続きは、すぐに終わります。
そして、野球大会もおもしろくなってきます。
対する競技のほうは、そこまで……
では、どうぞ!!
「悔しい~!!」
「ヒロのほうが一枚上手だったか~」
「へっへっへ……」
結果は2Aの勝利。最後の1球は本当に危なかった。
「流石にヒロ君はストレート投げてくるかな~と思って唯に指示出したんだけど」
「まさか、3連続アレとは恐れ入った」
ってか、澪ちゃんやりっちゃんがベンチから指示出している時点でなんとなく予想ついてたさ。それに、よくよく考えてみれば、唯先輩にホームラン打たれても2-1でそのまま勝ってたんだし……そこまで怖がらなくて良かったか。
「おめでとう完全試合!」
「あれ、梓ちゃん! いつから?」
「さっき。でもまさか、先輩方がいるとは思ってなかったです!」
梓ちゃんが応援に駆けつけてくれていた。隣には憂ちゃんも。そして、遠くにはFクラスの連中も。情報を早速集めに入っていたのか……しまったな。見られているならもうちょい手の内隠しておけば……
「敗者はおとなしく去るよ」
「律先輩が何かかっこいい!」
「見栄を張るな。高城代表に報告に行くんだろうが」
「てへっ」
負けの報告を聞いた高城代表がどうなるかは別にどうでもいい。オレらは次に控えている2-F戦に集中だ。
★
「いよいよ、このときが来たか。決勝戦。いや準決勝戦」
「これに勝った方が、教師と戦えるんだな」
「楽しみだぜ」
2Fと2Aの戦いが今スタート(プレイボール!!)
「オレたちは今度は先攻か」
「………前2戦と何も変わらない?」
「どうこうしてどうなる相手でもあるまい。今のままで」
「………分かった」
2Fのバッテリー。アキがピッチャー、雄二がキャッチャー。竜也がファーストでセカンドが須川、サードに島田、ショートに秀吉。センターに康太か。レフトに姫路。ライトは誰だったっけか?
「明久、Aクラスは野球経験者は少ない。だが、一発が怖いからな」
「うん。コントロール重視だね」
「ああ。しっかりこい」
まあ、スポーツでFクラスにはかなわない。あっという間に三者凡退。
「オレも負けてられないけどな」
お返しとばかりに三者凡退に切ってとる。
「やるな」
「お互い様だ」
ベンチに帰るときに、雄二とすれ違ってこんな会話があった。次はオレの打順だ。
「ヒロか……」
「明久。作戦通りだ」
「OK!」
敬遠とまでははっきりしたものじゃなかったが、明らかに勝負を避けていた。こいつらもプライドにこだわらずに全力で勝ちを狙いに来ている。
「フォアボール」
またしてもフォアボールでの出塁。だが、盗塁は出来ないとみた。アキの警戒、雄二の肩の強さ。尋常じゃない。バッターは霧島代表だ。こっちのバットにかけてもいい。
「………しまった」
最悪の4-6-3のダブルプレー。オレがリードが小さいのもあって、ゲッツー崩しも出来なかった。
「注文どおりだな」
「流石は雄二。このまま愛子ちゃんも抑えるさ」
「ほう」
「狙うはホームラン。さ~ってアッキーはどうする!?」
アキは普通に、愛子ちゃんを三振に切ってとった。
「え~まったく当たらないよ! 手加減は無しなんだね」
「それは当たり前だよ。みんなに失礼じゃないか」
「ボクたちもそのつもりだから」
あっという間に、2回の表の攻撃が終了した。
「オレたちも打たせる気は無いぜ秀吉」
「ワシとて負けられんぞい」
何故か4番に秀吉。雄二は何を考えているのだろう。
「くっ……すまぬ雄二」
手加減はなしでいくといった。秀吉だろうが本気でアウトを取りに行く。
続いて、打席に立ったのは康太。何でだ?
