サブタイトルで、この1話ネタバレした気が(汗)
まあ、楽しみながら読んでいただけると嬉しいです。
では、どうぞ!!
「遅いね~あずにゃんとヒロ君」
「まさか駆け落ち!」
「なんてドラマチック!」
「そんなわけあるか!」
「あいたっ!」
軽音部ではいつものようにティータイムを過ごしていた。
「失礼します。 ヒロ ー 七島弘志いますか?」
「え、まだ来てないけど……」
明久以下数名は弘志と梓を探しているようだが、見当たらない。
「ここにもいないのかあ」
「どうしたの?」
「逃げ回っていたんですけど、そろそろ大丈夫なのでヒロたちと合流しようかと思ってるんですが」
「見つからないんだ」
「事件です!!」
ムギちゃんが一番最初に話をおかしくし、
「名づけて駆け落ち事件だ!」
りっちゃんが引っ掻き回し、
「みんな捜査開始!」
唯が修復不可能なところまで話を持っていく。
「いい加減落ち着きなさい」
この澪の修復能力を持ってしないとダメである。
「それで、何処を探したわけ?」
「教室以外はまだ……ココに居ると思ったんですが」
「ココ以外の心当たりはあんまりないのか……」
「僕や雄二とかのメール見ても何も入ってないし」
「ちょっと待ってね。わたしたちのにメールが来ていないか見るから」
と、軽音メンバー4人は携帯を取り出し、メールを確認する。
「ないわね」
「わたしも」
「律は?」
「来てた」
「どんな内容?」
『急いで体育倉庫に。詳しいことは後で』
「やつらから逃げているときに、体育倉庫に隠れたけれども、警備員が閉めてしまったのか」
「ヒロらしくないな」
「まあ、目的地は分かったんだし行こうよ!」
「せっかくだし全員で行こう!」
ということで、軽音部メンバー4人と2年9人……ってあれ秀吉いつ合流した。
まあ、そいつらが体育倉庫に向かって進みだした。
「それ体育倉庫の鍵?」
「そう、警備員の人に借りてきた」
「あんなところに追い詰められるってどんな状況なのかしら……」
FFF団に追われたら何処にだって逃げると思う。
「早速、開けるか」
律が鍵を開け、中に入る。
「お~い、助けに ー 」
「えっ?」
「しっ! 静かに!!」
律は咄嗟の判断で、(後でネタにする材料として)みんなを黙らせた。
「あ、あずにゃんとヒロ君。2人仲良く寝てるよ」
「相当肝試しやらで疲れていたんだな」
「多分、FFF団がそれに追い討ちを掛けたな」
「せっかくだから記念に写真を」
と言い出し、みんな携帯を取り出しカメラ機能で写真を撮る。
★
ん……?
何か明るい気が……それにちょっと騒がしい。誰か来たのか?
「げっ!? 何だこの人数!?」
目を覚ますと、そこにはりっちゃんたちだけじゃなく、アキたちもいた。それにみんなの手には携帯が。
「はっ!! しまった! まさか撮った!?」
「いや~上手く撮れてるぞ」
「いいカップルの写真だ」
「………最高」
言葉を発することが出来なかった。どうやっても言葉を紡ぎ出せなかった。一言で表すなら、やっちまったとでも言えばいいか。何のため見つからないようにここに逃げ込んで、何のために1人にしかメールを送らなかったか分からない。それが寝てしまったせいでパーだ。
「……ん……む……ヒロ君?」
「……………………」
オレはかすかに目を開けた梓ちゃんに何も返答をしてやれなかった。下手に言葉にするより自分の目で確かめて欲しい。百聞は一見に如かずだ。
「え? な、なに!? この人数!?」
梓ちゃんはほぼ反射的にオレの腕の拘束を解かし、距離を置いた。
「閉じ込められたのを助けに来てくれたらしいんだけどさ……」
「まさか、結構裏目に出た感じが ー 」
「多分、100%裏目だね。完全にさっきの梓ちゃん見られてたからさ」
「ううっ……恥ずかしい」
「だから言わんこっちゃない」
お化けの幻に怖がっている梓ちゃんがどうやっても腕を解いてくれなかったから、下手にこいつらにネタを与えてしまったじゃないか……
「ところでアキたちがいるってことは、FFF団のやつらは?」
「とっくに帰ったよ」
「そうか」
「それじゃあ、ココで話もなんだし、さっさと部室に戻るか」
「先輩、僕たちもお供していいですか?」
「もちろんだとも」
悪い気しかしない……隣の梓ちゃん見てもやっちゃったって顔をしてるし。
★
「さてさて、七島君・中野さん、今日のことですが」
と、りっちゃんは突然変な口調になって話し出した。
部室に戻った後、誰も抜けようとはせず、面白半分(というか面白全部)で軽音部室に残る。もちろん、そんなに机や椅子があるわけでないから、全員床に座る。総勢何人だ?15人か? 多すぎだろ……
「ねえねえ、もう告白まで言ったの?」
「「ええっ!?」」
突然何を?
