青春と音楽と召喚獣   作:いくや

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 始業式早々、FクラスはAクラスに試召戦争を申しこむ。

 3日後という猶予つき。
 この間にFクラスのメンバーは確実に成長したらしかった。

 それはそうであろう。

 なぜかって?

 0点の方がテスト受けたらそうなる。
 
 では、どうぞ!!





#93 返り討ち!

 

 

 「では、1人目お願いします」 

 Aクラスにて行われている、AvsFの試召戦争一騎討ち。今年は3回戦までなんだが……

 

 「よし、島田。景気付けに勝って来い」

 「分かったわ」

 今気づいたが、科目選択権なるものを決めていなかったな。でも、こちらは相手を見て選手を決めているから、別に構わないか。

 

 「島田か。ではAクラスの諸君。ココで見ているがいい」

 「………神童と悪鬼羅刹と呼ばれた雄二の本気」

 「翔子、黙っておけ」

 「雄二らしく勝てばいいんじゃない」

 「分かっているぞ優子」

 Fクラスに比べて声援は少ししかないが、学年次席の目はぎらぎらと光っている。

 

 「へえ、坂本が相手ね。引導を渡してあげるわ」

 「やはりお前は日本語から勉強した方がいいんじゃないか」

 「何をっ!」

 「今回の戦いは科目選択権を譲ろうではないか。学年次席の力を見せてやる」

 「何を言ってるのかしら。カンニングで上り詰めた悪党。科目は数学よ!!」

 ははっ……よく言うぜ。いくらお前が数学得意とはいえ……挑む相手が悪いだろう。

 

 「承認します!」

 「「試獣召喚(サモン)!」」

 いつものように幾何学模様のフィールドが出て、お互いの召喚獣が出る。島田は武器サーベル。雄二は相変わらず素手メリケンサックである。武器を見るとやや劣るが、元の地力が違う。

 

 数学 F島田 vs A坂本

      738    942

 

 「何だあの戦いは!?」

 「坂本は腕輪使えるのか!!」

 あ、因みにだが、数学は他の教科と違って2科目合体だから、大体点数は倍くらいだ。正確には違う。数ⅠAと数ⅡBの点数の合計点だ。だから腕輪使用条件は800点以上。それでも雄二は余裕で超えている。

 

 「この点差なら余裕よ」 

 「どうだか」

 「あんたに無いもの、それはリーチの長さよ!」

 島田はそう言うと、サーベル片手に召喚獣を雄二の召喚獣へ突っ込ませた。斬られると思ったその時、雄二の召喚獣はほんの少しだけ左前に進みサーベルを避わしたかと思うと、その刹那、ボディーブローの要領で3発連続でいれ、大体心臓がある辺りを2発、顔面を1発殴ったかと思うと、ローキック。いつの間にか島田の召喚獣は姿がなくなっていた。

 

 「な、何で? 何があったの!?」

 「勝者、Aクラス」

 高橋先生のよく通る声で言われると、Aクラスからは安堵の声が、Fクラスからは……いつもどおりだった。

 

 

 

 「ちょいとばかし、よい子は見てはいけない図になっていたな」

 「構わんさ。姿と内面は違うんだからよ」

 軍服を着た女の子の召喚獣に、不良にしか見えない召喚獣が10発弱のパンチをいれ壊滅させた姿。確かにお茶の間のよい子は見てはいけない図だ。ただ、1つ言えるのが、雄二の勝ち方はこれしかないだろう。散々に殴るしか。だって武器がほぼ素手だぞ。

 

 「明久、お前との練習がよかったな」

 「うん。雄二の操作技術も段違いに成長していたよ」

 なによりも驚くべき点は、雄二はただ力(点数)任せに殴っていたわけではなく、しっかりと急所を狙っていたのであった。肝臓・心臓・顔面(脳)、ココらへんは実体験で熟知していることだろう。中学生の時に散々やりまくっただろから。その後の知識も加わっているし、今の雄二は負けないんじゃないか。

 

