青春と音楽と召喚獣   作:いくや

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 久しぶりのけいおん!回。
 2期の部室がない!の話です。

 そろそろ、学園祭という時期になってきました。

 では、どうぞ!




#70 二元論!

 

 「どうしたんですか先輩」

 体育祭が終わって数日後、オレと梓ちゃんが2人で部室に向かうと、先輩方が部室の外に居た。

 

 「ああ、梓・ヒロ」

 「とんちゃん!」

 梓ちゃんがちゃんと世話しているスッポンモドキの名前だ。

 

 「部室がね水道工事で使えないんだって」

 「予定だと工事は10日間だそうよ」

 「その間部室では練習できないのか」

 さわちゃん先生が用紙を見ながら教えてくれた。学園祭まで1ヶ月くらいしかないのに……大丈夫なのかな。

 

 「いろいろと当たってみたんだけど、無理だったわ」

 学校で練習は当分出来ないということか。

 

 「仕方ない。今日は帰って何かいい案が無いか考えないとな」

 「そうしましょう」

 さわちゃん先生に別れを告げ、オレたちは6人で帰途についた。

 

 「ちょっと寄ってこうぜ!」

 「律、落ち着けよ」

 「だって~期間限定のハンバーガーがあるんだぞ~!」

 「ホントに!? そりゃ食べてみたい」

 女子高生の話だが、オレもその話には大いに賛同する。

 

 店に入って、注文して席に着く。

 

 「そういえば、澪歌詞出来たのか?」

 りっちゃんがポテトをくわえながら聞く。そうそう。この軽音部の作詞担当は澪ちゃんだからな。

 

 「出来てるのは出来てるんだけど、律が却下って言うんだ」

 「そうなんですか?」

 「あれは澪が不調になったときに書くようなものだ」

 「というと?」

 「動物シリーズ」

 ちょびっと意味が分からないが、澪ちゃんが書いた歌詞だということで納得した。

 

 「じゃあ、みんなで歌詞を考えてこない?」

 「いいねそれ!」

 「わたしの歌詞はボツ?」

 「候補の一つってこと」

 オレも考えなくちゃいけないのか……新たな感覚だ。演奏するだけでなく自分で詞を書くのか。

 

 「じゃあ、各自作って明日発表な」

 「ラジャー!」

 「わたしも書くんですか?」

 「梓ちゃんの楽しみ~」

 楽しみなのには間違いないが、自分でも作詞をしないといけないというのは……

 

 「どんなタイトルがいいかな?」

 「タイトルから考えるんですか!?」

 「どきどき分度器とか?」

 「カバンのバカーンとか?」

 大真面目に考えているのだろうか。りっちゃんと唯先輩。

 

 「でも、よくよく考えてみると部室のありがたさが分かるよね」

 唯先輩?

 

 「いつも行っているとありがたみが分からないけど……」

 みんなが黙り込む。確かに唯先輩の言うとおりだ。

 たまにこういうこと言うんだもんな~……

 

 

 

 

 

   ~数日後~

 

 「帰ってきた~!!」

 10日の予定だった水道工事が早めに終わった。久しぶりの部室だ。

 

 「ここで練習できるなんてありがたいよね」

 「改めて実感するな」

 「もううろうろしなくていいのね」

 「毎日ココに来ていいんだよ。いいんだよ」

 いいんです! っていうどこかで聞いたことのあるフレーズに似ていたが、そのままにする。

 しかし、こういう機会がないと本当に大切なものが大切だと感じないものなんだな。こういうの何て言うんだっけ。そう、「二元論」だ。人間はモノの本当の価値は「一元論」では分からない。

 よく言われる、無くなってから初めてその大切さが分かるってやつ。

 

 「1曲練習しよう!」

 「そうだな」

 久しぶりにあわせる曲は何かさらなる一体感を生み出したように感じた。

 

 

 

 

   ~次の日~

 

 「な~んも思いつかん」

 「案外歌詞を考えるって難しいものですね」

 以前、公表したときにみんなの歌詞がイマイチだったからもう一回考え直してるのだが……どうにもいいのが思いつかない。

 

 「唯は余裕だな」

 「うん。もう3つ書いたからね」

 すげえ。みかん食べながらそう告げる唯先輩。一体何が?

