青春と音楽と召喚獣   作:いくや

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 またサブタイトル漢字2文字に……

 そこは気にしないでください。

 漢字じゃなくなるときもいつか来るでしょう。

 では、どうぞ!!




#14 暴露!

 

 

 「~♪」

 「どうした、何か機嫌が良いな梓」

 日が沈むのが早くなった今日この頃、ここ、軽音部室。部員6名、顧問さわちゃん先生がいる。

 ティータイムの時間に鼻歌交じりになっていた梓ちゃんに澪ちゃんが突っ込んだ。

 

 「もうすぐ学園祭ですから!」

 「そうか~梓は初めてだもんな」

 「はい! あ、そういえば、去年の学園祭は ー 」

 去年の学園祭の話が出てきた瞬間、澪ちゃんが口に含んでいたコーヒーを吹き出した。トラウマか……

 

 「去年澪は大活躍だったもんな~」

 「え、そうだったんですか!? 見てみたかったな~」

 「その映像、あるわよ!」

 どこからか取り出したDVDを手に取りさわちゃん先生が言う。

 

 「み、見ないほうが ー ひ、ヒロ! お前もだ!」

 「見るなって言われたら見ないけど、去年オレ学園祭その場に居たからね」

 『えっ!?』

 みんながいっせいにこっちを向く。一応、最初の自己紹介の時に言ったはずなんだけどな。

 

 「どういうこと?」

 「学園祭、一般の人も入っていいから、当時中3だったオレは友達と一緒に見に来ていたんだ」

 「いいな~ヒロ君、実際に聞きたかったよ」

 「ひ、ヒロ! 去年見に来ていたということは ー 」

 オレは無言を貫いた。何も言わないのが澪ちゃんのためであろう。りっちゃんの言う、澪ちゃんの大活躍したシーンもばっちりと見てしまったから。

 

 「あ、梓! 見るのか!」

 「見たいですもん」

 「や、やめておいたほうが ー 」

 ここまで澪ちゃんが人に見せたくないのは、演奏が下手だったとかそういうものじゃない。むしろ、演奏は上手かった。ただ、演奏が終わった後、退場するときにシールド(アンプとギター・ベースを結ぶコード)に引っかかって転倒してしまったのだ。もうお分かりですかね……そのとき制服で演奏していました。

 

 「み、見ちゃいました……」

 DVDをみながら梓ちゃんは顔を真っ赤にしていた。その後、演奏シーンからみんなで見始めた。

 

 「何かいろいろと思い出すな~わたしこのとき声ががらがらで」

 「そうだったね」

 「梓にとっては最初の学園祭でのライブだな」

 「はい! 楽しみです!」

 そろそろ、学園祭の時期か……オレも出たいなあ。

 

 「さわちゃん先生、以前から頼んでいた ー 」

 「ああ、そのことね。ちょっとこっちに来てくれるかしら」

 「?何のこと?」

 「ちょっと待ってて」

 さわちゃん先生と共に、いったん部室の外に出た。

 

   ★ 

 

 「ただいま~」

 ヒロ君が山中先生と共に帰って来た。キーボードを持って。 

 

 「ここらへんでいいかしらね」

 「ヒロ、どういうこと?」

 「みんなには黙って、キーボードの練習をしていたんだ」

 『えーっ!?』

 ヒロ君の突然の暴露に、みんな驚いた。いつのまにそんなにこっそりと!

 

 「楽器、何かしなくちゃいけないだろうなあって思ってて、家にあったのがたまたまキーボードだけで。それをずっと今まで練習し続けてたんだ。分からないことや難しいとこはちょくちょくさわちゃん先生に聞いてたんだ」

 「何で今まで黙ってたんだよ!」

 「わざわざ隠す必要ないじゃない」

 確かに今まで部室に来ても何も触らないなあと思ってたけど、家で練習していたんだあ。

 

 「素人が練習してみんなの邪魔になりたくなかったから。せめて、人前に出て披露しても恥ずかしくないレベルに仕上げてからと思ってたら、こんなに遅くなっちゃって」

 「みんな、聞いてみると良いわ。なかなか半年間しか練習してないにしては上出来よ」

 「聞きたい!」

 「唯……確かにわたしも聞きたい!」

 みんな聞きたいといったら、ヒロ君がさっき運んできたばっかりのキーボードで演奏し始めた。

 

