青春と音楽と召喚獣   作:いくや

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 何かろくでもないサブタイトルに(苦笑)

 思いつかなかったものですから。

 では、どうぞ!!


#19 バカ!

 

 「重いよ、ヒロ……」

 「自業自得だ」

 終業式も間近に迫ってきた冬のある日、アキは放課後に職員室に呼び出されて雑用をしていた。アキは、召喚獣+で本人も荷物を持っているため、負荷がかかりやすい。オレも少しは手伝ったりしている。

 

 「先生、オレも召喚獣が使えたら仕事早く終わるんじゃないんですか?」

 隣に居た西村先生に言った。

 

 「もともと、手伝わせるつもりも無いからな。吉井1人がやるのが本来のものだ」

 「観察処分者とかじゃなくて良いから~」

 「そんなものはない」

 召喚獣を使いたいがために、問題行動は起こしたくないし……仕方ないのか。

 

 「よしっ。これでラストだね」

 「そうみたいだな」

 「終わった~……ヒロありがとう」

 「ったく、オレはもう部活行くからな」

 オレは教室に戻り、鞄を取った後で、部室に向かった。

 

 部室に行くと、全員が既に来ていた。しかも、ティーセットが出ているということは結構待ったらしい。

 

 「遅くなりました~」

 「どうした、ヒロ」

 「何かあったのか?」

 オレは鞄を置いて、席に座って事情を話した。

 

 「ほ~う、噂には聞いていたが、その観察処分者がまさかヒロの親友だとは」

 「面目次第もございません」

 「ヒロが謝らなくて良いだろう」

 「はい、お茶ですよ~」

 「ありがとうございます」

 以前、ムギ先輩にお茶淹れましょうかって言ったら、やんわりと断られちゃって…お茶淹れるのムギ先輩がずっとしているんだよね。

 

 「この話が出たついでに、試召戦争どんな感じなんですか?」

 「そういえば、あんまり聞きませんね」

 「オレたちももうすぐ、召喚獣を使えるかと思うと」

 「楽しみなんだ」

 何かしら聞く機会が無かったから、聞いてみることにした。

 

 「あんまりウチの学年は試召戦争してないよな」

 「そうだね~」

 「したとしても、AクラスとEクラスはあんまり巻き込まれないんだよね」

 「ちょうどみなさんのクラスじゃないですか!」

 澪ちゃん・ムギ先輩がAクラス、りっちゃん・唯先輩がEクラスである。

 

 「Aクラスに挑もうとするクラスが無くて、Eクラスは部活生ばっかりだから試召戦争にまるで興味ない人たちばっかりなの」

 「ムギの言うとおりだな。FクラスのやつらはEクラスの教室奪い取ったって意味ないと思っているみたいだし」

 「D~Bの戦いが一番活発かな」

 へ~面白そうだけど、面白く無さそう。

 

 「自分達で召喚獣使うことは?」

 「試召戦争が少なかったから、実質使ったのは数回かな」

 「やたら、演劇部とかゲーマーとかが強かった」

 「なりきるのがポイントとか、ゲームの操作方法に似ているとか」

 秀吉やアキはすぐに強くなるということだな。でも、2とも飛びぬけてバカが目立つからな~Fクラスほぼ確定だろう……オレはFクラスには行きたくない。相当教室がぼろいらしいから。

 

 「あずにゃんは来年クラスはどこに行きたいの?」

 「えっ……?出来るだけ上のほうですかね」

 「そうなんだ~ヒロ君は?」

 「オレも上のほうが良いですよ」

 オレがそう言うと、隣の梓ちゃんが驚いていた。

 

 「何でそんなに驚かれるの……?」

 「え、だってヒロ君、“バカ”なんでしょ?」

 「梓、直球過ぎる」

 「え?」

 まさか、梓ちゃんですら騙されていたとは。結構軽音部内ではまとな人間でいるつもりなんだけど。

 

 「あずにゃん、ヒロ君がバカなわけないよ~」

 「え、でも、吉井君とかとずっといるから~」

 「それはその観察処分者に対して失礼だ」

 「オレに対しては失礼じゃないの!?」

 笑い声が起こったのはいいんだけど、軽音部内でバカを確立するわけには行かない気が……。

 

 「梓ちゃん……」

 「はい?」

 「一応、澪ちゃん並みの学力は持ってるから」

 『嘘(だな)』

 あれ……?梓ちゃん以外の声も左の方から聞こえてきた。オレの左隣に陣取っているのはりっちゃんだ。

 

 「仲間だろ、ヒロ~」

 「律、今までヒロをどう見ていたんだよ」

 「本当かどうかは後で先生に聞けば良いじゃない」

 「そうだなムギ!」

 それでいいか。噂・印象って恐ろしいものだ……

 

