少し遅れてすいません。
書いてたらとても長くなってしまって……
2話に分けました。
では、どうぞ!!
「3年生、本気だな……」
ディスプレイを見ながらつぶやく雄二。
一つ目の曲がり角を曲がるだけで、失格者多数続出している。
「どうする雄二?」
「特別何かやろうってこともない」
「このままやられるのを黙ってみているの!?」
「落ち着け明久。俺だって勝負事負けるのは好きじゃねえ」
雄二はいったん教室を見渡して、次のペアを発表した。
「久保。頼めるか」
「僕かい? 構わないけど」
「おう、久保頼んだ!」
「久保君、よろしくねっ!」
「よ、吉井君!? 分かった! 必ずやよい報告を持って帰ってこよう」
久保は顔を少々赤らめながら、眼鏡を上げる仕草をして、佐藤と共に向かっていった。佐藤と久保のペアなら、試召戦争には勝てるだろうがその前に悲鳴を上げないのだろうか。別段この2人が怖いものに得意とかは聞いたことは無いんだが……
「これでいいかい、吉井君!?」
数分もすると、久保と佐藤はチェックポイントに辿り着き、既に倒していた。どれだけ行動早いんだよ。
「うんっ! ありがとね久保君!」
「よよよ吉井君!? ぼぼぼ僕なんかに……」
「久保君どうしました? ちょっとみなさんすいません、久保君が倒れたのでリタイヤということで」
「何かもったいねえな。素直にありがたいけど」
発狂したとでも言うのか。佐藤は近くに居た先生と共に久保を保健室へと送りに行ったそうだ。
「さて、次のクラスか」
「最初であんなに手が込んでいたら、後々どうなるんだろう」
「ネタ切れとかあるんじゃないか?」
「それはあまり期待しない方がいいかもな」
本気を出しているのが嫌でも分かる。負ける気なんてさらさらありませんって感じ。
「「「「「ギャーッ!!!」」」」」
作戦を立てていたら、ディスプレイのほうから大きな悲鳴が。カメラの奥だけでなく、こちらの教室(画像だけ)からも悲鳴が上がったようだ。
「何があった!?」
「絵面が……」
「死ぬ」
「助けて~」
相当衝撃があったのか? オレたちも恐る恐るみんなが目をそらしているディスプレイに目を向けた。
「「「「ギャーッ!!!!!」」」」
「汚ねぇ!! 驚かせるやり方も汚ねえが絵面も汚ねえ!!」
「最悪だこれ……」
「見てしまったわ」
「リバースしそう」
「一時食べ物が口から入らないよ」
時間差でオレたちもダメージを受ける。まあ本当にお茶の間にはお見せできないですね。
「仕方あるまい……ムッツリーニ!」
「………コレに」
「ヤツの駆除を頼む」
「………承知した。準備は上々」
「よしっ。行ってこい」
康太は無言でうなずき、純ちゃんと合流して何か1つ物を持って肝試しに出かけた。
コチラとしては、康太に全てを任せるつもりだから、他の全員はコチラにいる。こういう相手には康太が一番出来るだろうとみんな思っている。かくいうオレもそう。
『先輩方結構本気だね~こうやって歩くと分かるよ』
『………ああ』
『どうしてそんなに返事が淡白?』
『………俺はアイツへの復讐の計画を頭の中で復習している』
『上手くまとめたつもり?』
『………』
こういった会話が聞こえてくるが、みんなの体勢は変わらない。手を組んで顔の前に持ってきているお祈りのポーズだ。よほど腹に据えかねたのだろう。
『ちょっと、不気味だね』
『………お化けを怖がるとは意外だ』
『わ、わたしだって女の子だ ー っビックリした~!!』
『………面白い』
意外な純ちゃんの一面が見れて確かに面白かった。
『アレそろそろなんじゃない?』
『………見たくないものは見なくても構わない』
康太は純ちゃんに言ってるようでもあり、オレたち全員に警告しているようにも聞こえた。
「来る!!」
アキが予測したとおり、真っ暗だった部屋が突然ライトアップされ、1人の姿が映された。
常夏の片割れが、ゴスロリの格好をしていた。
康太は、それに対して、等身大の鏡を持っていた。それをそいつに向ける。すると、当の本人がリバースしていた。どれだけ効果があるか自分で身に染みて感じたか!
