禁書if ~あの日携帯を無くさなければ~   作:イシトモ

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大学受かったぁぁぁぁぁぁぁぁ

ということで更新再開です。
相変わらず行き当たりばったり書き貯め0の亀更新になると思いますがどうかよろしくおねがいします。


4.一瞬のシリアス

「そんでな、最終的にその子、僕のこと部屋に上げて手当てまでしてくれたんよ」

 

「ほー、そいつぁーすげーにゃー、」

 

八月十一日の昼下がり、青ピは土御門と並んで補習からの帰り道を歩いていた。

数時間机と向き合った疲労からろくに思考が働かず中味の無い会話がだらだらと続く中で、つい前日の出来事を口に出す。

 

「なぁつっちー、ちゃんと聞いてやー」

 

「ちゃあんと聞いてるぜぃ。突如現れた悪の魔術師に青ピが拳ひとつで突っ込んでいくんだったかにゃー?」

 

「それ真面目に言っとるんやったらいっぺん耳鼻科か精神科行った方がええでー」

 

「ギャルゲと現実取り違えてる奴に言われたくないぜよ。常識的に考えて、んな話信じる方がおかしいっての」

 

「ちゃんと内容聞いとるやないか。いや信じ難い話なのは僕が一番わかっとるけど、でも本当なんよ?」

 

「はいはいわかったわかった。続きはまた明日聞いてやるから、せいぜいしっかり考えておくんだにゃー。んじゃ」

 

馬鹿話をする内に別れ道にさしかかり、右手をひらひらと振りながら薄いかばんを肩に引っ掛けて土御門が歩き去る。

 

「上等や。今度もっと凄い話して腰抜かしたるから覚悟しとけーぃ」

 

その背中に嫌味を投げ掛け、青ピも歩き出す。

今日は店が休みの為急いで帰る必要は無いのだが、かといって他にすることもない。

取り敢えず夕飯のメニューを決めるため、スーパーへと足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自動ドアを抜けて店内に入ると、冷房が効いた心地好い空間が待っていた。

 

「さて、何買おう」

 

買い物カゴを片手に店内を歩き回る。

1ヶ月前の大安売りの際に大人買いしたパスタがまだ大量に家に残っているのだが、毎日食べる内に味付けのレパートリーが枯渇していた。

新メニューの開発も視野に入れての食材探しである。

 

「なんか目新しいのがええなー……あえて甘い系攻めてみるか?苺パスタ……小豆パスタ……いやデザートにしかならんか」

 

いちごおでんの缶詰めに衝動的に手を伸ばしそうになるのを堪えながら歩を進める。

新メニュー開発にあたっては冒険と暴走は紙一重だ。

と、缶詰めコーナーに差し掛かったあたりで見覚えのある背中を見つけた。

 

両手にサバ缶をもってしゃがみこんでいる少女が、視線に気づいてこちらを振り返る。

 

「あ、青ピじゃん。お疲れ」

 

「お疲れさま。夕飯の品定め中?」

 

「当たり。結局水煮と味噌煮で毎回悩む訳よ」

 

「ほぉ。……鯖、鯖か。鯖パスタええかもな」

 

目の前で真剣にサバ缶とにらめっこしている少女の姿を見ていると、なんとなく鯖が食べたくなった。

鯖パスタ、という言葉を聞いて少女の眼が光る。

 

「何それ、ちょっと気になるんだけど」

 

「え、別に珍しいもんでもないやろ。ネットで調べたらレシピぎょうさん出てくると思うで?」

 

「いや私料理イマイチでねー。結局レシピ調べる機会がないって訳よ」

 

「え、じゃあそれどうやって食べるん?」

 

「ん?そのまま味噌煮とか、醤油煮とか」

 

「そればっかで飽きひんの?」

 

「甘いね、青ピ」

 

ちっちっちっ、とフレンダは指を振りながら、

 

「結局本当にそれが好きならいくら食べても飽きたりなんてしないって訳よ」

 

「玄人っぽいこと言うとるけどようは調理ができないだけなんじゃ……」

 

「細かいことはいーの‼」

 

そう言って勢いよく立ち上がると、サバ缶を乗せた両手を後ろに回した。

 

「ところで青ピくん。私と取引をしないかね?」

 

「どしたん急に」

 

「今私の手元に水煮缶と味噌煮缶があります。今私はこれらを両方買うことにしました」

 

「はぁ」

 

「んでこれどっちもラス1です」

 

「え」

 

言われて棚を見ると、確かにフレンダが持っているのがラストだった。

 

「サバ缶代私が出すから、鯖パスタ食べさせて♪」

 

「……いや別にどうしてもサバ缶が欲しい訳では」

 

「食べさせて♪」

 

「あの」

 

「食べさせて♪」

 

「……はい」

 

「ありがと‼」

 

青ピの買い物カゴにサバ缶を放り込み、フレンダは上機嫌で歩き出す。

 

「じゃあ他の買い物済ませて、ウチ行こう!結局鯖パスタが私を待ってるって訳よ‼」

 

「えぇ…」

 

何やら一緒に買い物の続きをする流れになったらしい。

それどころかまたもしれっと家に招かれた。

 

(これ端からみたら完璧にデートなのでは……?)