「バカ唯!! それじゃ徐々に追い詰めていくプランが台無しだろ!」
「そうなの? ゴメ~ン」
「ったく……」
「まさか、ヒロが腕を組んで寝ているとはね~(ニヤニヤ)」
「仲睦まじい光景だったぞ(ニヤニヤ)」
「………うらやましい(ニヤニヤ)」
「ヒロのくせに(ニヤニヤ)」
「応援しておるぞい(ニヤニヤ)」
ニヤニヤニヤニヤしやがってうざい。後ろに居る女性陣の方々はほほえましい顔で見ないで!
「まさかあそこまで2人の仲が進展しておろうとは」
「ちょっとわたしたちも配慮が足りなかったかしらね」
「梓、ヒロならいい男だ。信頼できる」
「あずにゃんとヒロ君ならバッチリだね」
「先輩、勝手に話を進めないでください」
調子に乗ってきた先輩方を軽く梓ちゃんが抑える。
「ほ~う梓。そんな口利いてて良いのかな?」
「どういう意味ですか?」
「コレを見てみるといい」
と、りっちゃんは携帯を取り出し、梓ちゃんに見せる。
「なっ/// いつの間にこんなものを!!」
「へへ~ん、2人が寝ている間にこっそりとな」
先ほど撮った写真のようだった。ただ問題があるのが、
「消してくださいよ!!」
「わたしだけ消しても、みんな撮ってるから意味ないと思うぞ」
「えっ!?」
そう。この場に居る13人全てが携帯に画像として収めていたのだ。このままじゃ、流通を防ぐのすら危ぶまれる。
「みんな消して!!」
「それは無理な注文だな。なあ明久」
「そうだよ。これほどの画像消せるものか。ねえムッツリーニ」
「………サービスショット」
ダメだ。どうやってもオレたちの劣勢は覆りそうにない。
「どうすれば消してくれるんだよ!!」
「そうだよ。それじゃ理不尽じゃん!」
オレたち側としても諦めるわけには行かない。何とか交換条件を持ちかける。
「そりゃあね」
「まあ決まっているな」
「「「2人が付き合う瞬間に立ち合わせて欲しい」」」
「「「要するに、この場で告白したらOK」」」
……………………………は?
オレの顔を客観的に見たらさぞかし変な顔になっていただろうな。今思考回路が完全にショートしていたからな。何なに? 整理をさせてくれ。それは交換条件じゃなくて、新たなネタの仕入れじゃないか?
「「な、何を言ってる(の)!?」」
脅しってこうやって蔓延っているんだろうな。一生縦の関係が終わりそうに無い。
「ここまでしておいて、お互いがお互い好きじゃないとかありえないし」
「楽しみ♪」
「梓から告っちゃえば?」
「な、何言ってるの純!!」
「まあ、後は俺たちは何も言わねえよ。後はお好きにどうぞ」
ぐっ…………不退転の決意を固めなければならないそうだ。一世一代こんなのは後にも先にも無いだろう。
「ってか、そもそもこの賭けはおかしいでしょ!!」
「ココに来てそれかよ」
「情けないな~」
「違う!! 公開処刑じゃないか! 告白をみんなに見られるなんて!」
「ほ~う。ヒロはどうやら梓に告白するらしいぞ」
「その言葉を待っていたのよね」
しまった! こいつら何とあくどい!