『こんな恐ろしかったのか……』
『………(カシャカシャ)』
『何故に写真を撮る!?』
『海外のモノホンサイトにうpする』
『そんなのになってたまるか!!』
ハゲ先輩は逃走していった。康太の完全勝利といったところ。
『グロいこと考えるね』
『………それなりの代償は支払ってもらわなければ』
『ふ~ん。じゃあ、さっさと行こうか』
『………ああ。この先はチェックポイント』
しかも、保健体育。案の定、康太が1人で勝った。そりゃあ匹敵するのは先生くらいだろう。愛子ちゃんもついていってるんだが、康太の境地には辿り着いていない。
『引き続き、クラス侵略しちゃっても構わない?』
「ああ、どんどん行っちゃってくれ」
雄二は純ちゃんの問いに返答すると同時に、作戦を再び練った。
「頑張れムッツリーニ!!!」
『ブシャアアアァァ』
「土屋康太、失格! 画面及び音声メーター赤!」
何があったんだ……雄二とオレは顔を見合わせてそう言い合っていた。
『康太君!? しっかりして!!』
『死してなおいっぺんの悔いあらず』
『そんなかっこいいこと言わなくていいから!!』
画面の奥からこんな言葉が聞こえてきた。
「明久、何があったんだ」
「ひどいんだよ。美人の先輩が出てきて、最初に着物姿で出てきたんだ」
「ムッツリーニ大丈夫じゃないだろ……」
「その上、その着物を脱ぎだして競泳水着を……」
「皆まで言うな。やつは華々しく散っていった。弔うしかオレたちには出来ない」
合掌をした後、教室中を見渡したら、Fクラスの連中がごっそりいなくなった。
「ムッツリーニの敵を!!」
「着物を!」
「水着を!!」
「行くぞ!!」
「オオー!!」
突入と同時に大声を上げていたため全員失格。バカばっか。
「女子には女子で対抗だ! 木下姉!!」
「その言い方だと秀吉まで女みたいに聞こえるけど、まあいいわ。行きましょ」
「了解じゃ」
木下姉弟出動。
「あら、女の子同士でやってきたのですか。それならば私は無意味ですね。お先へどうぞ」
と、なんら抵抗無くこの先輩は通してくれた。そのままの勢いで、2人はお化け等々に引っかかることなく突き進み、第3チェックポイントに辿り着こうとしたときだった。
再び真っ暗な状態からライトアップが。嫌な思いがよぎったが、今度は普通の男子生徒だった。
「木下秀吉。お前に話がある」
「何じゃ、手短に済ませてなのじゃ」
どうやら、常夏の片割れ。仮にモヒカン先輩とおかしていただこう。
改まった表情をして、モヒカン先輩は秀吉に告げる。
「木下秀吉。お前のことが好きだ!!」
★
「何なんだあれは……」
「近くで聞いていたアタシもびっくりしたわ。アタシじゃなくて秀吉に告白したってのも癪だけど」
秀吉は告白された瞬間、意識が飛んでいったのか倒れた。ペアじゃないと通過できないため、優子さんは秀吉を連れてこちらに帰ってきた。
「坂本君! いいですか」
「っ……姫路か。何だ?」
「私たちが行きます!」
「………撃破してくる」
「それに、美波ちゃんも清水さんと共に行っています!!」
「………必ず倒してくる。楽しみにしておいて」
「あ、ああ……。行きたいなら行って来い」
特に興味も示さずに雄二は承諾した。1ペアや2ペア消費したって何の問題も無いと思ってるのだろうか。このペアは実質学年主席次席ペアだからあんまり簡単に遣いたくは無いけど、性格に難ありだし、いざこざあったし、捨て駒でいいかという考えだ。
『オネエサマ~!!』
『美春怖い!!』
突入と同時にやっぱり失格になっているのが居るけど。
『翔子ちゃん行きましょう』
『………私たちを取り戻すべく』
2人は何か相談して意を決してこの肝試しに向かっているようだ。それがアキや雄二に何もないと別に構わないんだがな……
『これでおしまいです!!』
2年学年1・2コンビはあっさりと第3チェックポイントを突破したらしい。意外と簡単に最終戦へいけるんじゃないか?