 

周囲のおばさま方から感じる生暖かい視線を感じながらも、青ピのツッコミが口に出されることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふへー、ごちそうさまー」

 

「おそまつさま。感想は?」

 

「完璧」

 

フレンダの腹は底無しだった、ということもなく、青ピ宅に立ち寄って回収した大量のパスタは少ししか減っていない。

 

「そういえばさ」

 

寝転がったままのフレンダが口を開く。

 

「なんか青ピ普通になったね」

 

「はぇ?」

 

あまりに唐突な謎発言に青ピの喉から不可思議な声が出る。

その姿を見てニヤッと笑ったフレンダは、

 

「や、昨日青ピここ来てからすごかったじゃん。なんかめっちゃキョロキョロしてたし」

 

「ぐふっ」

 

「カタカタ震えてたし汗だらだらだったし」

 

「げふっ」

 

「あとやたらと匂い嗅いでたし」

 

「ごはっ」

 

なんの前触れもなく青ピを言葉の暴力で襲った。

 

「女の子の部屋に招かれて緊張してたのはわかるけど、思春期の男の子感丸出しだったって訳よ。今日は落ち着いてるけど、心境の変化でもあった?」

 

小首を傾げるフレンダを見ながら、内心満身創痍の青ピは顎に手を当てる。

言われてみれば、先程のスーパーで戸惑いはしたものの、ここに着いて調理を始めてからの自分は完璧にいつも通りだった気がする。

自分のフレンダに対する認識が謎の美少女からサバマニアの変な子になったからだろうか。

 

「んー、よくわからんけど…まぁ、僕がフレンダに慣れたってことでえぇんやないかな」

 

「無事仲良くなれたみたいで良かったって訳よ」

 

フレンダはそう言って、ニヒヒと嬉しそうに笑う。

 

「てかそもそもフレンダはなんで僕とこんなに仲良くしてるん?」

 

「なんとなく、かな。結局人と仲良くすんのに理由とかいらなくない?」

 

「そんなもんかねぇ」

 

普段から女子に少々邪険な扱いを受けている青ピにとっては、無条件になんとなく仲良くしたい、というその評価は正直嬉しかった。

 

「まぁ強いて挙げれば」

 

右手を伸ばして青ピを指差す。

 

「料理がうまい」

 

「台無しや」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フレンダが淹れたコーヒーを飲みながら一息つく。

 

「そういやフレンダってめっちゃケンカ強いけど、格闘技かなんかしとるん?」

 

「別に特別やってないけど、まぁ仕事柄自然とね」

 

「仕事?」

 

「あ゛……えっと、治安維持ってとこかな。わりと過激に活動してるから組織名とか言えないんだけど」

 

「はぇー、立派やな。僕なんてジャッジメントに取り締まられる側やで」

 

「え、何、青ピってワルなの」

 

「職質を40回ほど……」

 

「あぁ、どんまい……」

 

青ピがうっかり暴露した黒歴史によって、微妙な空気が流れる。

意図せぬ沈黙を誤魔化すように、青ピは反射的に口を開いた。

 

「あ、もしかしたら、僕もフレンダの仲間になったら強く……」

 

「駄目だよ」

 

しかし帰ってきたのは鋭い拒絶だった。

さっきまで和やかに会話していたのが嘘のように、感情の感じられない声でフレンダが続ける。

 

「言ったでしょ。過激だって。青ピみたいな一般人、三日もたずに死んじゃうよ」

 

快活に笑っていた少女が、その笑顔を変えることなく、殺し屋のような威圧感を放つ。

 

「っ…………」

 

「……なんてね。冗談冗談。でも今人員足りてるし、結局青ピが入る隙間はないって訳よ」

 

「そ、そか。ははは……」

 

 

 

 

 

 

それからはとりとめのない会話が続き、暫くしてパスタの礼を言うフレンダに見送られつつ、青ピは帰路に就いた。

 

あれから、青ピはフレンダの仕事について二度と言及しなかった。

 

 

 

しかしあのフレンダの剣幕は、冗談だとはとても思えなかった。

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