「あずにゃん、頑張ってね」
「へ……?」
「わたしたちは外にいるから終わったら呼んでね」
「は……?」
「俺たちもそうするわ。せっかくの告白タイムを邪魔しちゃ悪い」
さっきと言ってることが真逆な気がする。気がつけば、13人は全て出払っていた。
「ちょ、ちょっと何かドアのところで聞き耳立てている気がするから」
と梓ちゃんは確認しに行った。
その間に頭を整理する。
果たしてオレは梓ちゃんのことが好きなのだろうか。場の流れでこうなったから告白しようとかいうことを考えていないだろうか。もし、そんなきっかけが無かったとしても梓ちゃんに告白していただろうか。
さっき優子さんが言ってたけど、好きじゃないならあんな感じで寝ないって。言われてみればそうだ。確かにオレも梓ちゃん以外の女子だったとしたら……そもそも腕を組むのでさえ拒否していたかもしれない。
そもそもオレは梓ちゃんの何処が好きになったんだろう。音楽に対する姿勢、好きなものに熱中できるとかなのかな。それならば音楽から離れてしまったら、その関係は終わりになるだろう。じゃあ、どうして。
人を好きになるという気持ちは今までに一回も無かったから分からないが、言葉に上手く表せない何かというものを今回信じる気持ちになった。何処と言われても上手く伝えることが出来ない。『中野梓』という女子の全体を好きになってしまったということか。
いい加減自分の気持ちに嘘をつくのはやめよう。梓ちゃんがどう思ってくれているのかは知らない。知る余地も無い。ただ一つだけ言えるのは、悪い印象をもたれてはいないということだ。そうでないと、どんな状況下であれあんな感じにならないだろう。
オレは人生初めての告白をする決意を固めた。どんな言葉を言えばいいか全く分からなかったが、ありのままを話そうと思う。
「ゴメンね。みんないなかったよ……」
「そうなんだ……何かこんな形になってしまったけど、いつかは言おうとしてたんだ」
「うん」
「オレは梓ちゃん ー 『中野梓』のことが大好きです」
とうとう言ってしまった! もう後戻りは出来ない。考えることも出来ずにただ思うがままに口が動く。
「オレこういったの初めてで全然分からないけど、言葉で何も表現できないんだ。とにかく、梓ちゃんのことが好き。いつまでも傍にいたいって思った。コレがオレの気持ち。ど、どうかな?///」
我ながら下手糞な告白だが、仕方あるまい。しっかりと梓ちゃんの返事を聴くことにする。
「ありがとうヒロ君/// わたしもヒロ君のことが好きだよ」
「梓ちゃん!」
「友達思いで優しいし、いろいろなことに真面目に取り組むヒロ君。とってもかっこいい!」
「な、何か恥ずかしいな///」
「これからもよろしくねヒロ君♪」
「うん! よろしく梓ちゃん♪」
これは果たして現実なのだろうか。告白に成功したというものなのか。気持ちがふわふわして舞い上がっているってこんな感じなのだろう。
「えっ?」
突然、梓ちゃんがオレに抱きついてきた。オレはどうしていいか分からず、多分おもむろに手を梓ちゃんの背後に回して抱きしめ返したような気がする。
「ヒロ君、もうちょっとだけこうやっていさせて」
「う、うん。いいよ」
「わたし1人っ子で、しっかりしててって感じで人に甘えるってコトをあんまり知らないの」
「オレも1人っ子だけど……いいよ。梓ちゃんの気の済むまでいるといいさ」
オレは甘やかされて育っているという気もするが、心のどこかで寂しい感じは残っている。これでお互い、少しは心の隙間を埋めることが出来るのかな。
ガチャ
「「えっ!?」」
突然、ドアが開き、先ほど居たメンツが戻ってくる。
「な、こっちから呼びに行くまで帰ってこないんじゃ!?」
梓ちゃんが反射でオレから離れ大声でそう言う。
「とはいっても、このままじゃわたしたち忘れられそうだったし」
「大丈夫っ♪ 話の一部始終を聞いていたから」
「「へっ!?」」
確かに梓ちゃんが立ち聞きしていないか確認していたはずだよね。今の梓ちゃんの驚きからして、どう見てもそういった雰囲気じゃなかった。
「ヒロ、こっちにはスペシャリストがいることを忘れていないかい?」
「スペシャリスト?」
「………バッチリ。映像・音声と共にしっかり記録されている」
「ムッツリーニ!!! 今すぐにそれを取り消せ!!」
今まで康太のことをムッツリーニと呼んだことが無かったが今回はあえて呼ばせてもらう。
「何言ってるんだよ。2人の大事な場面じゃないか」
「そうそう。後から見るために記念にするといい」
「これは大事に軽音部で保管しておくね」
「新たなネタをつかまれた気が……」
「多分その通りだと思う」
康太はおそろしい。軽音部の部室内にいつカメラをしかけたんだ……
「………そんなもの1分もかからずに設置できる」
ということは、こうなる展開を予測して、ベストポジションであろう場所にカメラをしかけておいたのか!?
「………俺が1つのアングルで納得するとでも?」
そう、複数箇所にカメラを仕掛けていたのだ。
「ってことはわたしの恥ずかしい言葉も!?」
「………当然」
「今すぐ消して!!」
「ダメだよあずにゃん。せっかくの2人の記念だから大事に取って置くよ」
「唯先輩~それは許してください」
完全にやつらの手のひらの上で踊らされたな。場所を代えるなりすればよかった。そんな頭が回らないくらい没頭していたんだろうな。
1カップル成立!
まさか、このカップルが最初になるなんて……
最初とは随分と予定が変わりました。
次は一体誰かな?
気になるかと思いますが。
次話どうなるかはわかりません!
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