「………甘い」
「どちらがだ」
1球目からセーフティーバントを仕掛ける康太。オレは康太なら当たり前と思い、投げてすぐに、バント処理に入る。そこに死んでる打球が転がってくるんだからアウト1つもうけた。
「でも、バントは絶妙よね」
「確かに」
ド○ベンの殿○みたいに、○線上の ー だったぞ。
「流石はヒロ。元野球部だけあるよ」
「6番はアキか」
「何で6番なのかは分からないんだけどね」
「今までの試合は違ったんだな」
「うん。毎回バラバラ」
一応、念入りに作戦は立てているのだろう。ちょっと待てよ。この回4番が先頭打者だったよな。秀吉・康太・アキ。そして、ネクストには雄二。なるほど。最初らへん全部が三者凡退に抑えられたとしたら、5回はちょうど秀吉からの打順。普通に考えると1番からの攻撃に見えるってわけか。雄二は最終回に掛けている……最終回は保健体育。なるほど。理にかなってやがる。それならオレたちはそれまでに決着をつけておかないと。敗北必至。雄二らが、別に最初の方は三者凡退でいいならばありがたくアウトカウントをもらおう。
「よし打て!」
「くっ……」
予想通り。ちょっと甘目をカットした。雄二からは1順目はオレの球筋に慣れろとでも言われたのかな。それならば手の内は見せないぞ。ストレートでおしまいだ。
「久保君!」
久保君の前に打球が転がった。しかし、久保君は落球。アキは一塁でセーフになった。
「も、申し訳ない七島。断じて吉井君だから ー などと考えてはいないよ」
「まあ、打たせたオレが悪いんだし」
アキだからなんだって言うんだ。まあいい。相手の方も予定が狂ったんだからいいだろう。
「さて、弘志勝負だ」
「ほう。雄二か。でも、お前との勝負は少々後回しにさせてもらうぜ」
「何?」
『アウト』
オレの左の方からアウトのコールが聞こえてきた。
「ゆ、雄二……」
「隠し球かよ。やるな」
「ふん。ランナー溜めた状態でお前と戦いたくないだけだ」
「さよか。まあ、予定には変わりない」
「ほう。その余裕がいつまで続くかな」
雄二はカットをとにかくして、ほどよいころにアキをディレードスティールさせるつもりだったんだろうな。出来るだけ球筋を見るために。それにはひっかからないぞ。
「明久。ヒロが上手なだけだ。気にするな。それより無失点に抑える努力だ」
「分かった」
こちらとしても負けて入られない。んだが……3回も三者凡退……こちら層薄すぎるだろ……
「休む暇も無いだろ」
「そんなものいらねえわ」
雄二が改めてバッターボックスに入ってくる。早く終わらせたいんだが、手を抜くと一発が出る。なんとも厄介な相手だ。
「タイム」
「何だ?」
「優子さん、ちょっといいかな」
「どうしたのよ?」
オレはバッテリーを組んでいる優子さんにマウンドに来てもらった。
「ささやき戦術をしてもらいたい」
「はあ?」
「雄二にしか聞こえないくらいのささやき戦術。ボヤキで有名なあの人の現役時代の得意技だよ」
「何で今のタイミングなの?」
「雄二にしか通用しないと思って」
「アタシは雄二にだけは通用しないと思ってたんだけど……」
何言ってるの……優子さんなら雄二には成功するよ。
「まあ、いいわ。何か手は打ってみましょう」
「よろしく」
少し思案顔のままホームに戻っていった。
「何か作戦か?」
「ええ。あなたに有効な作戦をね」
「ほう。面白い」
「ところで ー 」
よし。優子さんはサインを出しながらも雄二に何かささやいているようだ。
「ふっ!!」
「ファール」
「こんなものか……」
「まだまだ!」
「ファール」
2球連続、バックネットに打球が。タイミングがバッチリな証拠。何投げるか悩みどころだ。
「ささやき戦術なのか優子?」
「えっ?」
「真剣に勝負して来い」
ばれたみたいだ。流石は雄二。こんなことじゃ集中力は切れないか。
「しまった!」
「デッドボール!」
「すまん雄二」
「気にするな。召喚獣だ。痛くないさ」
オレのほうが動揺してしまったじゃないか……すまない優子さん。
「さ~ってオレの出番だな!」
「お前か竜也」
「お前とは失礼だな。ヒロ」
いや、運動神経がそこまでよくないお前だったらいいわ。
「相手がオレだけだと思ったら大間違いだよ」
「誰が相手お前だけと言った?」
「え?」
『走った!』
投げた直後に内野からこんな声が。ファーストランナー雄二が初球盗塁を仕掛けたようだ。
「甘いわよ雄二!」
オレは優子さんのサインで、ウエストをしていた。優子さんの思惑通り、セカンドでタッチアウト。
「よっしゃ!」
「ふう……上手くいったわ」
上手い上手すぎる優子さん。野球かソフトボール経験者か?
