青春と音楽と召喚獣   作:いくや

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 甘いとまでは言わないですけど、
 比較的甘系かと。

 梓のキャラが変わってきているような。

 多分、気のせいだと思いたい。

 では、どうぞ!!




#55 密室!

 

 

 「貴様らをFFF団の名において成敗してくれよう!」

 と、廊下を歩いていたら突然こんな声が。アキや雄二などがFFF団から逃げてこっち側に来ているのが見えた。オレも防衛反応が働いた。

 

 「梓ちゃん、ゴメンけど逃げよう!!」

 「へ?」

 「ちょっとゴメンよ!!」

 「わっ!」

 乱暴だったかもしれないが、手を引っ張って追っ手から逃走する。

 

 「雄二! ヒロ! どうするんだよ!!」

 「ってか、何でアタシたちも一緒に逃げているわけ!?」

 「でもこれはこれで面白そうじゃん♪」

 アキや雄二と共に、愛子ちゃんや優子さんも一緒に逃走。もちろん、竜也や憂ちゃん、康太や純ちゃんといったメンツも同様。

 

 「何でわたしまで逃げているんだろう……」

 「………仕方あるまい」

 純ちゃんは、あまりFFF団の存在を知らないらしく、怖さを知っていなかった。

 

 「このまま一緒に逃げても、全員が挟まれておしまいだ!!」

 「雄二が言いたいのは、全員バラバラに散れということだな!!」 

 「そうしたら、追っ手の数も必然的に少なくなる。単純計算でも5分の1だ」

 「分かった。みんな聞いたな!」

 ということで、広い場所に出た瞬間みんな別方向に逃げ出す。アキと愛子ちゃんは一緒のほうに。オレと梓ちゃんも一緒のほうに。同様に他も。

 

 「すまない、木下姉!! 迷惑掛けて!!」

 「仕方ないわよ……坂本君が悪いわけじゃなく、やつらが頭がおかしいだけだから」

 

 「やっぱり楽しいね明久君♪」

 「愛子ちゃんはもうちょっと緊張感を持とうよ」

 

 「Fクラスの連中っていつもこうだ!!」

 「そうだね……大変だね」

 「体は大丈夫?」

 「うん。多分ね!」

 「よし。保健室行こう。ある意味安全じゃないかな」

 

 「何処に逃げようか……」

 「やっぱり一番安全なのは、部室じゃないかな」

 「多分、相手も読んでるね。オレが軽音部ってのは知ってるから」

 「どうすれば……」

 というか、何で追いかけられてるんだろう。おそらく、肝試しの件か。肝試しで女子とペアになれなかった(男女比の関係で男子同士とか)FFF団に恨みをもたれているとしか考えられないな。

 

 「とにかくまこう……」

 「そだね」

 女子の中ではそこそこ体力のある梓ちゃん。だが、男子にはいくらなんでも負けてしまう。持久戦に持ち込まれたら負けだ。というか、FFF団は持久力だけが持ち味だからな……ただし、嫉妬関連。

 

 「あそこに逃げよう!」

 「どこ梓ちゃん?」

 「あの前のところ」

 「ええっ!? 体育倉庫?!」

 とは言ってもオレたちには選ぶ時間はない。梓ちゃんの言うとおりに、体育倉庫に入った。

 

 「ふう……これで大丈夫かな……」

 「まだ油断は出来ないけどね」

 中から鍵が閉まるタイプでないために、入ってこられたら一巻の終わりである。

 

 「疲れた~」

 「巻き込んじゃってゴメンね。FFF団ってああなんだ」

 「うん。分かってる」

 「それにしても倉庫って真っ暗だよね」

 隣に居る梓ちゃんが見えるか見えないかくらい。徐々に暗闇に慣れてきているとはいえあまり見えない。

 

 「逃げ込む場所失敗しちゃったかも」

 「というと?」

 「なんでもない!!」

 「暗闇が苦手と」

 「なんでもない!!」

 「怖いのが苦手と」

 「なんでもない!!」

 と言葉では否定しても、逆にそう思っていると思わせてしまう。言葉って恐ろしいものだ。

 