 「くっ……坂本め。最初から数学に絞ってやがったか」

 島田=数学だろ。逆にそうじゃなかったらこちらも奇襲された形になっていたんだが。

 

 

 

 

 「もういい、根本行ってくれ」

 「……ああ」

 どうやら根本は、今回の振り分け試験は忌引きだったらしいがそこも情け無用の学園。即Fクラス行きだったらしい。少しは同情してしまうがやつらに加担しているだけそれは無駄無駄。表情を見る限りいい迷惑といった感じだが……久保せめてもの救いだ。秒殺してあげろ。

 

 「僕が行くよ」

 「久保君~」

 「頑張って久保君!」

 Aクラス女子からの人気はナンバーワンの久保。しかし未だに誰かと付き合っているという話は一度たりとも聞いたこと無い。弟がいるらしいからその謎は聞いてみようかな。軽音部に勧誘した後にね。今はそんなのどうでもいい。試召戦争だ。どうやら根本は国語を選択したらしく既に高橋先生も承認していた。

 

 「「試獣召喚(サモン)!!」」

 いつものように2体の召喚獣が出てくる。昨年代表だった根本はあまり操作経験が無いのではないか。それに対し、久保は前線の指揮官やら結構な戦いの場を踏んでいるため完全にこちらに有利。

 

 国語 F根本 vs A久保

      690    925

 

 「おおおお!」

 「流石は久保。元学年次席の座は只者じゃない」

 国語も先ほどの数学同様、倍になる。どうしてこうなるかは一応抑えておいたほうがいいか。今年の自分達のためにも。

 この召喚システムはセンター試験に基づいて点数化しているらしい。センター試験において、

 

  国語(現代文・古文・漢文)・数学(ⅠA・ⅡB)・英語(リスニング込み)は200点満点、社会理科あわせて3科目(文系理系によって2科目取る教科が違う)それぞれ100点満点の合計900点となっている。

 

 そのため、国語数学英語に関しては大体他の教科の倍の点数となっている。

 

 他にも副教科として、保健体育や芸術(音楽・美術・書道)・家庭科というものが存在している。これは総合科目には含まれない。

 

 おっと、おさらいしている間に久保が力(点数の差)技で押していっているようだ。

 

 「根本君、これでおしまいだ」

 「ぐ…………」

 久保君のこの宣言どおりに、根本の召喚獣の姿は消えていった。

 

 「勝者、Aクラス!」

 普通に2勝先取。これでこの戦いは勝ちなんだろうけど、終わらないだろうなあ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ひ、姫路!! 意地を見せてくれ!!」

 「分かっています」

 普通の普通に奇策もなしに3戦目突入。姫路だとさ。Aクラスが一番恐れている人物。確かに怖い。が、代表の敵ではないだろう。

 

 「科目は総合科目でお願いします!」

 「………構わない」

 学年主席に総合科目で挑むって凄すぎる。学年主席=総合科目で最も点数高かった人だぞ。わざわざ相手の得意陣地で戦っているようなものだ。

 

 「「試獣召喚(サモン)!!」」 

 もう言うまでも無いフィールドが出てきて、同じく2体の召喚獣が出てきた。

 

 総合科目 F姫路 vs A霧島

         3728    4092

 

 「凄すぎる!!」

 「何だ2人ともこの点数は」

 「腕輪の戦いになるのか!?」

 総合科目の場合、3600点から使える。5教科9科目でおおよその目安全科目400点以上だからな。

 

 「覚悟っ!!」 

 「………望むところ」

 早速、姫路が腕輪を使用したようだ。確か姫路の腕輪の能力って「熱線」だっけか。

 

 「ちょっと代表まずくない?」

 「………落ち着け純」

 「そうだぞ純ちゃん。我らが代表がそんなにもろいわけがない」

 不安がる純ちゃん。対して去年から代表と同じクラスにいるオレたちは全くそんな感じも無い。むしろ余裕さえ感じる。代表ならこんな展開簡単にひっくり返せると。

 