 

 「憂にちょこーっとだけ手伝ってもらったんだ」

 絶対に半分以上憂ちゃんだな。しかし、唯先輩随分と眠そうだ。徹夜したのかな。

 

 「おいおい、去年みたいに風邪ひくなよ」

 「大丈夫。そのためにずっとみかん食べてるから!」

 なるほど。予防のためのみかんだったか。去年はいろいろと慌てたものな~

 

 

 

 

 

     ★

 

 「風邪ひいた~」

 「なっ!?」

 その日の夜、家に帰ってくるなり、携帯に電話が入った。唯先輩からだった。さっきの今だぞ。たった数時間前までのんきにみかん食べてた人が風邪ひくのかよ! オレは梓ちゃんに連絡を取ると、梓ちゃんは唯先輩の家に行くらしいからオレも行くことにした。

 

  

 

 

 

  

    ★

 

 『えっ? 風邪ひいたのは憂ちゃん?』

 平沢家につくなり、先輩方と合流。家にお邪魔すると、元気な姿の唯先輩が玄関に。そこから告げられたのは妹の憂ちゃんが風邪ひいたということであった。ほっとしたけど、憂ちゃんが心配だ。

 

 「焦らせるなよ~てっきり唯が風邪ひいたのかと思ったじゃないか~」

 「はは。ごめんごめん」

 全員に同じような電話をしていたらしい。主語が無いから勘違いするのも無理はない。

 

 「憂ちゃんが風邪ひいても大問題か」

 「わたしどうすれば……」

 普段、憂ちゃんが家事全般しているらしかったから、その苦労は計り知れない。

 

 「み、みなさん……いらっしゃい……」

 と、キッチンの方から声がして、お茶を持ってくる憂ちゃんの姿が。

 

 「な、なにやってるの憂!!」

 「わたしたちのことは構わなくていいから大事にしてないと!」

 風邪ひいているのにもかかわらず、オレたちのほうの世話を。唯先輩何をやっているんだ!

 

 「ほら、ちゃんと横になってなきゃ」

 「ごめんね梓ちゃん」

 憂ちゃんを部屋まで送り届け、梓ちゃんがしっかりと寝かせる。

 

 「熱はそんなに高くないみたいだわ」

 体温計を持っていたムギ先輩がそう告げる。

 

 「それじゃあ、そろそろ帰るな唯」

 「早いよ~みんな」

 「憂ちゃんがゆっくり休めないだろ~」

 「うん! そうだね。わたし頑張る!」

 「大丈夫ですみな…さん。わたしがいるから」

 「憂は看病される側でしょ!!」

 憂ちゃん。しっかりと自分の体も休めてください。唯先輩を甘やかしすぎ。お大事に。

 

 「何かあったらすぐに電話してね」

 「いつでも来るから」

 玄関まで見送りに来ようとした憂ちゃんを全力でベッドにひきとめ、オレたちは帰途につく。

 

 

 

 

    ★

 

 「おはよ~」

 「憂!?」

 「大丈夫なの憂ちゃん!」

 次の日、平然とした顔で学校にやってきた憂ちゃん。顔色を見ても無理している感じではない。

 

 「ごめんね心配掛けちゃって」

 「ううん。よかった」

 竜也にこの話は通さないでよかった。知ったら怒るだろうけど……

 

 

 

 

 

    ★

 

 「というわけで、投票の結果、唯の詞に決まりました~」

 「どうも~」

 「凄いわ唯ちゃん、わたし感動しちゃった!」

 今日の部活で、唯先輩が歌詞を書いてきたといったのでみんなで見てみる。

 題名は『U&I』

 オレも感動した。気取らない、唯先輩の本心だろう。それがいい歌詞を作り上げた。

 

 「いなくなって初めて大切なものが分かるって」

 部室のときと一緒だな。二元論の最たるもの。

 

 「部室と憂ちゃんがつくらせた歌詞だな」

 よくよく考えると、『U&I』って、『あなたとわたし』って意味と『UI=憂』って意味もあるんじゃないか? そこまで考えているとしたら、唯先輩本当に才能が開花したのかも……!

