いよいよ、本編スタートです。
高校の入学式からです。
では、どうぞ!!
「とうとう高校生か。楽しみや!」
オレは、花が散っている桜の大木の下を通り、若葉学園へと足を踏み入れた。
周り見渡すと、新入生だろうか。顔を赤らめながら入ってきたり、親に連れられながら学校に来たりとさまざまな人がいた。
本来ならば中学生時の友達が隣にいるはずだが、集合場所に5分経っても現れないから置いてきた。
だから、周りは見知らぬ人だらけ。これが、高校生活か。
ふと、つけていた腕時計を見てみると、入学式5分前であった。急いで、入学式が行われる講堂へと歩みを進めた。
★
「 ー 学園長の
入学式も始まり、学園長の言葉となった。
式典にありがちな○○長からの式辞ってやつで最後をしめくくるのがこの人物だった。
が、そこで予想もしないことが起こった。オレだけでない。誰もが予想しなかったであろう。
『変態だ~!!!』
講堂の後方入り口から大声が聞こえてきた。
「変態!?」
「学園長、変態なのか?」
「まさか……」
というざわつきの声がちらほらと。
そんな大声で暴露せんでもいいだろうに……
学園長のメンツ丸つぶれじゃねえか。
「あたしは変態なんかじゃないさね!」
必死に潔白を証明しようと語りかけるが、デマだとしても一度流れたら元に戻るのは難しいものだ。
その学園長の努力を水の泡に帰する次の一声が。
『誤解だあ~!!!』
先ほどとは違った声の主。
この話の流れだと、学園長が変態じゃないのが誤解=学園長は変態という式が成り立つ。
学園長も大変だなと思いつつも、さっきの声に聞き覚えがあったために、声の主の顔を見た。
……
間違いない。ヤツだ。
遅刻は仕方ない(今までさんざん見てきた)としてもこの行動は友達として恥ずかしいわ……
この会場にいる全員が、学園長ではなくこの新たに入ってきた2名の男子に注目が集まった。
そして、注目を浴びる中、そこへ近づく人が1名。
『お前達! 入学式からいい度胸だな!!』
先生たちが座っている席のあたりから歩いてきたため、おそらく先生であろうことが推測できた。
何だあの体格は。教師!? そんなんじゃないだろう。格等家といっても遜色ない。
そんな大の男が新1年生2人のもとへ近づいていくのだ。ほとんどのやつがビビるだろう。
そして、何やら少しは口答えしたようだが、それぞれ片手ずつで連れて行かれた。
みんなが唖然としている中、学園長が気を取り直してこう告げた。
「あたしは変態でもないさね。気を取り直して、この学園の特色を高橋先生に言ってもらうよ」
と言って、壇上から降りていった。かわりに、高橋先生と思しき人が壇上に上がり話し出した。
「みなさん、ご入学おめでとうございます。この学園の教師、高橋洋子と申します。私の方から、この学園の特色を説明いたします。この学園の特色と言えば ー 」
メガネをかけた大人な女性といった雰囲気の先生が語りだした。この学園の特色なんてものは大体はパンフレットなどで読んだから知っている。というか行く学校の特色くらい普通調べる。
この学校は、2つの高校が統合されたというところから話が始まった。制服だが、男子は旧文月学園のブレザーをそのまま引き継いでいて、女子は旧桜ヶ丘女子学園高校の制服を引き継いでいるらしい。だから、旧文月学園の卒業生で女子のブレザーがまだある人は、レアものだということだ。
後は、学力だけでなく、さまざまな力が要求される「試召戦争」。2年生から出来るんだよな。
「後は、部活動ですが、この学園は進学校であるために無理にとは言いませんが、出来るだけ全員部活動に入るようにしてください。己の新たな一面が見えたり精神力が鍛えられたりします。それに、内申書にも関係してくるため、大学を推薦で行きたいと考える人は入ることを薦めます」
なるほどね。部活か……中学時は野球部だったんだが、高校ではしようとは思わないんだよな。後で、部活動紹介の紙を見て、興味あるところ全部見学に行ってみるとしよう。
気づくと、高橋先生は説明を終わり、壇上から姿を消していた。
その後、騒動なんてありましたかといった感じで淡々と入学式は進んで行き終わった。
各自、クラスに戻って自己紹介だそうだ。
クラスメイトは大事にしないといけないな。どんなやつがいるか楽しみだ。
★
「このクラスの担任をすることになった西村宗一だ」
まさか……先ほどのあの大の男が担任になるとは!?
暑苦しい1年になりそうだ。だが、生徒思いという雰囲気は伝わってくる。
「廊下側の席から1人ずつ自己紹介をしていってもらおう」
出席番号順に自己紹介をしていく。まあ、みんな高校生活1日目ということで緊張しているのだろう。かく言うオレもその一員だ。みんな立ち上がって、前に歩いていって、名前言って、出身中学校言って座る、という繰り返しが続き、微妙に眠気が襲ってきた頃、こんな自己紹介があった。
「
性別でさえも言わなければならないほどの人であった。通称「男の娘」と言うべきか?