 「………うん。これで大丈夫」

 「っ!! まさか!!」

 その熱線とやらを、どこから取り出したか分からない大量の鎖を駆使して全て吸収、そしてそのまま攻撃。

 

 「きゃあっ!!」

 ただでさえ威力が強い鎖攻撃に、さらに熱線で熱を吸収し強化した鎖だ。姫路は自分に食らう攻撃を倍増させただけなのかもしれない。

 

 

 「勝者、Aクラス。3戦全勝にてAクラスの勝利」

 高橋先生のこの声が響き渡っても、誰も歓声を上げなかった。Fクラスはもちろんのこと、Aクラスは勝って当たり前と思っている。油断大敵だが、今回は相手の方がこちらをなめていたから仕方ない。

 

 

 

 

 

 

 「須川君、Fクラス代表として交渉に参加してもらうわ」

 木下優子生徒会長が有無を言わさぬ迫力でFクラス率いる須川にこちらに来るよう促す。背後のあのオーラは……これは須川はFクラスに帰った後袋叩きにあうんじゃないかな。

 『須川会長は、木下優子に話しかけられた!』とな。バカじゃねえのかと思うが。

 

 「そもそもだ。須川、何のために試召戦争を仕掛けたんだ」

 「お前たちをFクラスに戻すためだ」

 と悪びれも無く須川が言うのに対し、半ば呆れていたオレたち。

 

 「翔子、こいつらに情けは無用だ。ルールどおりにしよう」

 「………そのつもり」

 「Fクラスは設備ダウン+試召戦争3ヶ月禁止ね」

 この決定は痛いぞ。あの廃屋より悪い設備で、1学期を過ごさないといけないんだろう。ご愁傷様です。

 

 

 

 「カンニングしたんでしょ~」

 「悪い子にはオシオキですよ!!」

 「………2人ともうるさい。少しは分かったらどう?」

 「何よ偉そうに」

 「裏切りましたね翔子ちゃん」

 代表は、そんなの何処吹く風。この状況でアキに喧嘩売ろうとするならAクラス全員が守ってくれるだろう。それくらい今回は理不尽だぞ。

 

 「言っておきますが、この学園でカンニングなど見逃すわけがありません」

 「ということで、さっさと自分達の教室に帰ってもらえませんでしょうかね」

 優子さんのこの言葉に、Aクラスの全員が賛同する。

 

 「最後に、須川・姫路・島田。お前らは俺たちAクラスと関わりを持つな。試召戦争以外で」 

 「はあっ!? 何でよ!」

 「自分達で分かるがいい。それに、敗者は勝者の言うことを素直に受け入れるものだ」

 「さあ、我がFクラス諸君よ。教室に戻ろうではないか」

 Fクラスのやつらは負け犬の遠吠えと言わんばかりに捨て台詞を吐いて教室から出て行った。ってか、我が? 西村先生今年もFクラス担任でしたか。お勤め感謝。

 

 「何か無駄な時間を過ごした気がするわね」

 「………大丈夫、今後3ヶ月はFクラスからかかってこない」

 「去年の方が危なかったね~」

 そりゃそうだ。雄二だもんな。今自分達のクラスの学年次席様の頭脳が相手だったから手ごわいだろう。

 

 「さあ、みなさん。気を取り直して授業をしましょう」

 「「はい」」

 Aクラスはやはり真面目。こんな展開でもすぐに授業に切り替わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ★

 

 「あれ、スミーレちゃん」

 「っ!? しまった」

 「お茶淹れて頂戴」

 「はい、只今」

 この展開にももはや突っ込む気は無くなった。

 

 




 何の面白みも無い今年の試召戦争一騎討ち。
 代表が須川だからだな。

 このAクラスに誰が攻め入るんだろうか。
 単教科でも得意なやつたくさんいるし。

 ということで、試召戦争は今後あるのか? ということですね。

 軽音部でもおなじみの光景になったあの泥棒宣言の子がお茶を淹れる。
 果たしてどうなってしまうのか!!

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