青春と音楽と召喚獣   作:いくや

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 新学年早々の試召戦争の動き。

 AクラスはAクラスとしての威厳を保ったまま勝利に導くことは出来るのか。

 作戦を考える軍師が多いため逆に「船頭多くして船山に登る」ことにならないか。

 
 軽音部、謎の訪問者、
 
 一体誰!?

 では、どうぞ!!




#92 情報収集!

 

 

 「………Fクラスの情報」

 次の日、HRで康太がつかんだ情報を公開することに。相変わらず仕事は早い。昨日の今日だからな。

 

 「流石だ。翔子、みんなに伝えた方がいいな」

 「………うん。よろしく」

 康太は小さくうなずき、Aクラスならではの巨大ディスプレイのほうへと歩いていった。そして、情報をそこに表示させる。

 

 

 「………一応、全員のPCにも同じものを表示させた」

 先生のPCなのに仕事が早いことで。ハッキング出来るんじゃないか……

 

 「………須川が代表。主戦力:姫路・島田と思われる」

 「なるほどな。この2人を頼みにしてるのか。そりゃあ使えねえ連中よりマシだ」

 「………驚く情報。根本がFクラス入りしていた」

 「ほう。それは楽しみだ」

 「………他に特に目立った人物はいない」

 終わり? もうちょっと期待してたんだけど。須川があそこまで啖呵を切ってAクラスに宣戦布告するもんだから、もっとすごいのいるのかと思ったのに。プラスは根本オンリー? それすら+かどうか分からないぞ。

 

 「ということは、試召戦争を明後日にしたのは単純に姫路あたりの点数を回復するためか」

 「お前の言い方だと姫路はわざとFクラスに落ちたみたいな言い方だな」

 「そう聞こえるか」

 オレもそう思うが。どうせアキがFクラスだと思ったんじゃないか。再び一緒のクラスになりたくてとか。

 

 

 

 「………雄二」

 「何だ」

 「昨年Fクラス代表として聞く。姫路と島田の得意教科は?」

 「姫路は家庭科以外ならオールラウンダーだ。島田は知っての通り数学のみ」

 油断はするつもりはないが、ココまでの情報を相手に与えておいて須川率いるFクラスはどうやって勝とうとしているのだろうか。

 

 

 「根本はよく分からないわね」

 「確か文系のはずだ」

 「そもそも、根本が出てくるかどうかは分からないんじゃない?」

 「それもそうだが、去年までBクラスだということを考慮すると、考えないわけにはいかない」

 あれほどまでに厳正なテストだ。カンニングを行えるとは言いがたい。

 

 「姫路には代表がいったほうが」

 「それがいいだろう」

 「………分かった。島田の場合は?」

 「雄二でいいのではないかしら?」

 優子さんの口から出た意外な人選。Aクラスの面々は口をポカーンと開けていた。

 

 「俺か?」

 「ええ。数学は確か学年1位でしょう」

 「ふっ……それは知らんが、確かに数学は得意だ」

 「………じゃあ、雄二お願い」

 「いいのか? 他のAクラスの連中のことを考えたほうが ー 」

 「雄二は学年次席。文句を言われる筋合いは無い」

 それもそうだ。いくら昨年までFクラスとはいえ、学年次席に文句を言うってのは身の程知らずだ。

 

 「………そういうこと。よろしく」

 「分かった。後1人だな。根本の場合は単純に久保でいいだろ」

 「僕かい?」

 「ああ。文系で翔子の次だろ」

 「確かにそうだが」

 「………よろしく、久保」

 久保はAクラスの面々からの信頼は厚いためすぐに決まった。

 因みに、Aクラスの面々はほとんどメンバーは変わってない。下の10人が変わった程度。

 

 

 

 

 

 「ただ、Fクラスだ」

 「そうじゃな」 

 「それだけで僕たちは理解できる」

 去年からAクラスだった面々はあんまり理解してそうじゃなかったが。

 

 「やつら、保健体育や家庭科に強い」

 しぶとく社会で生き残りそうだよな。

 

 「………保健体育で勝負を挑もうなど」

 「そうだね康太君。ボクたちがいるAクラスに保健体育で挑もうとする考えのない人は来ないと思うよ」

 とてつもない自信。だが、みんなはうなずかざるを得ない。だって……たまに先生をも凌駕する点数を出してくるからな。この2人がいると分かっているから保健体育での勝負は考えにくい。

 

 「じゃあ、家庭科か?」 

 「こちらにもスペシャリストがいるわよ」

 「そうだよ。憂ちゃん♪」

 「わたしですか?」

 「昨年は凄かったもんな」

 ちょうど1年前くらいのころ。延長戦になった一騎討ちで、最後に出てきた憂ちゃんは家庭科で秒殺で終わらせたのだ。その記憶はまだ残っているらしかった。

 

 「………それじゃあ、根本以外だったら憂」

 「妥当だろ」

 「わ、分かった。頑張るよ!」

 一応、試召戦争の代表が決まった。

 vs姫路は代表、vs島田は雄二、vs根本は久保、vs他は憂ちゃん。

 穴は見当たらない。果たして須川よ。お前はこの穴を見つけることが出来るのか。見つけないとすぐ負けだぞ。

 

 「………明日は入学式だから、次学校に来るときは決戦」

 始業式の2日後に入学式、その2日後に新入生歓迎会。春先は行事が詰まっているな。

 

 「………今年もAクラスとしの誇りを持って戦う」

 霧島のこの言葉でHRは終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ★

 

 「ふぁ~AクラスやFクラスって試召戦争大変だね。眠いよ」

 部室に行きながら純ちゃんが呟く。

 