 男の子らしい強めのタッチと勢いのある演奏。荒削りだけど、半年間でこんなに弾けるようになるものなんだ。演奏をし終わると、心配そうな顔で「どう?」ってヒロ君が聞いてきた。

 

 「ヒロ君、すごい!!」

 「びっくりした!」

 「すごいわ~わたし、負けてられない」

 「む、ムギ先輩、そんなことないです!」

 やわらかで繊細なタッチのムギ先輩のキーボードに、正反対のキーボードを演奏するヒロ君。融合したらどんな感じになるんだろう。

 

 「ヒロ君、それならわたしたちと一緒にステージに立てるよ!」

 「ホントですか唯先輩! ありがとうございます」

 「キーボードが2人になって、さらに音楽に厚みが増すな、澪!」

 「そうだな律!」

 みんな気合が入ってきた。こりゃあ負けてられないなあ。と思ったときに、軽音部に来客が。

 

   ★

 

 「盛り上がってるところ悪いんだけど ー 」

 「あ、和ちゃん!」

 赤縁眼鏡の頭よさそうな人が軽音部にやってきた。

 

 「あ、あずにゃん、ヒロ君は確か知らないよね。こちら、真鍋和ちゃん、わたしの幼馴染なんだ」

 「初めまして。真鍋和です」

 『初めまして』

 唯先輩と真逆の性格って感じだけど……意外とこういうほうが相性あったりするんだよね……例えば、澪ちゃんとりっちゃんとか。

 

 「そうそう、コレ! 講堂の使用届け。学園祭の分出してないでしょ!」

 「あ、忘れてた」

 のんきすぎるよりっちゃん。部長しっかりしてください! みんなが定位置に座って ー 。

 あ、そうそう定位置で思い出した。場所変わったんだよね~。もともとオレが座っていた席はさわちゃん先生の場所だったからそこは譲って、オレは梓ちゃんの隣になったんだよなあ。りっちゃん側の。だから ー

 

   り ゆ

 ひ テ テ さ

 あ テ テ 

   み む

 

 テ……テーブル、ひらがなはそれぞれ名前の頭文字1文字。

 

 「じゃあ、書記梓な」

 「わたし……ですか? いいですけど」

 面倒くさがりやのりっちゃんは書く作業を押し付けた。

 

 「使用者は“軽音部”、名称……名称って?」

 「バンド名とかってことじゃないの?」

 「バンド名って何なんですか?」

 一瞬全員が止まった後、みんなが別々の名前を挙げた。決まってなかったんだ……

 

 「決めてなかったね……」

 「いい機会だから決めよう!」

 う~ん……何が良いだろうか。

 

 「じゃあ、“平沢唯&ずっこけシスターズ”ってのはどうかな?」

 「あたしら何者!?」

 オレもシスターズの一員?

 

 「じゃあ、“ぴゅあぴゅあ”とかは?」

 「そういうボケはいいから真面目に ー 」

 「結構真面目なんだけど……」

 そっか、澪ちゃんの感覚は独特なんだった。今までの曲の歌詞確か全部澪ちゃんだったっけ。

 

 「よしっ。わたしが決めよう!」

 『もう少しみんなで考えます!』

 先生の提案が一蹴された。

 

 「じゃあそれ、後で生徒会室に持ってきてね」

 「悪いな和、わざわざ」

 「和ちゃん、たまにはお茶しようよ!」

 「分かった。後でメールする」

 それだけ言うと、生徒会役員であろう真鍋さんは出て行った。

 

 「よ~っし、バンド名は各自一晩考えるとして」

 「学園祭も近いことだし練習するか!」

 「はいっ!」

 「ヒロ君も新たに演奏者として加わることになったし」

 これで、本当に軽音部の一員になった感じだ。

 

 「あ、ちょっと待って。この頃わたしのギターが音の調子が悪いんだ」

 「見せてもらえますか?」

 唯先輩がギターを取り出し、梓ちゃんに見せる。

 

 「うっ……弦さびてるじゃないですか……これいつ弦を交換したんですか?」

 「え? 弦って交換するものなの?」

 『な、何?』

 マジか……ということは? 買ったときからそのままの状態ってことか。

 

 「いいギターなのに大事にしないとダメじゃないですか!」

 「大事にしてるもん! 一緒に寝たりとか服着せたりとか ー 」

 果たしてそれは大事にしてるって言えるのだろうか?