「ちっ……読まれてたか」
「雄二の考えることくらい簡単よ」
「………私でも分かった」
微妙に代表も張り合ってるし。まあ、オレでも気づいた。別にアウトになっても構わないという考えだったのだろうか。まあ、その考えは分かる。だって、今の打者、竜也だもん。
「ストラックアウト!」
簡単に三振取ったし。
「くそ~手加減しろ!」
「お前はスポーツダメダメだろうが」
「そこまで悪くないやい!」
黙って引っ込んでろ。何なに。次はモブか。誰だっけかコイツ。覚えてねえな。
「ストラックアウト! チェンジ!」
まあ、余裕ですけど。康太・アキ・雄二以外のやつには打たせる気はねえよ。あいつらは特別に運動神経に優れているから。怖い。そもそもオレは本職ピッチャーではない。
「………4回」
「そろそろ点数取っておかないとね」
「そうなんだよ」
5回に猛攻しかけられる前にね。
「 ー ツーアウト」
えっ? 早すぎない? もう1・2番アウトになったの?
「とにかく出塁だけはするわ」
「頼む!」
2アウトランナーなしで優子さん。1人でも出たら、オレ、代表と繋がる。
「優子さん、負けるものか!」
「その球待ってたわ」
「何っ!?」
完全な読み打ち。雄二がアウトコース低めのストレートを要求すると読んでいたみたいだ。綺麗にライト前ヒット。
「よし。ランナー出たし。1点は取っておかないと」
「ちょっとまずいな」
「敬遠するにしても得点圏で翔子か……怖いな。(二重の意味で)」
雄二がちょびっと動揺している。確かに、怖いよな霧島。でも、それを乗り越えれるかな。その前にオレとの対戦も待っているぞ。
「いけっ!」
「ぬわ!!」
ブラッシュボール。避けなかったら頭。今のはわざとだな。
「ここだ!」
「くっ……」
綺麗にアウトロー一杯。さっきの残像でボールに見えた。
「全力で抑えさせてもらうぜ」
「1-1か。打ち時だな」
オレはある球を読んだ。変化球を未だ投げていないアキは、ここで使ってくるとふんだ。
「これでどうかな!!」
「予想通り!」
デッドボールコースから曲がるスライダー。見逃してもボールだが、オレは体を開いて無理に打った。
「何!?」
ボールは左中間に転がる。
「まずい!!」
「姫路、ホームだ!!」
仲違いしているとはいえ、1つのチームとしてまとまってないといけないのはこいつらも分かっているらしく、素直に指示を出していた。姫路も素直にその指示を聞いて、圧倒的な点数を生かし、強肩を見せた。
「危ないわね」
「優子さん、突っ込まなくて正解だよ」
姫路の好返球で、点数が入らなかったオレたちは2アウトランナー2・3塁。
「………私の番」
「ちっ……どうするべきか。敬遠したとしてもアキには相性が悪い工藤」
「雄二。もちろん勝負しよう! 満塁策なんてめんどくさい!」
「っ……そうだな」
オレたちとしてもありがたい。愛子ちゃんだったら何か策を持ってそうだが、それよりも霧島代表の方が確実性がある。
「………雄二」
「っ!?」
「………ゴメンね。今まで。ひどいことして」
「!?」
「………今までの罪を完全に償うことは出来ないかもしれない。でも、雄二私は今でも雄二のことが好き」
「っ!!」
「私語は慎みなさい」
「………すいません」
何か、バッターボックスのところで霧島が雄二に対して言っていたみたいだが。後で内容を聞くか。それにしても雄二はよく耐えたな。まだトラウマ残ってるだろうに。悪鬼羅刹の頃の意地か。
「負けるわけには!」
「………私だって!」
ボールはセンター前にふらふらっと上がる。オレはそれをポテンヒットと確信してホームに還ってきた。
「アウト!」
なんだと?
「七島、大丈夫だ。2点は入っている。ただ、バッターランナーがセカンドでアウトということだ」
「そういうことか」
後ろを振り返ってみると、康太がダイビングキャッチした感じだからノーバンで取られたかと。ただ、試みたけど、失敗してそれを見た霧島がセカンドに突っ込んだけど、秀吉のカバーが上手くてアウトだったと。
「………ごめん」
「2点は入ったんだ。さあ、4回裏ココを抑えよう!」
「………うん」
詳しい話は試合後だ。雄二にも聞こう。だが、今は試合に集中!