 「純はそんなにやってないんだっけ?」

 「去年は最初にFクラスに攻められたときだけ」

 オレたちはコッチのほうに慣れているからな……

 

 「多分、試召戦争は何もしなくていいと思うよ」

 「そう思う。こんなクラスに攻め込むクラスがあるなら教えて欲しいよ」

 Fクラスです。

 

 

 

 「さあて……今日こそ梓を ー 」

 純ちゃんが思いっきりドアを開けると、なにやら見覚えのある顔が。

 

 

 

 

 「あれ、昨日の……」

 そう、堂々と泥棒宣言をした見た目は外国人で、バリバリの日本人の子だ。

 

 

 

 「あっ!」

 「お茶淹れてくれる?」

 「はい、ただいま」

 「純……」

 純ちゃんは既にこの状況に対応しているらしく、追い出すわけでもなく逆に引き込んでいた。

 

 「どうぞ…」

 「美味しい~昨日山中先生が言ってたけどすごい美味しい」

 「ムギ先輩の時が懐かしいよ」

 「ムギ!?」

 「どうかした?」

 「いえ、なんでもないです」

 「そういえば、お名前は?」

 「斉藤菫(さいとうすみれ)です」

 めちゃめちゃ普通の日本人名じゃん。カタカナが似合うのに。

 

 「スミーレちゃん」

 「す、スミーレ?」

 「見た目がそんな感じだから」

 なるほど。賛成の票を投じよう。

 

 「軽音部に興味ない?」

 「いえ、あんまり」

 「入ってみない? すっごく楽しいよ」

 部長が押します! オレも手伝いたいのは山々だが、憂ちゃんやら純ちゃんやらが猛アタックするから控えめにしておく。

 

 

 

 

 「新入生歓迎ライブあるから聞いてね」

 「は、はあ……」 

 「衣装持ってきたわよ。っているじゃな~い、着せ替え楽しみ~」

 「キャー!!」 

 さわちゃん先生……生徒はおもちゃじゃありませんよ。

 

 

 

 

 

 

 「わっ……とと……」

 「あ、優花」

 「何なの今の子?」

 部室に入ろうとしたら突然中から全速力で走って逃げて来る子がいたら怖いよな。

 

 

 「う~ん…謎の人物」

 「は?」

 オレたち4人がその子について説明していたら優花が不思議そうな顔をした。

 

 

 

 

 

 「どうした?」

 「どこかで会ったことあるような気がする」

 「学校内じゃなくて?」

 「多分。思い出せない……」

 「思い出したら是非とも教えてね!」

 「分かりました」

 オレに対してだけ強気な態度取るんだな。おい。別にいいけどさ。慣れてるから。

 

 

 

 

 

 

 「ねえねえ梓ちゃん」

 「何?」

 「結局、新入生歓迎ライブどうするの?」

 「あっ……」

 忘れているわけないしな~現実逃避したかったんだよね。

 

 「純先輩や憂先輩はまだ参加できないですもんね。当然わたしもこの軽音部に入ってまだ音あわせしたことないですし、こうなったらやっぱり ー 」

 そう言って、オレと梓ちゃんの方に顔を向ける。何とかしろってか?

 

 「歌いながら演奏するのか~」

 「初めてだ。でも、やらないとね」

 「そうだよね。どうする?」

 オレは梓ちゃんとどういう風にやるか、やるとしたら何の曲をやるかを相談した。そして、大体が決まったので早速練習に入る。バンドとしてではない形だから難しいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ★

 

 「へ~ムッツリーニの妹が入ってくるんだね」

 「………昨日入学式だった」

 入学式明けの次の日、学校ではこんな会話があっていた。

 

 「因みに僕の弟もこの学校に入学したんだよ」

 「そうなんだ、久保君」

 久保弟もこの学校か。

 

 「2人とも何の部活するとか聞いてない?」

 「………何も」

 「さあね。入るかどうかも聞いてないね」

 これは意外な人脈。是非とも軽音部に欲しいところである。

 

 「ほらほら、今日はそんな会話をするような日じゃないでしょ」

 「………気を引き締めて」

 「言っている側からやってきたよ♪」

 そう、今日はFクラス戦。Fクラスとしては待ちに待っただろうが、オレたちとしては別に待ってもないし一生来なくてもいいとも思っている。誰かFクラスの良心はいなかったのか。いたとしても圧倒的多数や姫路島田といった強権で押さえられるだろうが。

 

 

 

 「さて、1時間後にはもう俺たちの部屋か」

 「アキ、何故そこにいるのかしら」

 「帰って来てくださいね」

 アキ最凶最悪の敵がやってきた。

 

 『これより異端審問会を開く』

 『坂本死刑』

 『吉井』

 『土屋』

 『本田』

 『七島』

 待って欲しい。他の4人は元Fクラスメンバーとして認めているのは分かるが、オレを巻き込まないで欲しい。……というのは冗談。誰も巻き込ませるものか。

 

 「………早く始めよう。時間がもったいない」

 「学年主席殿はそう来るか。そうだろうな。勝つのは決まっているもんな」

 「そうはさせませんけど」

 「Fクラスをなめないで欲しいわね!」

 Aクラスを過小評価しないでほしい。いい迷惑だ。そちらの情報は全て康太を通じてAクラス全員が分かっているからさ。須川の奇策とやらがどんなものかは見ものだな。

 

 

 

 





 今回のは伏線というか、下準備というか……

 次の話に繋がるための話だから若干内容が薄かったかもしれません。

 さて果たして、須川はAクラスの想像以上の作戦を考え付いているのか。

 そして、謎の人物の名前が判明したが一体どういった人物か。
 
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