 「ふ~ん……」

 「え? へ? 何処行くの!?」

 「………」

 「何か話してよ!!」

 「梓ちゃん、別に暗いところで怖いところでも平気らしいから、オレは離れておいた方がいいと思って」

 あまりに近かったら、男子の理性というものにも限界が来る。

 

 「そ、そんな~」

 「だって大丈夫なんでしょ」

 「で、でも、一緒に居た方が安全じゃ ー 」

 「ちょっと今日は疲れたから仮眠取るね。おやすみ」

 「ちょ、ちょっとヒロ君!?」 

 オレは梓ちゃんの真後ろに位置取り、相手からは見えないがコチラからは見えるような場所から様子を伺うことにした。

 

 「ううっ……1人ってさびしいよ……ヒロ君起きてよ」

 「………………」

 そんなに簡単には返事しない。たまたま近くに居たときに、誰かが入ってきて誤解を生みたくないからね。

 

 「そうだ。電話しよう。そしたら何処にいるか分かる!」

 「………………」

 若干ずるいと思ったが、梓ちゃんも必死なのであろう。梓ちゃんが電話を掛ける前にオレは携帯を取り出し、床を滑らせて梓ちゃんの横に携帯を置く形にした。

 

  Prrrr Prrrr

 

 「えっ?」

 案外近くから聞こえたことにちょっと嬉しがるも、その正体を知ってものすごく落ち込む。

 

 「携帯だけここに置いて隠れて寝ているなんて……別に一緒に居て誤解されても良いのに……」

 梓ちゃん面白い反応するなあ。何か呟いたみたいだけど、くしゃみを我慢するのに必死でよく聞こえなかった。

 

 「ううっ……怖い……ヒロ君!! もう起きてよ~わたしが悪かったから。怖いこと認めるから、隣に居てよ」

 梓ちゃんの初めて聞く弱音にちょっと……ん~……何て言うのかな……こう ー えっと何て言うんだろう。とにかく、まああれだよ。言葉が出てこない。

 それはともかくとして、オレは梓ちゃんの願いを聞き入れることにした。ここまで時間経ってもこの体育倉庫にFFF団が現れないということは、まいたのだろう。それならば、別に近くに居ても問題はない。じゃあ、外に出ろよと思うが、今出てもまだFFF団はやる気が溢れているから、見つかった場合また隠れる場所を探さないといけない。そんな面倒で疲れることは御免だ。

 

 「………………」

 「きゃあっ!! 誰!?」

 「そんなびっくりする? ここには2人だけしか居ないはずだよ」

 オレは自分でその言葉を言って気づく。2人だけ? 体育倉庫? 何のフラグだよ……出るに出れない状況? 何を望んでやがる。成り行きに任せよう。

 

 「びっくりした~……ひどいよヒロ君!」

 「オレにもいろいろ考えがあるんだよ」

 理性崩壊の危険性とか、捕縛される危険性とか、殺される危険性とかetc...

 

 「もう何処にも行かないで!!」

 「それはあまりにも……」

 制服のシャツどころか、腕ごと抱きしめる梓ちゃん。流石に恥ずかしい。

 

 「ダメ! 離したらまた逃げるもん」

 「そ、それにしたとしても……」

 オレはFFF団に捕まる前に、警察に捕まるかどうかの心配をしたほうがよさそうだ。

 

 「何かお話しよっ」

 「何も話題無いけど……」

 「それでもいいから何か話しようよ!」

 どれだけ怖いのが苦手なんだよ。意外と梓ちゃんも澪ちゃんと大差ないかな? それとも、さっきの肝試しの影響もあるのかな……散々暗がりで怖いものを見てきたから、それを思い出して。

 

 「それじゃあさ。そろそろ手を離してくれない? いろいろとやばいんだ」

 もちろん、この願いは却下された。ますます力が強くなった。

 

 「他の連中逃げ延びたかな」

 「憂が心配だな。いつもならば大丈夫だけど」

 「今日は倒れたからね……竜也も保健室に逃げ込むようだったし大丈夫じゃない?」

 「そだね」 

 「アキや雄二、愛子ちゃんや優子さんは別に構わないとして、純ちゃんは大丈夫なのかな?」

 「あっ……心配になってきた」

 「そうか。そこまで運動は出来ないんだね。康太が上手くリードできるかな」

 「あの2人に何の接点があるんだろうね」

 「全然予想つかないよね」

 男子だけで見ると、逃げのスペシャリストが揃っているから安心できる。が……ね。

 そういや、秀吉は何してるんだろ。裏でオレたちの逃走を隠れてサポートとかしてくれてたら嬉しいな。

 FFF団と一番交渉できるからさ。

 

