禁書if ~あの日携帯を無くさなければ~   作:イシトモ

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8.謎の火炎男

「はぁ…」

御坂美琴は、街を歩いていた。

昨日門限を大きくぶっちぎる形で怯えながら寮に足を踏み入れた御坂は、隣りにいた食蜂と共に後ろから忍び寄った寮監に気絶させられた。

消え行く意識の中で、

「夏休み初日という事で特別に処罰無しだ。次は無いぞ」

という言葉を聞いた気がするが、定かではない。

 

「今日は黒子はジャッジメントの夏季研修だし、する事無いなぁ…」

取り合えず学舎の園最寄りのコンビニに寄り、週刊誌を立ち読みする。

「この新連載は要チェックね… 」

一通り目を通し、ページを閉じた。

ありがとうございましたー、とおざなりに礼をする店員に何も買わない罪悪感を少々抱きながらも、熱気立ち込める外に足を踏み出すと、知り合いに遭遇した。

 

「あ!御坂さーん!お疲れさまでーす!」

「佐天さん。元気してた?一週間ぶりね」

 

二人で並んで道を歩く。

「黒子も初春さんも研修かー」

「ジャッジメントも大変ですねー」

暫く他愛もないお喋りをしていると、佐天が切り出した。

「御坂さん、最近囁かれてる噂があるんですけど、聞きません?」

「ん?どんなの?」

「『謎の火炎男』って噂なんですけどね、とあるスキルアウトが、路地裏で歩いていてぶつかった相手に詰め寄ると、その相手の手から炎が吹き出して大火傷させられたんですって」

「…それ単なるキレッぽい発火能力者じゃないの?」

「いやそれがですね、なんでも周囲の地形が焼け焦げていたり痕跡はあるのに、能力が使われた形跡が一切なかったそうなんです」

「…それは不思議かも」

「まぁ出所も不確かで信頼性は低いんですけどね。…あ」

そこで佐天は何かを思い出したように、

「そ・う・い・え・ば~」

 

急にニヤニヤ笑いを浮かべた。

「な、何?」

「『学園都市第三位と第五位がこぞって想いを寄せる謎の男』! これの真偽を知りたいな~~~なんて…」

「え、な、ちょ、だ、誰よそんな噂流したの!」

「あれあれ、その反応はまさか?」

 

「だってそんな食蜂さんの想い人なんて先輩しか思い付かないし私あの人の事なんてなんとも思って無いっていったら嘘になるけどでもあくまで話してて楽しい人ってだけであってそもそも最近あの人に会うとドキドキするのもブツブツブツブツ」

「あれ?御坂さーん?御坂さーん?」

頭から蒸気を吹き出しながら道端で立ち尽くす御坂。

 

その横をチョコレート色の髪の少女が笑いを堪えながらすれ違っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

第七学区のとある路地裏。

そこには向かい合う少女と男の姿があった。

 

「はぁっ、はぁっ、」

「追い詰めたよ、インデックス。さぁ、大人しく投降しろ」

「…っ!」

「まだ諦め無い、ね。しょうがない。少し強行策に出るとしようか」

少女と相対する男が、くわえた煙草を吐き捨てる。

「炎よ」

地面へと落ちる煙草が描くオレンジ色の軌跡が、赤々と燃え盛る炎の剣の形を為す。

「巨人に苦痛の贈り物を」

吹き荒れる爆炎。しかし佇む男の顔は晴れない。

「歩く教会、か…」

歩く教会。少女がまとう、その身に対するあらゆる攻撃を受け流す無敵の防御霊装。

「まさか炎剣に自ら飛び込むとはね…」

 

「逃げられましたか」

どこからともなく現れた女性が、男に声をかける。

「なぁ、君が彼女を捕まえる訳にはいかないのかい?」

「以前も言ったでしょう、私が彼女に接近すると、身体制御の術式が弄られて、迂闊に歩くこともできなくなってしまうんですよ」

 

「はぁ…しょうがない、か。こんな仕事さっさと終わらせたいんだが」

「そうですね。嫌な仕事はすぐ片付けるのが最良です」

二人は、路地裏の暗がりへと消えて行く。

そこに残ったのは、

 

 

「い、いったい今のは何だったのです…?」

物陰に隠れて震えていた、ピンク色の髪の女教師だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「暑い…」

まだ軽く目眩がすると言う食蜂を寮まで送ってやった上条は、昼時の第七学区を歩いていた。

「インデックス、か」

脳裏によぎるのは白い修道女の姿。

引き留める間もなく去っていった彼女は、無事だろうか?