「ねえ、気づいたらこんなに脱落者出ていたんだ」
「ん? そうみたいだな」
「どれどれ?」
確認してみると、オレ梓ペア、竜也憂ペア、アキ愛子ペアくらいしか残っていない。
「いや、もう一つ残っている」
「ん? まだいたか?」
「お前と優子さんだ。未だ意識が戻らない秀吉は戦闘不能だが、優子さんは失格になっていない。それに雄二は参加しないとは言ってないからお前も残っている」
というわけで4組か。
『げっ……こいつらここまで来たぜ』
『誰だ道路を作り変えるのに失敗したやつは…』
なるほど。最後のステージは道路を自由自在に作りかえれるのか。
といっても、この2人がまとめて始末してくれるだろうし。ちょっと残念だな。肝試しやってみたかったのに。
「よかった……あの2人なら勝てる」
「梓ちゃん、今地味に喜んだよね。お化け屋敷に入るの」
「へ!? 何の話!?」
「ふ~ん、じゃあ今からでも遅くないから行こうか」
「な何で!? 別にここで見守ってるだけでいいじゃん!!」
あんまりお化けが嫌いと認めたくないらしい。
「ちっ……もしかしたら全員出動しないといけないかもな」
「どうして?」
「負けるぞ。あいつら」
なんと、教科は理科なんだが、常夏コンビは400点オーバーの超高得点。点数で見るとあまり変わらないんだが、操作技術の面があるため圧倒的不利だ。
『……どうして……』
『何で私たちが負けるの』
『よかったぜ。こいつら意外に弱かったな』
『2年の主席と次席っていってもこんなものか』
どうやら、負けたらしい。これでオレたち4組の出番が回ってくる。
「さて、先にヒロと竜也のペアに行って貰おうかな」
「あくまで自分は最後なんだな」
「それはもちろん」
「分かった。行って来る」
予想通り、引きつった顔をした梓ちゃんを連れて肝試し会場に。
「憂ちゃん行こ!」
「…………」
「憂ちゃん?」
「…………」
「お~い憂ちゃん!!」
「へっ? あ、はい!?」
「オレたちの出番だから行こう」
「あ、そなの。分かった」
憂ちゃんはちょっとぼーっとしていた。先ほど聞いた話によると、憂ちゃんはつい先日まで風邪をひいていた唯先輩の看病をつきっきりでしていたらしい。もしかしたらそれが原因で自分が体を壊しているかもしれない。大事にしてもらわないと……2人とも。そう思いながらさっさと入っていく。
「おお……確かに雰囲気あるな」
「怖い ー 怖くなんか無い怖くなんか無い」
「梓ちゃん、口でそうは言っても体は正直みたいだよ」
オレの腕を思いっきりつかんで結構痛いんだ。まあ、楽しいからいいけど。それに梓ちゃんに腕を握られるなんてことそうそうない。この状況を楽しまないとね。
「あれ? あの後姿は」
「さわ子先生?」
「何か、問題でもあったのかな?」
「みたいだね」
オレと梓ちゃん、そしてちょっと後ろに居た竜也と憂ちゃんも近寄っていく。
「さわ子先生」
「うらめしや~」
さわちゃん先生もまさかお化け役だったとは……予想外だ。あやうく、声が外に漏れるのをとめた。竜也もそんな感じがする。女子2人の声が上がらないのは……?
「梓ちゃん!?」
気絶していた。突然現れたメイクしたさわちゃん先生の顔。もしかしたらあのハゲ先輩のよりかは軽音部にとってはダメージがある。普段からさわちゃん先生と会っているから。
「さわちゃん……言っただろ?」
「絶対あずにゃんこうなるって」
「竜也は何とか悲鳴をあげなかったみたいだが」
「明らかに動揺していたぞ」
影から、軽音部先輩方登場。この様子を見ていたそうだ。グルか。
「憂ちゃん!?」
「何かあったの?」
「憂ちゃんが突然倒れて……」
「憂が!!」
唯先輩が真っ先に駆けつけ、憂先輩の容態を見る。
「この頃ずっと私の看病をしてくれたから憂に迷惑を……」
「病気とかじゃないのか……それはよかった」
「寝不足だったんだよ。私のために……」
「保健室に連れて行きます」
「わたしも ー 」
「ダメだ唯。憂ちゃんはこの子に任せな」
「ええ~ …… 分かった。憂を頼むよ」
「分かりました」
竜也は憂ちゃんをおぶって戦場の外に出る。
「さてと……さわちゃんの予想だにしなかった攻撃にやられた梓だが」
「オレが背負って帰りますよ。先輩方は引き続きお化けの役を」
「お~もうそこまでの仲か」
「どこまでですか……全く。そういうりっちゃんはどうなんだよ」
「へっ? わたし?」
「そ。先輩方4人ともですよ。オレたちをいじってないでですね……もういいや。梓ちゃんが心配だ。それでは失礼しま~す」
何も問い返されないように、梓ちゃんを背負って戦場を出た。その出口に雄二たちが居たので話をする。
「すまねえ。離脱だ。後はお前ら2組に任せた」
「分かった。お前らはその子たちが元気になるまで側についてあげておけ」
「ふん。言われなくてもそのつもりだ」
「じゃあヒロ行って来るね」
「やっとボクたちの出番だね明久君」
「坂本君行きましょうか。いろいろな借りを返しに」
最後のメンバーによるお化け退治が始まった。
精神攻撃を繰り返してくる3年生側。
とうとうダウンしてしまった梓や憂。
ストックが少ない2年生。
いったいどうなる!?
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