づいたんだ。君たちも、女の子だ!」
ハーマイオニーと蓮は顔を見合わせた。互いに表情が冷淡なものになっている。
「そうね。4年目にしてやっと気付いてくださってありがとう」
「君たち2人が、それぞれ僕たちと来れば解決する!」
「お生憎様」
ハーマイオニーがぴしゃりと言った。
「わたし、一緒には行けないわ。他に約束があるの」
「そんなはずない! それはネビルを断る口実だろ?」
あーあ、と蓮は額を押さえた。
「あなたは4年目にしてやっとお気づきになられたようですけどね、だからと言って、他の誰もわたしが女の子だと気づかなかったわけじゃないわ!」
ロンはハーマイオニーをじっと見て、ニヤっと笑った。
「わかったわかった。君が女の子だと認める。さあ、僕たちと行くだろ?」
ハーマイオニーが噴火しないうちに、蓮はハーマイオニーの肩を抱いて引き寄せた。
「ロン、そこまでよ。ハーマイオニーは本当に他の人と約束があるの」
「じゃあ、君でもいい」
「残念ながら、わたくしのパートナーもとうの昔に決まっているわ。せいぜいお鼻が顔の真ん中にある女の子を探しなさい」
ハーマイオニーを連れて女子寮への階段に足を伸ばしかけたとき、ハリーが駆け寄ってきた。
「レン、お願いだ。女の子たちの間では、誰が誰と行くことになってるか、少しは話をするだろ? とにかく誰か2人紹介してくれないか?」
「・・・そうね、ロンはともかく、ハリーにはどうしてもパートナーが必要ね。わかった、明日の朝まで待って」
「ありがとう。恩に着るよ」
「パーバティ、パーティのパートナー、誰か見つかった?」
あまりに手近なパーバティに声をかける蓮にハーマイオニーは呆れた。
「見つけてはいないわ。目ぼしい男子はみんなもうパートナーがいるじゃない? あえてパートナーを決めずにパーティに出て、そこで相手を探すのも有りだと思ってるの」
「そこをなんとか、ハリーのパートナーになってあげてくれない? 代表選手は、最初の1曲だけは4組で踊らなきゃいけないの。パーバティならオリエンタルな美人だし、華やかだから最初のダンスの相手にぴったりだわ」
パーバティも悪い気はしていないようだが、少し迷っている。
「最初のダンスって、それって正式なダンスってことでしょう? わたし、それはちょっと無理よ」
「だからパーバティなの」
蓮は机に背を向けて座ったパーバティの前に跪いた。
「実はわたくしもハーマイオニーも、代表選手のパートナーなの。だからレッスンしなきゃいけないわ。ハリーも明らかにダンスなんて出来ないからレッスンさせる。この3人とハリーとでこっそりマクゴナガル先生に習いましょう」
そして伸び上がると、パーバティの耳元に囁いた。「最初にきれいな姿を見せておいたほうが後から相手を探すのに有利よ」
つくづくこのスキルがハリーとロンに必要だと、こくこく頷くパーバティを見ながらハーマイオニーは思った。
「ついでにロンの相手も誰かいないかしら? 顔の真ん中に鼻がついてれば誰でもいいわ」
「パドマに声をかけてみましょうか? たぶんまだ相手はいないはず」
「ロンが、ものすごく女の子の扱いが下手な無礼者だと言っておいてね。パートナーなんて形ばかりでいいの。相手がいないとむくれるから面倒なだけ。ずっと相手してあげる必要はないわ」
まさに的確な注釈だとハーマイオニーは思ったのだった。
「女の子をダンスに誘うより、ドラゴンと戦うほうがまだマシだった」
ハリーが胸を撫で下ろしたのをハーマイオニーは軽く睨んだ。
「レンが話を決めてくれたけど、パーバティとパドマにはそれぞれきちんとお礼を言いなさいよ」
「今日の放課後からパーティの日まで、あなたに付き合ってパーバティもダンスのレッスンを受けてくれるのだから」
「ダンスのレッスン?!」
踊れるの? と蓮が冷たく睨む。「クラシックなダンスよ? ワルツとか」
「いえ出来ません」
「パーバティに恥をかかせないで」
「・・・はい」
「わたしもレンも一緒だから」
「君たちも?」
「レディとしての嗜みよ」
ハーマイオニーと蓮が澄まして言うのをハリーはぽかんと口を開けて見ていた。
「ハリー、口を閉じて。クリスマス・パーティの会食は代表選手だけ別のテーブルなの。全校生徒からマナーを見られると思って」
「会食もダンスもこなせないなんてグリフィンドールの恥よ」
ハリーは俯き「もう1度ドラゴンと戦うほうがマシだ」と小声で呟いた。
マクゴナガル先生は並んだ4人をじろりと見渡した。
「いいですか、グリフィンドールの品格を貶めない程度の水準を期待します」
「はい!」
「まず、ウィンストンとグレンジャー、出てきなさい」
ハーマイオニーと蓮が3歩ほど進み出ると「構えなさい!」と、まるで決闘の作法のようなことを言う。
「グレンジャーはウィンストンの肩に、ウィンストンはグレンジャーの腰に手を添えるのです」
「はい!」
ハリーがパーバティに「レンが男子役なの?」と尋ねるのが聞こえた。
「ウィンストン! 足元ばかりを見ない! ステップは1度で覚えられるはずです!」
「はい!」
「グレンジャー、目を逸らさない! 微笑と共にパートナーを見上げていなさい!」
「は、はい!」
パーバティが「ダンスとは思えない気合の入れようだわ」と頭を振った。
「ウィンストン! パートナーの足を踏まない!」
「はい!」
「グレンジャーは、たとえ足を踏まれても微笑を絶やしてはなりません!」
「はい!」
ハリーが「グリフィンドールの品格とダンスに何か関係あるのかな?」と呟くのを聞き咎めたマクゴナガル先生が「ポッター! あなたはただでさえ代表選手の中で最も幼くて見劣りするのです。流れるようなダンスまでは期待しませんが、せめてもの努力をした形跡がなければ、他校の方々に不快感を与えることをくれぐれも忘れてはなりません!」と叱った。
ハリーは身を縮め、パーバティが慰めるようにその肩を叩いた。
「パーバティ、君、ハーマイオニーとレンが誰とパーティに行くか知ってる?」
ハリーの声にハーマイオニーは思わずハリーを睨んだが、すぐにマクゴナガル先生から叱られた。「グレンジャー!」
パーバティは肩を竦め「そういうことは、いちいち聞かないのがマナーよ。当日のお楽しみ」とハリーの質問を躱した。