 

険しい顔で悩みながら歩いていると、ポケットの携帯が震え出した。

 

『もしもし?』

『もしもし、上条ちゃんですかー?』

電話口から化学式を連想させる少女のような声が聞こえる。

『小萌先生。どうしたんですか急に。 …まさか補習とか?』

『とんでもない。出席日数はギリギリセーフだし、休み前の試験もそこそこ良かったです。いい家庭教師でもいるんですか?』

『…まぁそんなとこです。でも補習でもないならなんで電話を?』

『それがですね、上条ちゃん。上条ちゃんの机から、英語のプリントが見つかったんです』

『げっ』

『これが無いと宿題コンプリートできませんよね?明日私の家まで取りに来て欲しいんですけど…』

『明日?今日じゃだめなんですか?』

 

一瞬の静寂。

 

『い、今はちょっと待って欲しいというか… 』

『? 何か問題でも?』

問いかけると、慌てた様子で返事が帰って来た。

『いや部屋がすごいことになってるとかビールの空き缶が床に散らばってるとか灰皿の煙草が山盛りとかそういうことではないんですけどっ!』

『…片付けたいなら少し待ちますよ?』

『えと、今外出中で… いやだからそんなこと無いんですけどね!?』

 

電話越しに少女のような教師を弄って遊んでいると、ふとあることに気づいた。

『あ、でも俺先生の家の住所知らないんですけど』

『あらら、今教えますねー。メモして下さいよー。えぇっと…』

『え、今メモ出来ないんですけど…』

 

しかし、月詠の口から住所が出ることは無かった。

直後。

爆発音が響いた。

 

 

 

「………は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

(なんですか、これ…)

月詠はしゃがみこんで爆煙をやり過ごしていた。教え子と電話で話しながら歩いていると、突如曲がり角の向こうで爆発が発生したのである。

爆風にバランスを崩さないよう必死に耐えていると、目の前を白い人影が駆け抜けていった。

「!? 今のは…」

この爆発の関係者かと思い引き留めようとしたが、すでに路地の角を曲がって姿を眩ましていた。

 

『…生?先生!?』

右手の中で携帯が音声を発している。まだ通話は切れていなかったようだ。

 

『先生、大丈夫ですか!?』

『ぶ、無事なのですよー。』

『良かった… 何があったんですか!?』

『路地裏を歩いてたら急に爆発が起きて…』

『犯人の姿は?』

『それは見てません… 関係ないかもですが、白い修道服を着た女の子が走っていきました…』

 

その言葉を聞き上条の声色が変わる。

『っ… 先生、今どこにいますか?』

『え? 第七学区のセブンスミスト近くの路地裏ですが…』

『ありがとう先生。プリントはまた今度取りに行くので、部屋片付けておいて下さい』

そう言って電話を切られた。

 

電話を切る直前の彼の声色を思い出し、月詠は軽く笑う。

「…相変わらずですね、上条ちゃん」

そう呟いて月詠は自らのアパートへ足を向けた。

 

取敢えず空き缶の山を撤去するために。

 

 

 

 

 

 

 




申し訳ありませんが、
高校生クイズ全国大会に残ることになり、
全力で準備するため、更新ちょっと休みます!
急にすみません!
あ、感想返信は続けます!


原作との差異まとめ
・上条が携帯保持→蜜蟻が物語に参加
・蜜蟻の介入→上条が記憶破損を回避
・蜜蟻のアイデア→上条が補習回避
・食蜂が上条を家にカンヅメにする→停電発生せず
・食蜂がインちゃんの頭を覗いてダウン
→歩く教会顕在+ラキスケ不発
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