追われていた。そう語るインデックスに、食蜂は質問を続ける。
「追われていた…って、いったい誰からぁ?」
「魔術結社だよ」
「…えぇっと…」
明らかに困惑した顔になる食蜂。
「あれ、日本語がおかしかったかな?英語で言えばマジックキャバル、ってとこなんだけど」
「いや、明快力的にはさして変わらないんだけど…」
言葉に詰まってしまった食蜂の変わりに、上条が台所から言葉を挟む。
「じゃあさ、仮にそのマジュツケッシャとか言う奴らがお前を追ってるとして、狙いはなんなんだ?」
「私の持ってる十万三千冊の魔導書だよ」
「…いよいよ電波だな。因みにどこにあるんだ?」
「ここにあるよ」
「?」
「私の頭の中」
「……………」
「あ!その顔!ばかにしてるでしょ!」
「いやもうさぁ、魔術だの十万三千冊だの設定盛りすぎだって…」
「むむっ!これはちゃんと証明する必要があるね!かくなる上はぁっ!」
勢いよく立ち上がるインデックス。しかしその途端、彼女のおなかが盛大に鳴いた。
「……」
赤面して座り込むインデックス。
「はいはい、まずは腹ごしらえをしてからな。ほれ、上条さん特製の超野菜炒めだ。たんと食え」
野菜炒めが山盛りの皿をインデックスの前に置く上条。
インデックスはむくれながらも今は食欲に従うようだった。
床に座って幸せそうに野菜炒めを頬張るインデックスを眺めていると、真横に上条が座った。
「なぁ、どう思う?」
「彼女のことぉ?」
「あぁ」
「うーん…言ってることは滅茶苦茶だけど、嘘をついているようには見えないのよねぇ… 」
「どうしたもんかなぁ…」
「あ、でも頭の中覗けば一発じゃない?」
「え、おい」
「ごめんなさいねぇ?」
鞄から録画レコーダーのリモコンを取り出し、インデックスに向けスイッチを押す。
『人的読心/対象の記憶を抽出』
一瞬頭の中に文章が流れ込んできた気がしたが、そこまでだった。
世界が爆発したかと思った。
「あ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?」
「おい!大丈夫か!?」
「みさき!?どうしたの!?」
二人の声が遠くから聞こえる。
頭が割れるように痛い。
視界がぼやける。
世界が暗転した。
「しっかりしろ!おい!」
上条の右手が食蜂の頭に触れると、
パキン、という快音とともに食蜂の異変が消え去った。
そのまま上条の体にもたれかかる。
「気絶したか…」
そのままベッドの上に寝かせた。
「いったいどうしたの?」
「お前の記憶を覗くって言ってたんだけど…」
「!!」
「どうした?」
「…私の頭の中にある魔導書は、すごく危険な物なの。常人が読んだら発狂するくらい…」
「じゃあそれを読んだってとこか」
「たぶんそう。ちょっと見せて!」
言うが早いか食蜂に駆け寄ったインデックスは、様々な角度から様子を見た後、軽く息をついた。
「…よかった。大丈夫そう。でも不思議。魔導書の知識の侵攻が止まってる。あなたの右手、何かあるの?」
「あぁ、俺の右手は、異能の力ならなんだって打ち消せる特別製なんだよ。呪いだろうが、神の奇跡だろうが、な」
「ちょっと信じにくいけど、今のを見ると納得できるかも」
もう一度食蜂の顔を覗き込み、柔らかな笑みを浮かべた後、立ち上がって真面目な顔になった。
「ごめんなさい。みさきが倒れちゃったのは、私のせいみたい」
「あぁいやいや、勝手に人の頭を覗いたのはこいつだし、そもそもお前の言うことを信用してやれればこうはならなかった。謝る必要はないよ」
少女は少し呆けたような顔になった。
叱責が飛んでくるのかと思ったのかもしれない。
何かを堪えるように一瞬下を向いたが、また正面に向いた。
「ありがとう。そう言ってくれると嬉しいよ。…申し訳ないけど、もう行くね?長居してたら奴らが来て、さらにあなたたちに迷惑をかけちゃう」
「あ、おい」
玄関へと歩いていく。
「ご飯ご馳走さまでした。とってもおいしかったんだよ。……迷惑かけちゃったのに、お礼できなくてごめんなさい。せめて貴方たちに、神の御加護のあらんことを」
インデックスはそう言って部屋の外へと出ていった。
途端に部屋が静寂に包まれる。
「………」
「…あらぁ?わたし、一体…?」
「目、覚めたか」
「えぇ。上条さん、あの子はぁ?」
「飯食って出ていったよ。『迷惑かけてごめんなさい』ってさ」
「あら、そう。 ……っ!」
上条のベッドに自分が寝ていることに気付いて真っ赤になる食蜂をよそに、上条は唇を噛み締めていた。
去り行く修道女を引き留られなかった自分は、
所詮偽善者なのだろうかと。
高校生クイズ予選会場に向かうバスから投稿しました!
予選頑張ってきます!
追記:食蜂さんの能力が歩く教会を貫通した件について、歩く教会が無効化する対象である「物理・魔術を問わないダメージ」に食蜂の能力は当てはまらない、という独自解釈が含まれています。