 「そうだ! ヒロも来て全員揃ったところで、じゃ~ん」

 りっちゃんは1枚のチラシをみんなの前に出した。

 

 「わたしの中学時代の友達がさ、誘ってくれたんだ~」

 「何を?」

 「このLIVE一緒に出ない?って」

 「ライブハウスでライブするんですか!?」

 しかも日付は大晦日……カウントダウンライブとまではいかないにしろ、それに近い。

 

 「後10日も無いぞ」

 「大丈夫! わたしらは1部の方に出るから!」

 「それの何処が大丈夫なのだ?」

 大晦日の昼が1部で、夜が2部という感じらしい。2部の方は完璧カウントダウンライブだ。

 

 「出たいで~す」

 「わたしもわたしも!」

 「よ~し決まりだな」

 「ちょ、待って律。今回パスな人」

 「みなさん、ごめんなさい」 

 今回の多数決は、りっちゃん・唯先輩・ムギ先輩が出たいと、澪ちゃん・梓ちゃんがパスと。もちろん、こうなってしまった場合は、オレに結構重大なお鉢が回って来るんだよな~

 

 「ちょっと即答出来かねます。大晦日とか正月とかは毎年親と居るから、親に許可貰わないと……」

 「今すぐメールだ!」

 「わ、分かった」

 親にメールしてみたところ、数分後に電話がかかってきた。

 

 「お、親だ」

 「電話?」

 「うん、出ても良いかな?」

 「静かにしておくから」

 みんながそう言ってくれたので、ちょっと離れて電話を取る。

 

 「もしもし」

 『今のメールどういう意味?』

 「そのまんまだけど……ダメかな?」

 『部でライブということか?』

 「うんそうだけど」

 『部長に代われ』

 「え?」

 『話したいことがある』

 怖いんだけど……電話口をふさいで、りっちゃんに話しかける。

 

 「りっちゃん……親が部長に代われって」

 「えっ!?」

 「出てくれないかな」

 「み、澪代わりに出てくれ!」

 「い、嫌だよ。部長は律だろ」

 ちょっと怖がっていたが、りっちゃんが出てくれた。

 

 …………何話してるんだろう………。

 

 「ヒロ~はい電話」

 「切ったの?」

 「もうヒロに替わらなくていいからって」

 「どうだったの?」

 みんなの視線がりっちゃんに。

 

 「息子をどうぞよろしくお願いしますって」

 「何その、結婚するときの親のセリフみたいなのは!!」

 「出ていいということだったんだな」

 「他に何を聞かれたの?」

 「普段の軽音部での様子とか……結構親バカだな」

 今日は執拗にバカという言葉を聞く気がする。

 

 「じゃあ行くことに決まりだな」

 「ムギは毎年フィンランドに行ってたんじゃなかったのか?」

 「うん、そうだけど……1年の最後の日にみんなと一緒に演奏できるなんて素晴らしいじゃない」

 「ムギ先輩……」

 澪ちゃんと梓ちゃんも行くことに同意をしてくれた。

 

 「それならば、申請をしに行かないと ー 」

 「申請?」

 「そう、申請ってさわちゃん!?」

 「何の申請なの?」

 りっちゃんがあれこれと説明をして、さわちゃん先生の許可を貰った。

 

 「今から行くの?」

 「そうですよ」

 「お茶は?」

 「もうその時間は終わりました」

 「え~っ」

 ティータイムの時間って、実は先生が一番待ち遠しいのではないだろうか。

 

 「あ、さわ子先生」

 「どうしたの梓ちゃん」 

 「聞きたいことがあるんですけど」

 「あら、何かしら?」

 みんな何を聞くんだろうって目をして梓ちゃんを見る。

 

 「ヒロ君って、バカじゃないんですか!?」

 「わたしも気になる!!」

 覚えていたんだ……さっきの話。

 

 「どうしてそんな話が?」

 「いいから、バカかそうじゃないかを教えてくれよ~」

 『教えてください』

 みんな揃って、そこまで知りたいものなのかな?

 

 「噂ではバカだって聞くわよね」

 「噂じゃなくて本当のことを!!」

 「顧問だったら、部員全員の成績把握しているでしょ!」

 「ヒロ君、教えていいのかしら?」

 「オレの言葉だけじゃ信じられなかった方々です」

 オレがそう言うと、先生は持っていた鞄の中から1枚の紙を取り出した。

 

 「コレが軽音部、すなわちあなたたちの成績が書いてある紙よ」

 「どれどれ?」

 「澪はやっぱりAクラスだな。全教科300点超えてるよ!」

 「ホントだ。すごい!!」

 「わたしのじゃなくて、ヒロのだろ!!」

 若葉学園のテスト形式は、上限が100点と決まっておらず、無限にあるから、格差社会が一目瞭然だ。

 