 「もういいんじゃない?」

 「何が?」

 手だよ。手。そろそろメーターが危ないですよ。オレにどうしろっていうんだろう。

 

 『何じゃ? 体育部はまたしても鍵を閉めておらぬか。何度言えば分かるか(カチャ)』

 

 ん?

 

 「「カチャ?」」

 オレと梓ちゃんは顔を見合って、お互いに最悪の展開を予測する。

 

 「まさか!」 

 急いでドアの方に向かって2人とも走り、ドアを開けようとするがロックがかかっているみたいで開けれない。

 

 「警備員さん!! 中入ってますって!!」 

 「出してくださいよ!!」

 とオレたちが叫んでも、60後半の爺様が警備員しているんだ。聞こえない。

 

 「ど、どうしよう……」

 「誰かと連絡取り合おう!」

 「誰に?」

 「アキたちはまだ逃走中の可能性あるからたぶん意味ない」

 「先輩方は?」

 「もしもHR中とかだったら失礼だよね……」

 「じゃあ、メールしておかない?」

 「そだね。オレがメールしておくわ」

 オレはりっちゃんにメールをした。体育倉庫の鍵を開けてくれといったメールだ。何分後に来てくれるかね。

 

 

 

 「全然来ないね」

 「うん……」

 メールしてから何分経っただろうか。携帯の充電がお互いに切れ時間の確認も出来なくなった今、詳しい時間は分からないが、感覚でも30分は過ぎたような気がする。

 

 「まさか持ってきていないんじゃ!!」

 「それだったらオレらは、りっちゃんが家に帰ってメールを読むまで気づかれないってことか」

 今日は体育部は遠征などでいないから、この体育倉庫も開けられることは無い。

 

 「それは勘弁して欲しい……」

 「全員に一斉メールで送っておけばよかった」

 「今更ながらの後悔じゃん」

 「ま、別にオレはこのままでもいいけどね!」

 「あっ!! 逃げるなヒロ君!!」

 ちょっと梓ちゃんが油断した隙に腕の拘束から脱出し、暗闇の中で隠れる。危なかった~そろそろ満タンになりそうなところだったからさ。

 

 「だから1人にしないでって~!!」

 「いつからそんなに怖がりに?」

 「肝試しの後だから!!」

 「言い訳?」

 「そんなんじゃない!!」

 「あ、そうなんだ。じゃあオレからは見える範囲に居るから、それでいいでしょ」

 なかなかの折衷案を出したと我ながら自負している。

 

 「ダメ」

 だが、当然却下されるというのは目に見えていた。このまま逆に隠れてばっかりだと暗闇恐怖症とかいうトラウマになりそうだしな~この賭け引きが重要だな。ってか、それもこれも早く救助されれば何の問題も起きないんだからさ。早くりっちゃん!!

 

 「捕まえた!」

 「しまった」

 「もう逃がさない」

 力がマジだ。オレはそのまま連行されて梓ちゃんの隣に。

 

 「逃げないって言ったのに何で逃げるの!!」

 「いろいろと問題がありまして」

 「ふぁ~……どんな問題が~ふぁ~……」

 口に出して言えるかっての。ってかあくびってどれだけ疲れているんだ……

 

 「くーくーくー……」

 「って、寝てるし!! 寝付き良すぎ!!」

 腕を枕代わりにされてこっちに重心を掛けて眠る梓ちゃん。顔がはっきり見える範囲だから可愛くてしょうがない。このままではすぐにとあるメーターが満タンになってしまうため、オレは一切の思考を停止し、自分も寝ることにした。

 

 





 うん。気のせい。
 梓は肝試しのせいでああなっているんだ!!

 申し送れましたが、1時間遅くなって申し訳ないです。
 
 
 次話はどんな展開が待っているでしょう!!

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