4回裏、須川・島田・姫路を三者凡退に切ってとると、5回表、アキがこちらの打線を三者凡退に抑えた。
「マジで4回に点数とっておいてよかった……」
「まだ勝ってないわよ。油断大敵」
「そりゃ分かってるさ。相手がこの回に勝負掛けてきたのは分かってること」
秀吉・康太・アキ・雄二と続く打線な上、教科は保健体育。100%以上の力を出すつもりで行かないと。
「さ~て、本番じゃな」
「やっぱりこの回に勝負掛けてきてたのね」
「何じゃ。お見通しじゃったか。流石は姉上」
「そりゃ分かるわよ。ウチのピッチャー誰だと思ってるのかしら」
「そうじゃな……分かってたとしても、ワシらが勝つぞい!」
おそらく、秀吉はカットマン。野球選手に対してはあまり使わないと思うが。1番打者の役割として、ボールをたくさん投げさせる。っていうのがある。さまざまなボールの球筋を見る仕事だ。器用な秀吉にはいいかもしれない。
「いい加減にくたばれよ!」
「そう簡単には参らぬ!」
10球以上投げさせられたが、何とか三振に取った。
「これで、ムッツリーニや明久も打ちやすくなるであろう」
「なかなかの策士ね」
「………俺が相手だ」
保健体育で、康太を相手するだと。何処に投げても怖いな。
「落ち着きなさい。分かってたことでしょう」
「そうだな。ホームランでも1点しか入らないしな」
さっきの3A戦と同じ状況だ。今度は落ち着く。だが、さっきと違うのは、ヒットを打たれるのも怖いということ。康太が足が速い上、アキ・雄二と続くということだ。恐ろしい作戦を考えるものだ。
「ここでどうだ!」
今日初めて投げるカーブ。だが、康太は反応した。
「………抜けろ!」
康太の打球は右中間にポテンと落ちた。ランニングホームランだけは阻止しないと!
「おい、オレに投げろ!」
自分で中継に入る。すまないが、愛子ちゃんやら佐藤さんには荷が重いから。
「取られてたまるかよ!」
「………危ない危ない」
康太は3塁でストップ。1アウト3塁か……やばいな。
「雄二の言うとおりの展開だ」
「ここでゲッツー取れれば最高だな」
「ヒロ、なめてる?」
「いや。あくまで尊重してるさ」
1点を確実に取りにくるか。つなぐか。前者ならばスクイズという手がある。だが、2点差の今それは可能性として低いだろう。
「思いっきり投げなさい!」
「任せろ」
オレは、ストレートをコース一杯に!!
「しまった!!」
康太が走っているではないか! ホームスチールなわけが無い! アキもバントの構えだ。オレはそれに気づいた頃には既にリリースした後だった。運悪くコースはストライク。こうなったら、全力でダッシュしてホームでさすしかない。
「よっしゃ!」
アキは上手くボールを転がした。オレはそれをすぐにとり、グラブトスでホームに。
………………
「あれ?」
「まんまと図られたわよ」
「康太はおとりか!」
「そのとおりだ。1アウト1・3塁という一番やっかいな展開で、迎えるバッターは俺だ」
最悪だ。あいつは試合開始のときから、この展開を予想してやがったか。
「ゲッツーにとれば試合終了よ」
「そうだよ。ヒロ君! ボクのところ任せて!」
『お前なら抑えれるぞ!』
まあ、声援が良く聞こえること。ありがたい。
「人気者だな弘志」
「お互い様だ」
オレがこういうのも、2Fベンチからものすごい歓声が飛んでいたからであった。
「そろそろ全部の変化球を解禁しないとな」
「まだ持ってやがったか」
もちろん。嘘。ピッチャーじゃないやつがそんなにたくさんの変化球を持ってるわけが無い。
「これで勝負決める!」
「俺らの勝ちだ!」
オレが投じた1球は雄二のバットに当たった。
白球よ何処へ……
2Fと2Aの対決。
その勝敗やいかに。
雄二と弘志の手にゆだねられています。
雄二と翔子の関係、一体どうなる!?
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