 「ヒロのは……あった!」

 「嘘!? わたし負けてる」

 「凄いわ~」

 「ヒロ君頭いい~」

 オレは100点くらいの教科もあれば、400点を超えてる教科もあるとアンバランスであった。

 

 「このこと、誰にも話さないでくださいよ。特に、梓ちゃん、クラスのみんなには内緒で」

 「何で?」

 「バカで通ってるから。軽音部のみんなさえホントの事知っててくれたらそれでいい」

 「そうなんだ」

 唯先輩がすぐさま憂ちゃんに話したりしないかが心配だ。りっちゃんもペラペラとしゃべりそう。

 

 「まさかヒロがわたしら側じゃないなんて」

 「うすうす気づいてはいたけど……何て残酷なのりっちゃん」

 「唯……」

 また始まったよ小芝居。

 

 「律、唯、そのライブハウスに申請行くんじゃないのか?」

 「そっか、忘れてた」

 「じゃあさわちゃん先生バイバイ」

 「お茶を飲みに来たのに……」

 ろくでもない先生だ。

 

 

 「ここかな?」

 「そうみたい」

 学校を出てライブハウスの前で地図を見ながら確認をする。いざ入ると、やっぱり何か独特の雰囲気を感じた。

 

 「すいませ~ん」

 「は~い」

 りっちゃんが大声で人を呼ぶと、店員(といえばいいのかな?)がやってきた。

 

 「あの~これなんですけど、出演申し込みに来ました放課後ティータイムです」

 チラシを出し、力強く言う。

 

 「ああ、“ラブ・クライシス”のマキちゃんから聞いてるわ」

 「ラブ・クライシス! 何かかっこいい。わたしらのぽわぽわとしすぎかな?」

 「放課後ティータイム、何かかわいらしい名前ね」

 唯先輩の心配も杞憂に終わったみたいだ。

 文化祭の時に録音していたテープを持ってきて聞いてもらったところ、出演OKだそうだ。

 

 「それじゃあ、参加申込書書いてくれる?」

 「はいっ!」

 「当日出演者は13:00入りね」

 なるほど、リハをやるのか。流石に本格的だ。

 

 「15:00からミーティング、客入れが16:00、開演が17:00ね」

 「え、あ、え……?ハイ!」

 「りっちゃん、わたしが忘れても ー なんて甘い希望抱いていると痛い目に ー 」

 「みんな話聞いちゃいねえ!!」

 部長のりっちゃんとオレ以外は置いてある器材などに夢中になっていた。

 

 「じゃ、今から中を案内するわね」

 一通り、案内をしてもらった。ライブハウスってこんなに充実してるんだ。すごいな。

 

 「当日よろしくね!」

 「よろしくおねがいします!」

 ちょっとわくわくして来たな……

 

 「え、ライブに出るの?」 

 「そうなんだよ、憂。今日はその打ち合わせ」

 ライブのミーティングをすべく、平沢家にお邪魔した。以前送っていって家の前までは来たことあったけど、中に入るのは初めてだ。

 

 「すごい、お姉ちゃん!!」

 憂ちゃん、お姉ちゃん大好きなんだよね~シスコンってやつだろうか。

 

 「曲目は4曲。ホッチキスにふでぺん、カレーにふわふわでいいか」

 「そういえば、いつか聞こう聞こうって思ってて聞いてなかったことが」

 「何?」

 「作詞は大体澪ちゃんがしてるんでしょ。作曲は?」

 「だいたいわたしかな」

 ムギ先輩が作曲してるんだ~確かにりっちゃんや唯先輩は出来無さそうだし。

 

 「そうだ、憂、はいコレ」

 「何?」

 「憂と純ちゃんの分のライブのチケット、2人で見に来てね!」

 「ありがとう! でも、もったいなくて使えない」

 「使わないと入れないよ~」

 梓ちゃんの的確なツッコミが。

 

 「後は、和ちゃんとさわちゃんだね」

 「そうだな」

 「あ、憂、優子ちゃんもいるかな?」

 「高校に入って、喋る機会減ったけど……渡してみる!」

 優子ちゃん? って確か、秀吉の双子の姉? そうか、中学時代仲が良かったって聞いたことがある。

 

 「唯先輩、オレから5人渡したい人がいるから貰っても良いですか?」

 「どうぞどうぞ~そんなに見に来てくれるとは嬉しいね~」

 「学園祭も見に来てくれてましたよ!」

 「へ~」

 しばらく、平沢家でミーティングをした後に帰った。

 

 





 バカの仲間はバカ。
 それは、イメージ・先入観に過ぎないんだよ!!

 逆もまた然り。
 頭いい人と喋っているからと言って、頭いいとも限らない(笑)

 別に経験談じゃ、ありませんよ。

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