 

 

 

 

     ★

 

 

 「………ということで、学園祭のクラスの出し物を決める」

 次の日、HRで霧島がこんなことを言った。そうか。クラスの出し物ってのもあったな。去年はクレープだっけか。随分と憂ちゃん使ったもんな~申し訳なかった。

 

 「………何かいい案ある?」

 霧島がこう言い出して、いろいろと案が出た。オレは特に希望はない。今のところ軽音部最優先。

 

 「………じゃあ、メイド・執事喫茶に決まり」

 はあっ!? Aクラスなのにそんな案が出たのかよ!!

 

 「………私たちAクラスは学園の名に恥じないものをつくりあげないといけない」

 「やるからには全力でやります!」 

 「そうだな」

 霧島に頼み込んで、激務は勘弁してもらいたい意志を伝えないとな。

 

 「………店の名前は何にする?」

 そこまで本格的にするのかよ! 2-Aメイド・執事喫茶でよくないの?

 とオレが思っていると、やはりそこから活発に意見が出る。どうやらAクラスの連中、勉強ばかりしているのではなくたまには息抜きが必要と感じているらしかった。ただ、その息抜きを運動に使おうとは思ってもいないらしいが。

 

 「………『ご主人さまとお呼び』に決まった」

 ネーミングセンスのかけらもない。意味が分からないぞ……

 

 「………出すメニュー」

 もう勝手にしてくれ。オレは極力関与しない。

 

 「………キッチン担当」

 料理できる人間はAクラスには多そうだった。

 

 「………メイド」 

 ふむ。憂ちゃんはキッチンに専念するらしい。

 

 「………執事」

 「七島」

 「あ、それいいね」

 一ついいか。いつの間に指名制度になったんだ。

 

 「異議あり」

 「………どうした?」

 「素でどうした? 何て返すな! 立候補だったよな!?」

 「………みんなのお墨付き」

 「そういう問題じゃねえ!! オレの意志は無視か?」

 だが、霧島の権力に勝てるわけも無く、オレは屈してしまった。執事なんてやってる暇あるかな。

 

 「………みんな一致団結して頑張ろう」

 執事服もしっかりと用意するらしい。流石は霧島財閥。

 

 「ヒロ君の執事姿か~」

 「もちろん、梓ちゃんもメイド姿だもんね」

 「ええっ!?」

 「霧島に話通しておくから」

 「ひどいよ!」

 「ここは2人で痛み分け」

 「それ、理屈にかなってない!」

 軽音部のメンバーが2人で仕事分ければ何とかなるだろう。それに、梓ちゃんのメイド姿はとても見たい。

 

 「まさか途中から指名制に変わるとは……」

 「あ、優子さんも被害者?」

 「ええ。愛子が余計なことしてくれたわ」

 「だって~もったいないじゃん!」

 自分が立候補した上、優子さんを道連れにしたらしい。なんと非道な。

 

 「霧島さん、もう大体いいですかね?」

 「………はい。高橋先生」

 今までの様子をずっと端っこの方で見ていた高橋先生が再び中央へ。

 

 「学園祭と平行して、召喚獣の大会があることはご存知ですね」

 そう。トーナメント方式で2人組みの試召戦争があるんだったな。

 

 「希望する人は早めにわたしのもとへ」

 希望者だけらしい。オレは今回はパスだな。

 

 「優勝者には、試召戦争で使えるオリジナル腕輪と、如月ハイランドパークのペアチケットがあるそうです」

 腕輪か~オレも持ってるけど未だかつて使用してないんだよな。雄二とアキと竜也のは使用済みだけど。

 

 「では、今日のHRはここまでにします」

 ちょびっと執事ってのは面倒くさいな~と思ったけど、やるからにはしっかりやらないとな。

 





 正直、『U&I』を初めて聞いたときは涙がこぼれそうでした。
 是非是非聞いてみてください♪

 原作では春にあった学園祭。
 こちらでは秋に移しました。
 ようやくこの時期です。
 さて、どうなることやら……

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