小学生の頃とかはよくいたけど、高校生でもこれってある意味凄い。
その後、また淡々と同じ作業の繰り返しだったが、あの男の自己紹介の出番だ。
そう、先ほどの入学式のときにアキと共に騒いでいた人物だ。
「神無月中、
それだけ言うと、席に着いた。こいつもこいつでなかなか威厳がある男だ。不良か何かか?
その疑問はすぐに解決した。何故ならば、この名前を聞いた後に教室がざわつき始めたからだ。
「神無月の坂本だと?」
「
「同じクラスかよ……」
神無月中の悪鬼羅刹。オレたちの学年では有名だったな。不良のリーダーと言うべきなのか。
オレは全くそっちの方はノータッチだから分からない。
しかし、坂本……雄二……あの赤髪?…………まさかな……
考え事をしている間に、もう次の人が自己紹介をしていた。
「シマーダ、ミナーミ、です」
黒板に漢字で名前を書き出した。島田美“彼”と。
それを見て、クラスの大半はくすくすと笑い出した。
まあ、誤字だというのは分かる。おそらく“波”だろうということも。
だが、そこまで笑わなくてもいいんじゃないか?
顔立ちとかは日本人だが、話し方が日本語を覚えたてだったという感じじゃないか。
それならば漢字も書けなくて当然だろうが。
担任の西村先生は、コホンと一つせきをたてて言った。
「えー島田はドイツからの帰国子女だそうだ。だからみんな助けて行ってやれ」
なるほど帰国子女か。納得した。だがまだ笑うか。優越感にそんなに浸りたいか。悲しいやつらだ。
アキも心底嫌そうな顔をしていたな。そういうのは流石だ。ただこのクラスもたかが知れてるな。
本当に友達と付き合っていいのはごく僅かかもしれないな。
そう一人で問答をしていたら、不思議な人物が現れた。
「………神無月中、
面白いやつが現れたな……ポケットからカメラや録音機材見えてるぞ。
趣味は盗撮、特技は盗聴ってか? 犯罪じゃねえかよ。
いろいろと心の中で突っ込みを入れていたら、いつの間にかオレの前の人が自己紹介していた。
「神無月中出身の
オレの前のツインテールの女子が自己紹介を終わり、いよいよオレの番が回ってきた。
「え~
咄嗟に、面白いことを思いつかなかったので、テンプレートだ。
最初の自己紹介から自分らしさを出せるようなヤツなんて、オレが知る限り今までで1人しかいなかった。(今回の件で覆されたけど)
そう、出席番号最後のヤツ。吉井明久だ。
だが明久のヤツは珍しく受けを狙いに行かず真面目に言って終わった。つまんねえ。
結局、木下やら坂本やら島田やら土屋といったやつらの印象が強すぎて、他のやつらあんまり覚えてねえや……徐々に覚えていけばいいだろう。友達になるならないは別として。
自己紹介も終わり、担任西村先生のありがたいお言葉もいただき、入学式の日の学校が終わった。
終わると同時に、中学時代の友達と早速話しながら帰ったりまだ教室に残ったりしていた。
その中で、やはり遠いところから来た島田は人気があった。人がどんどん集まってきて、いろいろ質問攻めにあっていた。日本語で話しかけられたら分からんだろうに、構わず話すのね。
「黙りナサイ、ブタども」
島田がこう言ったのは聞こえてきた。それは笑顔を浮かべながら言うものじゃない。おそらく勘違いして使っているのだろう。誰がこんな日本語を教えたのかは気になるところだが。周りにいた人たちはどんどん島田の周りから離れていった。こりゃ孤立してしまうぞ…
「ヒロ~帰ろう」
ヒロというのはオレのあだ名。弘志のヒロだ。オレも明久のことをアキと呼んでいる。
「いいぜ」
オレとアキは靴箱に向かい、赤の上靴(オレたちの学年の色らしい)を下靴と交換し外へ出た。
歩きながら、今朝の入学式に起こった騒動の真相をアキに聞く。
「アキ、あれは見ているこっち側も恥ずかしかったわ」
「誤解だよ誤解!」
「それしか言わねえな」
アキから話を聞いたものの、説明が下手でいまいち要領がつかめなかったのでその話は捨てた。
歩いて帰っていると分かれ道に。今日は金曜日。明日明後日は休みだ。
アキに、月曜日こそ遅刻するなと念を押し、それぞれの家に帰った。
この学校、心配だぜ……
そんなこんなで高校生活の1日目が終わった。
何か、最初はアンチ島田じゃないですね……
そこは仕方ないと放っといてください。
まずはバカテス主流のほうですね。
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