 

 「楽器店に行きましょう」

 「え?このままでいいよ~」

 「これじゃあ、練習になりませんよ。学園祭も近いのに……」

 「りっちゃんもお手入れなんかしてないよね……」

 りっちゃんをどんな目で見ているんだ唯先輩は。手入れくらいしてるでしょ。

 ということで、唯先輩の楽器の手入れをしてもらうために、楽器店に行くことになった。

 

 「じゃあ、わたしここで待ってるから」

 「え?」

 楽器店の前に着いたのに、楽器店に入らない澪ちゃん。どうしてだろう。

 

 「わたし左利きだから、右利き用の楽器見ても悲しくなるだけだから ー 」

 「澪ちゃん、レフティフェアがあってるみたいだよ」

 「え!」

 すぐに店に入っていった。レフティの楽器をこんなに見ることはそうないだろう。澪ちゃんは見とれていた。

 

 「澪ちゃん、楽しそう」

 「左利きの楽器は少ないからね」

 「唯先輩、ギター見せに行きましょう」

 オレは、梓ちゃんと唯先輩についていくことにした。

 

 「すいません。ギターのメンテナンスをしてもらいたいんですけど」

 「はい? どちらのギターですか?」

 「これです」

 あまりにも汚すぎて、年代モノのギターと間違われた。

 

 「では、終わるまで店内でお待ちください」

 「お願いします」

 梓ちゃんも大変だな……

 

 「唯先輩って、何であのギターにしたんですか? 重いし、ネックも太いし」

 「へ? 可愛いから」

 可愛い? かっこいいとかならまだ分かるけど……ほら店員さんもメンテナンスをする手が一瞬止まったじゃん。

 

 その後、店内で待っていると、ムギ先輩がさまざまな店員に呼びかけられていた。どうやら、この店は琴吹グループの店だったらしい。

 

 「お待たせしました。ギターのメンテナンスが終わりました」

 「綺麗になったね」

 「これからはこまめにメンテナンスをして ー 」

 「ギー太!!」

 ぎ、ギー太!? 名前? このギターの名前が『ギー太』なのか!

 

 「ありがとうございました!」

 「い、いえ……ああお代は¥5,000になります」

 「え……お金取るの?」

 ただじゃメンテナンスは出来ないでしょうよ……

 

 「お金持って来てない……」

 「どうしたの?」

 「あ、唯先輩がメンテナンスにお金がいること知らなくて ー 」

 「そうなの……手持ちあるかしら?」

 ムギ先輩が財布を取り出そうとしたとき、別の店員がこう言った。

 

 「つ、紬お嬢様!! お、御代のほうは結構です! サービスということで!」

 「え? それでも」

 「日ごろお嬢様にお世話になっている分ということで ー 」

 お嬢様、恐るべし。問題はあっさりと解決した。

 

 「じゃあ、そろそろ帰るか」

 「澪ちゃんは?」

 「呼んでくるわ~」

 りっちゃんがおそらくレフティモデルのところにいるであろう澪ちゃんの所に行った。が、何か心配になってついていくことにした。

 

 「澪~帰るぞ~」

 「やだ」

 「そんな子どものようなことを ー 」

 「やだ」

 りっちゃんは、力づくで澪ちゃんを連れて行こうとしたが澪ちゃんがこけた。

 

 「な~にやってんだよ澪~」

 「もういいよ! バカ律!」

 まずい……これは喧嘩になるぞ。

 

 「ま、まあまあ2人とも落ち着いて……りっちゃん乱暴すぎ。澪ちゃん帰ろう」

 ちょっと不機嫌な澪ちゃんだったが、店外に出た。

 

 「このあとどうすっか?」

 「あ、ごめん。わたし和ちゃんとお茶することになってるんだ」

 「和と? わたしも行って良い?」

 「そっか、澪ちゃん一緒のクラスだもんね。いいよ! 和ちゃんには言っておく」

 「やった。ありがとう唯」

 不機嫌さが取れ、澪ちゃんは笑顔になった。唯先輩と澪ちゃんは和ちゃんと「ラ・ペディス」で待ち合わせしたらしく、分かれた。

 

 「後つけようぜ!」

 「え?」

 「りっちゃん、どうしたんだ?」

 「別に」

 「後つけましょう! こうしてみると探偵みたいじゃない?」

 ムギ先輩……何かつかめない人だなあ。

 それにしてもりっちゃん……

 

 





 やっと、ヒロがみんなの仲間入りしました!

 でもちょっと最後のほうには不穏な空気が……

 どうなる軽音部?

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